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「自分は記憶力が悪い」そう思い込んでいる人の根本的な勘違い

プレジデントオンライン / 2021年10月7日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marrio31

年を取るにつれて記憶力が悪くなったと感じる人は多いだろう。しかし、効率化のプロとしても知られる経済評論家の勝間和代氏は「それは間違いであると、様々な研究が明らかにしています」という――。

※本稿は、勝間和代『勝間式生き方の知見 お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■自分は記憶力が悪いという暗示をかけない

皆さんに、禁句にしていただきたい言葉があります。それは、「自分は記憶力が悪いから」というセルフ・ハンディキャッピングの言葉です。

セルフ・ハンディキャッピングとは、自分の能力を一定以上落としておくことで、何かに失敗しても傷つきにくくするための一種の暗示です。しかし、自分は記憶力が悪い、と暗示にかけてしまうと、そのことを証明するために覚えたことをわざわざ忘れてしまったり、あるいは忘れていなくてもなかなか思い出せなくなったりします。認知的不協和を起こさないようにするために、無意識のうちにそうしてしまうのです。

■思い出す機会がなければ忘れるのが自然

年を取ると記憶力が悪くなると言う人がいますが、実際には、年と記憶力はほとんど関係がないことが様々な研究でわかっています。高齢になるにつれて覚えていることが増えるため、その中から思い出したいことを探すのに時間がかかるだけで、認知症でもない限り、記憶力が衰えることはありません。

また、人の名前が思い出せなくなるとも言われますが、人の名前は基本的に意味がないため、日常的に口にしたり、思い出す機会がなかったりすれば忘れるのが自然です。同窓会で、何十年かぶりに会った同級生の名前をパッと思い出せるほうが変でしょう。ということで、記憶力が悪いというのは思い込みに過ぎないので、「自分は記憶力がいい」と思い直してから、この先を読み進めてください。

■記憶力を保つ3つのフェーズ

記憶力というと、単独の能力があるように勘違いしがちですが、集中力と同じで、私たちが頭をうまく使う技術の一つです。記憶は、知識や経験を収集する、次に収集したことを保持する、さらに収集したことを的確な場で出力するという3つのフェーズによって定着し、これが上手に行える人のことを記憶力がいいと言います。記憶力がいいほど、色々な人生の課題を解きやすくなるため、やりたい仕事に就く、収入アップなど、自己実現をしやすくなることは言うまでもないでしょう。

また、記憶力がいい人の一例として、何かを眺めるだけで覚えてしまう、というビジュアルメモリーが話題になりますが、多かれ少なかれ、誰でもこの能力は持っています。ただ、その記憶は無意識に蓄積されるため、自覚しづらいだけです。

■多くのことは無意識に記憶される

私たちは、朝起きてから夜寝るまで、多くの行動や意思決定、決断を無意識で行っています。それと同様に記憶も無意識が主役で、目が覚めている間に目にしたり、聞いたり、匂いを感じたり、触ったりしているもの全てを無意識は記憶しています。

その大半の記憶は意識にのぼらず、二度と使われることがないため、忘れ去られます。興味があることや、大事だと思っていることについては強烈な印象が無意識に残って、「あれは○○だ」と言葉とのインデックス付けが行われます。そのインデックス付けが、無意識から記憶を呼び起こしやすくする最大の鍵になります。

たくさんのメモ
写真=iStock.com/fotosipsak
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fotosipsak

■記憶のインデックス付け

今から20年以上、コンサルタントだったときに、電子マネーの仕事をしたことがありました。その仕事を担当する以前は、街を歩いていても電子マネーに関する看板などがまったく目に入りませんでしたが、担当して、どうやって電子マネーを普及させようかと考え始めたら、意外と色々なところで電子マネーが使えることに気づくようになりました。つまり、自分の仕事になって関心を持ったことで、目に入った看板がインデックス付けされるようになったのです。

