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「あおり運転」の被害に遭いやすい人が無意識にやっている「あおられ運転」という落とし穴

プレジデントオンライン / 2021年8月31日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

「あおり運転」の被害に遭わないためにはどうすればいいのか。モータージャーナリストの菰田潔さんは「前方にクルマがいないのに追い越し車線を走り続けるなど、無自覚に『あおられ運転』をしているドライバーも多い。あおり運転を誘発しないことも重要だろう」という――。

■あおり運転を誘発するドライバーたち

2020年6月に道路交通法が改正され「あおり運転」に厳罰が課せられることになった。

正確には「妨害運転罪」が創設され、これまで取り締まる規程がなかったあおり運転に対して危険がともなう悪質なケースでは5年以下の懲役または100万円以下の罰金、違反点数35点、運転免許の取り消しなど非常に厳しい罰則が適用されることになった。

これで日本の道路からあおり運転が劇的に減るはずだった。しかし1年を過ぎたいまでもあおり運転と思われるシーンを見かけることがある。テレビやネットでもたびたび動画がアップされ、注目を集めている。

ドライブレコーダーの映像によってあおり運転の状況が可視化され、加害者だけがクローズアップされているケースが多いが、その加害者は誰にでもあおり運転をしているわけではない。ということはあおり運転を誘発しているドライバーが被害者になっている可能性が高いのではないだろうか。

この「あおられるリスクがある運転」が今回の重要なテーマだ。

■「自分の運転は正しい」に潜むリスク

あおり運転をする加害者は絶対に許されるものではないが、自分が被害者にならないためのリスクのない運転方法を知っていればあおり運転のトラブルに巻き込まれないで済むだろう。これは自分が正しいかどうかではなく、他のドライバーの邪魔にならないようにするのがコツである。

例えば制限速度で走っているからといって、前方にクルマがいないのに追い越し車線を走っている状態は後続車にとって邪魔な存在になる。後ろから来て追いついたドライバーは、先に行きたいのに前のクルマが邪魔に感じる。これが、あおり運転が始まるきっかけだ。

追い越し車線を走るドライバーは、制限速度で走っているのだから自分は正しい、それを追い越すのはスピード違反だから許されない。だから追い越し車線を走り続けていても問題ないと考える。

しかしこの正義感あふれるドライバーも、前方にクルマがいないのに追い越し車線を走り続けるのは道交法違反になる。追い越しが終わったら走行車線に戻らなくてはならない。スピード違反はしていないが車線区分違反をしていることになる。

■「迷惑をかけずに走ることが運転の大原則」

これは「〜すべき」という正義感がぶつかりあっている可能性があるということだ。

向かい合ってメガホンで叫ぶ人
写真=iStock.com/SIphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SIphotography

「制限速度は守るべき」という正義感の下で走っているドライバーがいて、反対に「のんびり走っているクルマは後続車に追いつかれたらよけるべき」という正義感の下で走っているドライバーがいる。互いに正義感から相手に運転の仕方を要求していることになる。これがエスカレートすると、車間距離を詰めてみたり、後ろから急かされてブレーキを踏んで対抗するところから、あおり運転に発展してしまうのだ。

ドイツでも運転免許を取るときに「ファーシューレ(fahrschule)」と呼ばれる教習所に通う。日本のように箱庭コースを走るのではなく、実技のほとんどは一般道で練習する。最初に「運転とはどういうものか」という運転哲学を教わる。それは、「道路全体を俯瞰視して常に周囲に気を配り、迷惑をかけずに走ることが運転の大原則」というものだ。

日本の教習所では道路交通法を守って走ることを教えられるが、その道交法の第一条にはこう書かれている。

「この法律は、道路における危険を防止し、その他の交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする」

つまり、安全と円滑な道路交通をドライバー全員が目指さなくてはならないのは、どの国でも同じということだ。

■外国人観光客でも気持ちよく走れるドイツの道路

日本では考えられないようなハイスピードで合法的に走ることができるアウトバーン(自動車専用道路)を持つドイツでは、日本人がレンタカーで走っていても気持ちよくスムーズに走れる。それはどのクルマも親切だからだ。

例えば、道に迷って急な車線変更が必要になってウインカーを点けても、隣の車線のクルマは間を開けて入れてくれる。日本ならアクセルを踏んで加速して「自分の前には入れないぞ」という意地悪されることがあるが、ドイツではそうした経験をしたことがない。

混雑した道で合流する場合でも混乱することはない。ドイツでは交互に合流することがルールになっている。もし交互に合流しないためにぶつかった場合は、順番を守らなかったドライバーが100%の責任を負う。日本の保険屋さんのようにどちらも動いていたので6:4ですとか9:1ですなどということはない。ルールをしっかり守らせるために、優先順位が明確になっている。

先日テレビのワイドショーで見たあおり運転のドラレコ映像は、ホーンがきっかけだった。なお、テレビではクラクションと言っていたが、これはフランスの警笛メーカーのブランド名だからふさわしくない。ここでは、道交法で示される「警音器」を意味する「ホーン」を使う。

■あおられるきっかけとなった“クラクション”

