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ビタミン、亜鉛、鉄分…野菜代わりにサプリを飲む人が知らない"根本的な間違い"

プレジデントオンライン / 2021年8月30日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kate_sept2004

野菜不足をサプリメントで補おうとする人がいる。だが、フードプロデューサーの南清貴さんは「栄養不足はサプリで補えるという考え方は間違いだ。サプリの中には、用量を誤ると人体に害を及ぼすものもある」という――。

※本稿は、南清貴『40歳からは食べてはいけない 病気になる食べもの』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■野菜不足だからといってサプリに頼ってはいけない

栄養素が不足しているというと、サプリメントで補えばいいと安易に考える人がいかに多いことか。そのことに驚かされる。私は基本的に反対だ。

最近では、サプリメントはコンビニでも買えるし、清涼飲料水にサプリメント的な栄養素が添加されているものもある。それだけ一般に広がったのは、安くサプリメントが製造できるからだ。

これまでも、私たち自然の一部である人間は、工業的に作られ、自然から遠く離れてしまったものをいくら食べても生きられないということを述べてきたが、サプリメントも工業製品、加工食品と同じことだ。

昨今、野菜の栄養価が低下してきているのも事実なのだが、その不足分の栄養をサプリメントで摂るという発想になってはいけない。なぜかと言うと、野菜をはじめとする自然界の植物のなかには、まだ分析できていないようなレベルの未発見の物質も含まれているからだ。それが私たちに少なからぬ影響を与えていることは事実だ。

植物が自然に持っている物質には、私たちによい作用をしてくれるものばかりではなく、悪い作用をするものもある。よい面もあるけど悪い面の方が大きいという植物は、長い年月の間に淘汰されてだんだん常食されなくなる。

だから、いま一般に栽培されて売られている野菜というのは、人間にとって効用の方が大きいと認められたからこそ、残ってきた植物と言えるわけだ。

■サプリは完璧ではない

数千年前は、薬草も野菜も区別なく、すべて「植物」だったのが、徐々に薬効の強い植物はハーブ、スパイスと分類されるようになっただけで、もともとは薬草も野菜も一緒の分類。つまり、ハーブがそうであるように、野菜にもよい作用もあれば、悪い作用もあるのだ。

しかも、そこに含まれる成分のなかで、私たちが現在の科学で分析できているものは、ごく一部だと考えなければならない。ということは、分析もされないような物質も私たちは野菜から日々摂取しているのだ。

しかし、そのような未発見の物質はサプリメントにはならない。まだ分析できないのだから作れない。でも、そういう人知を超えたところに、私たちの身体にとって欠くべからざる重要な要素も含まれているのだ。

何種類もサプリメントを摂っているから、栄養不足の補いはついています、というのは、単なる勘違い。そんなものでは補いがつかないような物質を、私たちは野菜から摂っているのだ。そこに気が付かなければならない。サプリメントは完璧ではない。

それよりもむしろ、私たちがこれから考えなくてはならないのは、食事全体のあり方と食糧生産の方法だ。それを考えずに、あれが足りないから補った、これが足りないから補ったというのでは、どこまで行ってもいたちごっこになってしまう。

それは結局、私たちの身体に化学物質の過剰摂取をさせてしまうだけだ。

■「栄養があるから多くとっても平気」の危険

どのような物質であれ、人間の身体にとって過剰摂取は大変な害になる。それはそもそも、人類史上で食物が不足することは多々あれ、過剰に摂取できることなどなかったからだ。どんなものでも、過剰に入ってきたものに対して人間の身体は対応できるようになってはいない。だから、なるべく過剰に摂るようなことはしない方がいい。

サプリメントで一番危険なのが、過剰摂取だ。よく、水溶性のビタミンは尿として排泄されるから過剰に摂っても大丈夫などと言う人がいるが、そんなことはあり得ない。

尿にするまでだって身体には大変な負担なのだ。特に、ミネラル系のサプリメントの過剰摂取は、身体に多大なダメージを与えるということを知っておいてほしい。

例えば、セロリやレタスに多く含まれるセレンという重要なミネラルがある。これは体内で抗癌効果を発揮してくれる物質だ。ところが、摂り過ぎると逆に癌を助長してしまう。適量では抗癌物質としての作用があるが、多過ぎると発癌物質になってしまうのだ。

循環器系
写真=iStock.com/spanteldotru
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/spanteldotru

