「首や肩ではない」寝ても疲れがとれない人に共通する"こっている場所"
プレジデントオンライン / 2021年5月22日 11時15分
※本稿は、寺林陽介著、内野勝行監修『寝てもとれない疲れをとる神マッサージ』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■「そもそも、なぜ寝ても疲れがとれないのか」
寝てもとれない疲れをもたらす原因としては、さまざまなものが挙げられますが、大きな2つの原因があります。
それはこの2つです。
・頭の筋肉(特に側頭筋)の疲れ
・自律神経の乱れ
私はこれまで、あんまマッサージ指圧師、鍼師、灸師として、2万人を超えるお客さまの治療にあたってきました。みなさん、それぞれに異なる体のトラブルを抱えており、当然のことながら、痛みを感じる場所もこっている場所も違います。
しかし、驚くべきことに、たった1か所だけ、ほぼ全員のお客さまがこっている場所があります。それが、「頭」です。
頭がこっていないお客様に出会ったことはほぼありませんし、普段から頭の筋肉をケアしているという方もいません。
そして、頭がこっているお客さまに話を聞くと、「寝ても疲れがとれない」「頭がすっきりしない」「いま一つ、やる気が起きず、集中力も足りない」「頑固な頭痛や眼精疲労などに悩まされている」といった症状を訴えています。
ここで少し頭の筋肉について説明をします。
頭(頭蓋骨と頭皮の間)には、「前頭筋(頭の前方、額のあたりの筋肉)」「側頭筋(頭の横、耳の上あたりの筋肉)」「後頭筋(後頭部の筋肉)」といった3つの薄い筋肉があり、体内の他の筋肉同様、何らかの原因で緊張状態が続けば、頭の筋肉も疲労し、硬くなります。
■現代人は頭の筋肉を酷使している
筋肉が硬くなると、筋肉中や筋肉周辺の血液やリンパなどの流れが悪くなるため、筋細胞に十分な栄養や酸素が運ばれなくなり、一方で、二酸化炭素や、「疲労物質」と呼ばれる乳酸などの老廃物が排出されにくくなって、たまっていきます。
そのため、筋肉がますます疲労して硬くなり、こりがひどくなる……という悪循環が生まれるのです。
ものを見るとき、食べるとき、話すとき、考えるとき、頭の筋肉は常に働いており、特に、パソコンやスマホを見たり、膨大な情報を処理したりしている現代のビジネスパーソンは、かなり頭の筋肉を酷使しています。
ご自身の頭を触ってみてください。
もし、「頭皮を指で押したとき、頭皮が動かなかったり、硬さを感じたりする」「頭皮を2本の指でつまんだとき、うまくつまめなかったり、痛みを感じたりする」「額の、髪の生え際を押した後、へこみが戻りにくかったり、指の跡が残ったりする」といった状態であれば、頭がこっている証拠であり、頭が疲れている証拠です。
また、頭皮の色が黄色っぽいのは疲れやストレスがたまっている証拠、赤みがかっているのは血液の流れが悪い証拠、頭皮がブヨブヨしているのは、リンパの流れが悪い証拠、といえます。
■側頭筋は特にこりやすく疲れやすい
頭の筋肉の中でも、特にこりやすいのが、頭の両サイド、こめかみから耳の上の周辺にある側頭筋です。
側頭筋はあごの筋肉とも連動しており、飲食時や会話時をはじめ、動かす機会が多いからです。長時間のデスクワークやスマホの使用による姿勢の乱れも、側頭筋の疲れをもたらします。
また、側頭筋はストレスの影響を強く受けます。
ストレスを感じると、筋肉は緊張し、血管は収縮します。ストレスがかかり続ければ、筋肉はやはり疲労して硬くなり、血流も悪くなって、こりが生じます。ストレスを感じたとき、それを処理するのは脳であり、頭の筋肉はどこよりもストレスの影響を受けやすく、こりやすいのです。
さらに、ストレスは食いしばりや歯ぎしりの原因ともなります。ストレスを感じていると、人は無意識のうちに、歯を食いしばったり歯ぎしりをしたりして、ストレスを発散しようとするからです。
そして、食いしばりや歯ぎしりは、側頭筋に過大な負荷をかけます。
■自律神経の乱れも「疲れとストレスの悪循環」を招く
なお、人間の体は「交感神経」と「副交感神経」から成る自律神経によってコントロールされています。交感神経が優位になると、心身が緊張し、活動に適した状態になり、副交感神経が優位になると、心身がリラックスし、睡眠や休息をとりやすくなります。
両者はシーソーのようにバランスをとっており、基本的には、朝、目が覚めるころから徐々に交感神経が優位になり、夕方になると副交感神経が優位になっていきます。
本来、夜、寝ている間は副交感神経が優位になり、側頭筋の緊張が緩んでこりや疲れが解消されるはずなのですが、過度の疲れやストレスなどにより、交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかないと、心身の緊張状態が続き、側頭筋のこりや疲れも解消されません。
