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「ちょっとだけ異常値の人がヤバい」気づいたときには手遅れの"沈黙の病"をご存じか【2021上半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2021年9月21日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ljubaphoto

2021年上半期(1月~6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。健康部門の第2位は――。(初公開日:2021年4月23日)
患者数が2100万人を超えて糖尿病以上に多くなっている「新・国民病」がある。「慢性腎臓病(CKD)」だ。発症すると様々な病気の死亡率が平均4倍に上昇し、新型コロナをはじめウイルス感染症の悪化リスクも高まる。一度人工透析になれば、一生やめられない。「実は、人間ドックや健康診断では予兆を捉えることができないのです。働き盛り世代は一刻も早く対策が必要」と、20万人の患者を診た牧田善二医師が警鐘を鳴らす──。(第1回/全6回)

※本稿は、牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■健康診断で、だんだん「異常値」が出てきていませんか?

「若い頃は問題なかった血圧が、だんだん高くなってきた」
「血糖値が高めで、糖尿病予備軍だと指摘された」
「ダイエットをしようと思っているけれど、体重は増える一方だ」

コレステロール値や尿酸値の異常など、あなたが働き盛りの世代なら、健康診断でなにかしら指摘され始めているのではないでしょうか。そして、「でも、たいした自覚症状があるわけでもないし……」と、対処を先延ばしにしているかもしれません。

たしかにがんのような病気と違い、ここに挙げたような症状が命に直結することはありません。では、あなたは自分の健康について、今のままの状態を続けていていいのでしょうか。

絶対に「否」です。

■気づかぬうちに手遅れになる恐ろしい病

実は、一般的な健康診断では見落とされるのが「腎臓」で、そのために、毎年4万人もの人たちが人工透析になり、年間3万人が命を落としています。

さらに、腎臓が悪いと心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中、がんの発症率が上がり、その進行を早め、早死にすることがわかっています。また、高血圧や糖尿病、肥満などがあれば、腎臓がどんどん悪くなることも証明されています。

牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)
牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)

現在、日本には「慢性腎臓病」という、気づかぬうちに腎臓を悪くした人が2100万人もいます。ところが、多くの医師はその脅威を知らず、健康診断でも正しく調べられることがありません。そのため、早期発見が叶わず、みんな手遅れになっているのです。

一方で、ごく簡単な検査で早期発見すれば、確実に治すことができます。

後者であれば、70歳を過ぎてもばりばり働いて、趣味や遊びも最高に楽しんで、100歳まで悠々(ゆうゆう)と生きられる体を手にしているでしょう。しかし、前者に留まったならば、10年も経たないうちに体内の毒を排出する腎臓の機能がもたなくなり、病院通いが日課となり、仕事も辞めざるを得ない状況に追い込まれ、果ては短命に終わる可能性大です。

選ぶべき答えは明確なはずの二者択一で、おおかたの人が間違った道に進んでいる──。そんな現状をなんとか変えたくて、私は今回『医者が教える最強の解毒術』を書きました。

■40代以降は「何かを足す」より「悪いものを引く」

あなたはこれまで、自分の健康を守るために、いろいろな健康法に興味を持ち、ときには実際に試してきたはずです。私は、それらを否定するつもりはありません。

でも、とくに40代以降は、もっと大局的な目を持たなければなりません。サプリメントを飲んだり、スポーツクラブに通ったり、マッサージを受けたり……そうした「外から加える要素」よりもはるかに大切なファクターがあります。

自分の体内で生成されている有毒物質を体外に排出する機能が、どの程度、働いているかを見なければなりません。「足すことよりも引くこと」を考える必要があるのです。

もともと、私たち人間の体は精密機械のようによくできていて、それぞれの部品が絶えず正確に働くことで健康を維持しています。あたかも、有能なAIが監督して稼働している工場のようなものです。

そこでは、さまざまなものが新しく生成され、同時に不要物もできます。この不要物がうまく排出されないと、健康は損なわれ、最終的には死に至ります。

不要物の排出というと、便や汗をすっきり出せばOKだと思っている人がいますが、まったく違います。あなたの体内に蓄積した毒素や老廃物の排出は、精密機械の中でもとくに繊細(せんさい)で複雑な部品である腎臓が担っています。腎臓が体に悪い物質を濾過(ろか)して、尿として体の外に出してくれており、その働きがあって、すべての人が命を維持することができているのです。

