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「26歳独身が年収8倍の5000万物件を即決」勢いで家を買う人が陥る3つの大後悔

プレジデントオンライン / 2021年5月8日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

26歳独身会社員の男性は、コロナ禍で自己資金がなかったにもかかわらず4890万円の分譲マンションを“勢い”で購入した。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは「頭金は親に借りて、残りは35年ローン。毎月8万6000円、年2回のボーナス時に15万円余り返済する。今後、安定した収入が続くか、変動金利はどう変わるか。リスクも多い」と指摘する――。

一生のうち、最も大きな買い物と言われるマイホーム。コロナ禍でも、人々のマイホーム購入への熱意は冷める気配がないように見える。

コロナ禍による収入減で家計困窮に悲鳴を上げる人が増える一方、今のところ給料は減らない人もいる。その場合、外食や旅行などの機会が減って節約できたり、株高の恩恵を受けたりして家計も健全そのもの。そこで、マイホーム購入という話になる。

「優遇されている間に住宅ローン減税の恩恵をフルに受けたい」
「在宅ワークの増加で住環境改善のニーズが高まった」

購入の動機はさまざまだが、最近、住宅ローンに関する相談は少なくない。

2021年2月下旬に、長期金利が一時0.175%と、およそ5年ぶりの高水準となった。これを受け、固定金利やフラット35の金利がやや上昇。変動金利は変わらないものの、景気の先行き不透明感もあり、住宅ローンを選ぶ際に金利動向を懸念する声は増えている。

本稿では、独身にもかかわらず、勢いで3LDKの分譲マンションを購入してしまった20代独身男性の住宅ローン計画を紹介しながら、これから住宅ローンを組む場合に注意すべき点をお伝えしたい。

■頭金500万円は親から援助。20代で約4400万円の住宅ローン

東京都内在住の梅澤健一郎さん(仮名・26歳)は、年収約600万円の会社員(IT系)。まだ独身だが、現在、交際中の彼女と、もうそろそろ結婚の話も出ている。

そんな矢先、趣味のサイクリングの最中、荒川沿いの閑静な住宅地の物件が目に留まった。

調べると、周辺の賃貸と比較しても物件価格は割安で、どうにも気になって仕方がない。

20代で、しかも独身のうちから住宅を購入するなど、これまで考えたことがなかったが、彼女も前向き。さらにいろいろ調べてみて、住宅ローン減税やすまい給付金などを活用すると、今の賃貸マンションの家賃より住宅ローン返済のほうが4万円も安くなるではないか。

それからは、ネットで住宅購入の記事を片っ端からチェックし、自分なりに検討した結果、購入したほうがおトクという結論に達した。

残る問題は自己資金である。

社会人4年目。無駄遣いはしないタイプだが、一人暮らしでは実家にいるよりも何かとお金がかり、数百万円単位のまとまった貯金はない。

最近の住宅ローンは、頭金ゼロ、全額ローンで借りることもできそうだが、ネットの記事によると、やはり頭金を用意したほうが安心と書かれてある。

恐る恐る、実家の父(60代)に相談したところ、「相続税はかからないようだから、今のうちから渡しておく」と言われ、相続時精算課税制度を利用して500万円の資金を贈与してもらうことになった。まんまと頭金なしで高い買い物ができるというわけだが、これで、当分、親には頭が上がらなくなりそうだ。

■多額の借金は不安だが「マイホームを買って良いこと尽くし」

残りの4390万円は、ボーナス払いありの35年変動金利でローンを組んだ。

毎月のローン返済は約8万6000円。管理費を入れると約11万円弱になる。年2回のボーナス払いは年額30万円かかり、住宅ローン返済だけでも年間返済額は約134万円で、手取り年収の約29%を占める。

この先行き不透明な中、これが60歳を過ぎても続くとなると、さすがに不安に駆られることもあるが、マイホームを購入したこと自体に後悔はない。

まさか、こんなに早いうちからとは想像してなかったものの、最後には勢いのような形でも、思い切って購入してみると、メリットしか感じられない。

モダンな外観のマンション
写真=iStock.com/imamember
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imamember

