「お母さん、今日楽しかったんだよ」と言われたときに一流の母親がしている"ある質問"
プレジデントオンライン / 2021年9月29日 11時15分
※本稿は、柳沢幸雄『「後伸びする子」に育つ親の習慣』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■「うちの子供は口数が少ない」が口癖の親が勘違いしていること
「うちの子どもは口数が少ない」という親御さんに限って、子どもの話をさえぎってでもご自身がよく話すという方が多いようです。ご家庭でも、お子さんが考えて話そうとしているのに、先回りしてしゃべってしまったり、代わりに答えてあげたりしていませんか。
大人も含めて、実は多くの人はほとんどものを考えていません。この「ものを考える力」は、意識してつけさせてあげるものなのです。
考えるのは楽しいこと、心地いいことだと子どもに感じさせるのは、子どもの教育で一番大事だとさえ思います。それができるのは、実は学校ではなく親なのです。
では、親がものを考える力をつけさせるには、どうすればいいのでしょうか? その方法はいたってシンプルで、「子どもに話をさせること」です。
繰り返し説明していますが、もし子どもが話しているのであれば、とにかく喜んで聞いてあげること。どんな話だっていい。「こんなことをやってみたい」「こんな本を買ってみたい」といったような、親からすれば興味のない話も、くだらない話でもいい。
そこから、「なぜそうしたいのか」「なぜそれがほしいのか」と、親が納得するように説明させるのもいいでしょう。なんといっても、子どもが自ら話しているのですから、それをする動機はかなりあるはずです。
子どもが興味をもっているものを受け入れてあげてください。そうすると子どもはまた次の要求を考えます。「自分の要求ができる→それが受け入れられ、満たされる」ということに快感を覚えると、そこから発展していろいろなことを考えるようになります。
■子供に「説得の仕方」を教えることができる
ここでもまた、同学年の友だちやテレビで見たヨソの子などと比べたりせず、その子の過去と現在でどのくらい成長しているか、垂直比較をしてあげてください。
子どもの発言というのは、その子が今もっている力量そのもの。それを親が「もう○歳なんだから、そんなことばかり言ってちゃダメだよ」なんて注意しても、できないものはできません。でも、垂直比較で見れば子どもは必ず成長しています。
小さいころから子どもの話を喜んで聞いてあげることを続けていくと、やがて自分の主張がちゃんとできるようになります。「親にこういうふうに説得するとOKしてくれる」などと子どもなりに戦略を練りますし、それが頭のよさにもつながります。
もちろん失敗もOKですし、うまく説明できなくてもOK。家庭とは、トライ&エラーが許される場所であるべきなのです。
■東大生184人のほとんどが「親が話を聞いてくれた」と回答
大事なことなので何度もいいますが、子どもに話をさせるには喜んで聞くこと、子どもに気持ちよく話をさせるには親は聞き役に徹することを意識しましょう。
これは子どもが2、3歳のうちからすべきですが、やることは小学生でも思春期になっても同じです。子どもが成長する過程では、話をさせることで脳も発達します。
以前、『プレジデントファミリー』という雑誌で、「東大生184人『頭のいい子』の育て方」という特集があり、私が監修をしました。そこで東大生へのアンケートをとり、「親は自分の話を聞いてくれましたか?」という質問を投げたところ、YESと答えた(「当てはまる」「ほとんど当てはまる」の合計)のは、なんと90.7%にも及びました。
親が子どもの話をしっかり聞いてくれるから精神が安定し、安心し、自信がつき、もっと上手に話そうと頭がフル回転するのだということが、ここでも明らかになったのです。
大人が話をさえぎって結論を言ってしまったり、答えを求めたり質問責めにしてしまうのはやめましょう。どうしても意見を言いたければ、子どもの話を最後まで聞いたうえで、「そうか、よくわかったよ」とまず子どもの話を受け入れます。
そのうえで、次に一つだけ「こういう方法もあると思うよ」と伝えましょう。この言い方の上手さ、下手さが子どもの自己肯定感の成長に大きな影響を与えます。
子どもは、とにかく自分の話は受け入れてもらえたと感じます。賛同されたかどうかは別としても、受け入れられた、聞いてもらえたという実感が重要です。