■働き盛りの世代は「一刻も早く取り組むべき」

ところが今、働き盛りの世代を中心に、この重要な機能(腎臓)が壊れかけている人が激増しているのです。

腎臓には、老廃物や毒素を濾過するための大切な膜があります。たとえて言うならば、エアコン内部のフィルターのような役割をしています。

エアコンのフィルターが手入れされることなく目詰まりしていたりボロボロになっていたりすれば、部屋中にカビや悪臭、汚い空気が循環してしまいますね。それと同じことがあなたの体内で起き、体中に老廃物や毒素が蔓延(まんえん)してしまいます。

でも、腎臓は壊れかけているのに、きしみ音すら出さないので本人は気づきません。自覚したときにはもはや修復不能になっているのです。

充実した後半生を目指したいのなら、腎臓の解毒機能を少しでも高く維持することが必須です。そのために、ふだんは沈黙している腎臓の声をいかに聞くか。これこそが、現代人の健康管理の一丁目一番地です。

私は、40年間医療の現場に立ち、35年間腎臓病治療の研究を続け、それにより患者さんたちの腎臓を治してきました。その立場から、働き盛りの世代が一刻も早く取り組むべき課題は「これ」だと確信しています。

普段から健康に留意して仕事や生活を大事にしている真面目な人たちが、「知らされていなかった」というだけの理由で腎臓を壊し、悔しい人生を歩むことになる事態をなんとしても避けたいのです。

■46歳男性が気にしている「血圧」

保険関連の有名企業に勤める男性Aさんは46歳の働き盛り。同期の仲間には、早くも肩叩きに遭(あ)う人が出ている中で、役員登用の噂も流れる有能な人物です。

とはいえ、大学生の子どもが2人いて、家のローンも残っています。これからも、いかに健康で長くいい仕事をするかがAさん個人の最大のテーマです。

Aさんが最近気にしているのが「血圧」です。若い頃と比較して少しお腹は出てきたものの、まだ肥満というほどではない、とAさんは思っています。ただ、毎年少しずつ血圧が高くなってきており、健康診断の度に指摘されるのです。

奥さんからも「一度、ちゃんと病院で診てもらってよ。脳の血管が切れたりしたら大変よ」と脅かされます。しかし、どうも気が進みません。同僚に、「血圧の薬は一度飲み始めたらやめられない」とか「薬によって血圧が下がりすぎてしまうこともあって、飲み方が難しい」などと聞かされているからです。

血圧を測る男性
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chinnapong

■「血圧が高めの人」の隠された大問題

Aさんはときどき家で血圧測定をしています。だいたい上(収縮期)の血圧が145前後、下(拡張期)の血圧が90前後ということですから、医学的には立派な高血圧です。でも、とくに辛い症状もないため、薬を飲むのは抵抗があるようです。

実は、Aさんくらいの血圧の人は働き盛りの世代にはごまんといて、その多くが彼のように“煮え切らない態度”をとっています。自分の血圧について、内心ではとても気になっているけれど、「大丈夫さ」と鷹揚(おうよう)に振る舞っているのです。

さらに彼らは、「血圧は下げないほうがいい」などと主張する怪しい書籍や雑誌記事を見つけては、自分に都合のいい解釈をして安心しているケースが多くあります。

その気持ち、わからないでもありません。私自身は降圧剤を服用して血圧をコントロールしていますが、もし医者でなかったら、「薬は飲みたくない」と考えるかもしれません。

しかし、腎臓について知っていれば、とてもそんな危ない橋は渡れません。Aさんも、早い段階での投薬治療が必要です。

Aさんの奥さんが心配しているように「脳の血管が切れるから」ではありません。145くらいの血圧では、そうそう簡単に脳の血管が切れたりはしません。まだ40代のAさんにとって、脳の血管が切れやしないか心配だとか、でも薬はなるべく飲みたくないとか、そんなところに引っかかっている場合ではないのです。

血圧が高いと、それが「高値血圧」に分類されるようなレベルであっても、気づかぬうちに解毒の要(かなめ)である腎臓がじわじわ悪くなっていきます。そして、気づいたときには取り返しのつかないことになります。これが大問題なのです。

■「ちょっとだけ異常値」が示す「すごくまずいこと」

血圧だけでなく、40歳を過ぎた頃から、健康診断での「ちょっとだけ異常値」が多くなります。血糖値が高め。コレステロール値が高め。尿酸値が高め。BMI値が高め……。「どれもこれもあてはまる」という人もいるかもしれません。

