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50代から発症率急騰「血圧がちょっと高めの人」は注意が必要な"新・国民病"とは

プレジデントオンライン / 2021年5月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

患者数が2100万人を超えて糖尿病以上に多くなっている「新・国民病」がある。「慢性腎臓病(CKD)」だ。発症すると様々な病気の死亡率が平均4倍に上昇し、新型コロナをはじめウイルス感染症の悪化リスクも高まる。一度人工透析になれば、一生やめられない。「実は、人間ドックや健康診断では予兆を捉えることができないのです。働き盛り世代は一刻も早く対策が必要」と、20万人の患者を診た牧田善二医師が警鐘を鳴らす──。(第3回/全5回)

※本稿は、牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■日本人の死亡率上昇をもたらす要因

慢性腎臓病になると、「心腎連関」が起きて心血管性の疾患(しっかん)が増えます。加えて、脳卒中やがんにも罹(かか)りやすくなります。とくに、がんの中でも大腸がんの発生率が高くなることがわかっています。

最近、大腸がんで亡くなる人が増え、がんの部位別死亡率で女性は1位、男性も3位になっています。その原因の1つが、慢性腎臓病の増加なのかもしれません。

日本人の死亡原因1位のがんや、2位の心疾患を心配するのはもちろんですが、その裏で慢性腎臓病が大きな影響を及ぼしているということに気づく必要があります。

すなわち、日本人の死亡率上位の疾患の背後には、“裏ボス”として慢性腎臓病があるということです。

■悪くなっても自覚症状はない…

本当なら慢性腎臓病で亡くなったかもしれない人が、その前に心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳卒中の発作を起こしたり、がんを併発して亡くなったりしている可能性は十分にあります。逆に言えば、慢性腎臓病を防いでいれば、心筋梗塞や脳卒中、がんにさえも罹らずに長生きできたかもしれないのです。

しかし、慢性腎臓病は地味。それに、少しくらい腎臓が悪くなっていても自覚症状はありません。だから、気づかぬうちに病を進行させ、取り返しがつかないことになってしまうのです。

実は、慢性腎臓病は「年齢を重ねること」それ自体がリスクであり、とくに、50代から急激に発症率が増加します。そして、その慢性腎臓病が万病の元だとすれば、100歳を見据(みす)えた健康管理で最も重視すべきは腎臓だということがわかるでしょう。

■すべての病気はAGEによる「炎症」

それにしても、なぜ慢性腎臓病があらゆる病気を招くのでしょうか。

慢性腎臓病に罹ると、「AGE=終末糖化産物」というとてもタチの悪い老化促進物質が体内で大量に生産され、あちこちに炎症が起きるからです。

AGEは、体中の正常な組織にベタベタとくっついては、その組織を壊していきます。見た目でわかりやすいところでは、肌の組織にくっついてシミやシワをつくります。ほかにも血管や脳、内臓組織など、どこにでもくっついて炎症を起こし、あらゆる深刻な病気の原因となります。

腎臓には、老廃物を濾過(ろか)するための大事な「膜」があります。この膜は、コーヒーをいれるときに用いるペーパーフィルターのような役割を果たします。ところが、AGEがその膜にくっついて炎症を起こすと、小さな穴が開いてしまいます。その穴から、本来は出てこないはずのタンパク質などの物質が尿に漏(も)れ出してきてしまうのです。そうして体中に毒素や老廃物が充満することになってしまうのです。

慢性腎臓病もそうですが、心疾患や脳疾患、がんといったほかのほとんどの病気も、「炎症が原因で引き起こされる」というのが最近の考え方となっています。

もっとも炎症自体は、私たちの体にとって重要な免疫反応でもあります。ケガをしたときなど、傷口が膿(う)んだり腫(は)れたりと、外から見ても炎症が起きていることが明らかですね。それは、免疫反応が体を守るために戦っている証拠です。しかし、炎症が慢性的に持続するようになると、免疫システムに狂いが生じ、病気を誘発するのです。

AGEは、それ自体でも炎症を引き起こしますが、すでに起きている炎症を悪化させもします。つまり、病気を引き起こすだけでなく、病気の進行を早めてしまうのです。

さらには、腎臓が悪くなると、AGEが加速度的に増えることがわかっています。ということは、慢性腎臓病があれば、ほかの病気の発症率が高まり、かつ悪化もしやすいわけです。

