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田端信太郎「抜群の成果を上げられる人が使っている"ある殺し文句"」

プレジデントオンライン / 2021年4月26日 9時15分

「田端大学」塾長の田端信太郎さん - 撮影=榊智朗

抜群の成果を上げられる人は、どんな言葉遣いをしているのか。LINE執行役員、ZOZOコミュニケーション室長などを務めた田端信太郎氏は「仕事はもちつもたれつの関係性でできている。『お願い上手』の人は、真の意味で成果を上げることができる」という――。

※本稿は、田端信太郎『部下を育ててはいけない』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■人間は短所に目が行きがちな生き物だ

人間というのは、とかく短所に目が行きがちな生き物である。

ある中小企業の経営者がコンサルタントから「あなたの会社の良いところを10個挙げてください」と質問されたところ、挙がってきたのはわずかに2、3個で、「うちの会社にいいところなんでありませんよ」と音を上げてしまった。

ところがコンサルタントが質問を変えて、「では、あなたの会社のここが弱い、というところはありますか?」と尋ねると、「いい人材がいない」「知名度がない」「これという技術がない」と次々と挙がってきた。私たちがいかに「自分に足りないもの」に意識が向きがちであるか、よくわかる。

自社の弱いところを認めることは大切ではあるが、「いいところなんか何もない」と経営者が言い切るような会社に、果たして明るい未来はあるのだろうか。

この経営者と同様に、「自分にはいいところなんか何もない」と思い込んでいる人は少なくないし、上司が部下を見る時も長所より短所ばかりに目が行き、ついつい注意したくなるということは多いだろう。

■「言いがかり」に屈する必要はない

こうしたタイプの上司は部下や取引先などがミスをすると、ここぞとばかりに責め立てる。私がかつて営業部隊を率いていた時、広告を掲載したにもかかわらず期待通りの成果が得られなかったからと、まるで当社に落ち度があるかのように責め立ててくるお客さまがいた。先方の言い分はこうである。

「お前ら、契約した通りの義務を果たせていないじゃないか。債務不履行だ。このままだったらお金は払えない」

これは明らかに言いがかりだ。

自分たちが事前に約束したことができていないとか、広告に大きなミスがあったということであれば、たしかにこちらに落ち度がある。その場合は金銭上の問題が生じるのも仕方のない。しかし、契約で定めた「やらなければならないこと」を、こちらがすべてやっている場合、期待通りの効果が出なかったとしても全責任を負う必要はない。

たとえば、商品自体に魅力がなかったとか、システムに問題があったとか、お客さまの側にも大きな原因があるにもかかわらず、一方的に「お前たちの落ち度だ、お金は払えない」と責め立てるのは明らかに誤りである。このような場合はたとえ相手が上得意様であったとしても、「御社とはもうお取引はしません」と以後の契約を打ち切ることになる。

これと同様、相手の落ち度を一方的に責め立てるリーダーは二流以下だ。そんなやり方をすれば、相手も売り言葉に買い言葉でケンカ腰にならざるを得なくなるし、たとえケンカに勝ったとしても、わだかまりが残る。

このような勝ち方をしても、得るものは少ないのである。

■「この会社はすごい」と思ったサントリーのやり方

こちらの落ち度を一方的に責め立てるお客さまに対する対応で、私が「この会社はすごいなあ」と思ったのがサントリーのやり方だ。

サントリーといえば、昔から広告宣伝に力を入れており、開高健さんや山口瞳さんといった著名な作家たちも同社の宣伝部の出身である。創業者の鳥井信次郎さん時代の「赤玉ポートワイン」のポスターも、時代を席捲したクリエイティブとしてよく知られている。

同社は年に1回、新高輪プリンスホテルの飛天の間で、夏のビール商戦を前にテレビや新聞、雑誌、ネットメディアの関係者などを招いて決起集会を開いて社長自らが挨拶に立つ。次のような挨拶が毎年恒例の風物詩である。