賃貸よりも、分譲マンションのほうが設備もしっかりしているし、外観のグレードも高い。住環境が快適だと、帰宅するのが楽しみで、コロナ禍のステイホームも苦にならない。多額の借金を抱えるプレッシャーが、逆に家計管理をしっかりせねばと節約意識も高まったような気がする。

「男は家を買って一人前」なんて、一昔前の考え方だとは思うが、確かに社会的に信用がなければ住宅ローンは組めないわけだし、社会人としての責任感も感じるようになった。

今のところ、とにかくいいことずくめで、マイホームを購入して本当に良かったと思っている。

梅澤健一郎さんの住宅ローン
・物件価格:4890万円
・頭金500万円(父より援助)
・ローン借入額4390万円(うちボーナス払い1000万円)
・金利タイプ:変動金利型(0.395%)
・返済期間35年(61歳まで)
・住宅ローン返済額:毎月8万6435円、ボーナス時15万3100円(年2回)
・年間返済額:134万3420円

■20代独身で年収倍率8倍超の物件を購入する時代

マイホーム購入で、充実した日々を送る梅澤さんだが、ちょっと冷静になってどれだけの借金を抱えることになったのか考えてみよう。

相場よりも割安だったとはいえ、物件価格は4890万円。年収600万円の梅澤さんにとって8倍以上にもなる。

かつて、1990年代初めごろ、東京や大都市圏でも「購入できる物件価格は平均年収の5倍程度が目安」などと言われていた。

実際、国土交通省の令和2年度住宅経済関連データを確認してみると、首都圏の住宅価格の年収倍率について、マンションの場合、1999年は4.8倍だった。それに対して、2019年は7.4倍と、この20年で1.5倍も増加している。

それもそのはず。物件価格(平均)が、1999年の4130万円から2019年には5980万円とこちらも1.5倍に上がったからである。

その一方で、マンションの床面積は狭くなり、マイホームを購入する人の年収は50万円もダウンした。

段ボールをあらかた開けて、昼寝する男性
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

ちなみに、変動金利はそれほど変わっていない。国土交通省のデータでは、1999年の変動金利は2.375%。2019年は2.475%だから、ずっと低金利水準が継続している。

その上、金融機関間の熾烈な住宅ローン金利競争によって、いわゆる店頭に表示されている基準金利から優遇金利が割り引かれた低い金利が適用され、今では、梅澤さんのように、20代の若いサラリーマンでも4000万~5000万円の住宅ローンが組めてしまうのだ。

首都圏の住宅価格の年収倍率の推移(マンションの場合)
※国土交通省

20年以上もFPとして相談を受けている筆者としては、若い世代が、このような高額な借金を背負うことに対して、あまりにも危機感が薄いのではないかと正直ビクビクしている。

なぜなら、この間、住宅ローン金利が低くなり、借りやすくなったこと以外、将来の先行きの不透明感は増すばかりだからである(さらに、コロナ禍の影響も加わった)。

若い世代ほど、「自分たちの頃になると年金がもらえないかもしれない」と感じる人が多いはずなのに、自分自身の収入は35年間変わらない(あるいは増える)前提で住宅ローンを組むことを矛盾しているとは思わないのだろうか?

■「勢い」でマイホーム購入に踏み切った人が注意すべき点3つ

とはいえ、梅澤さんに限らず、マイホーム購入には「勢い」というのも非常に重要なファクターではある。

もともと結婚や出産、子どもの進学などのライフプランに合わせて住宅購入を検討して、資金を貯めていた人が、気に入った物件が見つかり、住宅ローン減税など手厚い優遇措置に後押しされて購入するパターンが王道だろう。しかし、条件やタイミングが良いのに、どうも勢いに欠けて、契約まで踏み切れないといったケースも見受けられる。

