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「ウィンナーとフランクの違い」仕事を教えるのがうまい人はこう説明する

プレジデントオンライン / 2021年4月23日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

仕事を教えるのがうまい人は、どんなことを心がけているのか。コンサルタントの濱田秀彦さんは「いきなり説明から入ってはいけない。動機づけ→説明→効果測定という3つの手順を守るといい」という――。

※本稿は、濱田秀彦『仕事を教えることになったら読む本』(アルク)の一部を再編集したものです。

■同じことでも「説明の仕方」で受け取られ方は大違い

【ティーチング事例比較】
シーン:オフィス用品商社の先輩社員が新入社員に、自社の取り扱い商品を教える

NGティーチング
今日は当社の取り扱い商品について説明します。当社の商品はさまざまなものがあります。えーと、何から説明しようかな。まず、コピー機やプリンター、関連の商品、それから照明器具のように家電製品に近いもの、それからペンなどの筆記用具、あとファイル製品、もっと言えば段ボールとかも。要するに、オフィスで使うものは何でも扱っているということ。
OKティーチング
今日は当社の取り扱い商品の覚え方を教えます。いまから言うことを知っていれば、数多くの取り扱い商品を早く覚えられるよ。
結論から言うと、早く覚えるには3つの商品分類を理解することがポイント。なぜなら、オフィスで必要なものは、その3つに分類できるから。
その3つとは、1つは事務用品、2つめは作業用品、もう1つは日用品。
これはイメージで覚えるといい。例えば、君たちが資料を作ってお客さんに発送することを想像してほしい。
最初に何をする?
資料を作るよね。パソコンで作ってプリントする。こういう事務作業に使うものが事務用品。
次は何をする?
発送準備だよね。資料を封筒に入れてテープで貼る。こういう作業に使うのが作業用品。
作業したときに紙くずが落ちたらどうする?
ほうきではいたり、拾ったりしてゴミ箱に入れるよね。そういう日常的に使うものが日用品。当社は大きく分けると、事務用品、作業用品、日用品の3つの売り場を持っていると思ってほしい。

あなたが新入社員だったら、どちらの先輩から教えてもらいたいですか?

ただ、NGなティーチングをしている先輩社員も知識は豊富なはず。本稿では、知識をうまく相手に移転するためのロジックやメソッドを紹介することで、あなたもよいティーチングができる先輩になれるように進めていきます。

■「教える」には順番がある

教える方法は、知識を教えるティーチング、技術を教えるトレーニング、意識を高めるコーチングの3種類があります。

本稿では、教え方の基本になるティーチングのコツをご紹介します。

ではティーチングの手順から見ていきましょう。

ティーチングの手順

どんな知識であれ、ティーチングは次の手順で進めます。

1.動機づけ→2.説明→3.効果測定

ティーチングは「説明」が中心ですが、それだけではありません。前に動機づけ、後ろに効果測定をもってくることで完成します。

動機づけは受け手のモチベーションを上げるために行う「前説明」、効果測定は知識の理解度や定着度を確かめるための「テスト」のようなものです。説明の前後にこれらを加えることで、効率よく知識が付与できます。では、それぞれのポイントを見ていきましょう。

■受け手のモチベーションが上がる導入の仕方

1.動機づけ

動機づけは、これから付与する知識の使い道を示すことで、受け手のモチベーションを上げるものです。例えば、自社の取り扱い商品を教える場面を考えてみましょう。

△いきなり説明パターン
今日は当社の取り扱い商品について説明します。当社の商品はさまざまなものがあります。

このように切り出す先輩社員を数多く見てきました。動機づけがなく、いきなり説明から入っています。ティーチングを受ける側は、これから学ぶ知識が、いつ、どのように役立つのかわかりません。使い道がわからない知識を、一生懸命に理解し、覚えようとは思わないでしょう。

○動機づけから始める
今日は当社の取り扱い商品の覚え方を教えます。いまから言うことを知っていれば、数多くの取り扱い商品を早く覚えられるよ。

このように始まったほうが、受け手の受講モチベーションが上がります。この動機づけのトークパターンは、2つあります。

■人が動かされる2つのパターン

パターン1 メリット獲得アプローチ
いまから言うことを知っていると、数多くの商品を早く覚えられる
パターン2 デメリット回避アプローチ
いまから言うことを知らないと、数多くの商品を覚えるのに苦労する