受け入れられたうえで親が意見を言ったとしても、子どもは「別の意見もあるんだな」と思うだけで、否定されたとは感じません。そこで「自分が話すと、親は必ず意見を押しつけてくる」と感じたら、もうしばらくは話そうとはしないでしょう。子どもは親が思う以上に賢いのです。
■子供にたくさん話をさせることのメリット
子どもにたくさん話をさせることのメリットはまだまだあります。
それが記述に強くなること。話をするためには、頭にあるものをちゃんと人に伝わるように整理して、表現する必要があります。記述にはある程度の論理力が必要なのです。子どもがこれを繰り返すほど言葉遣いはうまくなり、言葉の構成力もついてきます。
大人はすでに自分の考えを言葉に出して話す能力を身につけているため、これがどれだけ大変なのか、なかなか実感できないかもしれません。このことは、自分が外国語で何かを説明することを思い浮かべればすぐ実感できます。
少なくとも大人は、学校で英語を10年くらいは勉強していますよね。私は講演会で、「みなさんは10年くらい英語を勉強しているでしょうから、これから1分間、英語で自己紹介をしてもらいます」といって、考える時間を2分くらい用意することがあります。
すると大人たちは真剣に考え始めます。時間があるときは本当にやってもらうこともありますが、たいていは次のような話につなげます。
「ところで、あなたのお子さんは日本語を習い始めて何年ですか? たいてい2、3歳で親子の会話が始まりますから、小学6年生でも約10年間ということになるでしょうか。
そう、親御さんが10年間勉強した英語で自己紹介をするのが大変なように、まだ10年間しか日本語を勉強してない子どもたちにとって、頭に浮かんでいる事柄を人に伝わるようきちんと話すのは、とても大変なことなんです」
■話を全部聞いて要約してあげれば論理力が身につく
特に小さい子どもは、何を言いたいのかわからないことがあります。そのときこそ前述した5W1Hを使って子どもの話をフォローしてあげます。たとえば、「お母さん、今日楽しかったんだよ」「へえ、楽しかったんだ(と、まず受け止める)。何が楽しかったの?」。
子どもがどんどん話し始めて、話に脈絡がなくてもひとまず聞きます。そして最後に、「今日は◯◯くんと◯◯をして、1時間やり続けたんだね。それが楽しかったんだね」と要約してあげると、「そうか、そういうふうに話せばいいんだ」と子どもは学びます。そこから、自然と論理力がついてきます。
これは小さな子どもだけでなく、思春期のお子さんでも同じです。子どもが話したことを「要するに」「要は」「つまり」などの言葉を使って、「こういうことね」と要約してあげてください。あるいは、「要するに、どういうこと?」「ひと言でいうとどういうこと?」と聞いてみるのもいいでしょう。
論理力がつくと人に伝わるようになります。論理力さえつけば、文章を読んだときの読解力はまさに論理力そのものですし、書くことも論理力そのものなのです。
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北鎌倉女子学園学園長
1947年生まれ、東京都出身。東京大学工学部化学工学科卒業後、システムエンジニアとして民間企業に3年間勤めたのち、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、同併任教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授などを経て、2011年に開成中学・高校の校長に就任。2020年3月に退任後、4月から現職。研究者としてはシックハウス症候群・化学物質過敏症研究の第一人者でもある。著書に『空気の授業』(ジャパンマシニスト社)、『男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること』(朝日新聞出版)、『見守る勇気「世界一優秀な18歳」をサビつかせない育て方』(洋泉社)などがある。
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(北鎌倉女子学園学園長 柳沢 幸雄)
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