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「失言大魔王」なぜ森喜朗会長の暴言はずっと許されてきたのか

プレジデントオンライン / 2021年2月8日 15時15分

日本オリンピック委員会の女性理事増員方針をめぐる発言について記者会見する東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長=2021年2月4日、東京都中央区(写真=時事通信フォト)

■「あなたはどう思うんですか」と記者に逆質問

2月4日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などとした発言を撤回し、謝罪した。

当初は「深く反省している」と述べていたが、記者会見が質疑に入り、会長としての適性を問われると「さぁ」と首をかしげ「あなたはどう思うんですか」と記者に逆質問した。さらに食い下がる記者に向かって「面白おかしくしたいから聞いているんだろ」と言い放った。

問題の発言は森氏が3日、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会にJOC名誉委員として出席し、主なスポーツ団体で女性の理事の割合を40%以上にするスポーツ庁の目標に言及した際に飛び出した。

発言は次のようなものだった。

「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」
「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」
「結局、あんまりいうと、新聞に書かれますけど、女性を必ずしも数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度、規制をしていかないとなかなか終わらないで困る」

ちなみにJOCの理事は25人で、そのうち女性は5人と少ない。このため女性の割合を40%以上に引き上げることを目標に掲げている。

■「子どもをつくらない女性を税金で面倒をみるのはおかしい」

沙鴎一歩は森氏の問題発言を知ったとき、「また失言癖が出たな」と思った。森氏は首相時代(2000年4月~2001年4月)を含めて失言や暴言を繰り返し、永田町では「失言大魔王」の異名で呼ばれてきた。今回の女性蔑視発言も自民党幹部からは「またか」と半ばあきらめの声が出ている。

ここで森氏の過去の失言をいくつか振り返ってみよう。

「日本は天皇を中心とする神の国である」

これは森氏が首相だった2000年5月の「神道政治連盟国会議員懇談会」の祝賀会での発言だ。日本国憲法にある国民主権を否定する「神の国発言」と批判された。

「子どもを一人もつくらない女性を年取ってから税金で面倒をみるのはおかしい」

首相退任後の2003年6月、自民党少子化問題調査会長として鹿児島市の公開討論会でこう話し、問題にされた。森氏の女性蔑視発言は、今回だけではない。根っからの女性蔑視者なのである。

■たまに思わず発する失言こそが本音だともいえる

こんな失言もあった。

「あの子、大事なときには必ず転ぶんですよね」

ソチ五輪で代表だったフィギュアスケートの浅田真央選手の演技に対する2014年2月の発言だ。これにはスポーツ選手など多くの人々から批判の声が上ったから覚えている人は多いだろう。

この前後にはこんな発言もあった。

「見事にひっくり返っちゃいましたね。転んだことが心の傷に残って、今度は転んじゃいかんという気持ちが強く出たのだと思います」
「日本は団体戦に出なきゃよかった。負けると分かっていた。浅田さんを出して恥をかかせることはなかった」

森氏の失言はこの他にもたくさんあるが、森氏自身は失言や暴言だとは思っていない。自分の思いを素直に話しただけだと考えている。だから何度も失言や暴言を繰り返し、「問題発言だ」と批判されるのである。よく言えば馬鹿正直なのかもしれない。

どんな政治家にも失言はある。政治家の言葉と言われて連想するのは、失言や暴言、問題発言だ。政治家と失言は切り離せない。裏を返せば、政治家の言葉はうそで塗り固められ、たまに思わず発する失言こそが本音だともいえる。

■「あまりにお粗末な森五輪会長の女性発言」と日経社説も批判

今回の森氏の女性蔑視発言の問題は、全国紙のすべてが社説に取り上げ、厳しく批判している。

まず各紙の社説の見出しを拾ってみよう。

朝日社説(2月5日付)「森会長の辞任を求める」
毎日社説(2月5日付)「五輪責任者として失格だ」
読売社説(2月6日付)「五輪会長として不見識すぎる」
産経社説(2月6日付)「組織委もJOCも猛省を」

