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「花王のバブが過去最高の売上」入浴剤市場で起きている"ある重大な変化"

プレジデントオンライン / 2021年8月26日 15時15分

昨年好調だった「バブ アソートタイプ ナイトアロマ」(左)と「バブ アソートタイプ ミルキーアロマ」(右) - 画像提供=花王

花王の「バブ」は2020年、1983年の発売以来で過去最高の売上を記録した。特に売れたのは4つの種類が入ったアソートタイプの商品だ。なぜ売れたのか。花王パーソナルヘルス事業部でバブ ブランドマネジャーを務める仲田実沙希さんに聞いた――。

■コロナ禍で過去最高の売上を記録

在宅時間の増加を受けて、入浴剤市場が大きく伸長している。花王によれば、市場全体で前年比115%となった。入浴剤と一口に言っても、「炭酸ガス」「温泉風」「美容ヘルスケア」「キャラクターもの」などさまざまな種類が発売されているが、炭酸入浴剤を含めた全体で昨年は伸長した。

花王「バブ」シリーズも1983年の発売以来で過去最高の売上を達成した。仲田さんは、現状を次のように分析している。

花王 パーソナルヘルス事業部の仲田実沙希さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
花王 パーソナルヘルス事業部の仲田実沙希さん - 撮影=プレジデントオンライン編集部

「温泉系の入浴剤で気分転換をしたり、美容効果を求めて発汗作用のある入浴剤を使用したり、子どもとの入浴タイムを楽しむためにキャラクターものの入浴剤を使う傾向が見受けられました。いわゆる『おうち時間』の上手な活用法の一つとして、入浴剤に注目が集まっているようです」

「バブ」シリーズのなかでも特に好調なのが、1箱で4種類の香りを楽しめるアソートタイプだ。以前から人気だった、ラベンダーやカモミールなど癒やしの香りを中心に詰め合わせた「ナイトアロマ」と、昨年秋に発売した、温泉のような乳白色の湯で優雅な気分に浸れる香りを堪能する「ミルキーアロマ」が一層売れ、2020年は前年比120%となった。

なぜ、これほどまでに入浴剤が売上を伸ばしたのか。その理由は、2つあるという。

■「湯船に入る人」が増えている

理由1:コロナによる入浴関連行動の変化

2020年に行われた花王の調査によると、「湯船入浴率」「1週間あたりの湯船入浴日数」「湯船入浴時間」の3つがすべて増加しているという。「湯船入浴率」は2018年の約半数から大きく伸び、70%を超えた。湯船入浴実施者をベースに調査した「1週間あたりの湯船入浴日数」も、「毎日湯船に入る」と答えた人が2018年の48%から約10%増え、59%となった。また、「5分以上湯船につかる」と答えた人は80%を超えている。

入浴剤の使用率は横ばいで50%前後となっているが、入浴剤の使用頻度は上昇。週に3日以上使う人が2018年は49%でわずかに半数を下回っていたが、2020年には57%まで上がった。

さらに、入浴剤の平均単価も上がっている。製品仕様によってもさまざまだが、2010年から年々上昇し、2021年(1〜5月)の平均値は400円とみている。その背景には、「多少値段が高くても、健康的な生活を手に入れられるなら積極的に使いたい」という消費者の意向があるという。

■春夏シーズンの店頭展開強化に成功

理由2:「健康力を高めたい」というニーズ

花王の調査では、「入浴によって健康力を高めたい」という消費者の動向も明らかになった。2020年に入り、入浴によって「血行を促進させたい」「自律神経を整えたい」「免疫力を高めたい」と答えた人は、それぞれ前年比で5〜10%ほど上昇。日常的な入浴を通して健康増進をのぞむ人が増えていることがわかる。

また、コロナの影響により店頭における陳列状況にも変化が見られた。もともと、メーカーサイドの施策は秋冬が中心。例年、入浴剤は春夏シーズンになると山積み率が低下していたが、2020年からは夏でも入浴剤が使われるようになり、花王は春夏の店頭展開強化を開始。少しずつ成果が見えているという。

「2020年は消費者の入浴剤に求める『健康力ニーズ』に変化がなかったため、コロナ禍で高まった健康志向が年間を通して維持されていることがわかりました。入浴剤が季節商材ではなく年間商材として販売されれば、市場が拡大すると見込んでいます」

■2022年のキーワードは「セルフヘルスケア」

さらなる市場拡大の可能性を秘めている入浴剤。仲田さんは、今後の戦略のキーワードは、「セルフヘルスケア」だと話す。外出が制限されがちなコロナ禍では、出社・在宅の不規則な繰り返しにより生活リズムが乱れ、疲れがたまるが、マッサージ施設や温泉、病院などに行きづらい。そのため、日常生活に休息を上手く取り入れたセルフヘルスケアが必要になる。

そのような状況を見越して、花王パーソナルヘルス事業部は今後、高濃度炭酸の「バブメディキュア」の育成に注力するそうだ。現在この商品は、「特に疲れがたまったとき」に使用する商品として打ち出されており、疲労・肩こり・腰痛・冷え性などの悩みを抱えている人をターゲットに据えている。

「バブ メディキュア 柑橘の香り」(左)と「バブ メディキュア 森林の香り」(右)
画像提供=花王
「バブ メディキュア 柑橘の香り」(左)と「バブ メディキュア 森林の香り」(右) - 画像提供=花王

しかし今後は、健康力の向上を目指す人や、自身のメンテナンスに興味関心を持つ人に向けて、年代にとらわれず幅広くメッセージを発信する予定だという。「不調改善」を全面的に謳ったパッケージから、「理想の自分」を描いたパッケージへと、刷新の準備も進められているそうだ。

「2021年秋に予定している『バブメディキュア』リニューアルを機に、高齢者層やファミリー層はもちろん、30〜40代の働き盛りの世代にも、この商品の魅力を伝えていけたらと考えています。今後は、『入浴剤を入れた湯船に浸かることで、誰でも簡単に、入浴時間を自身のメンテナンスタイムに変えられる』というメッセージを積極的に発信していく予定です」

■2021年も引き続き売上は好調

花王は、今年も引き続き入浴剤の需要が伸びると予測し、前年比増を見込んでいる。働き方や生活様式のさらなる変化を踏まえての予想とのことだが、果たしてその予想は当たるのだろうか。昨今の状況について、仲田さんは次のように話した。

「2020年に売上が大きく伸びたため、正直なところ、2021年にはその反動で消費が落ち込むのではないかという不安がありました。しかし、時代の流れに合わせた春夏の店頭展開強化などが功を奏し、今のところ売上は下がらず、むしろ微増しています」

2022年は今まで以上にセルフマネジメントが求められるため、商機はあると予想しているという。花王は、生活者の意識・行動変化に寄り添い、必要に応じてブランド価値を転換していくことで、年間を通して役立つセルフヘルスケアアイテムとしてバブを育成していく。

コロナウイルスの影響により、予期せぬ成長を遂げた入浴剤市場。これからどのような変遷を遂げるのか、注目しておきたい。

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華井 由利奈(はない・ゆりな)
ライター
愛知県出身。椙山女学園大学卒業後、印刷会社に就職。デザイン業務を1年間担当した後、コピーライターとしてトヨタ系企業など100社以上の取材を行う。2016年に独立し、2018年に初の自著『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』を光文社より出版。5刷2万7000部を達成した。現在は2作目を執筆しながら、日経doorsなどで、女性活躍、働き方、ライフスタイル情報を中心に執筆。全国各地の中学・高校・大学や教育講座で講演も行っている。

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(ライター 華井 由利奈)

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