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「ついに軍事費でアメリカ超えか」中国の軍隊が世界最強という絶望的状況

プレジデントオンライン / 2021年3月13日 11時15分

2021年3月10日、中国・北京の人民大会堂で開催された中国人民政治協商会議(CPPCC)の閉会式に出席する習近平国家主席、李克強首相ら。 - 写真=EPA/時事通信フォト

■中国の軍事費は日本の防衛費の4倍以上に相当

中国の国会に当たる「全人代(全国人民代表大会)」が3月5日から11日まで北京の人民大会堂で開かれた。

政府活動報告で、李克強(リー・コーチャン)首相は2021年の国内総生産(GDP)の成長率目標について「6%以上に設定したことを明らかにしたが、2025年までの新5カ年計画の成長率目標は示さなかった。

中国は「新型コロナに打ち勝った」とアピールするが、やはり現実は厳しく、パンデミック(世界的大流行)と長期化するアメリカとの対立から先行きに危機感をもっているのだろう。

それでも公表された軍事費(国防費)は過去最大規模である。前年比6.8%増の1兆3553億元(22兆5000億円)だ。伸び率は昨年(6.6%)を上回る。アメリカに次ぐ世界第2位の規模の予算で、アメリカに対抗する軍拡路線が巨額な軍事費に表れている。

ちなみに日本の2021年度予算案の防衛費は5兆3422億円。中国の軍事費は日本の防衛費の4倍以上にもなる。単独で中国と正面から戦うことは難しい。

■実際の中国の軍事費は公表の数字をはるかに上回るはず

軍事費の内訳は明らかにされていない。中国の軍事費には海外から調達した高額な軍事装備品の購入費は含まれていないといわれ、実際の軍事費は公表された数字をはるかに上回るはずだ。

たとえば、上海で建造されている空母は艦載機の発艦能力を向上させるための「電磁式カタパルト」を装備しているとみられ、建造費は総額で1兆円にも上るという。

アメリカの国防総省の報道官は3月5日の記者会見で「中国が公表した軍事予算は不透明だ。全人代で巨額の軍事費を何に使っているのかを具体的に説明する必要がある」と中国政府に求めている。

習近平(シー・チンピン)政権は昨年秋の中国共産党の会議で、「軍創設100年」の2027年を中国軍の対アメリカ戦力強化に位置付け、戦闘能力を高めることを決定している。経済成長が鈍っても軍拡の路線は変えないのが、習近平国家主席の国家戦略なのである。

その戦略によって大きな貧富の格差が生まれ、下層の多くの国民の生活が犠牲になっている。周辺の国々の中国に対する脅威も増すばかりで、偶発的な衝突が有事に発展する危険性がある。

■香港民主派は中国の愛国者ではない「反中勢力」に

王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は7日、全人代に絡めてオンラインで記者会見した。

王氏はまず、香港から民主派を排除する選挙制度の見直しが全人代に提案されたことに触れ、「わが中国に対する忠誠は、選挙で公職に選ばれる者が従わなければならない政治的な倫理である」と強調し、選挙制度の見直しを正当化した。

この見直しは、香港政府トップの行政長官や立法会(議会)議員の選挙への立候補には「中国の愛国者」であることを条件とするもので、一国二制度のもとで自由と民主主義を求める香港民主派は中国の愛国者ではない「反中勢力」とみなされる。

選挙制度の見直しは全人代最終日の11日に採決され、賛成2895、反対0、棄権1で正式に決定した。

2011年12月、北京を行進する中国兵たち
写真=iStock.com/hanhanpeggy
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hanhanpeggy

新たな選挙制度は、表向きは中国という国の発展を願う中国人民の象徴のようにみえるが、実情は共産党の一部幹部を利するための制度である。一党支配をさらに強固にするものだ。

■香港や台湾などの問題で妥協しない姿勢を誇示

習近平国家主席は金融市場でグローバルに発展してきた香港を完璧に手中に捉え、中国経済に巨額な富をもたらそうと画策している。

こうした中国の香港民主派の排除の姿勢に対し、国際社会からは批判の声が上がる。しかし、中国政府は「香港の選挙制度の見直しは全人代の権限だ。これによって愛国者による香港統治を堅持する」と強く反論する。

7日の記者会見で王毅氏は、アメリカのバイデン政権に対し「核心的利益を犯されることは絶対に許さない」と強く語り、香港や台湾など主権に関わる問題で妥協しない姿勢を示した。中国に対するアメリカの制裁関税についても「中国とアメリカの協力の妨げとなるような措置は速やかに解除すべきだ。今後も新たな妨げを作ってはならない」と話した。

中国の横暴さはとどまるところを知らない。沙鴎一歩はこの連載で、中国を批判し、戒める記事をたびたび書いてきた。最近では「『台湾は必ず防衛する』中国の挑発に対してバイデン新政権が示した本気度」(2月2日付)、「習近平政権は『クーデターのミャンマー』を支配下に置こうと企んでいる」(2月13日付)、「『漁船いじめが激増中』中国から尖閣諸島を守るために日本政府がやるべきこと」(3月4日付)が、それに当たる。

香港、台湾、ミャンマー、そして尖閣。習近平政権は力によって次々と抑えつけようと動いている。いまの中国政府は、経済、政治から軍事まで世界制覇を企んでいる。だから軍事費を増やし、軍拡路線を歩んでいるのだ。

