「9月には大変なことになる」ワクチン接種率が50%を超えると、国民の消費欲は大噴出する
プレジデントオンライン / 2021年5月30日 9時15分
※本稿は、今井澂『日経平均4 万円時代 最強株に投資せよ!』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■9月の「ワクチン接種率50%」で起こる“ペントアップ・デマンド”
新型コロナワクチンの接種は2020年12月上旬のイギリスを皮切りに2021年3月時点で海外領土などを含めると149カ国・地域にまで広がっています。日本でのワクチン接種も医療従事者を対象に2021年2月17日から始まりました。
世界各国で進むワクチン接種は「いつまでも新型コロナ大不況は続かない」という前途への明るい見通しにつながっています。
もちろん、その見通しは株価にプラスになっているのですが、さらに株価に好影響を与えるのはワクチン接種率が50%になることです。なぜ50%なのか。それはイスラエルでの経験で50%になると途端に新型コロナウイルスの感染率がダウンするということがわかったからです。
ワクチン接種率が50%になるのは、イギリスが4月、アメリカが6月になると予想されています。つまり、新型コロナ騒ぎはイギリスでは4月、アメリカでは6月に終わりになると考えて良いでしょう。
ほかの国々は50%になるのは両国よりも遅れるし、日本も早くて8月ぐらいになります。それでも9月くらいには大丈夫になるという見通しは出せるので、そのときにコロナ不況脱出の確信もできるはずです。
■我慢していた消費欲が一気にどーんと噴出する
これによって企業が強気の1株利益の予想を出したり前向きな経営計画を発表したりして、投資家も好感を持つに違いありません。その先には減配や減益がほとんどないということを株価も織り込んでいきます。9月決算のころには、みんなが安心して株を買うようになると思っていいでしょう。
付言すると、同じくワクチン接種が50%になることで世界中でのペントアップ・デマンドも大いに期待できます。これは、景気後退期に購買行動を一時的に控えていた消費者の需要が景気回復期になって一気に回復することです。
つまり、消費者の需要は景気後退期のために消滅するのではなく、むしろ積み上げられ繰り越されて潜在化するので、それが景気回復とともに表面化すれば需要が一気に拡大することになります。
コロナ禍のために多くの人たちがパブで飲みたいとか、レジャーに行きたいといった欲望を我慢しているわけですが、それは我慢している潜在的な需要なので、ワクチン接種が50%以上になると我慢していた需要がどーんと噴出してくるのです。
ペントアップ・デマンドでパブやレストランがごった返し、高速道路が渋滞になり、ホテルも満室になります。このペントアップ・デマンドが株価を押し上げないはずがありません。
パルナッソス・インベストメントの宮島秀直氏の資料によると、アメリカの個人消費は10.9%、GDPは7.5%押し上げられます。また、日本も21兆円がペントアップ・デマンドになり、GDPを2.7%押し上げるなか、4~5兆円は株式中心に回ると見ています。
■ワクチン接種率の高まりで、株価を注視すべき業種は何か
日本政府は、新型コロナウイルス対策で2020年4月に最初の緊急事態宣言を発して国民に活動自粛を呼びかけるとともに、国民に給付金を出すことにしました。ところが、国民がオンラインで給付金を受け取るための申請手続きを行うと、役所の窓口よりもかえって時間と手間がかかってしまうという状況が全国の地方自治体で続出してしまったのです。
そうとなって、新型コロナウイルスは我が国の行政のIT化の大幅な遅れも露呈させたのでした。国民から批判を浴びた菅政権は行政のIT化を促進するためにデジタル庁の創設に踏み切りました。
デジタル庁は2021年9月からスタートし非常勤職員を含めて500人規模の組織となります。トップは首相ですから、それは菅政権が行政のIT化に全力を挙げている表れだともいえるでしょう。
IT化に関連すると、新型コロナウイルスのワクチン接種についても、当初はマイナンバーで接種の順番や回数を管理することになっていました。これも各地方自治体から、システムが未整備でとてもマイナンバーを使える状況ではないという猛反発を受けて、マイナンバーでの管理も頓挫してしまったのです。マイナンバーで管理できないのはそれだけ接種の効率が落ちることを意味します。