■感染症で一番危ない「腎機能の弱い人」

新型コロナウイルスに感染して命を落とした人の中には、各界の著名人も含まれていました。ウイルスは人を選ばないこと、また、治療法が確立されていない新しい感染症には、いくら地位や経済力があっても太刀打ちできないことを、私たちは改めて思い知らされました。

一方で、感染してもなんの症状も出ない人、ごく軽い症状で済む人もたくさんいて、どうやら「重症化リスクの高い人」が存在するらしいこともわかってきました。

新型コロナウイルスに限らず、ほとんどの感染症において、「高齢であること」と「持病があること」は重症化の大きな要因です。

このうち、年齢自体を変えることはできませんが、持病があるかどうかは人それぞれです。実際に、新型コロナウイルスでは、持病があったために40代で亡くなった人もいれば、80代でも無事に生還した人もいました。

持病について、テレビのニュースなどでは、高血圧症や糖尿病が真っ先に挙げられていました。しかし、私は、血圧や血糖値が高いこと自体よりも、それによって腎臓の働きが悪くなっていることこそ、重症化を進めたと考えています。

とくに、慢性腎臓病で人工透析を受けている人は、免疫力が落ちているために、感染症に対してひどく脆弱(ぜいじゃく)です。それがわかっているから、今回のコロナ禍(か)にあって、透析中の患者さんは相当恐怖心を抱いているはずです。

そうした持病のない人の中にも、「病院でウイルス感染したら嫌だから」と、健康診断さえ受けないケースが続出しました。免疫力の落ちている透析の患者さんは、なおさら病院に行きたくないはずです。しかし、透析をサボれば死んでしまいます。だから、危険を冒(おか)してでも透析に通わざるを得なかったのです。

医療施設側も、そういう事情はよく理解しており、透析の患者さんを受け入れている病棟では厳重な注意を払っていることでしょう。それでも、2021年3月26日16時現在のデータで、1356人の透析患者さんが新型コロナウイルスに感染しています(日本透析医会・日本透析医学会・日本腎臓学会、新型コロナウイルス感染対策合同委員会「透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者の登録数」)。

■高血圧と動脈硬化が腎臓の機能をダメにする

現在、日本には4300万人の高血圧患者がいると推定されています。とくに男性の場合、30代で5人に1人、40代になると3人に1人、70歳以上ともなると60%が高血圧です。つまり、加齢とともに高血圧になるのは当たり前のような状況にあります。

しかも、4300万人もいる高血圧患者のうち、3分の1は自覚がないために治療しておらず、1割以上が自覚しているけれど未治療です。

治療している人の中でも、コントロールが良いのは27%にすぎません。高血圧自体は、よほど重症にならない限り自覚症状はありませんし、それによって動脈硬化が進行しても痛くも痒(かゆ)くもありません。だから、真剣に治療を受けようという気にならないのかもしれません。

血圧
写真=iStock.com/adrian825
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/adrian825

しかし、高血圧は、人々が考えているよりもはるかにリスキーです。ビル&メリンダ・ゲイツ財団(マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏とその妻が設立した慈善団体)によって進められた研究では、世界中の人が命を落とす最大の原因は高血圧にあるという結果が出ています。

■高血圧で腎臓の血管の動脈硬化が進む

高血圧が命に関わると聞いて、すぐに思い浮かぶのが心筋梗塞や脳卒中でしょう。でも、最も問題なのは慢性腎臓病です。そのメカニズムを説明しましょう。

高血圧によって、腎臓の血管も動脈硬化が進みます。腎臓の血管は細いので、動脈硬化による影響を受けやすく、腎臓の機能がどんどん落ちていきます。

一方で、腎臓の機能が落ちると、塩分と水分の排泄(はいせつ)調整がうまくいかなくなり、血圧が上がります。これを「腎性高血圧」といって、これまで血圧が低めだった人ですら、慢性腎臓病が進んでステージ分類で3以上になると血圧が上がります。

そして、ステージ4(血清クレアチニン値が正常値を超えて腎不全になった状態)ともなれば、血圧は猛烈に上昇して、大量の降圧剤を飲まないとコントロールできなくなります。

つまりは、血圧と腎機能は明確にリンクしており、血圧をコントロールすることが腎臓を守ることに直結するのです。

なお、慢性腎臓病のステージの詳細については、拙著『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)でも紹介していますし、インターネットで検索していただければすぐわかります。

