「全く逆ではないのに『逆に』を連発」信頼されない人が無意識に発する"余計なひと言"3つ
プレジデントオンライン / 2021年7月1日 8時15分
※本稿は井上智介『ストレス0の雑談』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■雑談テクを本番で活かせない悩み
「軽い雑談ができないから、営業の仕事がしんどい……」
「休憩中の会話が弾まなくて、職場で打ち解けられない……」
「○○さんみたいにコミュ力が高くないから、人間関係が希薄……」
みなさんは、このような悩みを抱えたことはありませんか。
その悩みを少しでも解消しようと思って、雑談を盛り上げるテクニックや、話題のネタ100選などを調べたことがある人もいるかもしれません。しかし、本番では頭が真っ白になって、うまく話せなかった経験もあるでしょう。
その理由は、「木を見て森を見ず」の状態になっていたからです。
雑談はコミュニケーションの一種だからこそ、「技術」ではなく「人の心」という土台に注目すべきなのです。
■雑談のストレスが晴れる5つのステップ
次の5つのステップを順に踏んでポイントをおさえていくことで、コミュニケーションの土台を築くことができます。結果として、雑談にストレスを感じなくなるのです。
1つ目は「目的」の設定です。まずは、途中で迷わないための道しるべが必要です。どんな場面でも軸がぶれない雑談の目的を定めましょう。
2つ目のテーマは「自己開示」です。自己開示は雑談の鉄則ですが、ここでつまづく人が非常に多いのです。
3つ目は「話題」です。話題はストックするのではなく、どんな相手でも使える汎用的なテーマを意識します。
4つ目は「聞き方」です。コミュニケーションにおいて一番大切なのは、聞く力だと言われています。話を聞けない人の原因から、改善のコツまで、具体的に考えてみましょう。
そして最後のステップは、「話し方」です。重要なのは、上手は話し方ではなく、信頼関係を崩さない話し方です。相手を不快にさせることがなくなり、安心して雑談ができるようになるはずです。
本稿では、ステップ5の「話し方」について具体的に紹介していきます。
■たった一言で信頼関係は崩壊する
雑談における「話し方」で最も重要なのは、大失敗をしないことです。
ここでの大失敗とは、あなたの発言によって、相手を傷つけてしまうことです。とくに、余計な一言を言ってしまい、信頼関係を崩してしまう人がいます。
もちろん、本人としては悪気がないかもしれません。しかし、その一言によって、相手からの印象はとても悪くなり、今まで積み上げた信頼関係がすべて崩壊することもよくあります。
そこで、ここからは、あなたがつい使ってしまいがちな余計な一言の3つを紹介したいと思います。まずはこの3つを言っていないか、自分に問いかけてみてください。
■余計な一言① 謙遜しているつもりの「○○でいいですよ」
この一言は本人からすれば、謙遜したつもりかもしれません。しかし、相手からすれば「仕方がないから、嫌々選んだ……」のようなニュアンスに伝わります。
たとえば、次のようなやり取りのとき、あなたはどのような印象を持つでしょうか。
A「大阪に来てもらったので、案内しますよ。何が食べたいですか?」
B「お好み焼きとか粉ものでいいですよ」
もしかしたら、Bさんとしては、相手に気を使わせないように「定番のものをいただきたいです」という意味で発した言葉かも知れません。しかし、Aさんからしたら、せっかくのおもてなしの気持ちが、とても軽んじられているようにも聞こえますよね。すると、今度Aさんは、Bさんに対してポジティブな気持ちを持ち続けるのが難しくなるでしょう。
あなたが、このような余計な一言で、相手を傷つけないために、日常的に「○○でいいですよ」は一切使わないようにしましょう。この表現が最適である場面は、日常に存在しません。もし、このような表現をするときは、謙遜ではなく「○○がいいな」と、あなたのストレートな意思表示をするように心がけてください。
■余計な一言② 有能アピールの「逆に」
これは余計な一言というよりは、口ぐせに近いかも知れません。本人も気がついていないことが多いのですが、この表現は、意外にも相手を不愉快にさせてしまうことがあります。
「逆に」という表現を使う本人からすれば相手の話を要約していることや、聞いていますよというアピールだと思っている節があります。
ただ、相手の話を聞いているアピールだとしても、「逆に」という表現は、相手と同じ側面ではなく、あえて違う側面から見ていることをアピールしているのです。
