「妊娠中に愛人を自宅に連れ込み」ゲス不倫をした夫に、妻が"大好き"と返すワケ
プレジデントオンライン / 2021年6月4日 11時15分
■不倫夫を見捨てるかどうかは、妻の採択ひとつ
夫が不倫をしたとわかったとき、結婚生活を継続させるかしないかは妻の判断にかかってくる。芸能界を例に取ってみよう。俳優・東出昌大さんの妻・杏さんは離婚を選択したが、アンジャッシュ・渡部建さんの妻・佐々木希さんはいまだ離婚していない。不倫が報じられた歌舞伎役者・中村芝翫さんと妻・三田寛子さんも結婚を継続している。ミュージシャン・川谷絵音さんはタレント・ベッキーさんとの不倫発覚後、離婚している。映画コメンテーター・有村昆さんはナンパを繰り返し、女性とホテルに行ったと報じられたが、妻の丸岡いずみさんは、離婚について言及していない。
さまざまな事情もあるし、夫婦のことは夫婦にしかわからない。それでも、不倫夫を見捨てるかどうかは、妻の判断にかかっている。そして女性たちは「ゲス不倫は許せない」とすることが多い。
■渡部建のゲス不倫も妻目線では…
もっともゲス不倫だと叩かれた渡部建さん。多目的トイレに女性を呼び出し、あっけなくことを終えるとバッグの上に1万円札を置くという行為は、世の女性たちを激怒させた。その後、復帰しようと画策するも、その行為自体がえげつないとまた反発される。
遅くなった釈明会見で、彼はだらだらと汗を流しながら言葉に詰まり続けた。それでも妻の佐々木希さんは、インスタグラムに自身の姿や料理の写真をアップし、女性たちからの支持を得ている。ひょっとしたら「いつか来るべき離婚Xデー」をにらんでの戦略なのかもしれないが、少なくとも今のところ離婚という話は持ち上がっていない。
4年ぶり2度目とオリンピックのように不倫を繰り返した中村芝翫さんの場合も、梨園という特殊な世界のせいか、離婚の気配はない。
となると、一般的な「ゲス不倫」と、当事者である妻の「ゲス不倫」との間には、何かしら大きな齟齬(そご)があるのではないだろうか。
東出昌大さんは、浮気というより「本気」が丸見えの不倫だった。川谷絵音さんも、ベッキーを実家に連れていって親に紹介している。妻からみれば、「単なるつまみ食いで気持ちがいっていなければ、許す余地はあるが、一時でも本気で惚れた場合こそがゲス不倫」という指標があるように思えてくる。
もちろん、たった1回の「酔っ払った勢いとノリ」で関係してしまったために妻から離婚を切り出された男性もいるし、「風俗でも許さない」女性もいる。価値観はそれぞれだ。ただ、芸能界の「ゲス不倫状況」を考えると、どういうことをしたにせよ、「本気こそがNG」という基準が見えてくる。
■カヨコさん(37歳・仮名)の場合
「人としての夫をとるか、父親としての夫をとるか、さんざん悩みました。子どもたちが大きくなったとき、夫を人として見たら許した私が非難されるかもしれない。それでも私は、父親としての夫を優先させました」
苦渋の選択をしたと語るのは、カヨコさん(37歳=仮名・以下同)だ。3歳年上の男性と3年つきあい、29歳のときに結婚した。翌年、妊娠し、臨月に入ってからは、徒歩10分ほどの実家で生活することが多くなった。
「夫は多忙でしたし、出張も多かったので不安だったんです。両親がいる実家なら、何かあってもすぐ病院へ運んでもらえる。夫も『そのほうがオレも安心』と言ってくれていました」
予定日を待たずに陣痛がきて夕方、母親とともに病院へ。その日、夫は1泊で九州に出張中。病院へ行くとき、陣痛の合間、そして出産してすぐと、何度も連絡をとろうとしたのが、夫にはメッセージも電話もつながらなかった。
■ヘアブラシを取りに家に行くと、出張中のはずの夫が…
「夫がようやく連絡をくれたのは、明け方に出産した日の昼ごろ。電話ではなくてメッセージでした。『仕事で連れ回されて連絡できなかった。ごめん。今から飛行機乗ってすぐ帰る』と。電話してみたのですが出ませんでした。本当に九州にいるのかしらと不安になったのを覚えています」
その不安は的中。夫は自宅にいたのだ。お気に入りのヘアブラシを自宅に置いてきてしまったことに気づいたカヨコさんは、母親に取ってきてほしいと頼んだ。
「母は、ヘアブラシなんて売店で買ってくるわよと言ったのですが、私、なんだか嫌な予感があったんでしょうね、どうしても自宅から取ってきてほしいと頼んだんです。母も、私の尋常ではない雰囲気を感じ取ったのか、鍵を預かって行ってくれました。鍵を開けてリビングに入ったら、Tシャツにパンツ一丁でソファに寝っ転がっている夫がいたそうです。テーブルの上にはワイングラスがふたつ、しかも部屋は乱れていて夫は焦りまくっている。バスルームに女性がいたんですね。どういうこと、と母が呆然としていたら、『あとで説明しますから、取りあえずここはお引き取りを』と夫が土下座したんだそうです(笑)」
■娘を連れて帰るのは自宅か実家か、本当に悩んだ
なんとも情けない図が浮かんでくる。実際には見ていないのだが、カヨコさんも簡単に思い起こせるのだろう、クスクスと笑っている。
「当初、母は私には知らせまいとしたようです。だけどブラシを持ってこないから私が問い詰めたら、『出産したばかりのあなたには言いたくないけど』と話してくれた。なんとなく予感があったのかもしれません、私。それを聞いても取り乱したりはしなかった」
夕方になって、夫がようやく病室に姿を見せた。ドアを開けておどおどしたように中を見渡している。
「大丈夫よ、お母さんは帰ったからと言ったら、ひきつった顔をしていましたね」
