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「山を買ってキャンプ場に」今、富裕層が有望視する"投資物件"の特徴

プレジデントオンライン / 2021年8月26日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CHUNYIP WONG

富裕層の不動産投資家たちは、どんな物件に目をつけているのでしょうか。米国公認会計士で不動産コンサルタントでもある午堂登紀雄さんが最新の動向をリポートします――。

■五輪は不動産にあまり影響しない

新型コロナウイルスの影響により1年延期された東京五輪。

それで五輪後の不動産市況はどうなるかという質問をよくいただくのですが、結論から言うと日本の不動産市況と五輪は特に関係ないと考えています。

オリンピックは、だから「家が欲しい」「家がいらない」という動機にはならないからです。

確かに選手村を改装して分譲されるマンション「晴海フラッグ」は人気のようですが、臨海エリアはともかく市場全体を動かすほどのインパクトはないでしょう。

では富裕層(金融資産数億円、年収2000万~5000万円程度:これは彼らの事業規模や購買パターンによる推定です)は、今後どのような投資物件を狙っていくのか。私はSNSで多くの不動産投資家や各地の地元大家の会の主催者とつながっていることもあり、情報収集してみました。

私の周囲には積極取得派、売買等による資産の組み換え派、慎重見極め派、他の投資対象に分散派など動きは様々でありますが、彼らの動きの一端をご紹介します。

■キャッシュリッチだが鈍る取得スピード

誰も大っぴらには言いませんが、コロナ緊急対策支援融資を受け、焼け太り状態になっている投資家が多いようです。

資金的には困っておらず使うアテはなくても、とりあえず借りておこうという投資家は多数いて、ゆえに手元資金には余裕があります。

ここ数年は1棟アパート・1棟マンションへの融資は厳しくなっていたものの、今年の春ごろより金融機関の融資姿勢が積極的になっており、余った自己資金を活かせるため取得意欲は依然として強いものがあります。

しかし都市部の不動産価格は相変わらず高止まりしており、利回りも低い。そのため富裕層の資産拡大スピードは全般的に鈍っている印象です。

不動産市場を主戦場にしている富裕層にとっては、「高値掴みはしない」は鉄則だからです。

■注目を集める戸建て賃貸

では何を買っているかというと、富裕層の投資意欲が強いのが、たとえば戸建て賃貸です。リモートワーク・テレワークの浸透の影響か、地方郊外の一戸建てが動いているからです。

大手企業が賃貸契約満了を迎えるタイミングでオフィスの縮小に動いているようなので、自宅でオンライン会議をする際、近隣への配慮や書斎確保の必要性から、集合住宅から戸建てに移る人は増えるかもしれません。

つきあいのある不動産業者に聞くと、分譲戸建は建てれば売れると言っていました。

そのため投資家の中には、取得して貸す賃貸経営のみならず、余っている郊外の戸建てを安く取得し、リフォームして高値で転売する人も出てきています。

■人気が再燃している別荘民泊

軽井沢・葉山・富士五湖周辺を代表とする別荘地への投資も比較的人気です。

前述の通りコロナの影響によるリモートワーク・テレワークの浸透で、都心から抜け出す人が一定数いるため、別荘を取得し普段はワーケーション民泊として貸し出しています。

本人が利用するケースもありますが、こうした定番の別荘地はそもそもヨソ者が多いため、他の地方ほど排他性がなく住みやすい点が魅力です。そして定番であるがゆえに資産価値が保たれやすく、売却も容易だという読みもあるのでしょう。

また、ここ何年もの間、日本の森林資源の活用が進まなかったこともあり、所有者も高齢で相続に難航したり管理にも困っているなどといった理由で、山林の価格は大きく下落していました。場所にもよりますが、一山数十万円といった物件もあり、普通のサラリーマンでもお小遣いで買える値段の山林がゴロゴロあります。

自然公園のキャンプ場にフィールドテント
写真=iStock.com/Prapat Aowsakorn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prapat Aowsakorn

