橋下徹「コロナ禍という有事に僕たち国民が気構えを示そう」
プレジデントオンライン / 2021年6月9日 11時15分
■有事対応を後押しするのは国民の態度振る舞いです
コロナ禍によって大変な苦痛を味わった人や人命を失った人が多くいるので、これを過剰にポジティブに扱うわけにはいきませんが、それでも日本の弱点をさらけ出し、次への対処方法を示唆してくれたことは、日本を強くするチャンスととらえなければなりません。
日本の弱点は「有事への対応ができないこと」。だからこそ、政治家も国民も有事に対応できるような制度の構築が必要だと強く自覚し、日経新聞の最近の世論調査によれば改憲の議論の必要があると答えた国民は76%にも上るということのようです。
日本は先の大戦で敗戦し、国民をどん底に突き落としました。その大反省の下に憲法によって軍事力を徹底して禁止・制限し、理想の平和国家、平和世界にまっしぐらとなったのです。この理想は否定されるものではないし、実現に向けて努力すべきものです。
しかし一気に理想の世界に到達するものではありません。ゴールに向かう途中には幾度も現実の壁にぶつかります。理想の平和国家、平和世界を実現するには、全世界の国々が同じ行動を一斉にとる必要がありますが、残念ながら現実はそうではありません。
ゆえに理想を実現するまでの過程において現実の壁に対応するためには現実の対応策が必要であり、それが有事に対する対応策なのです。
ところが日本は、日本単独によって理想の世界を実現できるという幻想を抱いたがゆえにこの有事への対応策というものを一切考えない国家になってしまいました。幻想的な理想だけを夢見る国家となってしまったのです。
有事を想定するということは、それは理想の平和国家、平和世界の一時的な否定になるからです。
日本は、頑ななまでに理想を追求する結果、現実から目を逸らしてしまうという最悪の態度に出てしまったのです。それでも米ソ冷戦中は、米ソの激しいつばぜり合いの中で、一種の均衡状態が創出され、日本国内はあたかも理想の平和が実現していたように錯覚できたのです。
しかし米ソ均衡状態が崩れ、中国やその他の国々が台頭し、世界秩序が不安定化する中、日本国内で夢見ることができた理想の平和というもののメッキがはがれ、国際社会における厳しい現実が突き付けられるようになりました。
理想の平和国家、平和世界が実現するまでは、どの国も有事に対する対応システムを持っておかなければならないという現実を突き付けられたのです。
このような有事への対応システムを持つことは、いわゆる軍事衝突の領域に限らず必要なことです。日本は戦後、ありとあらゆる領域において、有事に対応するシステムを構築することを怠ってしまった。そして今回のコロナ禍という有事において、国家のシステムが機能しないことが白日の下にさらされてしまったのです。
■少々のミスやルール違反を許容する国民の態度
では民主国家においては国家が有事対応できるようになるためには何が必要なのか。まず法律や憲法の根拠が必要であることは間違いありません。これは法治国家としては当然のことです。
ただしそのような法律や憲法が作られるためにはさらに何が必要なのか。また法律や憲法が作られるまでの間、なんとか有事対応する術はないのか。
ここでのポイントは我々国民の態度振る舞いです。
というのも民主国家の政治の源はすべて国民の態度振る舞いにあるからです。
すなわち有事において国家がどのように動くことができるかは、究極的には国民次第ということになるというわけです。
一言で言えば、少々のミス、ルール違反を許容する国民の態度が必要です。もちろんこのさじ加減が難しい。致命的なミスやルール違反を許容してしまうと、すべてが台無しになったり、独裁国家への道のりを歩むことになったりするからです。
この「少々の」というところが超重要なポイントなんですよね。
(以下省略/全文はメールマガジンでお読みください)
(リード文を除き約1600字、メールマガジン全文は約1万300字です)
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》Vol.250(6月8日配信)から一部を抜粋したものです。気になった方はメールマガジン購読をご検討ください。今号は《【有事に弱い日本】コロナ禍に立ち向かうため僕たち国民が気構えを示そう》特集です。
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元大阪市長・元大阪府知事
1969年、東京都生まれ。弁護士、政治評論家。2008年から大阪府知事、11年から大阪市長を歴任し、大阪都構想住民投票の実施や、行政組織・財政改革などを行う。15年に大阪市長を任期満了で退任。現在、テレビ出演、講演、執筆活動を中心に多方面で活動。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。
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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)
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