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「コツコツためた貯金が一瞬で消える」"ロマンス偽投資詐欺"の背景にメガバンクのぬるい対応

プレジデントオンライン / 2021年9月3日 11時15分

SNSでは道具屋と見られる人物からのこうした告知が簡単に見つかる

「ロマンス偽投資詐欺」がコロナ禍で増えている。詐欺などの犯罪に詳しいジャーナリストの多田文明氏は「この偽投資詐欺や還付金詐欺が増えている背景に、海外に本部を置くと思われる詐欺犯と共謀する“道具屋”の暗躍、さらにメガバンク側の水際対策に甘さがある」と警鐘を鳴らす――。

■「ロマンス偽投資」の詐欺犯が振り込みを指定するメガバンク

コロナ禍で「ロマンス偽投資詐欺」が増えています。

この詐欺はSNSやマッチングアプリで出会った見知らぬ外国人と見られる異性に恋愛感情を抱かせられて、偽の投資サイトに送金させられる被害。詐欺犯は被害者と世間話をするなどして仲良くなった上で「投資すれば儲かる」と持ちかけ、最初は少額の投資金を送らせたうえで被害者に利益を与えて信用を得たところで、大きな額を投資させて出金できないように仕向け、最終的にはサイトはなくなり、本人とも音信不通となるパターンです。被害者は男女問わずで、中には、コツコツためた貯金だけでなく借金をさせられ計1700万円以上だまし取られたケースもあります。

コロナ禍で対面での食事会など出会いの場が減少していることから、パートナーを見つけるための活動をオンラインでサポートする、いわゆる出会い系サイトやマッチングアプリなどを利用する機会が増えているためか、今、多くの被害が起きています。

筆者のもとには被害者からの詐欺の報告が寄せられていますが、その数がコロナ禍で顕著に上昇していますし、全国各地で被害報道が相次いでいます。

被害報告を受けた時に、筆者は最初にこう聞きます。

「(詐欺犯から命じられたのは)仮想通貨での送金ですか? それとも銀行口座への振り込みですか?」

仮想通貨による被害も多いですが、今回問題にしたいのが、銀行振り込みです。「銀行振り込みです」との回答には、続けて「●●銀行ですか?」とあるメガバンクの名を挙げて尋ねると、ほとんどの方が「はい」と答えます。その的中率は極めて高い。

なぜ、わかるのか。ロマンス偽投資詐欺では、私のところに寄せられる報告でも群を抜いて、この●●銀行の口座を振り込み先に指定してくるケースが多いからです。

■銀行口座の買い取りを強化している「道具屋」

これは、詐欺犯らがこの銀行口座をターゲットにしていることを意味します。それは、SNS上でしばしば見受けられる銀行口座売買に関する書き込みからもわかります。

筆者が画像を加工していますが、「(銀行口座)買い取り強化中」の前行には、2つの実在する銀行名が書かれています。そのうちの1行が、ロマンス投資詐欺で頻繁に使われている先の銀行口座なのです。

恋愛感情を利用した投資詐欺では、外国人異性になりすました人物がお金を投資サイトに送金するように指示してくることから、海外組織からのアプローチと思われがちです。

通常は、LINEを使って日本語に翻訳したようなテキストメッセージを送ってきますが、時にLINE電話で会話をする時があります。その時、相手の異性が中国語を話してきたという証言が多くあり、詐欺組織の本体は海外にある可能性が高いです。

ただ、国内の被害の広がりをみれば、海外組織と連携して銀行口座売買に関する不正を働く国内犯が絡んでいることはほぼ間違いないとみています。

特に筆者が問題視しているのは、主に高齢者をターゲットにした振り込め詐欺でも暗躍している「道具屋」の存在です。彼らは詐欺で使う“ツール”を手配するプロ集団です。

■コロナ禍で銀行口座が開設しやすくなっている⁉

コロナ禍では、感染防止のため、銀行窓口業務は縮小されており、新規口座の開設はネットを通じて行うように、銀行側から勧められることがあります。

ATM
写真=iStock.com/PKpix
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PKpix

そうした事情に便乗しているのか、経済的に困窮した人が他人に譲り渡してお金を得る目的で口座開設をするケースが少なくありません。その際、譲り受ける側の道具屋は「不正口座として開設しやすい銀行」を指定します。SNS上に出ていた銀行名はおそらくこれに該当するに違いありません。

また道具屋は、譲り受けるだけでなく、不正な手段で入手したり偽造したりした身分証を使って口座を開設します。こうなると、いくらでも口座が作れてしまいます。

特に心配なのが、顔写真なしの身分証明証(健康保険証や介護保険証、年金手帳など)であっても、それに加えて公共料金の領収書などがあれば、開設できる銀行が一部にあることです。運転免許証などに比べて、写真なしの身分証や領収書などは容易に偽造しやすく、口座を開設しやすくなります。

今、ネット上で不正注文の被害も増えています。これは、例えば、通販サイトから不正注文者(犯罪者)が正規の形で注文をして、商品代金を後払いの形で送らせるものの、商品を受け取る場所は、誰も住んでいない空きアパートに勝手に入り込み、商品だけを受け取ってお金を払わない、といった手口。

