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「無能な上司はネットに晒される」降格で年収200万減の元課長が部下に嗤われる"ある言動"

プレジデントオンライン / 2021年9月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hirohito takada

「どうしてこの人が課長になれたのか?」。大手メーカーの人事担当者が職務実態を分析・評価したところ、管理職失格者が1000人中200人いたという。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「テレワークで部下のマネジメントはますます難しくなり、無能な上司が炙り出されやすくなった。部下たちは日々、LINEやチャットでダメ上司の悪口を言い合っている」という――。

■「どうしてこの人は課長なんだろう」1000人中200人が不適合

これまで十分通用したビジネススキルがコロナ禍で陳腐化する現象が起きている。

例えば、管理職だ。リモートワークの普及によって部下に対するリアルなコミュニケーションが困難になり、マネジメントは一筋縄ではいかなくなった。

管理職には社内の組織変革という逆風も吹いている。旧来の年功的賃金・昇進制度から、降格もありうるジョブ型人事制度に転換する企業が増えている。職務内容が明確化されているジョブ型への移行に伴い、「管理職に不適合」認定される人が続出しているのだ。

2020年4月、従来の年功型人事制度からジョブ型を管理職に導入した大手メーカーの人事担当者はこう語る。

「1000人近い管理職について従来の職務の実態を分析し、評価を行った上で、新たなジョブ等級への格付けを行いました。それをやって驚いたのは『どうしてこの人は課長なんだろう』と思う人が多かったことです。部下はいても業務内容は担当者レベルだし、必要とされるマネジメントスキルや業務の専門性も高くない人が全体の2割もいました。この人たちをどうしようかと人事と経営の間で議論し、管理職から外し、別に『エキスパート職』という箱をつくり、そこに入れて処遇することにしました」

■課長から係長へ降格「ボーナス含め約200万円の減収」

つまり200人が管理職不適合者だったことになる。それでも従来もらっていた給与は1年間保証し、その後は人事評価を見て、管理職に戻す人、係長級に降格する人を決めて、いずれは「エキスパート職」を廃止することにしたという。そして1年後の2021年4月にどうなったか。じつに100人超が降格したという。給与はどうなったのか。人事担当者は語る。

「ジョブ型導入の際に従来の扶養手当や住宅手当など諸手当を廃止しましたが、その分は調整給として基本給に入れ込み、3年間でなくすことにしています。その分は残っていますが、従来あった課長手当の10万円がなくなります。10万円ですから年間で120万円。ボーナスを含めると約200万円の減収になります」

企業の課長級の平均年収は866万円、係長級は627万円(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。200万円の減収はほぼ係長並みに下がったことになる。

■リモートワークでのマネジメントに苦慮する上司

ジョブ型人事制度は、年齢を問わず、職務に必要なスキルを持つ人を登用する「適所適材」が基本思想だ。従来の年功型秩序を破壊する威力を持つ。

運良く管理職に残ったとしても安閑としていられない。さらに追い打ちをかけているのがコロナ禍で激変するビジネス環境への対応と部下のマネジメントという困難な課題だ。

リクルートマネジメントソリューションズの「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2021」(8月23日)によると、管理職層が感じている「会社の組織課題」は多い順にこうした回答になった。

「次世代の経営を担う人材が育っていない」68.0%
「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」(64.0%)
「中堅社員が小粒化している」(以下、63.3%)
「新価値創造・イノベーションが起こせていない」
「難しい仕事に挑戦する人が減っている」

ビジネスの先行きが見通せない中で、経営人材や困難な仕事にチャレンジする社員など人材の育成が重要なことは十分にわかっていても、自身を含めてやるべき仕事が多すぎて手が回らないという実態が浮かび上がってくる。

とくにコロナ禍の部下のマネジメントはリモートワークに変わり、今まで以上に困難さが増している。

オンライン会議
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

■通信事業会社の人事担当役員「部下の能力引き出す管理職は……」

前出の調査で「日々の管理業務で困っていること」で最も多かったのは「メンバーの育成」の48.7%だった。次いで「業務改善」の45.3%と続く。この2つは管理職の職務・職責の最大のミッションともいえる。それができないとなると今の地位も危うくなる。

実際にリモートワークが日常化するなかで、どうやって部下をマネジメントするかを真剣に考えないと生き残れなくなる可能性もある。

通信事業会社の人事担当役員はこう指摘する。

「コロナ前の対面の働き方の時代でもマネジメントが上手くできる人、できない人がいました。リモートになったからといってそれが変わるわけではありません。もちろんリモートになったら、どうやってマネジメントしていくのか自分なりに真剣に考えなければいけない。対面時代でもあまり考えていなかった課長はリモートになるとなおさら無理でしょう。リモートでどうやったらメンバーのコンディションをチェックし、パフォーマンスを計れるのかという方法論を一人ひとりの管理職が真剣に考えない限り、管理職の役割を果たすことはできません」

対面時代は部下の意欲を引き出すために廊下やエレベーターですれ違う際に激励したり、飲みに誘って話を聞いたりしてやることもできた。だが、それができなくなった以上、工夫を凝らさないと降格=減収させられる。

■無能な上司はネットに晒される「あの課長ってさ……」

同社の管理職は現在、部下とのコミュニケーションを促進するためにいろんなことをやっている。しかし人事担当役員は、それによって無能な管理職が炙り出されていると語る。

「良いと思うのは、朝の始業時間にショートミーティングをオンラインでやる上司です。それぞれの役割分担を確認しながら健康状態も観察できます。そうかと思うと、業務時間中はずっとオンライン状態にしておけと指示する上司も結構います。部下から人事に『上司はずっとオンラインをつないだままにしておけ、と言っています。監視されているようで気持ちが悪い。これってどうなんでしょうか』というメールがきました。上司は部下とつながっていないと気がすまないのでしょうが、部下にとっては最悪です。人事に部下からいろんなメールが届きますが、上手く部下を管理できない上司が炙り出されている」

できない上司に対する不満の声やタメ口など目上の者に正しくない口のきき方をするケースは昔からあったが、それは一部の職場の知る人ぞ知る世界だった。今では気軽に人事部に相談できるようになり、上司のマネジメント力がさらけ出されるようになっている。こうした上司は当然、昇・降格審査でも問題にされるのは間違いないだろう。

ちなみに無能な上司はネット上にさらされていると人事担当役員は語る。

パソコンキーボード
写真=iStock.com/oatawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oatawa

「今の管理職は、部下がネットを通じてメンバー内だけではなく、会社の同期など横のつながりで上司の悪口などを拡散していると思ったほうがいいでしょう。LINEはあるし、グループウェアでチャットもできますし、裏コミュニケーションが昔以上に発達しています。『あそこの課長、言うこととやることがコロコロ変わるよね』とか『部長の前ではおとなしいけど、部下の前では性格がガラッと変わる』とか、いろんな情報が出回っていると、管理職も思ったほうがよい。個人的には管理職に緊張感を持たせるにはすごくよいことだと思います」

社内のネットツールを通じた「裏コミュニケーション」の進化によって、逆に部下だけではなく、他の部署の社員にも監視されるようになっている。

部下の面倒より、上司の覚えがめでたければ出世できた時代とは打って変わり、上にも下にも気を配らなければならない管理職受難の時代が始まろうとしている。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト
1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。

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(人事ジャーナリスト 溝上 憲文)

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