「私たちは宣伝の力を信じています。宣伝活動はサントリー1社だけでは完結せず、メディアの皆さん、広告会社の皆さんのアイデアや力が必要です」

ネットワーク
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■「宣伝」の重要性を熟知している

サントリーの成功の礎(いしずえ)は、今や世界からも高評価を受けるビールやウイスキーのブランドについては言うまでもないが、それと同じくらい「宣伝活動」が果たした役割は大きい。

社長は自社にとっての「宣伝」の重要性を熟知し、メディア各社と密接な協力体制を保つことを大切に考えている。この会における「宣伝活動の成功は、マスコミや広告会社など大勢の力があってこその賜物」という言葉を聞いて、関連企業は感激するはずである。そこに続けてトップはしっかりと、「軍資金もたっぷり用意しました」と付け加えるのだ。出席者にとって最もうれしい一言だ。

メディア関係者が会場で毎年こうした話を聞けば、「いつもお世話になっているサントリーさんのために、弊社としても何かしたい」と思うようにもなるわけだ。

■「お願いの姿勢」で来られると応援したくなる

私がLINEで広告営業の責任者をしていた時のことだが、サントリーが新商品の販促としてLINEでもスタンプなどいろいろと試みたものの、期待していたほどには成果が出なかったことがある。こんな時、イケてない企業は「お前の会社の責任だ。何とかしろ」とクレームを入れてくるところだが、サントリーを担当していたとある広告代理店からは次のような趣旨の連絡があった。

田端信太郎『部下を育ててはいけない』(SB新書)
田端信太郎『部下を育ててはいけない』(SB新書)

「LINEでもスタンプとかいろいろやっていただきましたが、キャンペーン対象であるサントリーの新商品が思ったほど売れていないらしいんです。それについてサントリーさんからクレームが来ているわけではありませんが、先方ご担当者さんもとてもお困りのようです。そこで、御社にお力添えを頂き、サントリーさんのために援護射撃ができないかなと思っています」

イケてない企業なら、ここで「こっちはお金を払っているんだぞ」ということを笠に着て「何とかしろ」と責め立てるが、サントリーのように「最初からお願いの姿勢」で終始一貫してこられると、一緒にプロジェクトを進めている関係者は、「何かお困りの時には、御社のために一肌脱ぎましょう」という気持ちになるものだ。

■殺し文句「助けてください」が言えるか

「相手と仲良くなるには、お願いごとをせよ」といわれる。

たいていの人は「お願いを聞いてもらうなんて、申しわけない」という遠慮から、誰かに何かを頼むのを躊躇しがちだ。しかし、そこで勇気を出して頼んでみると、意外と簡単に引き受けてもらうことができ、その依頼をきっかけとして付き合いの輪も広がるということがある。

世の中は多くの人の関係性で動いている。つまり見方を変えれば、誰もが何らかの特技を持ち、誰もが頼まれたいことを持っているとも言える。「こういうことが苦手なので、助けてください」と頼むのは相手の長所を生かすフィールドを用意することになる。

真の意味で成果を上げることができるのは「お願い上手」の上司である。仕事はもちつもたれつの関係性でできている。上手に人を頼ることのできる上司はたいていの場合、抜群の成果を上げることができるのだ。

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田端 信太郎(たばた・しんたろう)
オンラインサロン「田端大学」塾長
1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン「R25」を立ち上げる。2005年、ライブドア入社、livedoorニュースを統括。2010年からコンデナスト・デジタルでVOGUE、GQ JAPAN、WIREDなどのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進。2012年NHN Japan(現LINE)執行役員に就任。その後、上級執行役員として法人ビジネスを担当し、2018年2月末に同社を退社。その後株式会社ZOZO、コミュニケーションデザイン室長に就任。2019年12月退任を発表。著書に『これからの会社員の教科書』『これからのお金の教科書』(SBクリエイティブ)、『ブランド人になれ!』(幻冬舎)他。

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(オンラインサロン「田端大学」塾長 田端 信太郎)

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