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「たった30秒でも効果あり」アップルウォッチに"呼吸"のアプリがある本当の理由

プレジデントオンライン / 2021年8月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

心を整えるには、なにをすればいいのか。医師の石川陽平さんは「アップルウォッチには『呼吸』という瞑想をするためのアプリがある。瞑想は医学的にも効果が証明されており、ぜひ生活に取り入れてみてほしい」という――。

※本稿は、石川陽平『うつうつしなくなる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■瞑想とは、今この瞬間に全集中すること

瞑想のコンセプトは、意図的に、今この瞬間に、価値判断をすることなく注意を向けることとされます。とはいえ、これだけ言われても「???」という感じだと思うので、もう少し噛み砕きます。

私達は毎日を生きるために、未来のことを考えたり、過去のことを思い返したりを繰り返しています。「来週、嫌な仕事を振られた」というケースだと、

・未来=うまくできるだろうか? という不安、心配
・過去=何でこんな仕事を振られてしまうのだろう? という怒り、自己嫌悪

というように、未来の不安・心配と、過去の怒り・自己嫌悪を無意識に行ったりきたりしてストレスが溜まってしまうのです。

瞑想では、そんな未来や過去のことは一度取り払い、今、この瞬間そのものに目を向けようとします。例えば、呼吸に全集中して、鼻から吸っている空気や、口から出ていく空気、広がっていく肺に意識をむけて、呼吸のことだけで自分の頭の中をいっぱいにします。そうすると、未来や過去を往復していくことから完全に離れ、今、この瞬間に集中することができます。

さらに、この方法でリセットすることで、「自分に溜まっていたストレスは、未来と過去のことが大半だったのか」と気づくこともマインドフルネスの効果のひとつです。

■1日数分でも“あり方”モードの時間を

瞑想のもうひとつのコンセプトとして、“やることモード(Doing)”の状態から、“あり方モード(Being)”の状態になること、とも言われます。どういうことかというと、私達は常日頃から、

・あれをやらなきゃ、これもまだやれていない

といったように、常に「やること」に振り回されてしまいがちです。一方で、

・自分がどういう状態か、どういうあり方をしているか

というように、自分の状態や「あり方」に目を向けている時間が圧倒的に少ないのです。

私達の日常は忙しく、寝ているとき以外、常に“やることモード”で動いてしまいがちです。でも、例えば温泉に行ってリラックスしたいときに、常に“やることモード”で動いているでしょうか? 旅館で、「あれをやって、コレをやって……」と忙しくしていたら、リラックスなどできません。私達がリラックスしようとしているときは、だいたい自分をリラックスさせようと“あり方モード”にしているはずです。

毎日の生活でも、1日数分でもよいので、この“あり方モード”の時間をとらないと、息が詰まってしまいます。

マインドフルネス・瞑想は、この「やることモード」の自分を一旦オフにして、ただ呼吸をしているだけの自分になることで、「あり方モード」に自分を置く、というふうにも捉えることができます。

■3~6カ月実施すると不安感が8割減少

マインドフルネス・瞑想の研究は、近年とても盛んに行われています。アメリカ内科学会の雑誌に掲載された研究では、

・マインドフルネスを2カ月実施すると不安感は約6割減った
・マインドフルネスを3~6カ月実施すると不安感は約8割減った

という報告があります。その他にも、うつ症状、痛み、ストレス、心的不調に伴う生活の質を改善させていることがわかっています。

マインドフルネスを行っている人の脳の中で、何が起こっているかも、研究により明らかになってきました。

脳のイメージ
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

特殊なMRIを使った研究では、脳の一部である「島皮質」という場所で神経活動が改善したことが明らかになりました。島皮質は、感情・直感・共感などのコントロールに大切な役割を果たしている場所です。逆に、この部分が傷ついたりすると無気力になりやすくなります。この島皮質の機能改善が、マインドフルネスの効果であり、結果として先程挙げたようなうつうつの改善などにつながっているようです。

マインドフルネスは、研究からもその実効性が徐々に明らかになってきています。

■試合に集中したいNBAトップ選手も取り入れている

アメリカのバスケットボール・NBAで、フィル・ジャクソンという監督(ヘッドコーチ)がいました。監督として歴代最多の11回の優勝を果たしている名将ですが、別名、「ゼン・マスター(禅マスター)」と呼ばれていました。

バスケットボールにも禅の考えを持ち込み、試合の途中で興奮して集中できていない選手がいると、時折ベンチで禅を組ませることがありました。NBAの中でも大柄な身長2mを超える選手が、指示されてベンチで目をつぶって禅を組んでいる姿は衝撃的でした。その流れもあってか、今でもNBAでは禅やマインドフルネスがチームや個々人の取り組みとして時折取り入れられています。

マインドフルネスにはいろいろな方法があるのですが、レブロン・ジェームズというトップ選手が語っていたイメージを紹介します。

NBAの試合は、コートの脇に何万人という観客がいて、歓声や邪魔をする声が飛び交います。本拠地ではないチームのフリースローのときなどは、本拠地チームのブースター(ファン)がゴール裏に細長い風船を持ってブーイングをして、懸命に選手の気をそらそうとします。その中でもレブロン・ジェームズというトップ選手は試合に集中するために、マインドフルネスの要素を取り入れて、次のようなイメージを持っているそうです。

Step1:ゆっくり深呼吸をする
Step2:周りの観客やカメラマンなどが、自分の周りから消えていくイメージを持つ
Step3:同時に音も消えていき、最終的には自分とゴールだけが残る

