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「常識外れの賠償は却下に」文在寅大統領には徴用工問題を解決する責任がある

プレジデントオンライン / 2021年6月11日 18時15分

ホワイトハウスのイーストルームで、記者会見に臨む韓国の文在寅大統領(=2021年5月21日、アメリカ・ワシントンD.C.) - 写真=CNP/時事通信フォト

■ソウル中央地裁判決は3年前の大法院判決と正反対

6月7日、韓国人元労働者(元徴用工)らが日本企業に賠償を求めた訴訟で、韓国のソウル中央地裁が原告の請求を却下した。元徴用工の訴えは退けられ、門前払い扱いされた形である。

国際法上、まっとうな判決で、日本政府の主張にも近い。しかし、だからと言って日本は手放しで喜んでばかりではいられない。韓国内では反発の声も上っている。韓国の世論や今後の韓国司法の動きに警戒し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の言動にも注視する必要がある。

元徴用工訴訟をめぐっては、2018年に大法院(韓国最高裁)で新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業に賠償を命じる判決が確定している。今回のソウル中央地裁の判決はこの大法院判決とは正反対の判断だった。同種の訴訟で地裁が最高裁と正反対の判決を下すような事態は異例で、日本では考えられない。

■大法院判決は日韓請求権協定と矛盾する偏った判決だった

原告の訴えを却下したソウル中央地裁判決と、日本の企業に賠償を命じた大法院判決との判断の違いを簡単に説明しておこう。

ソウル中央地裁判決は、元徴用工とその遺族ら85人が日本企業16社を相手取り、1人当たり1億ウォン(985万円)の損害賠償を求めた訴訟に対するもので、日韓の請求権問題を「完全かつ最終的に解決した」とする1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づいて「訴訟を起こす権利の行使は制限される」と判断して訴えを却下した。

これに対し、大法院判決は「個人の慰謝料の請求権は日韓請求権協定には含まれない」と判断し、新日鉄住金と三菱重工業に損害賠償を命じた。

しかし、この判断は同協定が日本と韓国の国民がともに相手の国家・国民に対する全ての請求権に関し、「いかなる主張もできない」と定めている点に大きく矛盾している。その意味で大法院判決は偏った実におかしな判決だった。

■韓国の裁判は「忖度司法」と呼んでも過言ではない

なぜ、ソウル中央地裁は3年前の大法院判決を否定するような判決を下したのだろうか。

5月7日付の記事「『韓国の裁判所も迷走』慰安婦問題を政治利用する文在寅大統領の姑息さ」でも指摘したが、韓国の裁判所は日本のように司法がきちんと独立していない。三権分立が十分でない。裁判所が政権の意向や世論の動向をにらんで判断を出すことがある。「忖度(そんたく)司法」と呼んでも過言ではないだろう。

韓国・ソウルにある高等法院
写真=iStock.com/Rex_Wholster
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rex_Wholster

いま文在寅政権は、対中国政策を推し進めるアメリカのバイデン政権の強い求めで日本との関係を改善させる必要に迫られている。大統領の任期も来年5月と残り1年を切り、文在寅大統領は切羽詰まった状況下にある。支持率も落ち込んでいる。ここで懸案の徴用工問題を解決し、バイデン政権の機嫌を取る必要がある。そうしなければ日韓関係どころか、米韓関係までも悪化し、次の大統領選で与党候補を勝たせることもできなくなる。

今回のソウル中央地裁の判決は徴用工問題解決の大きな糸口になる。

■慰安婦訴訟でも最初の判決と正反対の判断を下している

今年1月18日、ネット上で文在寅大統領の新年記者会見が行われた。この記者会見で文在寅氏は徴用工問題について「日本企業の資産が現金化されるのは韓国と日本にとって好ましくない」と述べ、初めて現金化を避けたいとの考えを示した。

韓国の元慰安婦の問題についても、これまでの態度を改めて「韓国政府は日韓合意を公式的なものだったと認める」と語った。日韓合意とは日韓両政府が「最終的かつ不可逆的な解決」を確認し合った2015年12月の約束である。

2017年5月に大統領に就任した左派の文在寅氏は公約でこの日韓合意を否定し、2018年11月には慰安婦の財団も解散させた。韓国民の反日感情を利用して自らの政権を盛り上げようと企んだのである。

しかし、前述したように新年の記者会見では豹変(ひょうへん)するかのように態度を改めた。それを見たソウル中央地裁は4月21日、元慰安婦らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で慰安婦らの訴えを却下した。これは1月18日の最初の慰安婦判決とは正反対の判断だった。このときは多少驚かされたが、韓国の裁判は忖度司法なのである。

■産経社説は「司法の暴走を助長したのは文大統領自身」と指摘

6月9日付の産経新聞の社説(主張)は「『徴用工』賠償却下 文政権の責任で解決急げ」との見出しを立ててまずこう主張する。

「国際法に則った常識的な判断である。問題を長引かせれば、韓国は常識外れの国という国際的な不信が増すだけだ。文在寅政権は自身の責任で早急に解決すべきだ」

韓国という国は国際常識に外れるところがある。判断が正反対になる司法もそのひとつだ。間違っているのが韓国にもかかわらず、文在寅大統領はこれまで徴用工問題で何ら解決に向けた行動を取らなかった。沙鴎一歩はこれまでも強調したが、文在寅氏は大統領職を離れる前に徴用工問題を解決すべきである。