行政のIT化の遅れは行政手続きの効率化の足を引っ張っているわけですが、民間ではコロナ禍によってネットの活用が一段と促進されることになりました。すなわち、国民生活ではいわゆる巣ごもり需要が起こってネット通販、ネットゲーム、動画配信サービスなどが盛況になり、ビジネスではテレワークやウェブ会議が急増して業務の効率化・合理化を促進したのです。
これはコロナ禍がさまざまな社会変化をもたらしているととらえられます。なかでもテレワークとEC(電子商取引)の拡大、地方・郊外への移住、オンライン診療の規制緩和などが具体的に指摘できるでしょう。
テレワークも最初は職場や通勤での感染防止を最優先の目的としたものだったのですが、生産性の向上につながることははっきりとわかってきて、テレワーク拡大の流れはこれからも続いていくはずです。それで、テレワークも利用可能なクラウド型の業務支援ソフトウエアやコミュニケーションツールを提供する新興企業がどんどん台頭してきました。
なおクラウドとは、ユーザーが自分のパソコン等に業務用ソフトをインストールしなくても、必要なときにネットを通じて業務用ソフトを利用できるシステムのことです。
EC(電子商取引)はネット通販のことですが、ネット通販が消費者寄りとすれば、ECは企業寄りの言葉といえます。つまり、好調なネット通販によってECでのネット・ショップの開設が相次いでいるわけです。
地方や郊外への移住については、テレワークやウェブ会議によって遠隔地でも勤務できることがあと押しとなっています。つまり、通勤が不要なら、生活環境の良い地方や郊外に移住してもかまわないのではないか、という雰囲気が出てきました。
テレワークを導入した企業でも週1~2回程度の出社は必要なのですが、毎日の出勤ではないため通勤時間がもっと長くなっても十分に対応できるということです。この考え方は、勤める側だけではなく会社側も共有するようになってきています。
おそらく、これから現役の会社員でも地方移住に踏み切るケースは増えてくるでしょう。となると、首都圏であればまずは都心から電車で2時間くらい離れた場所へも住み替えのニーズは高まっていくはずです。地方・郊外なら生活にもゆとりが出ます。
■株価上昇はテレワーク、EC、地方・郊外移住、オンライン診療関連?
オンライン治療は、政府が2020年4月に初診を含めて時限措置として全面的に解禁したのでした。時限措置なので一定期間が経過したら再びオンライン診療は禁止になる予定です。けれどもオンライン診療は移動時間や待ち時間で患者の負担を減らすだけでなく、患者が病院に行って他の感染症に罹(かか)るリスクも消し、地方や過疎地での病院不足の解消にも寄与するというメリットがあります。
コロナ禍後のオンライン診療の規制緩和には慎重論も根強いのですが、メリットが大きいため、結局、オンライン診療は解禁になる可能性は高いでしょう。
いずれにせよ、テレワーク、EC、地方・郊外への移住、オンライン診療などに関連した製品やサービスを提供している企業の株価は今後上昇していきます。
また、以上のことは日本の例を取って述べましたが、欧米をはじめ世界的な傾向であるのはいうまでもありません。したがって、どの国でも、こうしたことに関連した企業は伸びていくはずです。
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国際エコノミスト
1935年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、山一證券入社。山一證券経済研究所、山一投資顧問を経て、日本債券信用銀行顧問、日債銀 投資顧問専務、白鷗大学経営学部教授などを歴任。主な著書に『シェールガス革命で復活するアメリカと日本』(岩波出版サービスセンター)、『経済大動乱下! 定年後の生活を守る方法』(中経出版)、『日本株「超」強気論』(毎日新聞社)、『恐慌化する世界で日本が一人勝ちする』『日経平均3万円 だから日本株は高騰する!』『米中の新冷戦時代 漁夫の利を得る日本株』(以上、フォレスト出版)など多数。公式ウェブサイト
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(国際エコノミスト 今井 澂)
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