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三浦瑠麗「森失言問題で日本は変われるか」

プレジデントオンライン / 2021年3月19日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ronstik

■森失言問題により日本が変わるきっかけになればいい

森喜朗元総理の発言が女性蔑視とされて炎上し、結局、五輪組織委員会会長を辞任。後任には橋本聖子氏が就き、五輪担当大臣は丸川珠代氏が就任した。

この問題についてはいくつかの媒体にすでにコメントしたので、あまり多く語るものがあるわけではないが、メディアを含め、これで日本が変わるのか変わらないのかのほうに関心がある。

森発言よりひどいものはまだまだたくさんあるので、それを放置して政局に終始するならば問題だ。他人の「暴言」を批判するのにコストはかからない。人は結局、何を言うかより、どう行動したかで測られるべきものだと思う。

森発言については、当初の想定よりも国内の怒りが根深かったといえる。ふだん何かあるとすぐ辞任を求める人々だけでなく、社会に嫌気する声が広がったということだ。森発言を「空気の読めない変な人」として流すのではなく、人口の半分を占める女性に対して無理解であってはいけないとする風潮が出来上がった。その風潮に多くのメディア人やコメンテーターが乗った。森さんの辞任を招いたのは国際的圧力だけではなかったと思う。

御年83歳、生まれは戦中であり、女性は嫁しては夫に従うのが美徳とされた風潮で育った人に、変化を求めても難しい側面はあるだろう。一方で、同じく高齢のバイデン米大統領も過去の言動が批判を受けているが、ちゃんと軌道修正ができているのだから、人による。そもそも、日本では党派を問わず、多くの人々が女性問題に関して穏健リベラルな価値観を持つに至っている。女性問題は党派的な対立ではなく、アップデートできた人々とできなかった人々の違いにすぎない。

■合意形成や討議のやり方が変わるべき

「森さんの能力は高い、余人をもって代えがたい」と擁護する意見も多く聞かれる。根回しと交渉力のなせる業だろう。けれども、オリンピックや各種競技の理事会が独裁的でよいのか。ひとりの才能ある個人に任せて異論は封じるやり方では、進歩は望めない。女性の件を脇に置いたとしても、合意形成や討議のやり方が変わるべきときにきていたということだ。

ただ、男女平等の運動について付言しておくと、男女が完全に平等な社会になったときにトップに立つ女性がいわゆる「リベラル」である保証はまったくない。現に欧州でも先駆けて極右政党が連立政権入りしたノルウェーでは、極右政党の顔に女性がずらりと並ぶ。だから性別ばかりが話題になっていること自体、過渡的な事象だということだと理解しておいたほうがいいと思う。

社会がなすべきことは、女性を組織の中でしっかり育てること。そして常に多様性を取り込み、組織自身の力を強化すること。森発言がそのようなプラスの方向性に転じるきっかけになるといいと思う。

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三浦 瑠麗(みうら・るり)
国際政治学者
1980年、神奈川県生まれ。神奈川県立湘南高校、東京大学農学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。著書に『21世紀の戦争と平和』(新潮社)、『日本の分断』(文春新書)など。

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(国際政治学者 三浦 瑠麗)

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