これは、深層心理で「私は他人とは違いますよ」「私は有能ですよ」との思いがあり、そんな自分を評価してほしいという欲求の表れです。これを何度も聞かされる相手からすれば、不愉快なのは言うまでもないでしょう。
さらに、本人の言い分を論理的に分析してみると、要約しているつもりでも、まったく「逆ではない」ことが多いのです。つまり、日本語としても単純に不適当なのです。
もし、このような口ぐせが思い当たるなら、もう「逆に」という表現は使わないようにするのが無難です。
そもそも、相手の話に対して、肯定的なのか否定的なのかもわかりにくい表現です。相手をイライラさせる可能性もあるので、1つもいいことがないキーワードになります。
■余計な一言③ 「太った?」など容姿に関する指摘
久しぶりに会った相手に対して、平気な顔で「なんか疲れてませんか?」と言ってしまうような人は、相手を傷つけている可能性が高いです。ほかにも、「太った?」「肌荒れてますね」「健康診断でひっかかりませんか?」なども、相手の見た目についての無神経な発言です。
このような人は、心配しているつもりでも、相手に対する配慮が欠けてしまっています。常に自分のことにしか興味が持てず、自分の感情や考えを頭の中で何も吟味することなく、そのまま発言してしまっているのです。
オブラートに包んで「マイペースな人」と表現されることもありますが、相手からすると、ただの悪口にしか聞こえません。
■無神経な一言を予防するには
ただ、このような無神経な発言をする人には、自覚症状がなく、改善までに時間がかかります。「私はこんなこと言っていない」と思った人も、これまでに一度も言ったことがないとは言い切れないのではないでしょうか。
まずは、もしかしたら無神経な一言を言っているのかもしれない、と考えてみることから、始めてほしいと思います。
無神経な一言を予防するには、しっかり相手を観察することが必要であり、一度相手の立場に立ってから発言することが一番効果的です。最初のうちは、思ったことや考えたことを、頭の中で何のフィルターも通さずに話すことをやめましょう。発言する前には、「もし自分が同じことを言われたら、嫌じゃないか?」と自分に問いかけてから発言するようにしてください。
■謝罪のときにしがちな「余計な一言」2つ
これらの余計な一言は、今までの信頼関係を壊すほどの破壊力があります。ただし、誰しも人間なので、ついこのようなことをやってしまう可能性はありますよね。
そのようなときは、素直に心から相手を傷つけたことを謝罪するのが大切です。ただし、つい余計な一言を言ってしまう人は、その謝罪のときにでも、余計な一言を言っていることがあります。本人としては真剣に謝っているつもりなのに、周りをイライラさせていることがあるのです。
たとえば、謝罪しているのに、つい弁解したり、正当化したりしていませんか。ちなみに弁解とは、「気分を害することを言ってしまって、申し訳ありませんでした。でも、本当にそんな気持ちにするつもりはなかったのです」のような言い方であり、ちょっとでも責任を逃れようとするスタンスがにじみ出てしまっているのです。
また、正当化とは、
「たしかに、私も申し訳ないところはあったけど、ほかの人も同じように言うこともありますよね」
という社会的比較で、部分的には自分の責任を認めるものの、そこまで非難されるようなことはしていない、と言いたげなスタンスが含まれます。これでは、相手は心から謝罪されたような気持にはなれないのです。
余計な一言を言ってしまったと思ったら、まずは謝罪。そしてその謝罪でも、余計な一言を言っていないか意識していきましょう。
「雑談が苦手」だと感じているあなたも、仲のいい友人や家族とたくさん話をして、幸せを感じたことがあるはずです。誰かと楽しく話をしたことで、その1日に充実感を覚えた人もいるでしょう。
ストレスを感じないコミュニケーションは、本来楽しいものです。どんな相手でも、どんな場面でも、あなたが雑談を楽しめるようになることを願っています。
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産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務
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(産業医・精神科医 井上 智介)
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