「東大に合格できたのはゲームのおかげ」東大生がそう断言するまんざらでもない理由
プレジデントオンライン / 2021年9月4日 15時15分
■親が決めた時間制限を守れる子はいない
――親が一番困っているのは、子どもがゲームをやりすぎることです。「1日1時間まで」といったルールを設けても守られず、親子げんかになるケースが後を絶ちません。皆さんはどうでしたか?
【教養学部2年生 中村介さん(以下、中村)】僕も小学生時代は1日1時間というルールを設けられていたのですが、楽しいので守れるはずもなく……。母の様子をうかがって、あとどれくらいできるのかなって考えながら、ルールを破っていく毎日でした。
【修士課程1年生 小山このかさん(以下、小山)】私も小学生の頃はディズニーゲームズっていうオンラインゲームのレベルアップに夢中で、親が決めた「夜8時まで」って約束が守れませんでした。けんかになりパソコンを取り上げられたことがあります。私はそれが不服で、勉強を一切しないというストライキをしていました。
【修士課程2年生 高友康さん(以下、高)】僕もまったく約束を守らないので、怒った母はゲーム機を分解して隠したりしていました(苦笑)。コンセントアダプターはトイレの上の棚、本体は洋服ダンスの中とか、バラバラにされて。
だけど、だいたい同じ場所に隠すから、こっちもわかってきてしまって。探し出すのもゲームみたいで楽しかったです。全部見つけ出してまたやるという繰り返しでした。
――東大生の皆さんも約束を守れずに、親御さんを困らせていたんですね。
【高】ゲームをやっている時は集中しているので、時間を意識できないです。
そもそも夢中になれるものに夢中になっていて何が悪いのかって思っていました。「目が悪くなる」って言われても、メガネかければいいし、「頭悪くなる」って言うのも、雰囲気だけで言っているように感じて。親の理屈には説得力を感じなかったです。
■ゲームは我慢させないほうが勉強に向かう
――では、皆さんは、どうやってゲームの時間と折り合いをつけ、勉強に励むことができたのですか?
【小山】小学生、中学生の頃はなかなかできなかったのですが、高校に入ってからはさすがに勉強しないといけないって思うようになりました。そこで、自分で勉強部屋にはゲームを持ち込まないというルールを決めました。
ゲームは何時間までとは決めずに、好きなだけやります。でも、寝る前に「今日はどのくらいやったかな」ってふり返って、やりすぎたと思ったら、自分で調整するようにしました。
【教養学部1年・岡本準一さん(以下、岡本)】僕もゲームをする場所は決まっていました。もともと僕の家庭では、食事のときは食事に集中、寝るのは寝室、勉強は塾の自習室、ゲームは父の部屋という具合に、場所ごとにやることがはっきり区切られていたんです。場所によって気持ちが切り替わるので、ゲームをやりすぎるということはありませんでした。
【中村】僕は、とにかくゲームを全力で楽しみたかったので、そのために宿題とかやるべきことを全部片づけてからやるようにしていました。
ゲームをやっているときに「まだ宿題をやってないな」と思うと、心の底から楽しむことができないので。先に宿題を終わらせてからゲームをするようになったら、学業的なことも崩壊せずにできるようになりました。
【高】わかる。どうせ遊ぶなら、集中して全力で遊んだほうが満足して勉強をする気になると思います。僕は普段、プロジェクターで映し出して3mの大画面にして、スピーカーも使って、ゲームの世界に没入して遊んでいます。
■ゲーム時間を短くするために攻略を手伝う
――ゲームをご褒美的に使って勉強のモチベーションにするんですね。でも、現実には宿題を優先させると後のお楽しみであるゲームに気がとられ、勉強が雑になってしまう子もいると思います。時間制限を設けたい場合はどうするといいでしょう?
【高】僕は自分で決めた時間が来ると、強制的にプロジェクターの電源が落ちるように、コンセントのオン・オフを時間帯ごとに設定可能なスマートプラグを使っています
大画面で世界に入って集中してプレーしている時に、一気に部屋が真っ暗になると興ざめします。電源を入れ直せばまたプレーできるのですが、これでもまだ続けるか、それとも寝るのかを考える時間を意図的につくっています。消えるのはディスプレーだけでデータは残るので、気楽に止められるおすすめです。
【小山】私はクリアしたときに見られるボーナスシーンが見たい一心でプレーしていたんです。だからクリアするまで止められないと言ったら、親が代わりにプレーしてくれました。父がレベルアップし、私はボーナスシーンだけ見るという役割分担にしたら、「じゃあ勉強するか」という気持ちになったんです。
いまはユーチューブでアップされているボーナスシーンや攻略法を見せるのも、時間短縮になるのでおすすめです。
――自分でクリアしなくても、ボーナスシーンが見られればいいんですか?
