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「なんとなく腰が痛い」から「腎臓病」「透析」になる女性の共通点

プレジデントオンライン / 2021年2月14日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Henadzi Pechan

テレワークの浸透で運動不足に陥り、腰の痛みを訴える人が激増している。慢性腰痛、ぎっくり腰……体をどちらに向けても「しんどい」この状態をどうすれば脱却できるのか。自身、長年腰痛に悩み、克服した経験を持つ池谷敏郎医師が、困った腰痛の原因の突き止め方とともに、その腰の痛みに隠された重篤な病気の見抜き方を教示する──。(第2回/全3回)

※本稿は、池谷敏郎『腰痛難民』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

■「なんとなく腰が痛い」からはじまった「腎臓病」

パートの仕事と家事、親の介護などで慢性的な疲労と腰痛に悩まされていた60代女性Cさん。忙しい日々のなかで、なかなか自分の時間をもつことができず、整形外科や整体などに定期的に通う時間はもてなかったので、マッサージ器や湿布でなんとか対応していたそうです。

また、腰痛以外にも、睡眠中に寝間着や布団が濡れるほどの寝汗をかいたり、ふだんから微熱を感じたりしていたものの、「きっと疲れのせいだろう」と、とくに病気を疑うことなく、そのままにしていました。

ところが、そのうちに食欲もなくなってきて体重も減り、腰痛と倦怠感もひどくなってきたとのことで、私のクリニックを受診されました。

精査加療が必要と考え、すみやかに総合病院の内科へご紹介したところ、最終的に下された診断は「慢性腎盂腎炎(まんせいじんうじんえん)でした。

■風邪や疲労に間違われる「腎盂腎炎」

腎盂腎炎という病名は、はじめて聞く方も多いかもしれません。腎盂腎炎とは、腎臓内の尿のたまるところである「腎盂」という部分に細菌が繁殖して炎症が生じる病気です。

腎臓でつくられた尿は、「尿管」を通って膀胱(ぼうこう)へと流れ込みます。腎盂は、腎臓内でつくられた尿を集め、一時的にためておくとともに、尿管を介して膀胱へ送り出す役割を担っています。

本来、健康な人は、膀胱から尿管、腎盂には多くの細菌は存在しません。では、なぜ、腎盂腎炎では腎盂に細菌が繁殖して炎症が起きてしまうのでしょう。

多いのは、尿の出口から侵入した細菌が尿の通り道を遡(さかのぼ)って腎盂にまで到達してしまうパターンです。ただ、稀(まれ)に、体内の別の場所で感染が起こり、それが血管を通って腎臓にまで届くこともあります。

■腎盂腎炎を風邪と勘違いする理由

腎盂腎炎は、女性に多い病気です。女性のほうが、尿道が短く、腎盂腎炎の原因となる大腸菌などが多く存在する肛門と尿道の距離が近いという、男女の体の構造上の違いに理由があります。女性のほうが、男性よりも膀胱内に細菌が侵入しやすいつくりになっているのです。

腎盂腎炎の主な症状には、背中や腰の痛みと熱、頻尿などです。

そして、腎盂腎炎には、急激に発症する「急性腎盂腎炎」と、慢性的に繰り返し発症する「慢性腎盂腎炎」があります。急性腎盂腎炎の場合には、前述したような症状が急激にあらわれ、そのほか吐き気や寒気、全身のだるさや意識障害などの症状も出ます。

急性の腎盂腎炎の場合、とにかく急に症状が出ます。急に熱が出て、吐き気や寒気、全身のだるさ、そして腰痛などを伴うので、「風邪をひいた」と勘違いする人も多いものです。

風邪の時に、膝や肩、腰など、体の節々が痛くなるという方は少なくありません。「風邪をひいて、熱が出て、腰も痛くて……」などと訴えて病院にかかったら、じつは腎盂腎炎だったというケースが時にあるのです。