人が動かされるのは「自分が得すると思ったとき」「自分が損すると思ったとき」の2つです。動機づけのアプローチはその2つを使います。

実際のティーチング場面で両方を言うとくどくなりますので、どちらか一方でよいでしょう。どちらかというと、パターン1の「メリット獲得」のほうが、明るく前向きなムードが作りやすいのでお勧めです。

パターン2の「デメリット回避」も同様の効果はありますが、あまりきつい表現をすると脅しになってしまいます。安全教育など、テーマによっては、デメリット回避の動機づけにせざるを得ないものもありますが、そうでない場合は、メリット獲得を多く使うようにしましょう。

動機づけがうまくいくと、受け手が自主的にメモをとるようになります。そのためには、「いまから与える知識を身につけると、どんないいことがあるか」を伝えるのが効果的です。後輩が自主的にメモをとり出したら動機づけは成功。あなたの勝ちだと思ってください。

このように、ティーチングは動機づけから始める。ぜひ、やってみてください。

■全体像から話したほうが理解しやすい

2.説明

「説明」はティーチングの核となる最も重要な部分。知識付与がうまくいくかは、この部分にかかっています。知識をできる限り、早く、正確に伝えたい。そのためには次の2つが大切です。

ステップ1 話材を準備する
ステップ2 組み立てる

「ステップ1 話材を準備する」段階では、付与する知識を、順を追ってリストアップしてもよいですし、思いつくままに挙げても構いません。参考資料からピックアップしていく手もあります。指導者がやりやすい方法で準備すればよいでしょう。

次の「ステップ2 組み立てる」は、ステップ1で準備した話材を並べ替えたり、集約したりしながら伝わりやすいように再構築するステップです。その際の原則は2つあります。

原則Ⅰ 全体→部分
原則Ⅱ 結論→理由

以下、それぞれの原則の意義と使い方を見ていきましょう。

原則Ⅰ 全体像から話す

「全体像から話す」のは、そのほうが理解しやすいからです。

例えば、ある図形をあなたに伝えるとします。次の文章を読んで、どんな図形なのかイメージしてみてください。

×部分から話す
まず、直径4cmの丸があって、それから、その下に横10cm、縦4cmで真ん中が円弧のように1cmぐらいまで絞られている横向きの長方形があって、それから、その下に縦に10cmで底辺が6cmの細長い二等辺三角形があって……
○全体像から話す
ひとことで言うと「けん玉」のような図形だと思ってください。図形は3つあります。上から丸と四角と三角です。一番上の丸の部分は直径4cmの円です。その下の四角は、砂時計を横にしたような形で、真ん中がくびれています。具体的には……

■「順を追って丁寧に話す」はNG

明らかに後者のほうが理解しやすく、誤って伝わる可能性が少なくなります。しかし、多くの人は×例のように個々のパーツから話します。それは、話材を準備した後に、組み立てをせず、そのまま伝えようとしてしまうからです。また、伝える精度を上げようとすると、1つずつ、順を追って丁寧に話したくなります。しかし、その結果、相手に伝わらなくなってしまうというのが、はまりがちな落とし穴です。このようなよくない話し方を私は「まず〜それから」パターンと呼んでいます。

○例のほうは、先にゴールを示す話し方です。最初は精度を追求せずアバウトな全体像から伝え、精度は後で上げていこうという作戦です。もちろん、お勧めはこちらです。

このようにアバウトに全体像を伝えるコツは、次のようなフレーズを使うことです。

「ひとことで言うと」
「ざっくり言うと」
「早い話が」

教えるのが上手な人は、こういったフレーズを多用します。

■最終形を先に伝えれば意欲も持続しやすくなる

また、○例では先に「図形は3つある」と伝えています。これもゴールを示すという主旨です。ティーチングで説明を受ける相手は、得た情報を頭の中で再構成します。どこまで説明を受ければ、最終形が見えてくるのかわからなければ、不安になり、理解しようという意欲もあっという間になくなります。

先に「○つある」と伝えておけば、いまは完成までのどの過程にいるのかわかりますので、意欲も持続しやすいわけです。それに、メモもとりやすい。フレーズとしては

「○つある」
「○パターンある」

といったものになります。

ここで、○に入る数字について注意点があります。それは、最大4つまで、できれば3つまでにするということです。この数字が大きくなると、ティーチングの受け手は「そんなに多いのか」と理解し、記憶する意欲が減退します。