【小山】はい、私は自力でやらなくても、ボーナスシーンが見られればいいタイプなんです。
【高】僕は自力でやりたいんですが、ある時、友達がチートコード(改造コード)を使って、僕のポケモンを勝手にレベル100にしたことがあって、急にゲームに冷めたことがありました。
少しずつ育てて、「やった、レベル30になった」って喜んでいたのに、努力もせずに100になっちゃって。大好きで夢中になっていたゲームが、ただのコードの配列にすぎず、書き換え可能なものであるという仕組みが見えてしまったんです。結果的にしばらくゲームをやらなくなりましたが、そのことについてはいまだに恨みに思っています。
【岡本】ゲームの終わらせ方でいうと、僕の父はとてもうまかったです。一緒にゲームをしてくれて、思いっきり楽しんできりのよいところで、「疲れたなぁ」「そろそろやめるか」という感じで声をかけてくれました。一緒に遊んでもらえたという納得感があったので、いつも気持ちよくゲームを終えられましたね。
――なるほど、親が子どもとゲームの楽しさを共有して、子どもが納得してゲームをおしまいにできるのは理想的ですね。
■記憶力が高まる勉強に有効なゲーム
【小山】子どもがゲームにハマったときに、親が楽しさを理解してくれると関係性はよくなると思います。うちではゲームがコミュニケーションのツールになっていました。
それだけでなく、勉強になるゲームもあります。お子さんがゲームばかりして勉強しないと悩んでいる方には、ゲームで勉強させるのもおすすめです。
――具体的にはどんなゲームが勉強になりますか?
【小山】私は英語が苦手だったので、『もえたんDS』というニンテンドーDSのゲームにお世話になりました。その名の通り、かわいいキャラに萌えながら英語と親しむゲームで、かわいい声優さんの声が耳に残りやすかったです。このゲームのおかげで、大学入試で英語が得点源になりました。
あと、『Fate/Grand Order』というゲームは歴史のテストに役立ちました。歴史上の英雄や偉人を使って世界の危機を救うゲームで、自然と歴史上の重要人物のことが理解でき、さらにその人物を通じて、背景にある当時の社会制度や宗教なども学べます。歴史は参考書だと知識単体の丸暗記になりがちですが、ゲームだと歴史上の人物のキャラクターを通じてストーリーで理解するので、記憶の定着が良いと思います。
【中村】僕は記憶力そのものも良くなったと感じます。小さいときから、ゲームのガイドブックを読みまくって、呪文だとか、アイテムの名前を全部覚えていました。そのおかげか、暗記できる量が広がっていて、暗記は得意でした。みんなゲームと学校の勉強は違うと思っているけど、トレーニングになっていたと思います。
【小山】わかる、それ、すごく共感します。
【岡本】僕も小さいときは、ありえないところまで覚えていて。『モンスターハンター』のアイテムが出てくるパーセンテージも全部言えました。
――親は「その記憶力をほかのことに使いなさい」って怒っちゃったりするんですよね。
【中村】そうですね。でも、実感としては、ゲームで得た知識はほかのことにも使えるんです。
■勉強もゲームと同じ方法で攻略できる
【高】僕は勉強自体をゲーム感覚でやっていました。
教科書を読むことにはあまり時間をかけず、とりあえず問題を解く。できなかったら、なんでだろうって対策を練ります。そうやって、ひたすら問題集をクリアしていく感じです。
大学受験のときは、忘却曲線に沿って問題を出してくれる学習アプリを使って、勉強していました。学習アプリ「Quizlet(クイズレット)」は使いやすくておすすめです。
【中村】ゲーム感覚って、わかります。
僕はロールプレーイングゲームが好きで、勉強は自分をレベリング(キャラクターのレベルアップさせていくこと)することだと考えて、問題を解いていました。問題を一問解くごとに経験値が上がったなって。
そして、できなくても、あまり落ち込まないです。ゲームだってプレーし始めはボコボコにやられるので、そこは織り込み済み。結果が悪くても、あまり落ち込まないで、ほかのアプローチを考えたり、努力が足りないと考えたりするマインドセットはゲームで養われたといってもいいかもしれません。
【岡本】あと、ゲームの意外な効用としては、覚醒効果があると思います。受験の時は、朝一番にゲームをやると興奮して、目が覚めた。コーヒーより、よっぽど効きますよ。
――ありがとうございます。いろんな意味で、ゲームは勉強に効果的ってことなんですね。驚きました。これからは子どもがゲームしているときの見方を変えていこうと思います。
【藤本徹准教授:談】同じゲーム好きの子でも、小山さんがボーナスシーンを見るのが好きだったり、高さんは自分でクリアするのが好きだったり、どこにおもしろさを感じているかは人それぞれでした。
親御さんには、まず、子どもがゲームのどこにおもしろさを感じているのか知ってほしいと思います。「やるべきことをして、ゲームをする」と、「決まった時間に電源が落ちるようにする」では、効果的なルールに幅がありますが、ゲームを敵対視したままでは、それはわかりません。ゲームを通じたコミュニケーションでわが子がどんなタイプかがわかってくると、親子共に納得感のある有効なルールをつくることもできるでしょう。
東京大学大学院情報学環 藤本徹准教授/慶應義塾大学環境情報学部卒。民間企業等を経てペンシルバニア州立大学大学院教授システム学博士課程修了。博士(Ph.D.)。専門は教授システム学、ゲーム学習論、オンライン教育。著書に『シリアスゲーム』(東京電機大学出版局)、『ゲームと教育・学習』(共編著・ミネルヴァ書房)、訳書に『幸せな未来は「ゲーム」が創る』(早川書房)など。
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フリーランスライター
ライター。子育てが一段落してから教育関係の取材・執筆を本格的に開始。教育専門家に取材したことから得た知見や、国内外の最新研究から得た子育てのコツを盛り込んだ初の著書『子育てベスト100』は現在17万部のベストセラーに。1男1女の母。
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(フリーランスライター 加藤 紀子)
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