「文章のプロが100冊読んだ最終結論」1文の最適字数と短く書くコツ
プレジデントオンライン / 2021年3月22日 9時15分
※本稿は、藤吉豊、小川真理子『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)の一部を再編集したものです。
■「シンプルに書く」とは、どういうことか
文章術の本100冊を精査した結果、もっとも多くの本に書かれていたのが、「文章はシンプルに」です。
「不要な言葉を省く」「簡潔に書く」「1文を短くする」「贅肉を落とす」「枝葉を切り取り幹だけを残す」など表現に違いはあるものの、「シンプルに書く」ことの大切さは、100冊中53冊に記されていました。
では、「シンプルに書く」とはどういうことでしょうか。53冊が伝えている内容を1文で要約すると、こうなります。
「なくても意味が通じる言葉を削る」
わかりやすい文章を書くには、無駄な言葉を使わず、簡潔に書くことが大切です。
投資家でビジネス書作家のムーギー・キムさんも、「小さなスマホの画面で文章を読むことが増え、情報がますます簡略化されるこの2020年代、少しでも長いと感じられたら、その文章はまず読まれない」(『世界トップエリートのコミュ力の基本』/PHP研究所)と指摘しています。
■多くのプロも心掛けている2つの理由
文章のプロの多くが、「シンプルに書くこと」をすすめているのは、おもに2つの理由からです。
(1)内容が伝わりやすくなる
無駄のない文章は読み手の負担を減らし、内容の理解をうながします。情報や言葉を思い切って削ぎ落とすと、主語(誰が)と述語(どうした)が近づくので、事実関係がはっきりする。また、書き手の「短い文(文章)で正しく伝える」という意識が高まり、「もっとも適した言葉」を選ぶようになるため、書き手の主張がはっきりします。
(2)リズムが良くなる
1文を短くすると、「リズム感」が生まれます。ジャーナリストの池上彰さんは、「短い文章を重ねることで、リズムが良くなるし、緊迫感も出てくる」(『書く力』/朝日新聞出版)と、短文の効用を述べています。
文字数の多い文(文章)ほど、文体の乱れが起きたり、文章の流れが悪くなりがちです。したがって、削っても文章の意味が変わらない言葉は省略するのが基本です。
■「というもの」「いたるところすべて」…なくてもいい言葉は多い
×悪い例
新型コロナウイルスというものは、人に感染する7番目のコロナウイルスです。世界中のいたるところすべてで、とても大きな被害が発生する状況が続いているのです。
○良い例
新型コロナウイルスは、人に感染する7番目のコロナウイルスです。世界中で大きな被害が出ています。
●新型コロナウイルスというものは→新型コロナウイルスは
「というもの」に実質的な意味はないので、削る。「という」の大半は削除しても意味が変わらない。
●世界中のいたるところすべてで→世界中で
「世界中」には、「いたるところすべて」の意味が含まれているため、類語の重複を避ける。
●とても大きな被害が発生する状況が続いているのです→大きな被害が出ています
まわりくどい表現をやめ、短く言い換える。
■シンプルにできる「削りやすい言葉」6つ
53冊の著者の多くが、「削りやすい言葉」の候補として挙げているのが、次の6つです。
(2)主語………「私は」「彼が」など
(3)指示語……「その」「それは」「これは」など
(4)形容詞……「高い」「美しい」「楽しい」「嬉しい」など
(5)副詞………「とても」「非常に」「すごく」「かなり」など
(6)意味が重複する言葉
●まず最初→最初に
●思いがけないハプニング→ハプニング
●馬から落馬する→落馬する
●はっきり断言する→断言する
●余分な贅肉→贅肉など
■一文を「60文字」以内に収めること
文章のプロは、例外なく「1文を短くする」ことの大切さを説いています。
では、「短く」とは、具体的に「何文字」を示すのでしょうか。
53冊の中には、「文字数の目安」を提示しているものもありました。その一部を紹介します。
●『ちびまる子ちゃんの作文教室』(貝田桃子)……40~60文字
●『仕事の「5力」』(白潟敏朗)……50文字
●『文章の書き方』(辰濃和男)……30~35文字
●『最新版 大学生のためのレポート・論文術』(小笠原喜康)……30文字以内(長くても40文字前後)
●『博報堂スピーチライターが教える5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(ひきたよしあき)……40文字
■分けて単純にして、つないでいけばいい
