「8000万円のマンションはムリ」それでも新築物件を買いたい人に教える3つの妥協条件
プレジデントオンライン / 2021年2月17日 9時15分
■転勤、離婚、介護、引っ越し…「値下がりしにくい」は必須
家を買う時に最も重要な条件は価格だ。首都圏のマンション価格は2011年比で1.5倍に高騰した。今後も価格が上がることは必至なので、待っていたら損をするだけだ。そこで、予算の範囲に収めながら、失敗しないマンション選びをするにはどうしたらいいか、それが今回のテーマだ。譲歩してもいいポイントは3つある。これを理解して、うまいことマイホームを手に入れよう。
妥協してもいいことと悪いことがある。何も気にせず好きなものが欲しいなら、それでもいい。しかし、マンションは大きく値下がりすると売れなくなる。そうなると、転勤も離婚も介護も引っ越しも容易ではなくなる。そこで、値下がりしにくいマンションを選ぶという資産性の観点からは、妥協点は3つしかない。
■3つの妥協点「面積・築年数・駅」
1つ目は、面積だ。価格はほとんど立地×面積で決まる。立地を譲るのは最も資産性に響くので、慎重を期す必要がある。そこで最も簡単に譲れるのは面積になる。マイホームを買うのに面積を譲れとは本末転倒と思われるかもしれないが、資産性を第一に考えるという前提ではこれが一番手っ取り早く、確実な方法になる。
2つ目は、築年数だ。築年数が経過すると、物件の価格は下がる。予算に合わせるには立地を変えずに、築年数を古くする。その際の上限は築20年と忠告している。築年30年以内の物件で新築時に価格が安かった時期は今から15~20年前になる。その当時は、建築費が最安だったので、面積も広く、設備もふんだんに付いていた。この時期が最も基本仕様がいいのだ。これ以前になると、築年なりの残念な物件になりがちだ。だからこそ、築20年までは視野に入れることをお勧めする。
3つ目は、お買い得駅を選ぶことだ。私はマンションの資産性の専門家だ。私の推奨する物件は価格が高い。なぜなら資産性が高い物件の法則に従うと、「都心・駅近・大規模・タワー・ファミリータイプ」となり、足もとではこうした物件は、「億ション」になりかねないほど価格が高騰しているからだ。そこで、価格が安いわりに資産性が高いところはないかという話になる。一般の会社員でも買える範囲で最もよい物件を教えてほしい、というニーズにはこれで応えることになる。
■会社員が狙うべきは「割と資産性があって、価格が安いところ」
こうした狙い目の駅は相場価格が安いが、資産性が高い。この資産性は新築物件毎に住まいサーフィンというサイトで「儲(もう)かる確率」として無料公開している。過去のほぼすべての新築マンションの価格変化を調べると、中古になって含み益が出た物件を特定できる。その発生確率を「儲かる確率」と称しているのだ。儲かる確率が50%で築年の資産下落率は年2%になる。これが相場に変動がない場合の標準的な資産下落率になる。
一方、住宅ローンの元本の減り方は低金利下で2%以上になるので、この確率以上の物件を購入すると、価格が下落して売れなくなるという可能性は低くなる。「儲かる確率」が70%になると資産下落率は1%になり、毎年1%以上元本を多く返していることになるので、10年後に売却する際には10%の現金が増えて返ってくることが期待できる。そして、儲かる確率が90%ほどになると資産下落率は0%になり、コストは物件の管理費などだけで済むことになる。
つまり、資産デフレしないということだ。こうなると、都心の好立地だけなので、一般の会社員に手が出る金額にはならない。狙い目は儲かる確率70%程度の割と資産性があって、価格が安いところになる。
■同じ有楽町線でも、豊洲駅は高いが辰巳駅は安い
こうした立地には分かりやすい特徴がある。都心のオフィス街にアクセスが良いが、土地価格が安かったところだ。オフィスは都心3区(千代田区・中央区・港区)に50%超、都心5区(都心3区+渋谷区・新宿区)に3分の2が存在する。多くの人がここに勤めていて、職住近接を望んでいる。現在はコロナ禍でリモート全盛だが、この感染症が収まれば、以前の職住近接に回帰する。マイホームは10年スパンで考えるものなので、一過性の問題に気を取られない方がいい。
都心へのアクセスがいいというのは、沿線としては、日比谷線や銀座線や東西線や有楽町線などを思い浮かべればいいだろう。都心へ1本、20分程度で行けるところならば、入居者ニーズがあるのだ。
