「どう、最近セックスは?」えげつない下ネタおじさんを黙らせる最強の一言
プレジデントオンライン / 2021年7月3日 11時15分
※本稿は、辛酸なめ子『新・人間関係のルール』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
■あられもないことを言ってくる旧態おじさん
「どう、最近セックスは」
と、えげつない言葉を挨拶代わりに浴びせてくる業界人男性がいます。
パーティか何かの席でした。私はそれには答えずスルーすると「最近のMeTooって何あれ、嫌だよね」となぜか同意を求められたので「私にとってMeTooは◯◯さんですから」とその人に言って、その場を離れました。
一昔前は、こんな下ネタが苦笑されつつも受け入れられていましたが、時代は変わりコンプライアンス遵守な現代では、ハラスメント系は許されない風潮です。若い世代は下ネタを言ってくる人などほとんどいませんが、旧態おじさんの中にはあられもないことを言ってくる人がいて油断できません。
何も行為がなくても、言葉で汚されたという思いは、女性の心に根深く刻印されてしまいます。楽しい思い出はすぐ忘れても、卑猥な下ネタを言われた思い出は何十年も残っているのが不思議です。女性同士で下ネタトークをするぶんには楽しいのですが……。
下ネタだったり下心だったり、男性の下半身からくる下エネルギーをどのようにかわせば良いのでしょうか。
■「下ネタには下ネタで応戦」はもう古い
私が昔やっていたのは、下ネタには下ネタで応戦するという方法です。相手が女体についてトークしていたら、さらにもっとえげつない表現でかぶせていく……。
例えば乳首の話をしていたら乳輪について話したり、乱交の話題には獣姦の話でマウンティングしたり。そして男性が引いていく、という流れです。
自分の中のインナー中学生男子を呼び出すイメージです。20代~30代前半くらいまで、あられもなく下ネタを言っていましたが、さすがにいい大人になったのと、世の中の風潮に合わせて今は封印する方向に……。
また、下エネルギーに対してはスキを見せない、というのはいうまでもなく重要なことです。そのような空気になると、私の場合、女教師モードになります。母が教師だったので、その遺伝子を呼び覚ましつつ、中高の女性教師の話し方を踏襲します。
誰にも思い出の中高の女性教師がいると思います。性を感じさせず、享楽的なこととは無縁そうな、まじめで地道で厳しい女性教師。その女教師のハキハキした喋り方で、下ネタや下心に対応するのです。
とにかくハキハキと「はい! はい!」などとあいづちを打ったりすれば、まったりした下エネルギーをかき消せます。
■「聖女のオーラ」で下ネタを封じる
冷静さで自分の身を守った友人の話もあります。
学生時代、女子寮で寝ていたら、恐ろしいことに暴行目的の男性が部屋に入ってきたそうです。しかし彼女は悲鳴を上げたりせず冷静に「外、寒かった?」などと話しかけ、しばらく普通に会話していたら、その男性はクールダウンしたのか部屋から出て行ったとか。
なかなかできない咄嗟の判断。怖がったり抵抗したりすると相手はますます興奮してしまうので、冷静さを保つことで危機から逃れることができました。自分だったら恐怖にかられてできないですが……。
下エネルギーと反対の聖エネルギーをまとうというのも有効です。常日頃から規則正しい生活をして、夜遊びはせず、飲酒も控え、音楽といえば聖歌や少年合唱団の天使の歌声を聴いたり、禁欲的に過ごします。
すると自ずと不可侵の結界のようなものができあがって、男性は性的な発言を自粛。聖女のオーラで下ネタを封じることができます。結界を張るだけなら、不動明王の真言など唱えても良いかもしれません。
■「父親の健康不安」を持ち出すと沈静化しやすい
自分の父親の体調の話を出すと、男性の下エネルギーは沈静化することが多いです。
ある若い女性に、男性から密室での打ち合わせを度々要求され、飲み物にも何か混ぜられて異様な眠気になって怖かった、と相談されました。その仕事は引き受けたいけれど、今後も不必要な打ち合わせはしたくない、と。
彼女の父親が最近手術したり体調に不安があると聞いていたので、下心おじさんにその話を出して、父の容態が心配で度々打ち合わせはできないと言ってはどうかと助言。
実際そのようにしたら、相手は了承してくれたそうです。おじさんに対しておじさんの話を出すと、おじさん同士の連帯感があるのか、こちらの状況を理解してくれるようです。不穏な気配を感じたら、父親の健康不安の話題を出すのも有効です(父親がいなければ祖父や叔父、もしくは生前の話でも)。
■「まあそういう声もいろいろありつつ……」の絶妙さ
他にも、陰謀論の話題で男性の下心は萎える、とかいろいろ方法はありますが、先日カフェで隣の会話を聞いていたら、うまいかわし方のお姉さんがいました。
その女性は昔クラブのママで、かつてお客さんだった大企業の60代男性と久しぶりに会ってお茶を飲んでいるというシチュエーションだと推察。
今は起業して経済力がありそうな彼女は、40歳になり、子どもが欲しくて婚活に励んでいるそうです。
「もう結婚しなくていいから、子ども欲しいんです」
という女性に対しおじさんは、
「結婚しなくても良いんなら私も協力できますよ」
とねっとりした口調で提案。冗談を装いつつも、表情とトーンはガチでした。するとその女性は、
「まあそういう声もいろいろありつつ……」
とまとめて流していて、さすがと感じ入りました。
完全無視すると気まずくなってしまう。相手の発言を受け止めながら、多数の意見の一つとして、罪悪感を薄めつつ、さりげなくなかったことにするという……。
今後下ネタや変な下心を見せられた時、ぜひ使いたいと思いました。
そのあと話題は変わって、昔お店にいた女性が8つ下のバーテンと結婚したけど離婚した、という噂話に流れていき、おじさんの下心はうまい具合になかったことになりました。
こんなふうに学びつつ、下エネルギーへの対処ばかりうまくなっていき、ゲーム感覚でかわしているうちに結構な年齢になってしまいました。
かわしすぎるのも問題で、かわさなくても良い相手を見極めるのが大事です……。
男性の下エネルギーはじかに受け止めず、臨機応変にかわす。
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漫画家/コラムニスト
武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒。雑誌連載、執筆活動の合間を縫ってテレビ出演も。
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(漫画家/コラムニスト 辛酸 なめ子)
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