側頭筋が硬くこったままでいるのは、サイズの小さい帽子を無理矢理かぶり続けているようなものです。これは、寝てもなかなかとれない疲れの原因となり、ときには頭痛をもたらすこともあります。
頭の筋肉は、首や肩の筋肉につながっているため、側頭筋が疲れ、こると、首や肩のこりもひどくなります。
しかも、脳には体の状態をコントロールする働きがありますが、放置されたこりが頭の血管や神経などを圧迫すると、体の情報をキャッチしたり、体に指令を出したりすることが、スムーズにできなくなります。
こうして、側頭筋をはじめとする頭の筋肉の疲れやこりが、さまざまな心身のトラブルを招き、それが新たな疲れやストレスの原因になるという悪循環が発生してしまうのです。
■コロナ禍で増えている「マスク頭痛」
ちなみに、拙著『寝てもとれない疲れをとる神マッサージ』の監修をしてくださった脳神経内科医の内野勝行先生によると、最近、頭痛を訴える患者さんが増えているそうです。
その大きな原因は「マスクの着用」です。
2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で猛威をふるい、人々は外出する際に、マスクの着用を余儀なくされるようになりました。感染拡大を防ぐためには仕方がないこととはいえ、この、たった数グラムしかないマスクが、頭の疲れや頭痛を引き起こしているケースが少なくないのです。
頭蓋骨は、さまざまな衝撃から脳を守るため、柔軟に動くようにできており、他の部位と比べて、ズレやゆがみが起こりやすいという特徴があります。
マスクを着用する(マスクのゴムによって耳が引っ張られる)時間が長くなると、頭蓋骨にズレやゆがみが生じ、頭の筋肉に過剰な負荷がかかったり、筋肉を覆っている筋膜が萎縮・癒着を起こしたりします。
その結果、筋肉や筋膜が硬くなってこりが生じ、頭をしめつけるような状態になり、疲れがたまったり、頭痛が起こったりしてしまうわけです。
さらに、マスクをしていると、自分が吐いた二酸化炭素をすぐに吸うことになるため、血液中の炭酸ガスの濃度が高くなり、脳内の酸素量が減って疲れやすくなります。
加えて、二酸化炭素には血管を拡張させる働きがあり、「筋肉や筋膜によってしめつけられた状態で血管が広がってしまう」ことから、頭痛も起こりやすくなるのです。
また、テレワークの普及に伴い、運動量が減り、デスクワークが増えたことも、疲れや頭痛の原因になっているようです。
■頭のマッサージで側頭筋のこりをほぐそう
私は、施術の際には必ず、頭のマッサージを行うようにしているのですが、お客さまからよく、「頭の中がスッキリして、やる気が出てきた」「視界が一気にクリアになった」「夜、ぐっすり眠れるようになった」「今まで、首や肩、腰をもんでも治らなかった首のこり、肩のこり、腰の痛みが、すっと楽になった」「胃腸の調子がよくなった」といった感想をいただきます。
頭のマッサージにはさまざまな手順がありますが、特に、頭を使うことが多いビジネスマパーソンの方に試していただきたいのが、側頭筋をもみほぐす「耳の上のマッサージ」と「こめかみのマッサージ」です。
耳の上のマッサージは、両手の指の第2関節を曲げ、薬指と小指の第2関節を耳の上にぐっと押しあてます。そして、手の位置を少しずつ上へとずらしながら、ぐりぐりとマッサージします。
こめかみのマッサージは、両手を軽く広げ、小指球(手のひらの小指の付け根の、盛り上がっている箇所)をこめかみの下あたりにぐっと押しあてます。
そして、やはり手の位置を少しずつ上へとずらしながら、ぐりぐりとマッサージします。
なお、マッサージは1か所につき、10数える程度の長さで十分です。
マッサージが終わったら、側頭部を温め、リラックスさせます。目を閉じて両方の手のひらを耳の上あたりにあて、頭皮をやや引き上げるようにし、手の温もりを感じながらゆっくり30数え、最後に大きく深呼吸しましょう。
これが、頭のマッサージの肝となります。
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六本木・寺林治療院院長
1996年にあんまマッサージ指圧師、鍼師、灸師の国家資格を取得し、父の治療院で本格的に修業を開始。24歳のときから一人で治療院を運営し、現在に至る。2008年に東京・南青山に完全紹介制・完全予約制の治療院を開設(2014年4月、六本木に移転)。著書に『「シワ・たるみは90秒でとれます!」顔リフト革命』(主婦の友社)がある。『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』(アスコム刊)は30万部のベストセラー。
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(六本木・寺林治療院院長 寺林 陽介)
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