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「脳には甘いものが必要」都合のいい言い訳で糖質をとり続けた人が陥る「最悪の結末」

プレジデントオンライン / 2021年4月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kateryna Novikova

「メタボの36歳」から一念発起。体脂肪率10%、血管年齢28歳を実現し、そして、58歳を超えた今もその状態をキープ……。テレビでもご存じ池谷敏郎医師が、40代で急速に進む「老化」を回避し、血管年齢はもちろん、見た目まで劇的に若返る方法をまとめたセブン‐イレブン限定書籍『内臓脂肪を最速で落とし、血管年齢が20歳若返る生き方』を刊行。同書より、その一部を特別公開する──。(第2回/全2回)

※本稿は、池谷敏郎『内臓脂肪を最速で落とし、血管年齢が20歳若返る生き方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■脳にダメージを与え、認知症のリスクを高める「高血糖」

人生100年時代を迎えています。「認知症にはなりたくない」と誰もが望んでいると思います。ところが近年、患者数が急激に増えていて、2015年の厚生労働省の発表によると、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症するといわれています。

糖尿病が認知症のリスク要因になることは、多くの研究で報告されています。とくに、食後高血糖が認知症の発症と強く関連することがわかっており、糖尿病に至る前の予備軍の段階から認知症の危険性が高まると考えられているのです。

高血糖が脳へのダメージや認知症につながると考えられる原因のひとつが、動脈硬化です。脳の血管で動脈硬化が進行すると、血管内腔が狭くなって脳の血流が停滞します。さらに、動脈硬化によって血管内壁に生じたコブが傷つけば、そこに血液のかたまりである血栓(けっせん)が生じて血管を閉塞し、「脳梗塞(のうこうそく)」を発症します。

また、動脈硬化は血管壁を脆(もろ)くするので、内圧に耐えられず脳の血管が破れて出血することもあります。これが「脳出血」です。脳梗塞や脳出血は脳の細胞を障害するので、認知症の原因となるのです。

このように脳の血管のトラブルで発症する認知症が、「脳血管性認知症」です。

■「脳のゴミ」で認知症に…

高血糖が認知症のリスクを高めるもうひとつの理由として、インスリンの過剰分泌が考えられています。

認知症には、脳血管性認知症のほかに、認知症の原因のおよそ70%を占めるといわれる「アルツハイマー型認知症」があります。

アルツハイマー型認知症は、「脳のゴミ」とも呼ばれる「アミロイドベータ」というたんぱく質の一種が蓄積することで発症します。このアミロイドベータを分解してくれるのが体内の酵素ですが、実はこの酵素は、インスリンを分解する働きも担(にな)っています。

つまり、高血糖状態が続いてインスリンが多量に分泌されると、インスリンを分解するために酵素がどんどん使われてしまい、アミロイドベータの分解に働く分がなくなってしまいます。その結果、脳内にアミロイドベータがどんどん蓄積されて、脳の働きを悪くしてしまうのです。

■「脳に甘いものがいい」は正しいか?

ダイエット中など、甘いものがNGであることはわかっていても、「甘いものを食べないと脳が働かないから」などと言い訳をして、つい口にしてはいませんか。

でも、これは間違った知識です。

糖質は「脳のエネルギー源」として知られていますが、糖質を摂取しなくても、私たちの体は脂肪を分解して、「ケトン体」という脳を働かせるためのエネルギーを発生させるので、“脳のために”たくさんの糖質を摂る必要はありません。

逆に、過剰な糖質の摂取が脳にダメージを与える可能性があることは、ここまでお話ししてきたとおりです。

ケトン体は「脳の第2のエネルギー」ともいわれています。意識して糖質を制限している人たちのなかには、エネルギー源としてケトン体を利用するようになったことで、「(糖をエネルギー源としていた頃より)頭がスッキリして、イメージ力や記憶力がアップした」と話す人も多くいます。

■糖質を控えて「第2のエネルギー」を活用

さらに、ケトン体は、単にエネルギー源としての役割だけでなく、臓器の障害を防ぐという貴重な働きを担っている可能性のあることがわかってきました。

2020年7月、滋賀医科大学の研究グループが、糖尿病によって引き起こされる腎臓の障害(糖尿病性腎臓病)の進行がケトン体によって抑制されている可能性があるとする研究結果を、世界で初めて報告したのです。

糖質を控えてケトン体を第2のエネルギーとして意図的に活用するほうが、脳にも臓器にも良い可能性があるというわけです。

■肉の脂のとりすぎで血管ダメージが加速する

血管を老化させる食品として、「甘いもの」や「主食」と同様に注意が必要なのが「肉類」です。

近年、日本人は魚を食べる機会がすっかり減ってしまいました。

農林水産省の「食料需給表」によると、食用魚介類の1人1年あたりの消費量は2001年度をピークに年々減り続け、18年度にはピーク時の約6割にまで減少してしまいました(「水産白書」令和元年度版より)。

私のクリニックに来院される、動脈硬化の患者さんたちにその食生活を尋ねると、必ずといっていいほど「肉」中心の食事になっています。ほぼ毎食、肉を食べているという方も珍しくありません。

