「家を買うなら急いだほうがいい」2025年の新築マンションは今より必ず高くなる
プレジデントオンライン / 2021年5月26日 9時15分
■不動産価格は、ローンの借入額でほぼ決まる
3回目の緊急事態宣言が出て、明らかに景気は悪い。しかし、住宅価格は上がっている。それもこれまで以上の勢いとなっている。不動産価格の決まり方は通常の商品価格とは異なるが、これを理解していない人は多い。
自称評論家が「暴落する」とか「空き家が多いのに」などとコメントしているが、これまで当たった試しは一度もない。独身やファミリーなどの世帯構成に関わらず、現在賃貸に住んでいる人はそろそろ現実を見極めて、ご自宅戦略を軌道修正しないと、高くて買えなくなる日も近いと考えたほうがいい。
就業者数がこの1年順調に増えた産業は不動産業であり、情報通信業並みの水準である(総務省「労働力調査(基本集計)2020年度(令和2年度)平均結果」)。ワーストだった業種は宿泊・飲食業なので、不動産の中でもホテル・飲食は苦戦しているが、最も需要が堅いと言われる住宅はアベノミクス以降、ずっと好景気が続いている。
不動産価格はそれを購入する際のローンの借入額でほぼ決まる。不動産以外の商品はローンを使って買うことはまずない。ここが不動産価格の形成が大きく違う根本原因となる。自分が現金などで支払えるかではなく、住宅ローンが組めれば買うことができる。だからこそ、住宅ローンが借り入れしやすいか否かが価格形成に最も影響するのだ。
■「2025年の新築マンション価格は上がる」と言える理由
2012年12月から始まった安倍政権の経済政策「3本の矢」の1つ、金融緩和が始まって既に8年が経過しているが、異次元で行われている。これはデフレ脱却のために始められたもので、インフレ率2%に届くまで終わらないが、届きそうな状況にない。こうなると、黒田日銀総裁の任期である2023年4月まで金融緩和が続く可能性が高い。新築分譲マンションは土地取得が決まってから分譲されるまで約2年かかるので、その時点で金融緩和が続いていると、2025年の新築マンションの価格は上がることがほぼ決まっていることになる。
不動産は担保が取れるので、貸し出しがしやすい資産の最たるものになる。金融緩和はカネ余り状態を作るので、不動産価格は原則上がっていく。単純に言って、金融緩和は不動産インフレを必ず招いてきた。この状況はコロナ前後でも変わっていないので、不動産インフレは止まりそうにない。このように住宅ローンの金利水準や貸出の積極性が不動産価格を決めるので、需給バランスの影響は軽微だ。
■新築マンションには価格を下げる理由はない
コロナ前後のマンション価格の動きを振り返っておこう。自粛期間中の4・5月は先行き不安の投げ売りが出て、中古マンションの成約価格は下落した。しかし、この投げ売りは2カ月で終わった。その後は、コロナ前の価格に戻り、今はその価格よりもかなり高くなっている。
新築マンションの方は、売り主側が財閥系を中心に大手寡占に近くなったこともあり、数カ月間販売を我慢することは体力的にできる。売主側が売り急ぐ理由がないなら、価格を下げる理由はない。特に、コロナ禍で緊急経済対策が行われた結果、個人も法人も手元現金が増えている。こうなると、資産売却を急ぐ必要性も薄れ、在庫が大幅に減少している。
■本気度の高い顧客だけの、効率的な販売が可能になった
コロナによって働き方は大きく変わった。それは住まいに対する考え方も変えた。リモートワークの普及と家にいる時間の長さから、居住環境の改善を検討する世帯が急増した。特に「もう1部屋需要」は大きく、賃貸よりも持家マンション、70m23LDKのマンションよりも100m24LDKの戸建を求める人が増えた。巣ごもりしている人たちにとっては、写真やVR(疑似内覧)等が充実している物件検索サイトは支持されて、現地に来訪する時には「確認」だけで即決する人も多くなった。
こうした、本気度の高い顧客だけの来訪がコストを抑えながらの効率的な販売を可能にした。販売戸数は昨年と比して減少したものの、慌てる様子は中堅以下の売り主にしか見られない。この状況下では、売れ行きが極端に悪い物件でない限り、値引き販売などが行われる段階にはない。
■リーマン後に起きた「まさかの値上がり劇」
そんな折、中古の販売在庫は大幅に減り始めている。見ず知らずの人が内覧するのを敬遠する気持ちから販売をやめる物件が増えたためだ。こうして在庫が減少しながら、在庫価格は上がった。
こうしたことは以前にも何度も起きている。リーマンショック後、新興系のデベロッパーの多くが資金ショートして倒産した。この結果、新築マンション供給が前年の1/3に急減し、あまりの新築物件の少なさに中古マンションが売れて、在庫が減りながら値上がりを始める事態が起こる。リーマンショックから1年しか経っていないのに起こった「まさかの値上がり劇」だった。こうして、百年に一回の経済危機の様に言われたリーマンショックから2年後には元の価格に戻っていた。
不動産価格はローンで決まると書いたが、需給バランスはこうした在庫減の時に価格が上がる方向に動きやすい。しかし、在庫が増えても売り手に焦りがなければ、価格は下がる方向には動きにくい。それが不動産価格の特徴である。
■新築分譲戸建の購入価格が高くなっている
新築分譲戸建市場は活況を呈している。コロナ前に首都圏で3.4万戸ほどあった在庫が毎月1000戸ほど減り続けて、今や2.2万戸の低水準になっている(スタイルアクト調べ)。これだけ売れているものの、新築の着工戸数は4月以降前年同期比で大幅マイナスを続けている。その結果、在庫が少なくなる一方で、販売期間が短くなり、竣工前に売れる事態が増えている。新築分譲戸建は一般的に売れ行きが悪く、建物が竣工してしまうと売出価格の値引きが始まるが、売出と成約の価格差は在庫減少につれて大幅に縮まっている。実質的に購入価格は高くなっているのである。
ここで言えることは、住宅市場の場合、マンションでも戸建でも一定の需要が常にある中で、コロナが一層の需要喚起をし、緊急経済対策による供給不足まで招いたので、価格は上がる方向に動いたということだ。都市の住宅市場において、需給バランスの影響は上がる方向にしか動かない、これが実態である。このため、不動産価格は当面下がることはなく、上がることしかないのである。
下がる時は不動産事業者が倒産して資産処分する場合に限られる。それは金融が引き締められた時で、当分の間無さそうに思われる。金融緩和されているうちは持ち家を早く買った者勝ちなのだと言うことは分かっておいたほうがいい。
■土地の仕入価格も上がっている
この結果、2021年の持家価格は上昇している。それだけではなく、土地の仕入価格も上がっているので、今後の新築分譲マンションや戸建ては今まで以上に高くなることが必至となっている。この傾向は少なくとも2023年までは続く。
そんな中にあって、持家購入を遅らせた分だけ、損が拡大していくことになる。これに加えて、住宅ローン減税の対象が50m2以上から40m2以上に緩和された。独身や夫婦のみの世帯にとっても、2021年は持ち家購入を早くしたほうがいい。
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スタイルアクト代表
1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。監査法人トーマツ系列のコンサルティング会社、不動産コンサルティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』(朝日新聞出版)など多数。分譲マンション情報サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/)、独身の住まい探し情報サイト「家活」(https://iekatu.com/)を運営している。
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(スタイルアクト代表 沖 有人)
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