かなりの異常値を示したなら、嫌でも治療を受けるでしょう。ところが、なまじ「高め」程度で収まっていると、「まあ、いいや」と放置してしまうことになります。このことが、あなたの解毒能力を確実に低下させていきます。そうして最後には、繊細で複雑な機器(臓器)である腎臓を壊してしまうのです。

風邪を引いたとか、お腹を壊したというなら、病院で治療を受けなくとも、持ち前の免疫力で治すことができます。しかし腎臓は、安静にしていれば自然に良くなるなどということはありません。放置していたら指数関数的に悪化に向かい、「解毒能力ゼロ」という終着点だけが待っています。

やっかいなのは、そんな状態になるまで本人はもちろん、医師でさえ気づかないこと。そのため次の2つが極めて重要になってきます。

①「ちょっとだけ異常値」を放置しない
②「ちょっとした不調」(だるさや吐き気、不眠、イライラ、頭痛、集中力や思考力の低下、口臭……)を軽く考えない

何かしら変調があったら、「もしかしたら解毒力が落ちているのかも」「これって腎臓と関係しているのかも」と考え、行動に移す。それこそが、あなたの10年後のために非常に大きな意味を持ちます。

■20万人を診てわかった健康を奪う「医学的大問題」

私は、大学病院の勤務医時代から、クリニックを開設し今日に至るまでの40年間にわたり、のべ20万人以上の患者さんを診てきました。患者さんのバックグラウンドは実に多様で、感じ取れる人生観もそれぞれです。

しかしながら、診察経験を通し、どんなケースであろうとも、人間にとってなによりも重要なことは2つあると感じています。

1つは「死なない」こと。
もう1つは「ぼけない」こと。

この2つをクリアしていれば、何歳であろうとも、多少の持病を抱えていても、それなりに充実した日々を送ることができるからです。

「わかっているよ。だから日頃から食べ物に気をつけたり、運動をしたりしているんだ。けれど、年齢とともにいろいろな不調が出てきてしまうんだ」こんな嘆きが聞こえてきそうです。

私はこれまでも、健康を維持するための食事法などについて、多くの著書を出版してきました。姉妹編でベストセラーになった『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)をはじめ、たくさんの読者の方に手に取っていただき、みなさんの健康意識が確実に高まっているのを肌で感じています。

一方で、そうした人々の頑張りを水泡に帰してしまうような「医学的大問題」が、静かに、しかし着々と進行しています。それこそが解毒能力が著(いちじる)しく低下する「慢性腎臓病」であり、一見、健康な人たちに浸潤(しんじゅん)する「沈黙の病」なのです。

■「疲れが溜まっている」不調は体からの緊急アラート

腎臓は、私たちが日頃から健康を維持するために必須の「解毒」を、ひとときも休むことなく行う臓器です。解毒とは、言い換えれば、体内の「浄化」作業。

コロナ禍(か)においては換気の重要性が強調されています。同様に、なににつけ私たちは、汚れたものを溜め込んではならず、外に出して新鮮なものと取り換えねばなりません。

仰向けに寝る女性
写真=iStock.com/LumiNola
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LumiNola

それを腎臓の膜を通すことで行っており、つまりは、私たちの体が毎日フレッシュに命をつないでいられるのは、腎臓のおかげなのです。その重要な腎臓に、以下の緊急事態が発生している。

①腎臓は「沈黙の臓器」といわれ、よほどのことがない限り悲鳴を上げない。
②悲鳴を上げたときにはもう手遅れで、「解毒・浄化」ができない体になっている。
③「解毒・浄化」ができなければ、体中に毒素が回って私たちは死ぬ。
④一方で、手遅れになる前に確実な検査と治療を受ければ、間違いなく助かる。
⑤しかし、腎臓について理解している医療関係者が極端に不足している。
⑥そのため、実際には手遅れで「解毒・浄化」ができなくなるケースが続出している。
⑦実は、日本人の成人5人に1人は慢性腎臓病に罹(かか)っている。
⑧ただ沈黙の臓器ゆえ、たいていの人が気づかずに放置し、手遅れになる道を進んでいる。

あなたもすでに、慢性腎臓病である可能性は十分にあります。それによって、だるさやイライラ、不眠などいろいろな不調を抱えているにもかかわらず、「疲れが溜まっているせいだ」と間違った判断をしているかもしれません。

もちろん、健康な腎臓を維持しているかもしれません。だったら、なおさら真剣に生活を見直す必要があります。普段からさまざまな不調を軽視せず、正しいメンテナンスを行っていくことが、あなたの腎臓の状態、しいては寿命を決定づけるからです。

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。 著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。

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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)

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