亜鉛も、適量摂っていないと私たちは死んでしまう。絶対的に必要なミネラルだ。不足すれば傷の修復もできないし、男性だと前立腺、女性だと生殖器系の問題を抱えたりもする。しかし、これも摂り過ぎるとうつ病の傾向が出てくるなど大変な害がある。つまり、亜鉛は不足してもうつ的傾向となるのだが、過剰に摂取した場合も同じようにうつ的傾向が見られるのだ。

■鉄分サプリメントを摂り過ぎるとどうなるか

鉄分も影響力が大きい。安易に鉄剤を摂取して一定の領域を超えてしまうと、やはり癌のリスクが高まることがわかっている。

鉄分は、体内で活性酸素を作り出すプロセスに関与しているのではないかと言われているからだ。鉄が活性酸素を作りやすくしてしまうのだ。作られた活性酸素が、癌を作ると言われている発癌物質になってしまう。

もう一つ、鉄自体が、人体にとっても必須栄養素だが、癌細胞にとっても必須栄養素と言われていることがあげられる。過剰に鉄分を摂ってしまうと、それが癌細胞の分裂に関わって癌細胞を増やすという説が有力だ。

同時に、鉄というのはウイルスや病原性バクテリアが栄養素としている。だから、ウイルス性のインフルエンザにかかったときに鉄剤などを飲んでしまうと、ウイルスが大変な増え方をしてしまう。それも知らずに安易に鉄をサプリメントで摂ってしまうと、大変困ったことになる。

私たちが感染性の病気にかかると、たいてい高熱を出す。なぜ熱が出るかというと、身体が自分自身を助けるためだ。鉄を栄養分として生き残り、増殖していくウイルスが、高熱になると鉄分を摂り込むことができなくなる。身体は、熱を高くすることで、ウイルスがそれ以上繁殖しないように、鉄分を与えないようにしているのだ。そのときに解熱をしてしまうと、鉄がどんどんウイルスに摂り込まれて栄養になってしまう。

■豆類や野菜からでも十分に摂取できる

もし風邪がウイルス性のものならば、そういうときには鉄分を余分に摂らない方がいい。つまり、鉄分を多く含む肉や魚など動物性の食品を大量に摂ったりするのは逆効果。むしろ熱を高くしてウイルスの働きを断ち切ってしまう方が感染性の病気の治りは早い。

昔から、風邪をひいて熱が出ると、ご飯を食べずに寝ていなさいと言われたものだ。回復し始めると、擦ったりんごなどの果物が与えられた。消化器が空っぽになっているので、一番栄養分があって消化が容易な果物から食べさせてきたわけだ。これも昔の人の智恵なのだ。

南清貴『40歳からは食べてはいけない 病気になる食べもの』(KADOKAWA)
南清貴『40歳からは食べてはいけない 病気になる食べもの』(KADOKAWA)

風邪をひいたらむしろチャンス。栄養のあるものは食べずに絶食するぐらいのつもりで、いくところまで熱が高くなると、そのあと、スーッと下がる。それから果物をきちんと少量ずつ食べることで身体はきれいに回復していく。

鉄分を補いたいなら、サプリメントなんかに頼らず、精製しない米や豆類から摂取するようにした方がよい。きちんと栽培された野菜やドライフルーツなどからも十分に摂れる。

日本にも何人か優秀なサプリメントアドバイザーがいて、そういう人たちは、どのサプリメントを何mg、あるいは何μg、どのくらいの期間摂れば摂取する人の身体によい作用があるかというのを計ることができる。

そういう大変な知識量の専門家の指導のもとにサプリメントを摂るのなら、例外的に賛成だ。野菜不足だから適当に補っておこう、などと素人判断でサプリメントを摂るのが一番いけない。

だから、私はコンビニでサプリメントを売るというのはいかがなものかと思っている。

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南 清貴(みなみ・きよたか)
フードプロデューサー
1952年生まれ。一般社団法人 日本オーガニックレストラン協会(JORA)代表理事。1995年、日本初のオーガニックレストラン「キヨズキッチン」を渋谷区・代々木上原に開業。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した料理を考案・提供し、メディア出演多数。食と健康に関する講演・執筆、全国のレストラン、カフェなどの業態開発、企業内社員食堂やクリニック・ホテル・スパなどのフードメニュー開発にも力を注ぐ。2011年の東日本大震災を機に、農に近いところでの生活を決意し、岐阜県に移住。著書に『行ってはいけない外食』(三笠書房)、『40歳からは食べてはいけない病気になる食べもの』(KADOKAWA)など。

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(フードプロデューサー 南 清貴)

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