受験で志望校に落ちた子には「いい学校に決まって良かったね」と言うべきだ
プレジデントオンライン / 2021年2月19日 11時15分
■第1志望校に進学できる子は「全体の約3割」
首都圏の中学受験が幕を閉じ、コロナ禍で戦った受験生たちも4月からの進学先が決まったことだろう。めでたく第1志望校に合格した子、惜しくも第2、第3、第4志望校に進むことになった子、残念ながらすべての学校が不合格で公立中学に通うことになった子など、結果はそれぞれ。
でも、学校説明会などで実際に学校へ足を運び、そこで感じた校風や生徒たちの様子を見て、「この学校いいな」と納得のいく受験校選びをしていたなら、たとえ第1志望に進学することができなくても、前を向いて歩いていけるはずだ。実のところ、中学受験で第1志望校に進学できる子は全体の約3割で、その他大勢の子はそれ以外の学校へ通うことになる。大事なのはそこからどう伸びていくかだ。
■「ざんねんな学校」に進学したと思うと、成績が下がる
難関校に強い大手進学塾に通う子供たちにとって、偏差値40台の学校は“ざんねんな学校”と思われている。でも、実際はその“ざんねんな学校”に進学する子は少なくない。そういう子は、入学後、「俺、開成受けたんだけどなー」「本当なら麻布に受かるはずだったのにな」と、難関校を受験したことをアピールしたがる。何で俺がこんな学校に行かなければならないのだ、とさも言いたげに。
だが、残念ながらそういう子は、中学に入ってから伸び悩むことが多い。入学時点では高い学力を持っているが、自分にとっては第3、第4志望にあたるその学校やそこに通う生徒をバカにしているところがあり、なめているからマジメに頑張ろうとしない。そうこうしているうちに成績が徐々に下がり、気がつくと最下位に。そこから浮上することができず、暗い海をさまよう深海魚のような状態になる。
一方、その学校を第1志望校として受験した子は、頑張った成果を実感し、やる気に満ちているので、その後も努力を惜しまない。両者の逆転劇は、入学後わりと早く見ることになる。
■いい学校の条件は「居心地の良さ」
中学受験を終えたら、どんな結果であれ、親は「いい学校に決まって良かったね」という言葉を渡してほしい。その言葉があるかないかで、その後の子供のモチベーションが変わってくるからだ。“ざんねんな学校”と思ってしまう子供は、おそらく親が常に偏差値ばかり気にしていたのだろう。子供は親を見て育つ。親が「偏差値の高い学校=いい学校」、と思い込んでいたら、子供もそう思うようになる。だが、“いい学校”とは、実際に通ってみなければ分からない。
私は“いい学校”と思える条件は、居心地の良さだと考える。そう思えるようになるには、先生とのコミュニケーションが取れていること、友達がいること、そしてその学校で安心できるだけの成績が取れていることだ。安心できるだけの成績の目安は、上位3分の1に入っているか。ここがクリアできていると、「自分にとって居心地のいい場所=いい学校」と思えるようになる。人は安心できる場所があると、失敗を恐れずにチャレンジできるようになる。学校も同じで、その子にとって“いい学校”であれば、どんどん伸びていく。
■なによりも大切なのは「勉強をおろそかにしないこと」
進学した学校を“いい学校”と思えるようになるためには、勉強をおろそかにしないことだ。中学校の勉強は、小学校の勉強とも、中学受験塾の勉強とも違い、新しい学び方が必要になる。はじめはやり方が分からず、1学期の中間テストや期末テストで思うような点が取れない子もいるだろう。だが、ここでいじけてはいけない。得点が取れなかった原因を考え、夏休みまでには立ち直れるようにしておきたい。この段階で立て直しをすることができれば、その後に成績が伸びていく可能性は十分にある。
「今回はたまたま悪かっただけ。次は大丈夫」と安易に捉えてしまうと、次も必ず成績が下がる。成績が下がると、勉強に対するモチベーションも下がる。また、この年頃の子供は自己肯定感が低くなりがちだ。「どうせ僕なんか」とやさぐれた気持ちになる。そうなってしまうと、なかなか挽回することができなくなる。
■最初は「スケジュール管理」のサポートが必要
では、中学に入学したら、どのように勉強を進めていけばよいのか?