■常温で固まる脂が動脈硬化を進める一因に

肉に偏った食事で血管が老化してしまう理由は、肉の脂(あぶら)に含まれる脂質の主成分である「脂肪酸」の種類にあります。

脂肪酸は、牛肉や豚肉、鶏肉などに多く含まれる「飽和脂肪酸」と、魚介類に多く含まれる「不飽和脂肪酸」に分けられます。飽和脂肪酸は常温で固まる脂(固体)、不飽和脂肪酸は常温でも固まらない油(液体)です。

飽和脂肪酸は大切なエネルギー源ですが、摂りすぎると肥満や、「悪玉」といわれるLDLコレステロールの増加を招き、動脈硬化を進める一因になると考えられています。

一方、不飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを減らしたり、中性脂肪値を下げたりする働きがあります。ただし、不飽和脂肪酸にもいくつかのタイプがあり、それぞれ特徴があるので注意が必要です。

おなかの贅肉
写真=iStock.com/TomFoldes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TomFoldes

■積極的に摂りたい「オメガ9系」

不飽和脂肪酸は、「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分かれます。

一価不飽和脂肪酸は、別名「オメガ9系脂肪酸」あるいは「n-9系脂肪酸」とも呼ばれ、オリーブオイルなどに豊富に含まれる「オレイン酸」がその代表です。

「善玉」といわれるHDLコレステロールに影響することなく、悪玉のLDLコレステロールを減らすため、動脈硬化の予防に役立つと期待されています。熱にも強いので、ドレッシング以外の加熱調理にも大変重宝する油です。

なお、最近では、スーパーなどで販売されている油にも、「オメガ○系」や「n-○系」という表示が見られるようになりました。これらは、脂肪酸を元素の単位で見たときに、炭素の二重結合が何番目から始まっているのかで分類したものです。

意味を理解する必要はありませんが、油を選ぶ際の目安にするといいと思います。

■外食に多く使われる「リノール酸」には要注意

多価不飽和脂肪酸は、「オメガ6(n-6)系脂肪酸」「オメガ3(n-3)系脂肪酸」とに分かれます。

オメガ6系脂肪酸は、大豆油やコーン油などの植物油に多く含まれる「リノール酸」に代表されます。

リノール酸は、一価不飽和脂肪酸と同じようにコレステロール値を下げる働きがありますが、LDL(悪玉)コレステロールだけでなく、HDL(善玉)コレステロールも減少させてしまうため、動脈硬化の予防効果は期待できません。

また、リノール酸は、代謝によって体内で「アラキドン酸」に変化します。体内にアラキドン酸が増えることで、血管の炎症や血栓を起こしやすくなることがわかっています。

しかし、リノール酸を主体とした油は、さっぱりとして癖がなく安価なことなどから、外食店の料理や弁当の揚げ物、炒め物に好んで使われていますので、気づかぬうちに摂りすぎてしまう傾向があります。

■魚に多く含まれる「オメガ3系脂肪酸」

一方、オメガ3系脂肪酸は、魚に多く含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」「DHA(ドコサヘキサエン酸)」、アマニ油やエゴマ油などに豊富な「α-リノレン酸」に代表されます。α-リノレン酸は体内でEPA、DHAに変換されます。

EPAおよびDHAは、動脈硬化の原因となる血中の過剰な中性脂肪を減らすとともに、血管の炎症を抑える「抗炎症物質」です。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、乾燥肌などにも効果があります。DHAは脳の働きをサポートする脂肪酸としても知られています。

「オメガ6系」は炎症を起こしやすいので摂りすぎに注意、「オメガ3系」は炎症を抑えるので積極的に摂ってOK。ただし、「オメガ3系」は熱に弱いので、加熱調理には「オメガ9系」を用いると良い、と覚えておくといいでしょう。

■脂質の偏りが全身に炎症を引き起こす

ところで、リノール酸から変換される「アラキドン酸」は、肉や魚、卵などにも含まれる脂肪酸です。

池谷敏郎『内臓脂肪を最速で落とし、血管年齢が20歳若返る生き方』(プレジデント社)
池谷敏郎『内臓脂肪を最速で落とし、血管年齢が20歳若返る生き方』(プレジデント社)

そのため、植物油に加えて牛・豚・鶏などの肉類に偏った食事を続けていると、動脈硬化のリスクが高まるだけでなく、アレルギーや歯周病、関節炎、ついにはがんなどの重大な疾患(しっかん)や老化にもつながっていきます。

つまり、全身の慢性的な炎症を起こしやすくなるのです。

アラキドン酸は魚にも含まれますが、魚は同時にEPAやDHAという「抗炎症物質」も豊富に含むため、アラキドン酸の炎症作用を抑え込むように働いてくれます。

魚が健康食とされるのは、このためです。

■脂質を摂るときはバランスが重要

とはいえ、「肉は食べてはいけない」といいたいわけではありません。肉には私たちの体、血管にも皮膚にも欠かせない、良質なたんぱく質が含まれています。

大事なのは、「脂質を摂るときにはバランスが重要」ということを知って、賢く摂取することです。

たんぱく質を摂るときには、肉、魚などの動物性たんぱく質と、大豆などの豆類の植物性たんぱく質をまんべんなく食べることをおすすめします。それにより、たんぱく質を効率的に摂取できるだけでなく、脂質の偏りを防ぐことにもなります。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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