それと同様に、組織的犯罪グループにかかわる道具屋もキャッシュカードなどの郵送物も身分証に記載された空きアパートなどに送らせて受け取っているとみられています。こうなると今のコロナ禍は、詐欺犯にとって銀行口座が作り放題の状況ともいえるのです。

以前、不正に口座を買い取る業者から話を聞いた時、驚くべき発言を耳にしました。

「たくさんの運転免許証を持っているよ。そのなかで顔の似た人物に窓口に行ってもらい、銀行口座を開設してもらっている。それで、口座を開設したら、携帯ショップにいって、契約してもらう」

銀行の有人窓口ですら、不正入手の身分証で口座開設ができてしまうのですから、ネット上での手続きとなると、言わずもがなです。この業者はさらに「もちろん、偽造免許で口座開設するグループもあるけど、うちら(買い取った身分証)のほうがバレるリスクは少ないよ」と悪びれることなく付け加えています。

コロナ禍になってから、ロマンス偽投資詐欺だけでなく、ATMに呼び出して電話で操作方法を指示して、不正口座へ振り込みさせる「還付金詐欺」も増えており、こうした不正な口座作り放題の状況と無関係ではないでしょう。

道具屋の役割は、銀行口座と携帯電話の調達。この2大ツールを準備し、だました相手をATMに呼び出して、不正口座に送金させるのが還付金詐欺です。今、この2つがいとも簡単に入手しやすい環境であることが詐欺被害増加の要因のひとつと考えています。

■銀行はどのような対応をしているのか

冒頭で紹介したSNS上での「銀行口座買い取り」の話に乗ってしまう人がいることも、詐欺集団に荒稼ぎを許す要因になっています。詐欺犯は口座を買い取って、転売すればそれだけでぼろ儲けできます。

通帳
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

こうした事態に銀行側はどう対処しているのでしょうか。実は、これまでロマンス詐欺などの被害者の話を聞くなかで、犯罪に使用された口座に対する対応が銀行によってマチマチであることがわかっています。

被害者が、銀行に「詐欺に使われた口座だ」との通報をして凍結依頼をしたものの「『後日、連絡をします』と言ったきり、まったく電話がかかってこないケースもあった」と聞いています。

しかしその一方で「しっかりと対応をしてくれて、他の銀行の不正口座の通報先の電話番号まで教えてくれて、何もわからないなか、とても助かった」との声もあり、対応が銀行ごとにバラバラなのです。

つまり、道具屋に「買い取り強化」と名指しされたり、頻繁に詐欺に利用されたりしている銀行は、「不正口座への対策が手薄」と判断されたため、狙われた可能性があります。

詐欺犯の目線でいえば、「銀行口座の不正使用がバレても、銀行側は口座を凍結する程度の対応しかしない。だから、自分たちの不正行為が仮に発覚しても深く追求されない」と計算したのかもしれません。

もちろん今は、SNSで名前を晒されたメガバンクは不正利用されている実態に気づき、警察への捜査協力もして対策も打っているでしょうが、他の銀行で不正口座への対応が手薄なままのところがあれば、今後、詐欺犯らから狙われて詐欺に悪用されてしまうに違いありません。

今、銀行では、窓口担当者が勇気をもって顧客が不正送金するのを阻止する事例も多く出ています。警視庁もATMでの携帯電話を使えなくして、還付金詐欺を防ぐ取り組みもしています。

消費者庁、金融庁、警察庁も合同で注意喚起している

これらは、重要な取り組みで評価できます。しかし、もし「不正な口座を作らせない」「もし不正口座が発覚したら、警察に不正使用されたすべての口座に対して被害届を出して徹底的に捜査依頼をして犯人をとことんまで追及していく」といった姿勢に乏しい場合、被害は深刻化してしまうでしょう。

「還付金詐欺」「ロマンス偽投資サイト詐欺」の被害をなくすためには、窓口やATMからの振り込みを阻止する“水際対策”と共に、不正口座の開設を阻止し、徹底追及する根っこからの対策をする。この両面がなければ組織的詐欺による犯罪を根絶することはできません。

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多田 文明(ただ・ふみあき)
ルポライター
1965年生まれ。北海道旭川市出身。日本大学法学部卒業。雑誌『ダ・カーポ』にて「誘われてフラフラ」の連載を担当。2週間に一度は勧誘されるという経験を生かしてキャッチセールス評論家になる。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールスなどへの潜入は100カ所以上。キャッチセールスのみならず、詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスに精通する。著書に『ついていったら、こうなった』(彩図社)、『あなたはこうしてだまされる 詐欺・悪徳商法100の手口』(産経新聞出版)、『ワルに学ぶ黒すぎる交渉術』(プレジデント社)、『マンガ ついていったらこうなった』、『迷惑メール、返事をしたらこうなった。』、『あやしい求人広告、応募したらこうなった。』(いずれもイースト・プレス)などがある。

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(ルポライター 多田 文明)

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