要は、あれこれ考えすぎて決断できないのだ。もちろん、高額な買い物だけに、慎重になるのは当然のこと。ただし、いくら十分に検討しても、住宅購入後に何か起こるか分からない。肝心なのは、その何かに対して柔軟に対応できる家計の体力がどれだけあるのかである。

住宅模型の前で電卓をはじく男性
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

マイホーム購入決断には「勢い」は必要だが、十分な準備もなく「勢い」だけで購入してしまった場合、後々こんなはずではなかったという状況に陥る可能性が高くなる。

そこで、梅澤さんのように、すでに高額な住宅ローンを組んでマイホームを購入してしまった人が注意しておくべきポイントは、以下の3つである。

① 変動金利の動向はこまめにチェックしておく
② 住宅購入後の家計の変化に注意する
③ 将来への資産形成も少しずつスタートさせる

まず、①について、変動金利のメリットやデメリットはさまざまな媒体で紹介されているので、ここでは省略するが、変動金利で借りるということは、一生、市場金利の動向に注視するという作業や緊張感がセットで付いてくること覚悟しておこう。

そして、ネット記事などで、「金利が上昇した場合、固定金利に変更すれば良い」などと書かれてあるが、実際には、かなり難易度が高いことも知っておきたい。

なぜなら、金利のしくみで、変動金利に影響を与える「短期金利」よりも、固定金利に影響を与える「長期金利」の方が先に上昇するからである。つまり、変動金利が上がってきたので、固定金利に切り替えようと思っても、こちらはすでに上がってしまっているというわけだ。

そもそも、変動金利で住宅ローンを組む場合は、この金利のしくみを十分理解していただきたいのだが、前掲の梅澤さんいわく、「金利の選択が一番難しかったですかね。結局、YouTubeを見て決めました」とのこと。今や何でもYouTubeで学べるとは恐れ入った。

続いて、②については、賃貸と購入の年間コストは桁違いだということである。そもそも、狭い賃貸から広い分譲に引っ越しをすれば、水道光熱費は増える。その上、家具や生活雑貨をそろえることになれば、しばらくは支出増が続く。購入後に増えるのは住宅ローン返済だけでなく、固定資産税や都市計画税(物件にもよるが都内なら年20万円前後)、修繕積立金や管理費(同、月3万円~)、さらに火災保険や地震保険など、どれくらいコスト増になるかをきっちり試算することが重要である。

最後の③について、20代といえば、貯めクセをつけて、資産形成をスタートさせたい大切な時期である。そこに住宅ローン返済やそれ以外の支出増が加われば、貯蓄や投資どころではないかもしれないが、少額からでも良いので、積み立てを始めてほしい。

ちなみに、2021年度税制改正によって、住宅ローン控除の適用要件が緩和されている。現行では、床面積要件50m2以上が対象だったが、合計所得金額1000万円以下という条件で床面積40m2以上50m2未満に対する住宅ローンにも適用される。

物件価格が高騰しているためだと思われるが、床面積要件が緩和されたことでシングルや二人世帯など若い世代が買いやすくなった一方、無計画で安易な住宅ローンを組み、貯蓄できない人が増えるのではないかとも危惧している。

住宅ローン減税については、1%の以下の超低金利下なら、諸経費も含めたフルローンを組み、住宅ローン残高の1%の還付を受けた方がおトクという状況が問題視されている。

会計検査院の報告(※)によると、「1%以下で借りて住宅ローン控除の適用を受けている人の割合は78.1%に上って」いるそうだ。

今後の税制改正では、「1%」の控除率が見直され、実際の支払い利息を上限とするなどの案も出てきている。

しっかり頭金を準備し、返済できる額を考慮して物件を購入し、住宅ローン計画を立てた人が適正な恩恵を受けられるような制度を望む。

※会計検査院「租税特別措置(住宅ローン控除特例及び譲渡特例)の適用状況、検証状況等について」

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黒田 尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書に『50代からのお金のはなし』など多数。

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(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)

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