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年金額を42%増やせる「繰り下げ受給」が向く人、向かない人の"ある判断基準"

プレジデントオンライン / 2021年9月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/busracavus

年金の受給を65歳から70歳まで繰り下げることで、年金額を42%増やすことができる。しかしデメリットもある。ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんが「繰り下げ受給」が向く人、向かない人の判断基準を示してくれた――。

■働く女性の場合、繰り下げ受給のデメリットは少ない

前編(「女性のほうが長生きなのに老後資金は少ない」年金を自分で増やす3つの方法)では、働く女性の年金額が全般に少ない要因について解説した。少ない年金を増やせるものなら、増やしたい。後編では、最近話題を集めている「年金の繰り下げ受給」について、「向いている人」「向いていない人」を見てみよう。

年金の繰り下げ受給のメリットは、「年金額が増えること」。一方、注意点はいくつかある。

(1)手取り額は額面と同じ割合では増えない

年金額が増えると、税金や社会保険料(国民健康保険料、介護保険料)も増えるため、手取りベースでみると額面と同じ割合では増えない。

(2)遺族厚生年金は増額にならない

夫が繰り下げ受給をして年金額が増えても、夫の死亡後に妻が受け取る遺族厚生年金は増額にならない(妻が受け取る遺族厚生年金は夫65歳時の年金額を基に計算される)。

(3)「加給年金」が受け取れない

妻が年下の場合、夫が「加給年金」を受け取れるが、夫が繰り下げ受給すると、「加給年金」が受け取れない。

この3点は筆者が日頃、男性向けにアドバイスしている注意点だ。繰り下げ受給はいいことばかりではないので、ちゃんと注意点を考慮して、「自分の場合はどうなのか」を考えることが肝心とお伝えしている。

しかし、「働く女性」が自分の年金の繰り下げ受給を検討するなら、(2)と(3)の注意点は考慮する必要がないだろう。つまり、年金が少ない女性は、「繰り下げ受給」が向いている人が多いということだ。

■4つのケースで見る、繰り下げ受給の損得判断

では、働く女性向けに「繰り下げ受給が向いている人、向いていない人」のケースを見てみよう。

ケース1

シングルで1人暮らし。ねんきん定期便を見ると、年金額は180万円くらい。この年金額で老後を暮らしていくことに不安を覚えるので、繰り下げして年金額を増やしたい。65歳以降も何らか仕事を見つけて、できるだけ長く働くつもり。
→繰り下げは、向いている。

年金額180万円で暮らすのは、確かに不安なことだろう。仮に70歳まで繰り下げると、年金額は約256万円になる。繰り下げ受給をすることに大賛成。

繰り下げている間は、働いて得た収入で暮らしていくことが肝心だ。完全な年金生活に入る前に老後資金を取り崩すのは必要最低限にしよう。

■繰り下げ受給するなら65歳以降も働く

ケース2

シングル。老後資金は1000万円ほど貯まった。65歳以降は今の職場で継続して働くことができないので、仕事をするつもりはない。年金額を増やすことには興味があるので、老後資金を取り崩しながら生活をし、5年くらい繰り下げて70歳から受け取ろうかと考えている。
→繰り下げしたいなら、65歳から働ける職場を見つけること。働かないなら、繰り下げは向いていない。

繰り下げをするなら、その間、働くなど、他に収入を得る見込みがあることが大前提だ。

節約・貯金のコンセプト
写真=iStock.com/lucky336
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lucky336

仮に65歳以降の支出を年200万円まで切り詰めたとしても、5年間で1000万円。65歳以降働いて収入を得なかったら、70歳までに老後資金をすべて使ってしまうことになる。

大きな病気や災害などの不測の事態に備えるため、ある程度まとまった金額の老後資金は必要。繰り下げをしたいなら、65歳以降の仕事を確保すべく、準備をはじめなくてはならない。

■夫が亡くなった後の年金は3つの選択肢がある

ケース3

長い間、夫と共働きを続けてきた。夫婦2人分の年金収入があるうちは、老後の支出は赤字を出さずに賄えそう。でも、夫が亡くなった後は、自分の年金だけで暮らすことになるのが少し心配。夫が10歳年上であることを考えると、ひとりの生活が長くなりそうな気がする。
→繰り下げは向いている。

共働き夫婦は、老後に「ふたり分の厚生年金」というご褒美を受け取れる。長年会社員や公務員として共働きを続けてきた夫婦は、ふたりの年金を合わせると400万円以上にもなるケースも多く、その場合、年金生活に大きな不安はない。

しかし、一方が亡くなると年金収入は大きく減ることになる。10歳年上の夫に先立たれた後に備えておきたいという気持ちは理解できる。

共働き夫婦のどちらが亡くなったあとに支給される年金額は、次の3つのうち、いずれか高い金額を選択することになる。

1.配偶者の老齢厚生年金の4分の3+自分の基礎年金
2.夫婦合計の老齢厚生年金の2分の1+自分の基礎年金
3.自分の老齢厚生年金+自分の基礎年金

ポイントは、「自分の基礎年金+厚生年金」+「夫の遺族厚生年金」にはならないことだ。ひとりになると、ふたりのときに比べ、かなり年金収入は減ることになる。

年の差カップルは、繰り下げ受給で自分の年金額を増やすことを検討してもいいだろう。1人暮らしになった妻の長生き対策にもなる。

■老後の収支がトントンなら繰り下げの必要なし

ケース4

シングルで老後が心配だったから個人年金を2本かけてきた。おかげで65歳以降は、働かなくても公的年金と個人年金の収入だけで、収支トントンの暮らしができそう。老後資金も貯めてある。さらに繰り下げを検討したほうがいいものか。
→繰り下げしなくてもいい。

公的年金と個人年金で支出が賄えるなら、無理に繰り下げをしなくてもいい。

ポイントは、繰り下げている間、老後資金を取り崩さず支出が賄えるかどうか。「働かなくても収支トントンの暮らしができそう」とあるので、繰り下げをする必要はない。

■繰り下げするなら、その間は働いて収入を得ることが不可欠

4つのケースで「年金の繰り下げが向いている人、向いていない人」を紹介した。

「働く女性」という切り口でも、シングルまたは配偶者がいる人、貯蓄や年金の額、65歳以降の就業意欲など個別事情により、「向き」「不向き」のアドバイスは異なる。

「年金額が少なく、不安」という人は、繰り下げ受給は検討に値する。ただし、繰り下げ期間中は、老後資金を取り崩すことなく、働いて収入を得ることが不可欠であると覚えておいてほしい。

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深田 晶恵(ふかた・あきえ)
ファイナンシャルプランナー
独立系FP会社・生活設計塾クルー取締役。「すぐに実行できるアドバイスを心がける」がモットー。著書は『サラリーマンのための「手取り」が増えるワザ65』など多数。

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(ファイナンシャルプランナー 深田 晶恵)

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