中学受験は、満点を取って合格する子はほぼ皆無で、100点満点中7割が取れていれば合格できる世界だ。でも、中学の勉強は、中間テスト、期末テストで100点を取ることが目標になる。100点を目指すには、どこからどこまでの範囲を覚えなければいけないのか、どういう答案の書き方をしなければいけないのかなどを、丁寧に見ていく必要がある。つまり、勉強のやり方を変えていかなければいけないということだ。
また、学習のスケジュール管理も自分でやらなければならない。中学受験では親のサポートが不可欠だったが、これからは自分でスケジュールを考え、計画的に勉強を進めるのだ。
そういうと、「では、もう一切口を出さない方がいいのだな」と、いきなり手を離してしまう親がいるが、それはまだちょっと早い。入学直後は、親がアドバイスをしながら、子供がスケジュールを作り、やってみて、その結果を振り返り、修正していくのがいいだろう。そうやって、トライ&エラーをくり返していくうちに、自分なりの学習習慣が確立していく。
■「夏休み明けのテスト」までが勝負
自分なりに勉強してきたけれど、成績が伸び悩んでいるという場合は、今の勉強のやり方が間違っていることが考えられる。例えば算数から数学へ変わったところの理解ができていなかったり、英単語の覚え方が分からなかったりと、何かしらの原因が考えられる。そういうときは、親が一緒になって考えてあげるといいだろう。特に数学や英語のように中学から本格的に始まる教科については、はじめの段階で苦手にしないことが大事だ。
最初にひどい成績を取って、慌てて塾に入れてしまう親もいるが、中1の段階で塾に入れることは、あまりすすめない。なぜなら、この痛い経験が、自ら立て直す力をつける絶好のチャンスだからだ。中学の最初で思うような成績が取れないと焦ったり、投げやりになったりしてしまいがちだが、そういうときこそ、どのようにすればうまくいくのかを考えさせてほしい。自分で修正できるようになれば、必ず成績は上がっていく。
だが、そのタイミングを間違えてはいけない。夏休み明けのテストまでには整えておくことだ。それを過ぎてしまうと、勉強に対する苦手意識が生まれてしまう。
■高校受験で上位を狙うなら、100%を目指す
中学受験にチャレンジしたものの、中にはすべての学校が不合格で、公立中学に通う子もいる。今はどこの塾でも受験校は偏差値の幅を持たせるように指導があるはずだから、「本当に行きたい学校に受からなければ、公立中でいい」と考える家庭の子が、受験校を絞ったために、結果、公立中に進むというケースが多い。そういう子はある程度学力があるので、高校受験でトップ校を狙う。
高校入試は難問の割合は多くない。公立高校の入試は、教科書の範囲内にとどまっている。開成高校など私立の難関校でさえも、教科書範囲が半分を占める。だからこそ、高得点勝負になる。高校受験で上位を狙うのであれば、学校のテストでは100%を目指す勉強をすることだ。教科書の内容を確実に理解し、テストで再現できるかが重要になる。そのためには日頃から丁寧な学習を心掛けよう。
「高校受験でリベンジ!」と気合を入れる必要はない。中学受験を経験している子は、スタート時点ではかなりリードしているので、すぐに塾に行かなくてもいい。受かるはずだった学校が落ちてしまった子は、実力があるのに焦って解けなかったなど、本番に弱いことが考えられる。そういう子に「今すぐ頑張れ!リベンジだ!」と言うと、それに応えようと頑張るものの、プレッシャーから同じような失敗を繰り返してしまう。そうした場合、「今回は残念だったけれど、また6年間地道にやっていこうね」と声をかけてあげてほしい。この言葉には、「地道」=「今すぐじゃなくていい」、「6年間」=「焦らなくていい」の意味が込められている。
■小6の学力で人生が決まるわけではない
今の時代、中学受験をするのなら、小学4年生から塾通いを始め、そこから3年掛けて準備を進めていくのが一般的だ。小学校生活の半分が受験勉強に費やされてしまうとなると、なんとか良い結果を出してほしいと親は願う。だが、6年生の現段階の学力で、子供のその後の将来が決まってしまうわけではない。
中には第5、第6志望だった学校に通う子もいるだろう。目指していた学校よりも偏差値が15以上も低い学校へ通うようになったとしても、悲観する必要はまったくない。受験したのは、その学校の魅力を一つでも感じていたからであり、そこで大きく伸びる可能性は誰にでもある。大事なのは、その学校を“いい学校”と思えるようになることだ。そのためには、安心できるだけの成績を目指すこと。
入学時点の成績はあまり気にする必要はない。中学に入学したら、みんな同じスタートラインに立つ。大事なのはそこからだ。そこからどう走るかで、6年後に見る景色は変わってくるだろう。
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プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。
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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)
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