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「婚姻率全国1位なのに結婚できない男が多い」東京で生涯独身男が増え続ける残酷な理由

プレジデントオンライン / 2021年8月27日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mlenny

■結婚したくても物理的にできない340万人の男性たち

「金持ちを貧乏人にしたからといって、貧乏人が金持ちになるわけではない」

1980年代に新自由主義によってイギリス経済を立て直したといわれるサッチャー首相の言葉です。この言葉はその通りだと思いますが、同時に聖書にあるような「富める者はますます富み、貧しき者は持っているものさえ奪われる」状況に追い込まれることも事実です。

恋愛や結婚においても新自由主義化が進んでいます。いわゆる結婚できる者とできない者との格差問題です。もちろん、全員が結婚を希望しているわけではないし、する必要性を感じない人もいることは前提として、結婚を希望したからといってその全員ができるわけではない問題があります。特に男性側に。年収や性格の問題ではありません。あくまで物理的に無理なのです。それも340万人も。

■乳児が無事に育ち、男性人口がどんどん増えている

以前、〈人口の半分4600万人が独身に…20年後「超独身大国」日本の恐るべき実像〉という記事でご紹介した未婚男女の人口差に明らかなように、340万人の未婚男性は頑張っても相手がいないという「男余り」現象があります。

この大きな要因は、出生時の男女比にあります。女児より男児の方が5%ずつ多く生まれます。これは日本に限らず世界的にそうです。しかし、昔は乳児死亡率も高く、主に男児が亡くなる率が高かったため、結果的に、成人男女比は同じような数値に収束したわけです。現代は医療も発達し、1947年には8%弱もあった日本の乳児死亡率は、2019年では0.2%にまで激減しています。

つまり、生まれた子どもはほぼそのまま無事に大きくなるわけですから、毎年5%ずつ多く生まれる男性の人口が何十年と積み重なっていけば、当然こうした「男余り」(※)を招くことになるのです。

※「男余り」とは未婚人口の話であり、総人口の話ではありません。

■再婚が増えるほど未婚男性が影響を受けるワケ

そして、出生性比以外にも、未婚の「男余り」現象の要因があります。それが再婚数の増加です。婚姻数が激減している事実は周知のことと思いますが、婚姻数が一番多かったのは1972年で、年間約109万9984組。それが、2018年は60万組を割り込み、約59万9007組になりました。ほぼ半減です。しかし、その中で再婚数だけは逆に同期間比で1.3倍に増えています。

これは、そもそも離婚数自体が増えたからなのですが、再婚数が増えると、未婚の「男余り」が増えます。以下の図表1は、1950年からの再婚数と国勢調査に基づく未婚男女人口差分(=男余り人口)の推移です。相関係数0.8721というとても強い正の相関がみられます。再婚が増えれば増えるほど、男余りが影響を受けることになるわけです。それはなぜでしょう?

未婚男余り人口と再婚数の推移と相関

■「時間差一夫多妻」という残酷な現実

再婚の組み合わせは「再婚同士」「再婚夫×初婚妻」「再婚妻×初婚夫」の3種類に分けられます。組み合わせ別の再婚比率を時系列でみると、1980年代からほぼ変わっておらず、「再婚同士」と「再婚夫×初婚妻」の組み合わせがほぼ同数で推移します。2019年の実績でいえば、「再婚同士」37%、「再婚夫×初婚妻」37%、「初婚夫×再婚妻」26%ということになります。「再婚妻×初婚夫」の組み合わせだけが少ないのです。「再婚妻×初婚夫」と「初婚妻×再婚夫」とでは常に1.4倍近く差があります。

永遠の愛を誓うカップル
写真=iStock.com/kyonntra
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra

要するに、バツあり男は未婚女性と再婚し、バツあり女は未婚男性を選択しないということです。それによって未婚女性の絶対数だけが減ります。その中には、何度も結婚離婚を繰り返す男性もいるでしょう。冷静に考えれば、複数回も離婚する人間というのは、そもそも結婚生活に向いていないんじゃないかとも思うのですが、不思議と婚活の現場では、バツあり男は頼りがいがあってモテるという話も聞きます。