なお日経新聞は「あまりにお粗末な森五輪会長の女性発言」との見出しを付け、2月4日付でいち早く森氏の問題を扱っていた。ブロック紙の中日新聞が母体である東京新聞の社説も「五輪の顔として適任か」(2月6日付)と辞任を求める見出しを掲げている。

■「すみやかな辞任を求める」と朝日社説

朝日社説の書き出しはこうだ。

「そうでなくても懐疑論が国内外に広がるなか、五輪の開催に決定的なマイナスイメージを植えつける暴言・妄言だ。すみやかな辞任を求める」

「暴言・妄言」と言い切って辞任を要求する。しかも「すみやかな」である。書き出しからこう強烈に主張するところなど、保守的思考や古い考え方を厭う朝日社説らしい。

森氏の謝罪と発言の撤回を書いた後、朝日社説は指摘する。

「それで許されるはずがない」
「こんなゆがんだ考えを持つトップの下で開催される五輪とはいったい何なのか。多くの市民が歓迎し、世界のアスリートが喜んで参加できる祭典になるのか。巨費をかけて世界に恥をふりまくだけではないのか。疑念が次々とわいてくる」

「許されるはずがない」「ゆがんだ考え」「世界に恥をふりまく」と手厳しい指摘である。批判の矛先は森氏だけではなく、五輪にも向けられている。

日本スポーツオリンピック広場
写真=iStock.com/Ryosei Watanabe
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ryosei Watanabe

■菅首相や小池都知事まで批判するが…

さらに指摘は続く。

「にもかかわらず組織委の会長がその取り組みを揶揄し、女性理事ひいては女性全般を侮辱したのだ。責任は極めて重い」
「問われるのは森氏だけではない。発言があった際、出席していたJOCの評議員らからは笑いがおき、たしなめる動きは一切なかった。山下泰裕会長以下、同じ考えの持ち主と受け取られても言い訳できない」
「菅首相は『あってはならない発言』と述べたものの、森氏の進退については言及を避けた」
「開催都市の女性首長である小池百合子都知事の見識も問われる局面である」

朝日社説の批判の矛先は組織委とJOC、そして菅義偉首相や小池百合子都知事にまで向けられる。組織委とJOCは当事者だが、菅、小池両氏まで批判の範囲を広げなくともいいと思う。この際だから体制派をすべてやり玉にあげたいのだろうか。それでは批判が本質からずれてしまう。

■「どこまで五輪を逆風にさらすつもりか」と産経社説

森氏は産経新聞社のOBである。その産経の社説(主張)の批判も甘くはない。

「どこまで東京五輪・パラリンピックを逆風にさらすつもりか」と書き出し、「いかにも女性を見下ろした森氏の物言いが、世論の強い反発を買ったのは当然だ」と指摘する。

森氏は自分が批判されている理由を理解していないと思うが、この点について産経社説はこう指摘する。

「森氏は誤解を生んだとして、4日に発言を撤回したが、問題の根本を分かっていない。世論が批判するのは、女性起用への森氏の認識に対してである。発言を『誤解』したからではない」

■なぜ産経社説は森氏の辞任をストレートに求めないのか

産経社説は森氏の状態について「野放し」と非難し、組織委とJOCの責任を追及する。

「角が立つ物言いを、世間が受け入れたわけではない。森氏がトップに立つことが開催機運の障害となっている現実を、組織委は自覚してほしい」
「JOCも同罪である。臨時評議員会では、森氏の発言をとがめる声は出なかった。山下泰裕会長が5日になってやっと発言を疑問視する見解を示したのは、当事者意識の深刻な欠如を物語る」

最後に産経社説はこう主張する。

「ただでさえ、新型コロナウイルス禍が広がる中での五輪開催準備には批判が強い。組織委やJOCには猛省を求めたい。これ以上向かい風が強まれば、開催への機運は本当にしぼんでしまう」

産経社説は森喜朗元首相の失言や暴言を許してきた周囲にこそ問題があるとの見解を前面に打ち出す。なぜ朝日社説のように森氏の辞任をストレートに求めないのか。森氏は産経新聞社の出身で、同紙も責任のある「周囲」のひとつだ。産経社説は森氏の辞任を明確に求めるべきである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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