■自宅で簡単にできるマインドフルネス

私達は、周りに選手や観客がいるわけではありませんので、これを少しアレンジして、自宅でもできるお試しマインドフルネスにするとこうなります。

Step1:目を閉じて、深呼吸をゆっくり数回する
Step2:深呼吸を続けながら周囲のものが暗くなり、音も消えていくイメージを持つ
Step3:自分の呼吸だけに意識を集中させる

自宅でもできるお試しマインドフルネス
出典=石川陽平『うつうつしなくなる』(KADOKAWA)

最初は、深呼吸をしていても、「あれしなきゃ」「これから何食べよう」など雑念が湧いてくるかもしれません。しかし、どんな雑念が湧いてきてもそれをそっと意識の横において、呼吸に集中していきます。

呼吸は、鼻からゆっくり吸って、口からゆっくり吐きます。1・2・3・4……とゆっくり数えて鼻から吸い、1・2・3・4……とゆっくりと数えて口から息を吐き出します。鼻で吸うときは、空気の冷たさを感じましょう。口から吐くときは、温かい空気が出ていくことを意識します。

これを数分行って、少し落ち着いた気持ちになっていれば、マインドフルネスは成功です。

■ハーバード大学教授が教える最も簡単な瞑想方法

先程のマインドフルネスの方法も割と取り入れやすいかもしれませんが、瞑想を最も簡略化した一番簡単な方法は、「ただ深呼吸をしてみる」ということです。

私は、2015年に、ハーバード大学の「Mind-Body Medicine」という講習会に出たことがあります。瞑想の科学的な研究の紹介(先程紹介した脳の中で起こっている変化など)や、瞑想法の紹介、睡眠に関してなど、丸3日かけて講義を受けたりディスカッションをするというものでした。

その中でも、特に印象に残っているのが、ハーバート・ベンソンというハーバード大学教授の講義でした。高齢なので、杖をつきながら壇上に現れたのですが、出てきて一番初めに一言。

「さて、皆さん、いきなりですが、私の講義を始める前に、やってほしいことがあります。腰掛けたまま力を抜いて……目をつぶって……深呼吸を3回してください」

と言い、その後、教室に静かな時間が30秒ほど経ったところで、

「はい、おしまい。では、やる前よりも気持ちが落ち着いた人、手を挙げて。……ほとんど挙げてくれましたね。皆さんが効果を実感してくれたようなので、私の授業はこれでおしまい。これからは1時間蛇足を話します」

と、とてもインパクトのある講義をしていました。

■アップルウォッチに呼吸のアプリが入っているワケ

受講前の私は、「これから出てくるのはハーバード大学の教授だし、さも難しいことを話すだろうから、置いていかれないようにしなきゃ」と気を張っていたのですが、こんな感じで講義が始まったので、びっくりしたのを覚えています。

ここで、「深呼吸をするだけでも良いんだよ」という強いメッセージを教授は発したかったのだと思います。

また、単純な深呼吸をすすめるのはこの話に限ったものではありません。最近、私はApple Watchを買ったのですが、そこで「呼吸」というアップル純正のアプリがありました。どんなアプリかというと、ただ丸が大きくなったり、小さくなったりを繰り返して、それに合わせて深呼吸をしてね、というシンプル極まりないアプリなのです。シリコンバレーなど、仕事が忙しくてピリピリしているところほど、こういったマインドフルネスの広がりが大きいという話も聞いたことがあります。

アップルウォッチ
写真=iStock.com/hocus-focus
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hocus-focus

職場などで、15分ほど時間をとって瞑想するのは難しいかもしれませんが、目をつぶって30秒深呼吸するのは、案外取り入れやすいのではないかと思います。

■手軽に教えてくれるアプリや動画も増えている

マインドフルネスは、何回も行っていくことでうまくなり、効果が得られやすくなります。また、その方法もいろいろあり、先程お伝えしたような単純な深呼吸から、カウンセラーやコーチをおいて実施してもらうものまであります。

石川陽平『うつうつしなくなる』(KADOKAWA)
石川陽平『うつうつしなくなる』(KADOKAWA)

最近では、手軽にガイドを受けられるアプリや動画なども増えてきています。まずはこのようなものから始めていただくのもひとつの方法かもしれませんので、参考までに掲載します。

【アプリ】
Meditopia
世界で使われているメンタルウェルネスアプリ。日本語も充実しています(一部有料)
Calm
世界的に知名度の高い瞑想アプリ。2020年に日本語にも一部対応しました(一部有料)

【Netflix】
ヘッドスペースの瞑想ガイド
動画配信サービス、ネットフリックスに加入されている方であれば視聴可能です。かわいいイラストを使って、20分ほどの動画が8つ配信されており、瞑想を始める方にはおすすめです。

その他にも、YouTubeなど多くのものが出ていますので、お気に入りを見つけてみてはいかがでしょうか?

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石川 陽平(いしかわ・ようへい)
医師/産業医
1987年生まれ。2007年東京慈恵会医科大学入学後、世界保健機関(WHO)ジュネーブ本部インターンなどの経験を経て、13年より聖路加国際病院に入職。14年度、聖路加国際病院ベストレジデント。15年にMediplat(現メドピアグループ)の設立に参画し、オンライン医療相談サービス「first call」の企画・運営も行っている。現在は、救急・心療内科で外来を行う一方、ベンチャー企業から一部上場企業までの産業医として活躍している。

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(医師/産業医 石川 陽平)

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