そこで、昨今のキャンプブームとコロナ禍に乗る形で山林を買い、キャンプやグランピング施設を作って貸し出している人もいます。3密も回避できるので人気のようです。

■競売中心の投資家は臨戦態勢に

住宅ローンの返済が苦しくなり、銀行への相談件数が増えているそうです。

コロナの影響により、失業したり収入が減ったりしている人が増えているからでしょう。すると活況になる可能性を秘めているのが任意売却や競売です。

玄人向けで経験がモノを言う世界ではあるものの、私の知人に全額キャッシュで借金はしないという投資家がおり、彼によると「競売中心の投資家たちは臨戦態勢に入ろうとしている」と言っていました。

■手堅い都内のワンルームマンション

都市部の投資用ワンルームマンションは相変わらず人気で堅調です。

事業用物件では不景気や業績悪化で撤退というリスクがありますが、どんなに不景気になっても社会環境が悪化したとしても、個人はどこかに住まなければなりません。不況だコロナだといっても、だから住まいが不要な人はいないからです。

また、相続税対策としても需要が根強いこともあり、値段が高くても買う層が一定数いることから、値段は下がっていません。

つまり冒頭のように利回りは低いままなので、利回りを気にしない富裕層には人気の一方、利回りを追求する投資家には不人気なのです。

■外国人富裕層の存在感が上がる

そんな状況の中、事業用物件の売買で存在感を示しているのが中国人投資家です。彼らが潤沢なキャッシュで青色吐息のホテルや旅館に触手を伸ばしていると、取引のある不動産業者から聞きました。

コロナの影響が長引けば、旅館やホテルの倒産・廃業は増える。そしていつになるかはわからないけれども、いずれ渡航制限や入国制限も解除され、再び外国人旅行客が戻る日がやってくる。

だからその日に備えて、いま激安で宿泊施設を買収しておけば、高い利回りを叩き出せる。利益を乗せて転売できる。お金に困っていないから、いまは宿泊者が少なく赤字でも問題ない。将来大きく刈り取ればいいだけ。

そう考えているのかもしれません。憶測ですが。

■障害者グループホームがプチバブル状態に

戸建ての活用方法のひとつに「障害者向けグループホーム」へリフォームし、専門業者に一括借り上げしてもらうというものがあります。

障害者グループホームは障害者総合支援法で定められた障害福祉サービスの1つで、基本的に同じ障害の方が世話人の援助を受けながら少人数で共同生活を行う住宅。簡単に言えば、障害者向けシェアハウスです。

障害認定される人は増加傾向である一方、施設の数が圧倒的に足りないため、ニーズが高いようです。

物件は投資家が取得し、地元自治体や消防の指導を仰ぎながらリフォームし、募集管理は専門の運営業者へ一括でお願いするというスタイルが一般的です。

運営事業者としても障害者への公的支援金で運営できるためリスクが少なく、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)バブルが終わり、次の商売のネタを探す工務店が大挙として参入しているなど、ちょっとしたバブル状態になっています。

■ますます知恵と工夫が求められる時代に

たとえば駅から遠く離れたファミリーアパートであっても、奥様が好むようなキッチン設備や外観デザインを施せば、高い家賃でも入居は決まります。

リモートワークやテレワークが定着すれば、「駅徒歩○○分」という条件の優位性がいまよりも下がり、たとえば自分でプチ農業ができる「畑付き賃貸」が価値を持つかもしれません。

初期投資が不要で太陽光発電システムを設置できる契約も増えており、「電気自動車シェア付きアパート」が出てくるかもしれません。

創意工夫が活かせる不動産投資ビジネスは、富裕層には今後も不動の人気の運用対象であり続けるように思います。

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』『「いい人」をやめれば、人生はうまくいく』(ともに日本実業出版社)など著書多数。「ユアFX」の監修を務める。

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(米国公認会計士 午堂 登紀雄)

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