「説明上手の一般常識」三流はダラダラ、二流はズバリ、では一流は?
プレジデントオンライン / 2021年8月25日 10時15分
※本稿は、桐生稔『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■説明下手な三流ほど、時間内に話が終わらない
あなたは説明するとき、どうやって説明の時間を設定しますか? 漠然と設定しますか? それとも説明のボリュームで設定しますか?
一流は、まず相手の許容時間を見極めます。つまり「どのくらい説明の時間が許されているか」です。
例えば初対面の人がいきなり5分も10分も自己紹介をしてきたら、だんだん聞くのが嫌になってきますよね。自己紹介で許容されているのは概ね1分程度です。
時間がなく、早く本題に入って欲しいのに、雑談ばかり続く打ち合わせはどうでしょう。だんだんとイライラしてくるかもしれません。
10分だけと言うから時間を取ったのに、営業マンがいきなり自社の歴史を長々と語りだしたら、その商談は確実に失敗します。
これらはすべて、相手の許容時間を把握していないときに起こる事故です。
事故を起こさないための、簡単な方法が3つあります。
①ズバリ聞く
「本日は1時間くらいお時間平気ですか?」「10分ほどお時間いただいてもよろしいでしょうか?」。この確認です。
「了解です!」であれば許容時間が許されている証。「りょ、了解です。。。」であれば、あまり時間がないのかもしれません。まずは聞いて把握します。
■二流は自分基準、一流は相手の許容時間を把握する
②察する
ズバリ聞けないときもあります。そのときは、「察するに徹する」です。
相手の許容時間を感じ取るということ。「今日は天気がいいですね」と一声かけて、その返しを見れば、無駄な会話が好きかどうかは、だいたいわかります。
また、あまり時間がなさそうであれば、本題からサッと入ってポイントを絞って説明すると喜ばれます。
なぜかソワソワしている人は、そのあとのスケジュールがパンパンなのかもしれません。ファーストコンタクトの雰囲気、表情、仕草で察し、相手の許容時間を把握します。
③先に提示する
ただ、「どうしてもこれくらいは説明の時間が欲しい」という場面もあります。
そのときは、先に時間を提示します。「今日は60分お時間を頂戴します。○○様にとって、ものすごく大事なお話があります」と。先に時間がわかれば相手も安心できます。
時間がかかる理由も説明できれば、なおいいです。
説明する前に、「自分にはどれだけ時間が許されているか」、相手の許容時間を把握すること。これは相手の立場に立ってコミュニケーションが取れる証拠。相手から信頼されます。
その逆が自分本位です。自分の基準で説明時間を設定する人は、その時点で気遣いがないと判断され、説明する前にアウトです。
思いやりのある姿勢は確実に相手に伝播します。相手に合わせたコミュニケーションを取ることが一流への登竜門です。
■「結論から話す」は二流
いきなりですが、質問です。「結論から話す」とネットで検索すると、何件くらい記事がヒットするでしょうか?
答えは、なんと1000万件です。
「プレゼンがうまくなる」で600万件、「伝わる話し方」が400万件ですので、実に多くの人が「結論から話せるようになりたい」、そう願っているかが窺えます。
確かに、ダラダラと説明するより、結論がハッキリしているほうが、言いたいことが明確でわかりやすいです。
ただ、本当に結論から話すことが、上手な説明と言えるでしょうか?