精査した結果、1文の長さは「60文字以内」が好ましいことがわかりました。
また、「80文字だと長すぎる」ことも、多くの書籍に共通する意見でした。
劇作家の井上ひさしさんが、「分けて分けて分けて、単純にして、それをつないでいけばいいんです。それが基本です」(『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』/新潮社)と述べていたように、短い文を積み重ねるのが文章の基本です。
「1文」が短くなれば、「文章」もおのずとシンプルになります。
×悪い例
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して、広く公平に課税されますが、生産、流通などの各取引段階で二重三重に税がかかることのないよう、税が累積しないしくみが採られています。(95文字)
悪い例は1文が長いため、2つの文に分けたのち、太字部分を削っています。「税が累積」を削ったのは、「二重三重に税がかかる」と意味の重複が見られるからです。
■50文字に収めても読みにくいケースは
文字数(1文60文字以内)を数えなくても、「ワンセンテンス・ワンメッセージ」を心がけると、文は自然と短くなります。
センテンスとは、「文」のこと。ひとつの文に入れる内容をひとつに絞ると、「一読で理解できる文」になります。1文の中に複数の情報が盛り込まれていると、1文が短くても、わかりにくくなります。
○良い例
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供に対して、公平に課税されます。(36文字)
生産、流通などの各取引段階で二重三重に税がかからないしくみが採られています。(38文字)
×悪い例
会議は明日の午前9時から、本社3階の第1会議室で行ない、新商品の販売促進プランについて話し合います。
○良い例
会議は明日の午前9時から行ないます。場所は本社3階の第1会議室です。新商品の販売促進プランについて話し合います。
悪い例は50文字。1文の目安となる「60文字以内」に収まっています。ですが、3つの内容(①開始時間/②場所/③議題)が含まれているせいで、読みにくさを感じさせます。
伝えたい情報ごとに文を整理したのが良い例です。簡潔にまとまっていて、伝わりやすくなっています。
文を頭から読み進めたとき、「読み返さなくても理解できる」のであれば、長さにこだわる必要はありません。ですが、長い文は総じてわかりにくくなりやすいので、文章のプロは、「短く削る」ことを強調しています。
読み手に心地よく読み進めてもらうためには、冗長さ(長くて無駄が多いこと)をなくす工夫が必要です。
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株式会社文道 代表取締役
有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて、自動車専門誌2誌の編集長を歴任。 2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。文化人、経営者、アスリート、グラビアアイドルなど、インタビュー実績は2000人以上。 2006年以降は、ビジネス書籍の編集協力に注力し、200冊以上の書籍のライティングに関わる。大学生や社会人に対して、執筆指導なども行なっている。
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株式会社文道 取締役
「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。日本女子大学文学部教育学科卒業。編集プロダクションにて、雑誌や企業PR誌、書籍の編集・ライティングに従事。その後、フリーランスとして、大手広告代理店の関連会社にて企業のウェブサイトのコンテンツ制作に関わり、仕事の幅を広げる。 現在はビジネス書や実用書、企業をクライアントとするPR誌などの編集・執筆に携わる。子ども、市井の人、イケメン俳優、文化人など、インタビューの実績は数知れず。得意なジャンルは「生活」全般、自己啓発など。 自ら企画編集執筆に携わった本に『親が倒れたときに読む本』(枻出版社)がある。近年は、ライティング講座にも力を注ぐ。
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(株式会社文道 代表取締役 藤吉 豊、株式会社文道 取締役 小川 真理子)
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