急性腎盂腎炎は、適切な抗菌薬を使った治療を行なえば、ほとんどの場合は完治します。ただ、重症化すると、細菌が腎臓から血液内へ侵入し、「敗血症」(全身症状を伴う感染症のこと)という致死的な病気へ進行してしまうことがあるので、注意が必要です。

■「疲れだろう」で見過ごして透析になったCさん

また、急性腎盂腎炎を繰り返すうちに慢性化してしまう、つまり慢性腎盂腎炎に移行してしまうことがあります。一方で、はじめから慢性的に症状が出ることもあります。

慢性腎盂腎炎のほうは、はっきりとした症状があまり出ません。背中や腰の痛みにしても発熱にしても倦怠(けんたい)感や食欲不振などにしても軽微なことが多いので、Cさんが「疲れだろう」と見過ごしてしまったのも無理はないのです。

慢性腎盂腎炎になると、腎機能が徐々に悪くなり、腎機能障害を起こします。そして、症状が進むと、腎臓が十分に機能しなくなる「腎不全」に陥り、透析が必要になる場合もあります。

Cさんは、慢性腎盂腎炎と診断されたあと、すぐに治療を開始しましたが、やがて慢性腎不全に移行し、透析を受けることになりました。

腎臓は、胃や肝臓の後ろ側、腹部の背中側にあります。そのため、腎臓に異常があると、腰や背中に痛みが生じやすい。腰痛の原因として、腎臓の病気を疑うことも忘れてはいけないのです。

■腰側にサインを出しやすい臓器

異常がある時に腰や背中に痛みが出やすい臓器は、ほかにもあります

池谷敏郎『腰痛難民』(PHP新書)
池谷敏郎『腰痛難民』(PHP新書)

背中に近い腰が痛む時には膵臓(すいぞう)の病気も考えられます。膵臓がんだけではなく、膵臓で小さな炎症が繰り返される慢性膵炎でも、腰痛のような症状があらわれます。

たまに、背中の右側をさして「ここが痛いんだけど、膵臓じゃないか?」と心配される方がいますが、膵臓があるのは左側。みぞおちとおへその間くらいの高さで、胃の裏側にあるので、膵臓の病気の場合は、左寄りの背中から腰にかけて症状があらわれやすいのです。

それから、子宮も腰の近くにある臓器です。そのため、子宮の筋層に良性の腫瘍ができる「子宮筋腫」や、本来は子宮の内側にしか存在しない子宮内膜が子宮の外側にできてしまう「子宮内膜症」、「子宮がん」といった子宮の病気でも、腰や背中に痛みや違和感があらわれることがあります

■腰痛から子宮がんが見つかったケースも

子宮がんには、子宮の入り口にできる子宮頸がんと奥の方にできる子宮体がんがあり、その痛みは主に下腹部に現れやすいといわれています。しかし、腰痛や背部痛の原因となることも少なからずあるので、少しでも気になる症状がある女性は、ためらわずに早めに婦人科を受診してください。

また、胃と小腸をつないでいる十二指腸の粘膜が障害される「十二指腸潰瘍」でも、腰が痛むことがあります。十二指腸潰瘍と聞くと、腹痛のイメージが強いと思いますが、潰瘍が背中側にできれば腰痛としてあらわれることもあるのです。

ここまでに紹介してきた腹部大動脈や腎臓、尿管、膵臓、十二指腸といった臓器は、いずれも腹膜の後ろ側、「後腹膜」と呼ばれる場所にある臓器です。子宮は、半分が腹膜に覆われ、半分が外側にあります。

こうした腹膜の後ろ側(後腹膜)に存在する臓器は、異常がある時に、腰や背中側にサインを出しやすいのです。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとして、数々のテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演など多方面で活躍中。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。著書に『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える 内臓脂肪を落とす最強メソッド』(東洋経済新報社)、『「末梢血管」を鍛えると、血圧がみるみる下がる!』(三笠書房)、『血管を強くして突然死を防ぐ!』(PHP文庫)などがある。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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