なぜ「出身地や趣味が同じ人」とは恋に落ちやすいのか
プレジデントオンライン / 2021年4月20日 9時15分
■恋に落ちると、人間は「ホルモンの操り人形」になる
誰かを素敵だなと思うと、また会いたいという気持ちが起きる。会えない期間が続くとつらくなって、でも再会すればドキドキして幸せを感じる──恋に落ちたとき、私たちの体にはどのような現象が起きているのだろうか。
「恋というのは、ホルモンに操られている側面がありますね」
と話すのは、脳にまつわる最先端の研究を行う生理学研究所名誉教授の柿木隆介氏だ。
「出会いから恋愛初期、やがて恋人として付き合い、結婚するまでのステージで、分泌される主要なホルモンは変化します。最初は男性ホルモンと女性ホルモンが互いを惹きつけあうのです。男性であれば、男性ホルモンがたっぷり分泌されている人が女性にもてやすい。逆もまた然りで、女性ホルモンが多い女性は、男性を惹きつけます」
そして次に、恋に落ちると脳内ホルモン「アドレナリン」が分泌される。
「好きな人に会う前はドキドキするでしょう。あれはアドレナリンの分泌によって脈拍が速くなるからです。血圧が上がって頬に赤みがさし、瞳孔が開きます。黒目の部分が大きくなるんです。男女ともに黒目が大きい異性に惹かれる傾向にあります」(柿木氏)
■「恋愛とは、生理的報酬を受け取ること」
好きな人に会えて告白された、キスをしたなど“幸せなこと”があると、今度は快楽ホルモンといわれる「ドーパミン」が出て一層ハッピーに。
東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授によると「恋愛とは、生理的報酬を受け取ること」だという。
「好きという気持ちが起きて、何かが達成されると、生理的報酬を受け取る=ドーパミンが分泌されます。実は、絵画などの芸術作品を見たり、人の美しい行動によってもドーパミンが分泌され人に充足感をもたらしますが、それは社会的報酬といわれ、恋愛とは区別されると考えられています」
アドレナリン、ドーパミンが分泌される時期は、いわゆる“恋に盲目”の状態だ。ドキドキ感があって快楽を伴い、相手に夢中になる。同時に、フラれるのではないか、誰かに奪われるのではないかと、不安や焦りも起きる。
しかし、年月がたち、結婚して子供が生まれると幸せ・愛情ホルモンといわれる「セロトニン」「オキシトシン」が分泌されるようになり、落ちついた幸福感を味わえるようになるという。
■恋が芽生えやすくなる“2つの条件”
さて、男女ともに性ホルモン分泌は20代がピーク。だから若い男女は恋に落ちやすいが、一方で年を取るにつれて恋をしづらくなっていく。もう何年も恋をしていないという読者もいるかもしれないが、“2つの条件”が揃えば恋は芽生えやすくなる。1つは「非日常性」だ。
「いくら毎日通勤中に会う女性が美しいと思っても、それだけでは恋愛が進みません。何かきっかけというか、エピソードが必要でしょう。忘れものをした、パーティで話をした、友達の友達が自分の知り合いだったなど、恋愛小説やドラマではそのあたりがうまく描かれていますよね」(柿木氏)
もう1つは、「一体感」。出身地や趣味が同じだったり、ある目的に向かって一緒に頑張る、同じ物を食べるなど、「一体感が生まれると恋が芽生えやすい」(同)という。
■赤色を着た異性はデートに誘いたくなる
そしてもし、あなたに好きな人ができたら、相手に好意をもってもらうために「洋服の色」に目を向けるといい。
色彩専門家の南涼子氏(日本ユニバーサルカラー協会代表理事)は「男女ともに赤色を身に着けること」をイチ押しする。人は赤色を見ると、恋のドキドキに欠かせない、アドレナリンを分泌しやすくなるのだ。
「赤色を着た異性をデートに誘いたくなるという報告は多数あります。男性が赤い色を着ていると、地位が高く、将来成功する可能性が高いという印象を女性に与えます。一方で女性が赤色を身に着けると、セクシーで魅力的に見えるのです。海外の調査で、赤色の制服を身に着けた店員は、ほかの色を着ている人よりお客さんからもらうチップが多いという報告もあるのです」
女性にはピンクもお薦め。女性ホルモンの分泌を促進し、男性に柔らかい、きれいという印象を与えやすくなることが報告されている。
■グレーはコンクリートの色で何の感情も起こらない
一方で、避けたい色はというと、「グレー(灰色)です」と南氏。
「グレーはコンクリートの色で何の感情も起こしにくく、相手に印象を残しにくいのです。同様に、白や濃紺もお薦めできません。白は“汚してはならない”という緊張感を相手に与え、濃紺はお堅く地味で、ロマンスが生まれにくい。恋愛にはドラマチックな感情が必要で、それは色彩にあるのです」
仕事柄、色物の服を着ることが難しければネクタイや腕時計、バッグなどに取り入れるといいだろう。
印象に残る自分になるとともに、接触回数をあげることも大切。瀧教授は「人は繰り返し会い、その人の情報を得るほど好きになる」と話す。これを「単純接触効果」という。
■ずっとメールやリモートだと恋心が持続しづらい
コロナ禍で会えない時期が続いたカップルや片思いの人も多いかもしれない。実は、ずっとメールやリモートのみでの接触では、たとえカップルであっても恋心が持続しづらい。
「制約があって会えない期間が続くと、アドレナリンやドーパミンは出やすく、ドキドキ感の恋が長持ちしやすいかもしれません。それでもあまりにも長期間会わなければ、スキンシップが必須であるオキシトシンやセロトニンが分泌されませんから幸せを感じられず、恋に挫折してしまう可能性も。アドレナリンが出るほど好きではないけれど、身近にいる人に心変わりしてしまうこともあるかもしれません」(柿木氏)
会えないストレスで、胃腸の調子に悪影響を及ぼすこともあるという。
■恋によって自分を高めると分泌される「恋のホルモン」
とはいっても、会えないときはどうしても会えない。そんなときは「自分磨き」に精を出そう。瀧教授は恋愛が持続するかどうかは「お互いの努力と、それぞれの魅力の度合い」だという。
「電話なら相手の声の抑揚が、ウェブなら表情やしぐさがわかる。息遣いまで感じるリアルに会うよりは情報が少ないとしても、何かしらの接触の努力をすれば“報酬”を受け取り、相手にもまた与えることができます。そして自分を磨いていれば、次に会ったときに会えない(報酬を受け取らなかった)期間を打ち消すほどの、大きなものを与えあうことができるでしょう」
恋によって自分を高めようと思うと、PEA(フェニルエチルアミン)という恋のホルモンが分泌されやすくなるといわれる。これはドーパミンと結びついて恋の高揚感が強くなり、新陳代謝を活発にさせる作用も。一層魅力的な自分になることで、好きな人のハートを射止められるかもしれない。
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ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。
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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)
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