夫はあれこれと言い訳をしていたが、カヨコさんは「あなたに言い訳する資格はない。これからのことは私が考えるから」とぴしゃりと言った。
赤ちゃんを抱いた夫の目からぽろりと涙がこぼれたのをカヨコさんは見逃さなかった。
「あなたが腕に抱いているのは、命だよと言いました。落としたらもう失われてしまうほどの命なんだよって。夫はただ黙って泣きながら、娘の顔を見ていました」
それから退院するまでの間、カヨコさんは考え続けた。夫とつきあっていた3年間に起こったこと、夫がかけてくれた言葉の数々、彼女が落ち込んだとき朝までつきあって励ましてくれたこと。
「それでも私が出産しているときに女を家に連れ込んだことは致命的ですよね。つきあっている3年間と結婚生活1年間、合計4年間の夫との関係を無価値と決めつけるくらいひどいことをしたとは思いました。でも夫は『もう一度だけでいい、チャンスがほしい』と言っている。娘を連れて帰るのは、自宅か実家か、本当に悩みました」
■離婚しないでおこうと思った“決め手”
退院前日、夫から「明日、迎えに行く。来るなと言われても行く」とメッセージが来た。どちらかといえば強い物言いをしない夫の決意表明に、カヨコさんはもう一度賭けてみようと決めた。
「本当かどうかわからないけど、あの日、家に連れ込んだ女性は友人の友人で、ふたりともひどく酔っていて、方向が同じだったのでタクシーに乗ったそうです。女性の家は遠いので夫が自宅マンションの前で先に降りた。気づいたら女性も降りていたのだ、と。なんかうさんくさい言い訳だったけど。しかたがないので家に入れて、その日はふたりともリビングのソファに倒れ込んで寝てしまった。
翌日昼ごろ起き、迎え酒だとワインを飲んだ。女性がシャワーを浴びたいというので提供した。それだけだ、と夫は言い張りました。あとから避妊具が減っているのを見つけたので、その言葉はまったく信用していないけど、娘を抱いたときの夫の涙は信用してもいいかなと思ったんです。それにどうやら、夫は彼女に恋をしているわけでもなく、今後つきあうとかそういう関係でもなさそう。そこが決め手だったかもしれません」
■父親としての夫を信用して正解だった
夫と彼女が離れられない仲になっているとしたら、絶対に離婚すると彼女は夫に告げた。それはあり得ない、本当にあの夜だけのことだし、誓って性的関係はないとも言った。避妊具の件は、「武士の情けと思って飲み込んだ」とカヨコさんは言う。
だが自宅に帰るとすぐ、新しいソファを注文したのは言うまでもない。
「1週間後くらいに夫が帰宅したとき、新しいソファを見てぎょっとしていました。でも『これで全部、水に流すから』と言ったら、ありがとう、ごめんねと」
あれから7年、夫はこの春、小学校に入学した娘にデレデレだ。その後生まれた長男のときは、カヨコさんの育休が終わってから自身が育休を取得、3カ月ほどではあったが保育園に入れるまで家事育児を万端、引き受けてくれた。
「とはいえ、日常生活のことでケンカもするし、夫がただのいい人になったわけでもない。ときどき、避妊具が減っていたことを言ってやればよかったとも思います。でも、この7年間を思い返すと、家族での楽しいことしか出てこない。子どもたちはお父さんが大好きですしね。あのとき、父親としてのこの人を信用しようと思ったのは、今のところ間違いではなかったかなと感じています」
■「この先、私が不倫をしないとは限らない」
人間は完璧ではない。カヨコさんは年を重ねるにつれ、そう思うようになっているという。
「社内でも、あのふたり不倫してるんじゃないという噂が飛び交ったりすることがありますが、会社の人事で派閥が競って足の引っ張り合いをしているような状況からみれば、不倫しているふたりのほうがまだ平和かもなんて思ってしまう。でも家庭にいる人間としてみれば、会社でどんな派閥争いがあってもたいしたことではなく、自分の配偶者が不倫していることのほうがずっと重要。どの視点から見るかで重要度が違う。私が夫を、ひとりの男、ひとりの人間としてではなく、父親という観点だけで見ようとあのとき思ったことがよかったかどうかは、これからにかかってくるのかもしれません」
どういう状況にせよ、自宅に女性を引っ張り込んだ時点でレッドカードという女性もいるだろう。何を許せなくて、何を許せるのかは人によって違うのだ。
「この先、夫が不倫しないとは限らない。私がしないとも限らない。そのときお互いにどうするかはそのときにならないとわからない。でもきっと、私は夫が心身ともに相手の女性に溺れているのでなければ、また許してしまうような気がします」
あの日から、夫は毎日、カヨコさんに「今日もありがとう」「大好き」と言うのだそうだ。カヨコさんは言葉での愛情表現をそれほど重視していないのだが、夫が必死で自分に課しているのであろうそれらの言葉に対し、「あ
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フリーライター
1960年生まれ。明治大学文学部卒業後、フリーライターとして活動を始める。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』(ともに新潮文庫)『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』(扶桑社)など著書多数。
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(フリーライター 亀山 早苗)
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