「先日頼んだ資料、できた?」と聞かれた場合は、「できた」or「できていない」と真っ先に結論を伝える必要があります。売上の達成状況を聞かれたときも、「現状は○○です」と結論から伝えるべきです。
でも、部下から突然、「明日から退社時間を15時にします」と言われたらどうでしょう。急にそんなことを言われても……。まずは結論よりも、その背景を知りたいですよね。つまり、状況によって変わるということです。
人間は自分が聞きたいことだけ聞きたい。これが本音です。無駄な情報をたくさん仕入れると、生きていく上で大切な情報を見逃してしまうからです。
■一流は相手が求めることから話し始める
一流は、説明するときに何からはじめるか? 一流は、まず相手の頭の中を想像しはじめます。
例えば、売上の達成状況、商談の結果、依頼したことの進捗など、YES・NOがハッキリしているものは結論から聞きたいだろう。逆に、前提や背景が必要なものは、結論よりも詳細から聞きたいだろうと。
普段から、「結論は?」が口癖の人には、結論から。「根拠は?」が口癖の人には、まず根拠を示してそのあとに結論を。
悩みを相談された場合は、うかつに結論を伝えることは禁物です。相手は結論を求めていないことが多いからです。充分聞き取った上で、それでも相手がアドバイスを求めているようであれば、そこではじめて「こうしたほうがいいですよ」という結論を伝えます。
「相手の頭の中を想像する」と言うと、一見難しく聞こえるかもしれません。そんなときは、「今、相手の頭の中は、3つのうちどれだろう?」を考えてみてください。
①まずは結論から知りたい
②前提、背景、根拠といった詳細から知りたい
③まだ結論を求めていない(話を聞いて欲しい)
どれかにヒットします。説明とは、わかりやすく解き明かすこと。誰に解き明かすのか? それは間違いなく「相手」です。相手の頭の中が想像できて、はじめて説明の入り口に立てるのです。
■三流ほど論理的に説明したがり、失敗する
「論理的に話せるようになりたい」、そういった声をよく聞きます。
論理とは、簡単に言うと「話の筋道」です。有名な一節で、「人間はいつか死ぬ」→「ソクラテスは人間である」→「ソクラテスはいつか死ぬ」があります。筋が通っています。
これを「演繹(えんえき)法」と言います。前提に当てはまる事実から、結論を導く方法です。
例えば、次のようなものです。
【前提】遅刻をしない人って信頼できるよね
【事実】田中さんは1回も遅刻したことがないよね
【結論】だから田中さんは信頼できるよね
【前提】→【事実】→【結論】で語ると、筋が通っているように感じます。
しかし演繹法には、最大の弱点があります。それは「前提が間違っていると、論理が破綻する」ということ。
先の例、【前提】「遅刻をしない人って信頼できるよね」というのは本当でしょうか?
遅刻をするけど、信頼されている人もいます。毎回会議に遅れて登場する社長もいますが、信頼されている人も多いと思います。そもそも信頼の定義も皆さん違いますしね。前提が崩れると、「田中さんは遅刻をしないから信頼できる」とは言えなくなってしまいます。
相手と前提が違えば、結論も変わる。ココがポイントです。
だからこそ一流は、演繹法を使うとき、死ぬ気で前提を一致させにいきます。そこが一致しないと先に進めないからです。
例えば、「私は、遅刻をしない人は信頼できると思っていますが、○○さんはどう思いますか?」と、まず前提を合わせにいきます。前提に納得してもらってから、次の事実、最後の結論と進めます。
■二流は事実を、一流は前提を重視する
もう1つ別の例を。旦那さんにトイレ掃除をお願いするとき。
「トイレ掃除をすると運気が上がるって言うじゃない」(前提)
「○○社長も毎日欠かさずトイレ掃除してるんだって」(事実)
「だからあなたもトイレ掃除はじめてみない?」(結論)
演繹法で語るとこうなります。
やはりポイントは前提。「運気が上がるなんて聞いたことない」「そうは思わない」と、前提が腑に落ちなければ、そのあと何を言っても響きません。そこで、
「トイレ掃除をすると、運気が上がるって聞いたことない?」
「トイレ掃除って、ストレス解消効果がありそうな気がしない?」
「松下幸之助さんは、仕事と同様に掃除を愛したらしいよ」
など。まず、「トイレ掃除をするといいことがある」→「確かにそうだね」という前提を取りつけにいきます。それから、事実、結論です。
逆に、相手の論理を崩すときは、前提を確認するのがベストです。
「そうとは言い切れないですよね」「そもそもその前提は合ってます?」という問いです。
演繹法で説明すると、話の筋が通っているように感じます。ただ、万能ではありません。より最強にするために、「相手と前提を一致させる」。これが絶対必要です。
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モチベーション&コミュニケーション代表取締役
1978年生まれ。新潟県出身。2017年、「伝わる話し方」を教育する株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー、日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー、一般社団法人日本声診断協会音声心理士。著書に『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)、『雑談の一流、二流、三流』(明日香出版)がある。
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(モチベーション&コミュニケーション代表取締役 桐生 稔)
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