映像では、幹線道路を走るA車の前に右側の道からB車が出てこようとして、それに対してA車がホーンを鳴らした。B車はブレーキをかけてセンターラインを越えたところで止まり、その左側をA車がすり抜けていった。そのあとB車はA車を執拗(しつよう)に追い回すあおり運転を繰り返した。

筆者はこの映像を見て、A車がホーンを鳴らしたタイミングが悪いと思った。B車が横道から出ようとしたときにホーンを鳴らすのならまだ理解できる。事故などの危険を回避するためのホーンは合法的でもあるから。しかしA車がブレーキをかけてB車がほぼ前にいる状態のときにホーンを鳴らしているのだ。B車が右折で無理な進入の仕方をしたのは確かだが、A車が軽いブレーキをかけてもう前に入りかけていた状態なのに威嚇か憂さ晴らしのようなホーンの鳴らし方をしたのだ。

クラクションを鳴らすドライバー
写真=iStock.com/undefined undefined
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/undefined undefined

このケースは、あおられるきっかけはA車のホーンだった。A車はブレーキを踏んで、それも急ブレーキでもないし、そのままB車が前に入って走れたはずなのに威嚇のようなホーンを鳴らすことがB車の怒りのスイッチをオンにしてしまったのだ。

ホーンを鳴らすことは、余程危険が迫ったときだけにしたほうがいい。クルマのホーンの音量はかなり大きい。もし挨拶がわりに「プッ」と鳴らしただけでも、歩行者がそばにいるときならビクッとして驚くことになる。ましてや威嚇のために使うとリスクのある行動になり、あおり運転のきっかけを作ってしまう。

■前方車に誤解されない正しい車間距離の測り方

あおり運転なんかまったくする気がないのに、巻き込まれてしまうケースもあるから注意が必要だ。

それは車間距離の取り方だ。いま車間距離は2秒以上取ることが世界的なルールになっている。ドライバーの反応時間が1秒、ブレーキやハンドルで対処するのが1秒という考え方だ。前のクルマが道路の継ぎ目やトンネルの出口などの目印を通るとき「ゼロ、イチ、ニ」と2秒間数えて自分がその場所を通れば合格だ。

それが先行車から1秒間しか車間距離が空いてないと、先行するクルマのドライバーからはあおられていると感じる。すると先行車のドライバーはチョンと強いブレーキを踏んだりして、後続車に近づくなとアピールする。しかし後続車のドライバーは突然強いブレーキをかけられて、危ない思いをするとカーッと頭に血が上ることになる。そこからあおり運転が始まってしまうのだ。

車間距離に注意するイメージ
写真=iStock.com/Baretsky
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Baretsky

せっかちなドライバーは前のクルマに近づいて走る傾向があるので、しっかりと2秒間取るようにしないとリスクのある運転になってしまうから要注意だ。あおっていないのにあおり運転をしているように誤解されるからだ。

もし先行車のドライバーの立場ならどうするか。普通ならなんとか後ろから迫ってくるドライバーを追い払いたいところだが、なかなか良い手はない。そんなときには左にウインカーを出して後ろのクルマを先に行かせるのが得策だと思う。

■あおる運転手を刺激しないことがベスト

運転免許を取って何年か経つとドライビングテクニックも身についてきて、クルマをうまく操れるようになってくる頃にトラブルのもとが生まれることがある。それは自分が自由自在に走れるから、その自分の運転の邪魔にならない運転を周囲のクルマに求めるのだ。

交差点を曲がるのがゆっくりなクルマの後ろにつくとイライラする。信号が青になってすぐに発進しない先行車に何ボーッとしているんだと思う。こうして自分より運転がヘタなドライバーを邪魔にする運転をするようになる。

これはうまいドライバーとは言えない。本当にうまいドライバーなら、自分よりヘタなドライバーを助けるような運転ができるはずだから。他人のうまい運転を期待しているようでは自分のテクニックもまだまだだと思ったほうがいいだろう。

筆者の考える「あおり運転をするドライバー」は、中途半端にうまいドライバーだ。自分では自由自在にクルマを操れると勘違いしているドライバーだ。

そんなドライバーにあおられないためには、そんなドライバーを刺激しない運転をすることが重要だ。まずは邪魔にならないように前を走らないこと。

そしてホーンを鳴らさないことも重要なことだ。そんなドライバーは自分がうまいと思っているから、ホーンを鳴らされるとバカにされたと思い、あおり運転が始まってしまうからだ。

もうひとつ、そんなドライバーを教育しようとしてはいけない。あなたは間違っていると正義感を振りかざしてもトラブルに巻き込まれるだけだから。相手にしないことが一番だ。

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菰田 潔(こもだ・きよし)
モータージャーナリスト
1950年生まれ。自動車レース、タイヤテストドライバーの経験を経て、84年から、新型車にいち早く試乗して記事を書くフリーランスのモータージャーナリストになる。日本自動車ジャーナリスト協会会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。JAF交通安全・環境委員会委員。著書に『あおり運転 被害者、加害者にならないためのパーフェクトガイド』(彩流社)、『あなたの“不安”をスッキリ解消! クルマの運転術』(ナツメ社)など。

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(モータージャーナリスト 菰田 潔)

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