■「ちょっと血圧が高め」の今が運命の分かれ道

病院や健診で「血圧が高め」と指摘されたら、まず考えなければならないのは腎臓のことです。血圧が高くてもどこも痛くも痒(かゆ)くもないからと油断してはなりません。

というのも、「ちょっと血圧が高め」くらいの人でも、放置すれば腎臓が悪くなることが報告されているからです。

2016年、中国の北京大学で、過去に世界中で行われた血圧に関する7つの研究が解析されました。その論文によると、上(収縮期)の血圧が120~139、下(拡張期)の血圧が80~89の「高値血圧」レベルでも、慢性腎臓病の発症リスクが1.28倍高くなることがわかったのです。

しかも、この傾向は人種と性別によって差があり、東アジア人のとくに女性に強く見られました。ということは、日本人の女性は、軽度であっても高血圧を治療したほうがいいと考えられます。

また、同じく2016年のイタリア・ナポリ大学の研究で、高血圧によってすでに罹っている慢性腎臓病が悪化する危険性について発表されています。それによると、正常高値血圧の人では慢性腎臓病の悪化リスクが1.19倍に上がることがわかりました。また、上の血圧が140以上、下の血圧が90以上の高血圧症だと、悪化リスクは1.76倍となりました(American Journal of Kidney Diseases 2016;67:89-97)。

さらに、腎臓病でない人4万3300人に対して行った調査で、上の血圧が120を超えると慢性腎臓病が増えることがわかっています。この調査では、上の血圧が10上がるごとに慢性腎臓病のリスクが6%上昇することも明らかになりました。とくに、上の血圧(収縮期血圧)には厳重な注意が必要ということのようです(American Society of Nephrology 2011;6:2605-2611)。

慢性腎臓病は、進行してしまうと治療が難しくなり、透析が避けられなくなります。その慢性腎臓病の進行に血圧の上昇が大きく影響することが明確になっているのですから、「ちょっと高めくらいだから様子を見よう」と放置するのは賢明ではありません。「ちょっと高めの今のうちにわかってラッキーだった」と対処する道を選んでください。

■血糖値コントロールより大事な糖尿病患者の腎症回避

人工透析を必要とする患者さんのうち、実は44%が糖尿病の合併症によるものです。だからこそ私は、糖尿病専門医として「自分の患者さんを透析にだけはしない」をモットーに治療に臨んできました。

しかし、残念なことに、多くの糖尿病治療の現場で、医師たちは血糖値コントロール(具体的には、ここ1~2カ月の血糖値変化を表すヘモグロビンA1c値を下げること)に注力し、腎臓については適切な手を打てずにいます。

糖尿病で怖いのは、高血糖になることではなく合併症です。合併症には腎症、網膜症、神経障害があり、中でも腎症は命に直結します。しかも、網膜症や神経障害と違い、激増しているのです。

専門医として断言しますが、糖尿病の患者さんを診るうえで最も大事なのは、血糖値コントロールではなく腎臓の状態を丁寧にチェックしていくことです。というのも、今は血糖値のコントロールがうまくいっていても、過去の高血糖が影響して腎臓に合併症が出てくることがよくあるからです。

つまり、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の値がいくら理想的な範囲内に収まっていても、それで腎症が起きないわけではなく、その人が過去に高血糖であったならば、十分に腎症になる可能性はあるということです。

しかも、本人も担当医も、その人が過去にどれだけ高血糖であったかなど正確に把握できていません。そういう状態で、「血糖値コントロールが上手にできているね」と喜び合っていれば、その間に腎臓の状態を悪化させてしまいかねません。

■早期治療のタイミングを逃す2つの理由

今はいい薬があって、合併症の腎症も早い段階なら確実に治すことができます。しかし、せっかくの早期治療のタイミングを逃しているケースが多々あります。

その理由は2つあります。

牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)
牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)

1つは、ここで述べたように血糖値コントロールに終始していて、腎症を早期に発見する検査がなされていないからです。

もう1つは、腎臓が悪くなっても治す治療法を知らない医師が多いからです。

糖尿病の専門医でも腎症を早期に発見する検査をしないくらいですから、その治療法を知らないのも当たり前。多くの糖尿病専門医にとって腎臓病の治療は専門外なのです。

そこで、40年間で20万人の患者を診てきた糖尿病専門医であり、腎臓病とAGEの研究を続けてきた立場から、今すぐできること、やるべきことをまとめたのが『医者が教える最強の解毒術』です。

尿アルブミン検査を受け、早めに対処をすれば、一生人工透析とは無縁でいられます。慢性腎臓病の悪影響も避けられます。ぜひご一読いただき、行動を起こして欲しいと切に願っています。

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。 著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。

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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)

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