「『早くしなさい』と言えば言うほど、遅くなる」子供が急に動き出す"最強のフレーズ"
プレジデントオンライン / 2021年8月27日 9時15分
※本稿は、小川大介『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
■「NGワード」=誤解が生まれる言葉
親を何年かやっていたら誰しも「あの言い方はまずかったな」という体験はお持ちでしょう。子どものむくれた表情を見て、「言い方、間違えた」とか「傷つけてしまった」と後悔することはよくあると思います。
ですが、そもそも「言わなきゃ」「声をかけなきゃ」と思ったというスタート地点には、間違いなくお子さんへの愛情があり、そういう親御さんの気持ちというのは常に正解なのです。このことはどうぞ忘れずにいてくださいね。
ただ、その気持ちをどういう言葉で伝えるかという点においては、やはり上手・下手があります。
うまくない伝え方とは、親が伝えたい気持ちと、子どもが受け取ったメッセージがずれてしまう伝え方です。つまり、誤解が生まれる言葉がいわゆる「NGワード」ということになります。
ここでのNGワードというのは「使ってはいけない言葉」ではなく、「子どもに誤解されやすい言い回し」のこと。
逆に、親の気持ちがそのまま子どもに伝わる言葉がOKワードです。
ここからは、その誤解を生みやすい「NGワード」の代表格を見ていきましょう。
■「早く」と言われると、しぶしぶ動くようになる
子どものやる気を失わせる親のセリフ①親が時間に追われているとき
「早くしなさい!」
「時間だよ!」
OKワード
「あとどれくらいで終わりそう?」
「あとどれくらいで始めるの?」
今の時代は親御さんたちも日々時間に追われていますから、使ってしまう気持ちはよくわかります。予定が狂ったらあとの調整も大変ですから、どうしても急がせたくなってしまいますよね。
NGワードのような言葉が出るシーンというのは、子ども自身は次にすべきことに気持ちが向いていなかったり、ほかのことに気をとられたりしているときです。
そのときに、ただ「早く」と急き立てて無理やり行動させると、本人は不完全燃焼です。始める前から「嫌だな」という気持ちになり、しぶしぶ動くくせがついてしまうので、できれば使わずに済ませたい言葉です。
こうなる前に、まだ余裕がある段階で「あとどれくらいで終われそう?(始めるの?)」と、本人の予定を聞いておきます。そのうえで時間が迫ってきたら「まず靴下をはこうか」など、何か1つ行動させる言葉がけをします。最初の一歩が一番腰が重くなるので、そこをクリアさせることで、行動する流れを作るのです。やるべきことが半分くらい終わったら「急ぐよ」といった言い方で仕上げさせたらよいでしょう。
■「○○したの?」は信用されていない気分になる
子どものやる気を失わせる親のセリフ②任せたいけれど子どもを信じきれないとき
「○○したの?」
「終わった?」
OKワード
「今どこまで進んだ?」
子どもに任せたい気持ちと不安がないまぜになった言葉です。ずっと横について見ているのは本人のためにならないし、時間的にも難しい。でもちゃんとできているか不安になる、といったときに出てくるのではないかと思います。
ただ、NGワードのような言い方は、信用されていない気がして基本的にはいい気分がするものではありません。すでにできている場合は「ちゃんとやってるのに、そんな言い方するならもうやらない」とやる気を失うことがありますし、できていない場合は痛いところを突かれて腹を立て、不毛な親子げんかにつながったりします。
こういうときは「今どこまで進んだ?」と、進捗を尋ねるニュアンスの問いかけをしてみましょう。終わっていれば「終わったよ」で済みますし、まだやっていない場合も、子どもを追い詰めずに済みます。
ただし、この聞き方は終えてほしい時間ギリギリには使えません。直前だと、結局怒ってやらせるしか方法がなくなってしまいます。親としては、終える時間よりも早めに声をかけてあげられるように、タイミング選びは頑張りたいですね。
■人と比べるよりも「できる理由」を渡してあげる
子どものやる気を失わせる親のセリフ③わが子をほかの子と比べて不安になったとき
「○○ちゃんは、できてるよ」
OKワード
「もう少しこうしたら、さらによくなるよ」
「○○ちゃんは、どうしてるのかな?」
「わが子は大丈夫だろうか……」と思ったときに、つい周りを基準にして、ほかの子と比べてしまうというのは、親として当然の心理ですね。
ただ、「○○ちゃんは、できてるよ」と比べられることは、本人にはもちろん何の喜びも生まれませんし、誰かと比べないと自分の価値を見つけられない育ち方にもなりかねません。そうなると人生が苦しいものになっていきます。
親としての願いは「わが子をできるようにしてあげたい」ですから、本人が今できていることに基づいて、「あともう少しこうしたら、さらによくなるよ」という言い方にすればいいのです。本人がもうひと頑張りする理由を渡してあげるのですね。
ほかの子の名前と「できる・できない」がセットになるとまずいのですが、「○○ちゃんはどうしてるのかな?」と、その子から学ぶ意味で名前を引き合いに出すのはOKです。成績のいい友だちに勉強の仕方を聞いてみた子が、友だちのやり方を参考に成績を伸ばしていくということは、しばしば起こります。
子どもはやり方がわかればやるもの。「できる理由」をたくさん渡してあげたいですね。
■「ちゃんとしなさい」では、中身が伝わらない
子どものやる気を失わせる親のセリフ④子どもの行動が親のやってほしいことと違うとき
「ちゃんとしなさい!」
OKワード
「使ったものは元の場所に戻しなさい」
(できるだけ具体的に言う)
「ちゃんとしなさい」は、親御さんたちの口から出やすい言葉ですね。
これが子育てにおいてあまり使いたくない言葉である理由は、親の言う「ちゃんと」の中身が子どもにはわからないので、行動につながらないからです。少し意地悪な翻訳をすると、「何がどうなのかを説明する気はないけれど、とりあえず私から見て気分がいいようにしておきなさい」というのが「ちゃんとしなさい」なのです。
ではどうしたらいいかと言うと、「ちゃんと」の中身をとにかく具体的な言葉で伝えることです。「使ったものは元の場所に戻しなさい」とか「もう少し背筋を伸ばして座りなさい」などと言いかえましょう。
この「ちゃんと」の内容を意識することで、親御さん自身も気持ちが安定しやすくなります。なぜなら、「こうなっていたらいいな」と先に考える習慣がつき、子どもに説明してあげられるようになるからです。そうすれば怒る回数も減ります。
何がどうだったらいいのかを1つでも2つでも整理して子どもに伝えることで、お子さんのできることが確実に増えていきますよ。
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教育家・見守る子育て研究所所長
京都大学法学部を卒業後、中学受験個別塾を創設。コーチングと学習タイプ分析を融合した独自ノウハウで受験学習、幼児からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。執筆、講演、教育系企業への助言など幅広く活躍中。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。著書に、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』・『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』・『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)、『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)など多数。 Instagram/中学受験情報局「かしこい塾の使い方」
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(教育家・見守る子育て研究所所長 小川 大介)
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