■伝えたいことは4つ以下にする

では、伝えたいことが5つ以上あったらどうするか。その場合は、多少強引にでも、4つまでに再編成してしまうことです。

例えば、冒頭に出てきたオフィス用品商社の「自社の取り扱い商品を教える」ケースで、取り扱い商品が

(1)OA機器
(2)収納用品(ファイル・キャビネットなど)
(3)文房具(ボールペン・ノート・はさみ・のりなど)
(4)梱包用品(段ボール・封筒など)
(5)掃除用具(ほうき・ちりとり・ゴミ箱・洗剤など)
(6)サニタリー用品(トイレ・キッチン用品など)

と分かれていたとしましょう。これを新入社員に教えるとして、「当社の取り扱い商品は6種類ある」と始めたら、受け手は「そんなに多いのか」と、その段階で理解し、記憶することに向け諦めムードになってしまいます。だから、多少強引にでも

A.事務用品[(1)(2)(3)]
B.作業用品[(4)]
C.日用品[(5)(6)]

と再編成します。そうして、大きく分けてから細部の話をするほうが受け取りやすく、覚えやすいのです。

このように、全体→部分の原則は、先にゴールをイメージさせること。「ひとことで言うと」「ざっくり言うと」「早い話が」、そして「○つある」(4つまで)というフレーズを意識して使いましょう。

■結論から話し、受け手の第一の欲求を満たす

原則Ⅱ 結論から話す

「結論から話す」のは、そのほうがティーチングを受ける相手の欲求に応えられるからです。

例えば、食料品のメーカーで、新入社員への知識付与として「ウィンナーとフランクの違い」を教えることになったとしましょう。

×理由から話す
ウィンナーとフランクの違いを理解するには、先にJAS法を知る必要があります。この法律は「日本農林規格等に関する法律」というもので、国が食品・農林水産品に関する規格を制定しています。この法律は、平成29年度に改正されていて……
○結論から話す
結論から言うと、ウィンナーとフランクの違いは太さです。直径20mm以上がフランク、20mm未満がウィンナーです。なぜ、そうなっているかというと、JAS法、日本農林規格等に関する法律で、決められているからです。

×例のようなティーチングだと、新入社員は10分後には寝てしまうでしょう。「ウィンナーとフランクの違いを教える」と言われたとき、受け手が聞きたいのは「何が違うのか」ということ。×例のように、それがなかなか聞けないと集中力は途切れてしまいます。

逆に、○例のようにスパッと結論から話すと、受け手の第一の欲求は満たされます。そうなると、次の欲求が生まれてきます。それは「なぜなのか?」ということ。そこに理由が示されれば、再び欲求が満たされ「なるほど」と腑に落ちる状態になる。

結論→理由の順で話すのは、そういう状態を作るためです。

顎に手を当てて考えるビジネスマン
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

■5秒以内で結論から短く言い切る

フレーズとしては、

「結論から言うと」
「一番大切なことは」

といったものです。

ここで、注意点があります。それは、「結論は短く話す」ということ。目安としては5秒以内に言い切れる長さが適切です。

例えば、先ほどのウィンナーとフランクの例で言うと

×結論から言うと、直径20mm以上がフランクで、直径20mm未満がウィンナー
○結論から言うと、太さが違う

○例のように短いほうが結論としてのインパクトが強くなります。「直径20mm以上が」というセリフは、その後で付け加えればよいわけです。

結論から短く言い切る。やってみてください。

このように、全体→部分、結論→理由の原則を活用するだけで、あなたのティーチングは格段によくなります。

■「ほんとうにわかったか」を確かめる

3.効果測定

「動機づけ」「説明」に続く最後のステップは「効果測定」です。教える側の落とし穴として、「わかったはず」「覚えたはず」と思いたいという心理があります。でも、それは楽観的すぎます。「ほんとうにわかったか」「記憶に残せたか」を確かめる、それが効果測定です。

効果測定には、成果を確認するだけでなく、記憶を定着させるという意図もあります。心理学では、記憶するために、何度も唱える行為を「リハーサル」と呼び、実践することで記憶の再生率が上がると言われています。

「成果が測れ、記憶の定着に役立つ」、そう考えるとティーチングの仕上げとして効果測定があることの意味がわかっていただけると思います。

効果測定の方法としては、インプットした知識をアウトプットさせる方法が最も有効です。単純に「わかりましたか?」と聞いても、あまり意味はありません。よくわかっていなくても、「はい」と答える人もいます。また、誤解したまま「わかったつもり」になっている人もいるでしょう。