日比谷線なら、上野駅より北の入谷・三ノ輪・南千住・北千住駅などになる。銀座線も上野の先の稲荷町・田原町・浅草駅まで有望になる。東西線は江戸川区の資産性はイマイチだが、江東区ならかなりいい。有楽町線では豊洲の価格が既に高いが、その先の辰巳駅など安いが資産性はある。辰巳駅は21世紀になって東雲キャナルコートという大規模再開発がされてから、湾岸エリアの一角を形成するに至ったが、元々は倉庫や都営住宅が多く、人気が高いとは言えない場所だったが、今や豊洲の隣駅として台頭している。
■「隅田川の外側」大江戸線が狙い目
2020年の首都圏平均新築価格は6000万円の大台に乗った。これは1990年以来だ。新築で7000万円程度で買える駅は70平方メートルなら、坪単価300万円程になる。これなら、隅田川の内側ではもう購入できなくなった。外側の代表格が大江戸線だ。
大江戸線は多くの駅で別路線と交差している。例えば、城東側の門前仲町、清澄白河、新御徒町、森下、蔵前駅が代表格となる。1つの駅で2路線使えるのは資産性の点で非常にアドバンテージがある。なぜなら、路線が増えた分だけ通勤先のオフィスが増え、入居者ターゲットを増やすからだ。だからこそ、「自分は使わない」とか、「ホームまで深すぎる」とか、「車両が狭い」とかは気にする必要はない。信号や渋滞に無縁な電車はバスとは比較にならない利便性を有していると考えた方がいい。
通勤では時間距離というのも重要な決め手になる。東神奈川駅は横浜駅の1つ東京寄りの京浜東北線なので、東海道線で横浜駅に行くよりも距離のわりに乗り換えが必要で不便かもしれない。しかし、この1駅違いで価格が横浜より大幅に安くなるのでお買い得になる。このパターンは尾久駅にも当てはまる。山手線に隣接するJRの駅にしては有名ではないが、立地はほぼ山手線だし、都心への時間距離は極端に短い。こんな場所は格好の狙い目になる。
■都営新宿線、総武線、京浜急行線に注目
次に着目するのは、マイナー路線だ。その代表格は、都営新宿線だ。2000年以降、森下駅で大江戸線が、住吉駅で半蔵門線が開通したことで、その周辺の駅である菊川駅も西大島駅も資産性を高めた。
こうした城東の見直され方にあやかるのが、総武線の両国駅・錦糸町駅・亀戸駅などである。総武線はJRの老舗路線だが、人気路線ではない。この他、京浜急行線の品川区アドレスもチャンスだ。代表駅としては、立会川駅がある。南口には競馬場があるが、品川駅に近く、羽田空港にも急行停車駅でアクセスがよいわりに、安い価格帯が人気の要因だ。京急沿線では北品川や新馬場駅も品川のリニア開通の恩恵を受けそうで、資産性が維持されている。
こうしたやや意外な資産性のある立地に脚光が当てられるのは、持ち家の家族構成が小さくなっていることが影響している。
以前は、田園調布や成城学園前のような西側の高台の好立地がいいとされたが、今は共働きや子ども1人家族が増え、通勤アクセスの方が重視されるようになった。こうした少人数世帯は賃貸市場に近い住まいの選び方をする。家賃はアクセスのいいところほど高いが、その傾向が持ち家市場にも入ってきて勢力図が上記のように変わってきているのだ。そう考えると、その地殻変動が終わる前にその傾向を先取りした方が得をするというわけである。
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スタイルアクト代表
1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。監査法人トーマツ系列のコンサルティング会社、不動産コンサルティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』(朝日新聞出版)など多数。分譲マンション情報サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/)、独身の住まい探し情報サイト「家活」(https://iekatu.com/)を運営している。
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(スタイルアクト代表 沖 有人)
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