そうした複数再婚者に押し出され、一度も結婚できない生涯未婚の男性が増えることになります。これを私は、「時間差一夫多妻」と呼んでいます。

■結婚したい男性のライバルは実は同じ未婚ではなく…

人口動態調査に基づき、1980年から2019年までの40年間の累計で「時間差一夫多妻」の規模を見てみましょう。婚姻数は約2890万組、離婚数は約855万組で、いわゆる40年間の特殊離婚率は30%です。「3組に1組は離婚する」というのはこうした実績に基づきます。離婚した夫婦のうち約613万組が再婚(夫婦いずれかが再婚含む)夫婦です。単純計算すると離婚者の72%が再婚していることになります。

再婚の内訳をみると、再婚同士が約221万組、再婚夫と初婚妻が約224万組、初婚夫と再婚妻は約169万組です。40年間を通じて、バツあり男と224万人の初婚女性が結婚したという計算になります。もちろん、再婚妻と結婚する初婚夫も169万人いるわけですから差し引き未婚女性をバツあり男にとられた未婚男性が54万4000人になります。年間にして1万3600人ずつです。

たいした数字ではないと思うかもしれませんが、すでに年間初婚女性数が38万人になっている中で、その割合は3.6%になります。出生性比で5%、時間差一夫多妻により3.6%、合計8.6%も影響値があれば未婚の「男余り」は不可避です。

そもそも再婚自体、同時に複数の妻を持つ重婚ではないので、法的にも道義的にも何ら問題はありません。しかし、バツあり男と初婚女性が次々と結婚すると、あぶれる未婚男性が割を食うことになります。再婚年齢の最盛期は35~39歳です。晩婚化が進めば進むほど、結婚したい30代の未婚男性にとっては、同年代のバツあり男が強力なライバルとして立ちはだかることになります。

■「再婚夫×初婚妻」の組み合わせは大都市に集中している

さて、こうした状況は都道府県別に違いはあるのでしょうか。

図表2は、2019年の実績を基に、都道府県別に、再婚の組み合わせによる再婚率(対離婚数)の全国平均比をランキングにしたものです。一目瞭然ですが、「再婚夫×初婚妻」の組み合わせが群を抜いて多いのが東京です。しかも、「再婚夫×初婚妻」の組み合わせで全国平均を超えているのがたった8都府県に集中しており、東京・大阪・愛知・福岡・神奈川など大都市だけに見られる傾向でもあります。

組み合わせ別再婚率 都道府県ランキング

■「再婚妻×初婚夫」は中堅地方都市、「再婚同士」は…

一方で、「再婚妻と初婚夫」の組み合わせではガラリと顔ぶれが変わります。栃木・埼玉・新潟・福島など大都市周辺の地方都市が上位を占めます。「再婚夫と初婚妻」で上位だった大阪や福岡が「再婚妻と初婚夫」では下位に位置するという逆転現象もみられます。また、「再婚同士」の組み合わせも、山口という意外な伏兵が1位であるのに加え、北海道や滋賀などが上位となり、これもまた顔ぶれが変わります。東京は「再婚同士」の組み合わせは極端に少ないのも特徴です。

ざっくり言うと、「再婚夫と初婚妻」は大都市限定、「再婚妻と初婚夫」は中堅地方都市を中心、「再婚同士」は主に西日本を中心として地方に集中しているという感じになっています。同じ再婚といっても、それぞれのエリアによって変わるものです。

東京に関して、再度まとめると、バツあり男の初婚女性再婚が圧倒的に高い割に、再婚同士の組み合わせは極端に少ないことから、東京の未婚男性は「時間差一夫多妻男」による被害が一番多いと言えるでしょう。

■婚姻率が高いのに未婚率も高いのはなぜ?

多くの方が誤解しているのですが、実は東京は婚姻率に関してはずっと全国1位です。日本でもっとも人口比で婚姻しているのは東京です。しかし、同時に男性の生涯未婚率も高く、2015年国勢調査時点では全国3位です。婚姻率が高いにもかかわらず、なぜ未婚率も高いのか。その原因の一端はこの東京の「時間差一夫多妻男」にあるのかもしれません。

女性の側からみれば、東京で婚活する場合、未婚男性だけではなく、バツあり男性も選択肢として十分考えられるので希望が広がります。が、くれぐれも独身を装う既婚男性にはご注意ください。離婚もせずに、複数の相手と浮気を繰り返す「同時多発浮気既婚男」も少なからず存在します。

「時間差一夫多妻男」の再婚を禁止する法律を作ったところで、未婚男性が結婚できるとは限りません。ほしいものを何度でも手に入れては、取り替える者がいる一方で、手に入れることが一生かなわない者もいる。結婚の自由化とは、結婚の不可能化と表裏一体なのです。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。新著に荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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