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「原稿の棒読みはさすがにしないが…」ポスト菅で急浮上した岸田氏は本当に"総理の器"なのか

プレジデントオンライン / 2021年9月3日 18時15分

自民党総裁選に出馬する意向を表明した岸田文雄前政調会長。9月2日の会見では、新型コロナウイルス対策に絞った公約を発表。政府の感染症対応を一元的に担う「健康危機管理庁(仮称)」の新設を掲げ、「先手先手」の対応を強調した。 - 写真=時事通信フォト

■菅内閣のコロナ対応を皮肉る「たぶん良くなるだろうはダメ」

次の自民党総裁を争う政局は菅義偉首相が不出馬を表明し、新しい局面に入った。次期首相候補として急浮上しているのは岸田文雄前政調会長だ。この政局では、菅氏の不人気とは対照的に岸田氏の人気が高まりつつある。

しかし岸田氏は長い間、毛並みはいいが優柔不断で、「首相の器ではない」という評価が定着していた人物だ。岸田氏は、本当に変わったのだろうか。

「『たぶん良くなるだろう』ではなく、最悪の事態を想定し、先手先手で徹底した対応をとる」

総裁選への出馬を表明している岸田氏は2日、国会内で記者会見を開き、新型コロナウイルス対策についての政策を発表した。「たぶん良くなるだろう」は菅内閣のコロナ対応を暗に皮肉っている。菅氏は8月25日の記者会見で「明かりははっきりと見え始めている」と発言。あまりに楽観的過ぎると批判を受けた。その菅氏との違いを見せるように「先手先手」を強調したのだ。

■「明かりが見えている」発言で、国民は失望していた

8月26日に出馬表明して以来、岸田氏は徹底して菅氏の「逆」を狙っている。会見等では、あえてメモを見ず、カメラや記者の目を見て語りかける。話す内容にも、自分の思いを強くにじませている。官僚が書いた文章を繰り返し読み「自分が何をやりたいのか分からない」という批判を受ける菅氏を「反面教師」として、自らを振り付けている。

菅氏のコロナ対策や、総裁選再選戦略が迷走したことは、2日に配信した「『9月解散は安倍氏からダメ出し』総裁選の先送りを封じられた菅首相はこのまま負けるのか」で紹介した通りだ。結果として3日、総裁選不出馬を表明。「不戦敗」が決まった。6日に行おうとしていた自民党役員人事が滞っていたのが直接の原因だった。

菅氏が沈没していくのと反比例するように岸田氏は存在感を増している。「明かりが見えている」発言で国民を失望させた翌日に出馬表明して違いを際立たせることができたのが良かったのかもしれない。

■マスコミは一変して「岸田推し」になったが…

新聞、テレビ各社の論調が激変している。自民党寄りの立場を取る読売新聞なども含め、菅氏には厳しく、岸田氏を持ち上げるような論調が目立つ。菅氏のスポークスマンと揶揄(やゆ)されることもあった政治評論家たちもしかりだ。テレビは、岸田氏の生出演日程を確保するのを競っていて、街頭インタビューでは「人が変わった」「菅氏と違って明るい」などという好意的なコメントを放映している。

新しもの好きで、人気の出てきたものをもてはやすのは、マスコミの常ではある。しかし、マスコミはこれまで一貫して岸田氏が、優柔不断で決断できない政治家だというトーンで否定的に取り上げてきた。

昨年9月、菅氏、岸田氏、石破茂元幹事長が争った党総裁選の際、マスコミは「鉄壁のガースー」と言われた菅氏を持ち上げた一方、「きっしー」で売り出そうとした岸田氏には冷淡だった。

このときの結果は1位が菅氏、2位が岸田氏、3位が石破氏。もし岸田氏が最下位に終わることがあれば、政治生命の危機ともみられていた。石破氏を潰すために、安倍晋三氏や麻生太郎氏が動き、菅氏の支持派閥から岸田氏に票が回されたといわれている。

今の報道ぶりは、そうした過去の経緯を忘れたかのようだ。岸田氏は1年間でそんなに変身したのだろうか。

国会議事堂が端に見える曇天の景色
写真=iStock.com/MasaoTaira
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MasaoTaira

■「岸田ノート」は中曽根氏の二番煎じにすぎない

「変わった」と言われるが、政治生命をかけて総裁選に出馬するための記者会見でメモを見ずに自分の言葉で訴えるのは当然の話。菅氏が例外だっただけの話だ。

首相になる時に備え、いろいろなアイデアや助言をしたためた「岸田ノート」が「いい話」として語られているが、「首相になったらやることを」に大学ノートにまとめていた中曽根康弘氏の二番煎じにすぎない。中曽根氏にあやかってノートを記している政治家は、ごまんといる。

具体的な政策はどうか。コロナ対策では臨時の医療施設の開設などを訴えているが、新味に欠けるというのが実情。「健康危機管理庁(仮称)」の創設は、目新しいが、新組織ができたころには、コロナ禍は収束しているのではないかという突っ込みも出て来るだろう。

■安倍氏、麻生氏への責任追及では歯切れが悪い

二階俊博幹事長の交代を念頭にした「党役員は3期3年まで」という党改革案は注目された。しかし、閣僚の「任期」については言及していない。これは、8年以上財務相を続けている麻生太郎氏への遠慮ではないか、との疑念が浮かぶ。

「桜を見る会」「森友疑惑」など、安倍政権が残した負の遺産の解明にも、積極性は感じにくい。つまり安倍氏、麻生氏に関連することの追及は、二階氏に対する時の歯切れ良さがない。

菅氏の急失速は、8月22日に地元・横浜で行われた市長選で、自身が推す小此木八郎氏が惨敗したところから始まった。「これでは衆院選が戦えない」という声が上がったのだ。

自由民主党本部
写真=iStock.com/oasis2me
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

一方、岸田氏は4月に地元広島県で行われた参院再選挙で党公認候補を勝たせることができなかった。党県連会長だった岸田氏は、敗北を受けて「秋に総裁選出馬は厳しくなった」との観測も出たほどだ。「選挙の顔」として適任とは言いがたい。

■これから岸田氏は、他の候補者たちからの標的となる

岸田氏は「幹事長は3年まで」という党改革案で、菅首相、二階幹事長という不人気コンビのアンチテーゼとして持ち上げられた。ところが、その2人の「退場」が決まった今、岸田氏の改革案は、総裁選の争点ではなくなってしまった。

今後、総裁選レースは石破氏、河野太郎行革担当相、高市早苗前総務相らの名が上がっているが、既に出馬を表明して一定の支持を得ている岸田氏を中心に繰り広げられるのは間違いない。つまり岸田氏は、他の候補者たちからの標的となる。

守りに入った時、ここで紹介したような岸田氏の矛盾や弱点がさらけ出されることになる。その場合、マスコミの報道も、再び手のひらを返すことになるかもしれない。岸田氏が真に首相の器であるのかどうか。激しい政局がまだ続くことは間違いないだろう。

(永田町コンフィデンシャル)

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