産経社説も主張する。

「司法の暴走を助長したのは、文大統領自身である。韓国外務省は今回の判決後、『開かれた立場で日本と協議を続ける』などとしたが、解決済みの問題で日本が交渉に応じる余地はない。すべて韓国政府の責任と知るべきである」

この産経社説の主張は正論である。徴用工問題も慰安婦問題も文在寅氏が「司法の暴走を助長した」のだ。

産経社説は最後にこう指摘する。

「韓国大田(テジョン)市に不法設置された、痩せてあばら骨が浮き出た『徴用工』像についても、韓国の裁判所が5月、『韓国人徴用工ではなく日本人をモデルに制作された』という主張に『真実相当性がある』と認定した。嘘はだめだということである」

ウソはウソでしかない。今後も韓国司法が常識的な判断を下せることを祈りたい。

■歴史問題を巡る訴訟に文在寅大統領は具体策を示してこなかった

6月9日付の東京新聞の社説は「これ(徴用工訴訟)とは別に、元慰安婦訴訟でも、国家が外国の裁判権に服するか否かを巡り、韓国で正反対の判決が下されたため、混乱が続いている」と指摘し、こう主張する。

「歴史問題を巡る訴訟に関し、文在寅大統領はこれまで具体策を示してこなかったが、司法判断が大きく割れてしまった現実を、重く受け止めるべきではないか」

東京社説が主張するように文在寅大統領は「重く受け止め」、自らの責任を取るべきである。

■文在寅氏は過ちを認めて日本に謝罪して解決すべき

東京社説は「元徴用工についてはすでに、韓国政府が賠償を肩代わりするなど複数の案が出ている」「元慰安婦問題を巡っては、日韓両政府間で15年、合意に至ったが、事実上放置されている」と指摘したうで、「文大統領の任期は残り一年を切った。既存の合意を発展させるなど、自ら指導力を発揮して日本側と対応を協議してほしい」と訴える。

だが、間違っているのは韓国である。「日本側と対応を協議してほしい」と求めるのではなく、文在寅氏は過ちを認めて日本に謝罪して解決すべきだ、と主張すべきだろう。

東京社説は書き出しで「司法の場で、歴史に関する問題を扱うことがいかに難しいか。それを示した判決といえよう」と書いているが、これも納得できない。

歴史問題を扱うことが難しいのではなく、韓国司法に忖度する傾向があり、産経社説が指摘するようにそんな司法を暴走させたのは文在寅氏なのである。東京社説は問題の本質を理解していない。

おまけに東京社説は最後にこう主張する。

「日本政府は、すべて韓国側に責任があるとして、受け入れ可能な解決案を出すよう求めてきた。ただ、このような一方的な姿勢では問題をこじらせるだけだ」
「未来志向の日韓関係を築くには双方が対話に応じ、外交的な解決策をともに探るべきである」

これは朝日新聞の社説が好きな喧嘩両成敗の論法にすぎない。東京社説は朝日社説に引っ張られているようだ。社説である以上、独自の論調がほしい。

■日韓関係が「悪い」との回答は、日本で81%、韓国で89%

同じ6月9日付の読売新聞の社説は「韓国の文在寅大統領は、こうした世論を重く受け止め、歴史問題の蒸し返しで停滞が続く対日関係の打開に動くべきだ」と主張したうえで、日韓の世論調査の結果を次のように取り上げる。ちなみに「こうした世論」とは「日韓関係の改善が必要」という日本と韓国の国民の声である。

「読売新聞と韓国日報の共同世論調査で、現在の日韓関係が『悪い』との回答は、日本で81%、韓国で89%だった。相手国が『信頼できない』という回答も、日本で69%、韓国で80%に達した」
「韓国最高裁が2018年、元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟で日本企業に賠償を命じる判決を確定させた後、両国とも『悪い』が80%以上で推移している」

こうした世論調査の数字を受け、読売社説は「政府間の関係悪化が国民感情にも影響を与え、相互不信が長期化しているのは深刻な問題だ」と指摘するが、相互不信の原因を作ったのが文在寅大統領である。読売社説には文在寅氏の責任を強く追及してほしい。産経社説に比べ、同じ保守の社説として読売社説の主張は弱い。

■読売社説は「言葉を行動に移してもらいたい」と呼びかけ

終盤で読売社説は今回のソウル中央地裁の徴用工判決を取り上げ、「判決は、日本側を相手取って賠償を求める権利を行使することは日韓協定によって制約される、と述べている。国際法の観点に沿った妥当な判断だが、最高裁判決の効力が消えたわけではない」と懸念する。

その通りで、日本政府は韓国司法の動きに注意を払う必要がある。

最後に読売社説はこう訴える。

「歴史問題を巡り、韓国の裁判所の判断は揺れてきた。外交を担う文氏は、司法に振り回されず、責任を持って日韓間の懸案に対応することが重要である」
「最近は、関係改善に意欲的な発言も聞かれるようになった。言葉を行動に移してもらいたい」

文在寅大統領はどのように日韓関係を改善していくのか。私たち日本国民はその言動から目を離してはならない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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