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「なぜ子供は勉強よりゲームをやりたがるのか」それは親が発する"ある言葉"に原因がある

プレジデントオンライン / 2021年9月30日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

なぜ子供は勉強よりゲームをやりたがるのか。北鎌倉女子学園学園長の柳沢幸雄さんは「子供に『勉強しなさい』と言っていないでしょうか。強制されれば、だれでもやる気をなくしてしまう。ネガティブな言葉で脅すのではなく、勉強の楽しさを伝えてほしい」という――。(第2回)

※本稿は、柳沢幸雄『「後伸びする子」に育つ親の習慣』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

■子育てで「あれもダメ、これもダメ」はNG

親のリアクションひとつで、子どものやる気はどんどん伸びていきます。子どもに「あれもダメ、これもダメ」と禁止するとやる気をなくことはかなり知られてきましたが、どうしても子どもに何かアドバイスしたくなるとき、ありますよね。

そんなときに効果的なのは、加点法でほめる言い方。英語でいえば「YES,BUT?」の順番でほめることです。

やり方はシンプル。まずわかりやすく、ひと言でほめてから改善点を伝えます。

「それ、面白いね(いいね)。でもこうすればもっと面白く(よく)なるよ」

改善点を伝えるときはダラダラと長くしないことがコツ。アドバイスが長いと、言われたほうは結局、改善しなければいけないことばかり頭に残ります。せっかく最初にほめたのに、その効果がなくなってしまうのです。

「YES,BUT?」がなぜいいかというと、まず「YES」で受け入れているからです。

この「僕(私)を受け入れてくれた」という感覚がとても大事で、その安心感から、子どもが自信をもち、アドバイスに対して聞く耳をもつようになるのです。

受け入れられてうれしいのは、子どもだけではありません。会社でも、自分のことを受け入れてもらえないことに悩み、傷ついて会社を辞めていく人がよくいます。一方で、自分の提案を上司が「それ、面白いね!」と受け入れてくれたら、部下はやる気がアップして、どんどん面白いアイデアを提案するようになるでしょう。

「YES,BUT?」で親に受け入れられてきた子どもは、大人になってもこの価値観をもち続けます。するとどんな相手でもいったんは異論を受け入れようと努力する姿勢が身につくので、人と対立することがなくなります。

「それもいいね!」の精神は、これからの多様性の時代に必須の力なのです。

■子供に「勉強しなさい」と言うのは逆効果

「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」

このようなことわざがあります。本人が必要としていないものは、たとえ周囲が強制しても身につかないという意味です。いくらうながしても勉強しようとしないわが子を前に、この言葉を思い出した親御さんも多いのではないでしょうか。

私自身は親に「勉強しなさい」と言われたことはありません。むしろ、病弱だったので「やめなさい」とは何度も言われました。読むなと言われても読みたくて仕方がなかったので、布団のなかで懐中電灯をつけて隠れて本を読んでいたくらいです。

これは自慢でも何でもなく、私にとって読書や勉強は“好きなこと”でした。勉強が好きで、本が好きで“必要だった”のです。だから強制される必要もないわけです。

それと同じように、人にはそれぞれ好きなことがあります。将棋の藤井聡太君にサッカーをやらせようとしても、それはムダなばかりか本人にとって有害なものです。

もし親御さん自身が、自分の親に「勉強しなさい」と言われて、喜んで勉強をした経験があるのなら、ぜひお子さんにもそうしてください。でも、私に言わせれば「勉強しなさい!」と言われて、喜んでやった経験がある人は一人もいないと思います。

せいぜい自分の部屋にこもって、勉強するふりをしているか、イライラしているかでしょう。「勉強しなさい」と子どもに言うのは、ネガティブな効果しかありません。子どもに勉強をさせたくないなら、あえて言うのもアリですが(笑)。

■「テストで○点取ったら欲しいものを買ってあげる」は最悪

また、いくら勉強をさせたいからといって、「今度のテストで◯点とったら、△△△を買ってあげるよ」などともので釣るのは最悪です。勉強が自分の事柄ではなく取り引きの材料になってしまい、自分のためにするのではなく、“勉強してあげる”というスタンスになってしまうからです。

たしかに勉強は素晴らしいものです。ただしそれは、自分が必要と思ってやっている勉強に限ります。勉強は自らするものであって、けっして「してあげる」ものではありません。してあげる勉強からは、子どものためになるものは生み出されないのです。

「『勉強しなさい』といっても勉強をしないんです」
「少しも成績が上がらないんです」

母は娘を叱る
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

このような声をよく聞きますが、そういった声がけをして成果が出ていないのなら、言い方を見直すことをおすすめします。

親に「勉強しなさい」と言われなかったことからも、私も子どもたちに「勉強しなさい」とは言いませんでした。勉強は楽しいものだと信じているので、機が熟して「自分には勉強が必要だ」と感じたらやるだろうと思っていたからです。

でも多くの人は、「勉強はすべきもの」「やらなければならないもの」「勉強は子どもの義務」と思い込んでいます。しかし、この強制される感じや義務感が子どものやる気を失わせています。

■ネガティブなことよりも勉強の楽しさを教えてあげるべき

たとえば親が、子どもに、「1日3時間はゲームをしなさい!」「ゲームはやるべきものと決まっているの!」と強制したらどうでしょう? 学校でゲームが必修化され、ゲームの授業やテストがあり、成績がついて評価されたとしたら?

柳沢幸雄『「後伸びする子」に育つ親の習慣』(青春出版社)
柳沢幸雄『「後伸びする子」に育つ親の習慣』(青春出版社)

一部のゲーム好きな子は大喜びするかもしれませんが、そうでない子はドン引きして「ゲーム嫌い」になるかもしれませんね。

子どもが「楽しい」と思ったことは、何も言わなくても自分から進んでやるものです。親に言われなくても毎日自分からゲームをするのは、それが楽しいからですよね。大人だって、「毎日会社に行って、しっかり働くのが君の義務だ!」「社会人なら、家族のためにしっかり稼ぐべきだ!」なんて言われたら、どういう気持ちになりますか?

「そんなこと、人に言われてやってるんじゃないんだよ」などと反発したり、働くことが修行、苦行のように感じたりしてしまうのではないでしょうか。

子どもには、勉強しないと将来困るとか、他の人に置いていかれるなどと脅すよりも、知らなかったことを知る楽しさのほうを伝えてあげましょう。子どもが学んでいくなかで、「新しい知識が身につくのが楽しい」「知らないことがわかって面白い」という気持ちが芽生えれば、必ず勉強が好きになっていくでしょう。

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柳沢 幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
北鎌倉女子学園学園長
1947年生まれ、東京都出身。東京大学工学部化学工学科卒業後、システムエンジニアとして民間企業に3年間勤めたのち、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、同併任教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授などを経て、2011年に開成中学・高校の校長に就任。2020年3月に退任後、4月から現職。研究者としてはシックハウス症候群・化学物質過敏症研究の第一人者でもある。著書に『空気の授業』(ジャパンマシニスト社)、『男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること』(朝日新聞出版)、『見守る勇気「世界一優秀な18歳」をサビつかせない育て方』(洋泉社)などがある。

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(北鎌倉女子学園学園長 柳沢 幸雄)

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