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繊細さん専門カウンセラーが語る"生きることがラクになる"考え方

プレジデントオンライン / 2021年5月29日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

コロナ禍の今、行動が制限され、生きにくさを感じている人も多いだろう。特に人一倍多くのことを感じ取る「繊細さん」は、日々の感染状況のニュースを見て息苦しさを感じるかもしれない。こんな今だからこそ、自身も繊細さんであるHSP(Highly Sensitive Person)専門カウンセラーの武田友紀さんの考え方が一助になるのではないだろうか――。

※本稿は、武田友紀『雨でも晴れでも「繊細さん」』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■「まあ、いいか」と割り切る練習をする

「全然、頭が働かない……。」冬のある日、HSPを特集するテレビ番組に出演することになったのですが、収録を数日後にひかえて頭が働かず、ぼんやりしています。収録前はカウンセリングの予定を入れないからいいものの、元気が出ない。全く冴えない。しかし、原稿の締め切りは迫っている。「もうすぐ締め切りなのに、頭がぼーっとして原稿を書けない」と夫のつりーさんに訴えたら、「テレビがあるからじゃない?収録の前はいつもそうだよ。冬だから原稿の穫れ高が減るんだよ」と返されました。

「穫れ高って、農作物か。」まぁ、冬は活動量が減りますよね。20代の頃は季節なんて関係なく働き通しだったけど、「春夏秋冬、常にバリバリ働けます」なんて、生き物としておかしいんだろうなぁ。うーん、せめて朝日をあびよう。つりーさんがテレビ会議をしているリビングで、もそもそとお盆にマグカップとお茶碗を載せ、ベランダへ。太陽がぽかぽかとあたたかい。お白湯を飲み、胃に食べ物が入ると、気分も少しだけ晴れてきました。

しかし、テレビってこんなに緊張するものなのか。数日前から動けなくなるなんて、こんな極端な反応はもしかしてトラウマが関係しているのだろうか……。

いろいろ考えるけれど、なんにせよ頭が働きません。収録が終わるまでは諦めよう。テレビが終われば頭も動くだろう。

諦めて、収録までの数日間、YouTubeをみたりテーブルの食器を片付けたり、しいたけ占いを読んだりと、ぼんやり過ごしました。常にシャキシャキ働くべきだ、と思っていたらしんどいですが「あと3日は仕方ない」と思えば気もラクです。こうした割り切りが、何年も練習してようやくできるようになってきました。

すべてをベストな状態にもっていかず、ときには「うーん、まぁいいか」と進めていく。昔はこれが本当にできなくて、なにごとにも時間がかかりキャパオーバーしていたのですが、「まぁいいか」を練習することで、ベストじゃなくても物事は進むことがわかってきました。

■塩梅を学んでいく

繊細さんたちから、たびたび「つい完璧にやろうとしちゃうんです」「手を抜いていいって言われても具体的にどうすればいいのかわからない」といったお話を伺います。意識せずとも先々のことまでよく考える繊細さんにとって、手の抜き方は後天的に学ぶスキルだと思うんです。

誰かが手を抜いているところをみて、「そのくらいでいいんだ」と真似して、塩梅を学んでいく。「手を抜く」という概念がまず必要だし、なにより「抜いてもまぁ大丈夫だろう、生きてはいけるだろう」という安心感がないと、手を抜くことは怖くてできないんですね。

■「変わらなきゃ」という気持ちそのものが、変わる

手を抜くことに似た話ですが、自分を良くし続けるのって大変だと思うんです。「楽しいからもっとやりたい」のはいいけれど、「自分のこんなところがダメだから、もっともっと良くしなければ」と自分を向上させ続けるのは、坂道を登り続けるようなしんどさがありますね。

深刻な悩みがあるときは、その状況から一刻も早く抜け出すために、自分と向き合ったりカウンセリングを受けたり、「こうしたらいいよ」というハウツーを試してみることも必要です。でも、深刻な悩みが山を越え「なんとなくもう大丈夫そうだな」と感じるようになったら、自分を良くしていくこと、つまり自分を治すのは終えるタイミングなんだと思います。

カウンセリングを受ける女性
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn

私は子育てが始まってものすごく悩んだ時期がありまして、「これは自分ひとりではどうにもならない」とカウンセリングに通ったんですね。2年ぐらい通って、自分の幼少期の思いやトラウマに取り組み、生きることそのものが本当にラクになりました。ところが、峠を越えたあとも「先生からみればまだダメなところがあるだろうから」と通い続けるうちに、だんだん元気を失っていったんです。

まるで、ちいさな虫歯をなくそうとして、歯そのものをガンガン削っているような……いつまでも自分を否定し続けているような、そんな気分になりました。

困っていたときには有効だったカウンセリングも、そんなに困っていないのに受け続けるうちに、悪さをし始めた。

「先生からみればまだまだかもしれないけど、私の体感としては充分平和になったし、この辺でもういいだろう。また心底困ったら、相談に行こう」。

思い切ってカウンセリングに行くのをやめると、しおれた花がたっぷりの水を得たように、みるみる元気になりました。

人間の変化には様々なバリエーションがあり、「変わらなきゃ、変わらなきゃ」と思っていた人が「変わらなくても良いんだ」と思えるようになる、という変化のしかたがあります。

■自分の人生を引き受けたときに起こる変化

「変わらなきゃ」という気持ちそのものが、変わる。私は、この変化のしかたをとても大切にしています。

武田友紀『雨でも晴れでも「繊細さん」』(幻冬舎)
武田友紀『雨でも晴れでも「繊細さん」』(幻冬舎)

それは自分を深く肯定し、「自分の行動によってこれから何が起ころうと、自分でその責任を引き受けていこう」と自分の人生を引き受けたときに起こる変化です。

誰かに危害を加えたり、生活の質を極端に下げたりするものでなければ、だめだと思う部分があってもやっきになって直すのではなく「今は低調だから、低調なりに過ごそう。時間がたてばおさまる」というのも、大切な自分の引き受け方です。

自分を信頼し引き受ける日々の中で、自分への理解が深まり、ある日はらりとかさぶたがとれるように、過去の思いが消化されることもある。専門家のサポートを受けて峠を越えれば、あとは必要な変化が自然と起こってくるのだと思います。

■生きているというだけで、本当は全部OK

「こういうのが良い状態だ」という「あるべき状態」は、本当にないんですよね。本音を大切にするといいよと何度も本に書いてきましたが、それは「本音を大切にできればOKで、大切にできないのはNG」ということではないのです。人生には思いもよらないことが起こるし、どんな環境に生まれるかも選ぶことはできない。避けようもなく痛みを負うこともあります。

ぼんやり波間にただよう時期も、人を信じられない時期も、心身を削ってひたすらがんばる時期も、「あの人を見返したい、どうしても認められたい!」と、幸せとは逆方向へ全力で突っ込んでいく時期もあっていいのだと思います。

植物が、種の時期も茎だけの時期も、雨で泥だらけの日も花として咲いたときも、もしかしたら花が咲かなくても、全部がOKのように。生きることは、いま生きているというだけで、本当は全部OKなのだと思います。

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武田 友紀(たけだ・ゆき)
HSP専門カウンセラー
メーカーでの研究開発を経て独立。フリーのカウンセラーとして個人向けの人間関係カウンセリングや適職診断を行う。著書に『「繊細さん」の本』『「繊細さん」の幸せリスト』ほか。繊細の森にてコラム掲載中

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(HSP専門カウンセラー 武田 友紀)

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