よく、自分の進路や目標を言葉にして掲げることが重要だと言われますが、それを痛感するような体験でした。言葉にすると、無意識のうちにも役立つ情報が記憶に残りやすくなるため、叶えやすくなるわけです。

■記憶力アップに睡眠は不可欠

近年、睡眠中には「メモリー・コンソリデーション」という記憶を統合する作業が行われていることがわかりました。私たちが日中に経験したことは、海馬と言われる短期記憶に保存されます。その中で、今後必要だと判断された知識だけを引き出して、長期記憶に整理統合して脳に蓄える作業が、メモリー・コンソリデーションです。

この作業中に、私たちは夢を見ると考えられています。残念ながら、起きたときにはほとんど忘れていますが、夢の正体は、脳による記憶の仕分け作業だったわけです。単に肉体的な疲れを取るだけなら、睡眠時間は6時間ぐらいで十分ですが、メモリー・コンソリデーションのためには、もう少し長く、7、8時間寝たほうがいいとも言われます。

■飲酒は長期記憶化を妨げる

ただし、飲酒して寝ると睡眠の質が落ちるため、うまく仕分けされずに、きれいさっぱり忘れてしまう可能性があります。それも飲酒の害の一つで、日中にどんなに有益な情報を得たとしても、長期記憶として残りにくくなってしまいます。逆に、運動や入浴が記憶にいいとされるのは、脳の血流をよくするからです。脳の血流がよくなると、十分な酸素が脳に供給されて記憶力が高まると言われます。

年を取ってくると記憶力が悪くなった気がするのは、睡眠時間が短くなったり、体を動かす機会が減ることが影響すると思われます。また、長時間通勤に長時間労働、人がたくさんいる狭い空間での勤務環境というのも、記憶力にとっていい状況ではありません。そうしたストレスがかかった状況だと、脳は物事の理解や記憶をスムーズに行えず、それを呼び起こすときにも苦労が伴ってしまうからです。

■記憶の出力も大事

滅多に会わない人の名前をなかなか思い出せないのは、日常的に口にする機会がないからだと前述しましたが、私たちが英語を習得しにくいのもまったく同じ理由で、日常会話が英語でないからです。記憶を定着させるには、収集して保持したものを出力することもとても重要です。

英語に限らず、頑張って勉強したことや本で読んで感銘を受けたこと、すごいと思ったお役立ち情報などを入手したら、それらに費やした時間と同じかそれ以上の時間を使って、口に出したり書いたりして、記録するようにしてください。私は、SNSを記憶の出力場所の一つにしていて、気づいたことがあればスマホからなんでも書き込んでいます。そこで目に留めてくれた人とやり取りすると、さらに記憶の定着を促せるわけです。

■記憶の情報ネットワーク化によって直感を磨く

勝間和代『勝間式生き方の知見 お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』(KADOKAWA)
勝間和代『勝間式生き方の知見 お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』(KADOKAWA)

スマホを使うのは、スマホに記憶を代用させていることにならないか、と問題視する人がいます。確かに、同じ記録でもノートや手帳に手書きしたほうが、紙を触る、ペンを取る、書く、といった工程を経ることで五感が刺激されて、記憶を保持しやすくなるでしょう。

だからと言って、今さら紙のメモや手帳に戻るか否かは、一人ひとりの判断に任せます。いずれにしても、私たちが自分の記憶を上手に情報ネットワーク化して、それをうまく引き出せるようになるには、日々の生活の中で、記憶の収集→保持→出力を繰り返すことが必要です。

そうすると、いわゆる直感が働きやすくなることを実感できます。直感というものはどこからくるのかというと、私はこれまで蓄積された記憶以外にないと考えています。

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勝間 和代(かつま・かずよ)
経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授
1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガンを経て独立。少子化問題、若者の雇用問題、ワーク・ライフ・バランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を行う。著書に『勝間式食事ハック』(宝島社)、『勝間式超ロジカル家事』、『勝間式超コントロール思考』『ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理』(以上、アチーブメント出版)などがある。

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(経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授 勝間 和代)

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