「ならずもの国家」と国際社会に強く批判されても核・ミサイルの開発を止めようとしない北朝鮮と同じ、いや、それ以上にしたかたで手ごわい脅威の国家である。

■「中国の軍事費は、世界でトップの可能性がある」

「中国の国防費 軍拡が不信の連鎖招く」との見出しを付けた3月7日付の朝日新聞の社説は、次のように書き出す。

「中国の唱える『平和発展』をどう信じろというのだろうか。これほど軍拡を続けるのは、なぜなのか。周辺国の不安と警戒が高まるのは当然である」

公表された今年の中国の軍事費は世界第2位だ。しかも国外からの装備費を含めると、世界でトップの可能性がある。各国を軍事力で脅し、ひざまずかせたいのである。軍事力だけでない。経済力を駆使し、相手国を助けるように見せかけ、中国なしではその国の運営が成り立たないようにしてしまう。巨大経済圏の一帯一路に甘んじている国々はそのうち中国の怖さを思い知るはずだ。

朝日社説は指摘する。

「李克強首相は『国家の主権、安全、発展利益の堅守のための戦略能力を高める』という。しかしもはや到底、専守防衛とはいえず、予算の内訳も不透明だ。脅威の下にあるのは中国ではなく、周辺国の側である」

「非専守防衛」「不透明な国防費」は世界に脅威を与える。裏を返せば、そこが習近平政権の狙いでもある。

■朝日社説「不信の連鎖が招く軍拡競争の激化を深く憂慮する」

朝日社説は「米国防総省は昨秋の報告書で、中国海軍の艦艇数がすでに米海軍を上回ったと指摘した。人工知能やサイバー、宇宙などの新たな分野でも技術の発展は著しく、核弾頭の数も着実に増えているとされる」とも指摘し、こう解説する。

「目的は何か。習近平国家主席は4年前、今世紀半ばまでに中国軍を『世界一流の軍隊』にするとの目標を掲げた。昨秋は、建軍100年に当たる2027年までの『奮闘目標』も訴えている。いずれも、米国と均衡する軍事力を段階的にめざそうとしているとみられている」
「実際の軍の動きも危うさを増している。南シナ海では、演習や新型ミサイル実験を活発化させている。台湾への挑発的な動きも目立ち、米中の軍事的な緊張が高まりつつある」
「不信の連鎖が招く軍拡競争の激化を深く憂慮する」

軍拡競争の行きつく先は戦争である。過去の歴史を見ればよく分かる。

アメリカ海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」
写真=iStock.com/michaelbwatkins
アメリカ海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/michaelbwatkins

最後に朝日社説は「必要なのは、地域の緊張緩和に向け、軍縮や軍備管理の国際連携に主導的にかかわっていくことだ。武力を誇示するばかりの大国主義は決して尊敬されず、平和と安定も築けない」と主張するが、習近平政権が国際連携で主導的役割を果たせるとはとても思えない。残念だが、朝日社説の理想に過ぎず、絵に描いた餅だ。

■「人権弾圧を進め、領土拡張を図る中国の強権ぶり」と産経社説

3月10日付の産経新聞の社説(主張)は王毅国務委員兼外相が全人代の開催に合わせて行った記者会見を取り上げ、「王氏は、新疆ウイグル自治区でのウイグル人弾圧に対し米国などが『ジェノサイド(民族大量虐殺)』と批判していることを『徹底したでたらめで完全に下心があるデマだ』と断じた。台湾、香港、南シナ海問題などを含め中国の『核心的利益』を断固擁護する姿勢を示した」と指摘したうえで、次のように訴える。

「国際社会の理解を得られぬ強弁である。強気をみせようとすればするほど、習政権が国際社会との間にどれだけ多くの対立の火種を抱えているかが浮き彫りになる。これらの地域・海域で起きていることは、人権弾圧を進め、領土拡張を図る中国の強権ぶりを露骨に示すものばかりだ」

産経社説は習近平政権の正体を見抜いている。習近平氏がこの産経社説を読んだら、あの冷静な表情を大きく歪め、怒りをあらわにすることだろう。

■国際社会に背く中国は東京五輪の不参加を表明すべき

産経社説はさらに指摘する。

「王氏は東京五輪と来年の北京冬季五輪を挙げ『中日両国民の友好感情を深め、中日関係の発展を促す機会にできる』としたが、日本国民の対中感情の改善を期待する方が無理である」

この際、国際社会に背く中国は東京五輪の不参加を表明すべきだ。日本だけでなく、多くの国の人々がそう思っている、と沙鴎一歩は思う。

さらに産経社説は「3期目を狙う習氏の正念場となる党大会の開催は来秋だ。安定が最も求められるこれからの時期、党内向けに強気をアピールする必要はあっても海外勢力との決定的対立は避けなければならない。王氏会見から垣間見えるのはこうした習政権の苦しい事情である」と解説し、最後にこう主張する。

「日本は、民主主義などの価値を共有する米国、オーストラリア、インド、欧州などと連携を強め、対中圧力をかけ続けるべきだ。非を改めるのは中国の方である」

まさしく中国の一連の行動は逸脱している。国際社会が中国に非を改めさせるべきである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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