そこで、問題を出して答えてもらいます。主な方法は、ペーパーテスト、口頭試問の2つです。

ペーパーテストを作り、多くの問題を出せば、どこまで理解できて、どこが理解できていないか、あるいは覚えられていないかといったことが分析できます。ただ、ペーパーテストを作成する手間はかかります。

そういうことから、職場でのティーチングは口頭試問、つまり問題を話して、相手は口頭で回答するという方式がよくとられます。

■効果測定の3つのポイント

ペーパーテストであれ、口頭試問であれ、効果測定を行う際のポイントは次の3つです。

ポイント1 難易度は簡単すぎず、難しすぎず
ポイント2 教えたことの範囲で答えられるように
ポイント3 段階的にヒントを出す

ポイント1「簡単すぎず、難しすぎず」は、問題のレベル設定に関するものです。簡単すぎると効果測定の意味がありませんし、難しすぎると相手は自信をなくしてしまいます。妥当なレベル感を、先ほどのウィンナーとフランクの違いの例で示すと「直径がちょうど20mmだったら、フランク、ウィンナー、どっち?」といったところでしょう。

これが、「フランクとウィンナーの違いは何?」という問題だったら簡単すぎます。また、「直径20mm以上だったら何?」という問題もヒントを出しすぎです。そこで、20mm以上と20mm未満の微妙なラインで問題を出します。

相手が「フランク」と答えても「正解!」で終わるのではなく、「どうして?」とさらに質問します。あいまいな知識のまま、勘で答えたら、たまたま正解だったのかもしれません。そこで、相手が「20mm以上がフランクだから、20mmは入るので」と正確に答えられたら、はじめて真の正解です。

■段階的にヒントを出す

一方「ボロニアソーセージはフランク、ウィンナー、どっち?」という問題は、難しすぎますし、教えたことの範囲で答えられません。効果測定はあくまで、教えたことの理解度、定着度を測るもの。そういう点で不向きです。

ただし、応用問題を出すこと自体が悪いわけではありません。効果測定をきちんと行ったうえで、「ここからは応用問題になるので、少し考えて答えて」と前置きをして出すならばOKです。それに、そのほうが相手に対してフェアです。

濱田秀彦『仕事を教えることになったら読む本』(アルク)
濱田秀彦『仕事を教えることになったら読む本』(アルク)

なお、「フランク、ウィンナー、どっち?」と聞いた際、相手が「わかりません」と答えた場合、そこですぐに答えを教えてしまうのはもったいない。少し、相手に考えさせます。その際のポイントは、段階的にヒントを出すということです。

例えば、「フランクとウィンナーの境界線は直径何mmだっけ?」と聞いてみて、「20mm」と答えさせ、ホワイトボードに「フランク20mm[?]」と書き「カッコに入る言葉は?」と答えさせ、「以上」というキーワードを引き出し、そのうえで、「以上ということは、20mmは入る? 入らない?」というように詰めていき、答えさせる。そして「入ります」という言葉を引き出して、「だからちょうど20mmはフランクだよね」

と終える。

「段階的にヒントを出す」というのはこういうことです。

■「わかりません」という答えを単純に受け入れてはいけない

段階的にヒントを出すのは、できるだけ相手に答えさせるためです。「わかりません」という答えを単純に受け入れてしまうと、相手はよく考えず「わかりません」と言って逃げる習慣がついてしまいます。

また、出題側の問題の出し方がよくない場合もありますし、相手が問題を理解できていないこともあります。そのためにも、答えられなかったら、段階的にヒントを出しましょう。

このように効果測定を行うことで、ティーチングによる知識の理解度、定着度を測ることができ、理解・定着させられていない部分の補強ができます。

ここまでの内容で、ティーチングの手順である

1.動機づけ
2.説明
3.効果測定

について、それぞれどうすればよいかが、わかりました。これらの内容を実践すれば、確実にティーチングによる知識付与は進みます。

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濱田 秀彦(はまだ・ひでひこ)
マネジメントコンサルタント
ビジネス書作家。早稲田大学卒業後、住宅メーカー関連会社へ入社、最年少支店長を経て人材開発会社に転職。営業マネージャー、経営企画マネージャーを経て独立。現在は、ヒューマンテック代表。マネジメント、コミュニケーション、キャリア開発のコンサルタントとして講演・セミナーを行う。

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(マネジメントコンサルタント 濱田 秀彦)

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