「眞子さまが小室圭さんに惚れるのは、落語家ならわかる」立川談志の愛弟子がそう断言するワケ
プレジデントオンライン / 2021年10月6日 15時15分
■結婚を発表した眞子様が背負わされているもの
10月1日、宮内庁は、秋篠宮家の眞子さまと小室圭さんの結婚を正式に発表しました。26日に婚姻届を提出し、同日、2人で記者会見を行う予定とのことですが、痛ましいと思ったのは眞子さまが「複雑性心的外傷後ストレス障害(PTSD)」であることも公表されたことでした。
そもそものお二人の出会いは、大学(国際基督教大学)時代の同級生ということで、5年の交際を経て2017年9月に婚約が内定していました。その後、みなさんご承知の通り、小室さんの母親による「金銭トラブル」などが取り沙汰されることになり、そのことに端を発した「準備不足」などを理由に、18年2月に結婚が延期される形になっていました。
国民感情としては、「いやあ、愛を貫いたんだよ」という評価もあれば、「金銭問題についてはきちんとした説明がなされていないんじゃないか」と疑念を浮かべる声もあり、そのどちらもうなずけるところが悩ましくもあります。だからこそ微妙な空気が漂う感じで、結果として、外野の声と共にその割り切れないセンシティブな部分が心痛となって眞子さまに降りかかっていたというところでしょうか。
「天皇は日本の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」とは、日本国憲法の第一条に明記されています。さる高貴なご一家は「少子高齢化、跡継ぎ問題、『両性の同意だけでは済まされない』自由な結婚にまつわること」などなど、日本に存在するやっかいな「負の象徴」を背負わされているのかもなあと、私は感じたものでした。
かような経緯の中、「儀式を挙げない」「一時金はなし」という「落としどころ」という妥協の中、なんとかその行く末を見守ろうとようやく結婚への「合意形成」がなされたのです。このお二人の結婚は、落語でならどう分析すれば納得するかと考えた場合、まず浮かんできたのが、「紺屋高尾(こうやたかお)」という落語でした。
■身分違いの純愛を描いた『紺屋高尾』のよう
紺屋高尾のあらすじは、兄弟子に誘われて吉原の夜桜見物に繰り出した染物屋職人の久蔵が、「花魁道中」で見かけた三浦屋の高尾太夫に一目惚れしてしまうところからストーリーは始まります。
寝ても覚めても高尾太夫のことが忘れられない久蔵は恋い焦がれて死ぬほどやつれるのですが、親方に「十五両こしらえてみろ。そうすりゃ会わせてやるから」という言葉を墨守(ぼくしゅ)(頑固に守り通すこと)し、5年かかるところ夜も寝ないで働き3年で15両こしらえます。
そしてそこで、吉原に詳しいという医者・薮井竹庵のサポートを仰ぎます。その際、竹庵から「染物屋の職人だと会えなくなるから、流山の金持ちの若旦那という設定で行け」とアドバイスを受け、「大金持ちの若旦那」という「ウソをつくこと」でようやく念願の高尾太夫に会えます。
一夜を共にした後、高尾太夫の「次はいつ会えます?」という問いに対し、もうこれ以上ウソが吐けなくなったと観念した久蔵は「本当はただの染物屋職人だ」と涙ながらに正直に身分を明かします。その結果、その情に絆(ほだ)され、久蔵の真実の愛によろめいた高尾太夫が、あくる年の3月15日、久蔵の元へ「高貴な身分を捨て嫁いでゆく」というピュアラブストーリーです。
いい話ですよね。この11月21日で没後10年になる師匠談志の十八番でもありました。
この落語と「お二人の共通点」を挙げてみましょう。
■3年の遠距離恋愛を乗り越えた小室圭さん
まずは「身分の差」です。
全盛をときめく三浦屋の高尾太夫という絶世の美女は「遊女三千人御免の場所」の中の最高級の「花魁」という地位です。江戸っ子の憧れの的という立場で、公的にも花魁は大正年間には文芸雑誌の表紙を飾るほどの国民的スターでありました。「眞子さまと小室圭さんの立場」とほとんど同じと言ってもいいのではないでしょうか。
続いて、「小室さん側(特に母親側)がウソというか若干の不信感を抱かせた」という点です。落語では久蔵さんが「金持ちの倅」というウソをつきますが、小室さんにもそのような「経歴にまつわる疑惑」はワイドショーが取り上げていました。
そして、「似ている項目」の一番の眼目であるのが、久蔵と小室さんがお互い「3年以上辛抱して、目標を達成させた働きぶり」です。久蔵が「3年で15両こしらえる」のと、「ほぼ3年みっちり法律の勉強に励み現在ニューヨークの法律事務所に勤務している」のとは、まったく同じと言っても差し支えないのではないでしょうか。
つまり、高尾太夫も、眞子さまも、惚れたのは久蔵と小室さんの「タフネスぶり」だったのではと確信します。
女性が男性にときめくのは、「未来を変えてくれる可能性」ではないでしょうか? その具現化がお金だったり、頑丈な身体だったりするから男はそれらが可視化されるという意味で年収を上げようとしたり、筋トレに励んだりと必死なのです。
そういう意味で言うと久蔵も小室さんも「精神的なマッチョ」ではないかと推察します。
会いたくても会えない日を「3年待った」のです。
■妄想「現代版 紺屋高尾」
では、小室圭さんが「紺屋高尾」のクライマックスの場面をリアルに演じてみたらどうなるのでしょうか。
小室さんが眞子さまに訴えます。
「3年、待ってもらえますか? 一生懸命勉強して、異国の地で法の番人、法の専門家目指して、かならず安定した職業を得てきます。3年経ったら必ず迎えに来ます。
あ、そうでした、そんなの無理ですよね。あなたは引く手あまたの存在だ。3年も待てるわけないですよね。どこかの大企業の御曹司と一緒になるほうが似合うお方ですもんね。そうか、3年経てば、あなたにはもう会えないのですね。もうさよなら、なんですね。もう会えないのか……。
いや、会えないなんてことはありません。お互い元気でやってりゃ、この広い地球の下、いや、ニューヨークの空の下、ばったり出くわすことがあるかもしれません。その時、あなたが社長夫人で、僕がホームレス救済の炊き出しを手伝う弁護士という形かもしれません。
もしそんなふうに再会したとしても、木で鼻をくくったように横を向かないで、嘘でもいいからにっこり笑って、『圭さん、元気?』と一言言ってもらえませんか?
その一言だけで僕は這いつくばって生きてゆけます。母親および自分の経歴も含めてもろもろ、ウソがあったことを心よりお詫びします。でも、あなたに会えて本当によかった。ありがとうございました。さようなら」。
いやあ、書いていてジーンとするぐらいのいいシーンですね。
会いたいのに会えない間、これに近いようなやり取りがお二人の間ではあったのではと想像します。
■おめでとうございます! どうか末永くお幸せに
この真摯(しんし)なセリフで眞子さまが皇室という高貴なお立場を離れることを決意されたのではと、一落語家として妄想する次第です。
落語は天皇家にも代々愛され続けてきました。昭和天皇は落語がお好きで昭和の大名人・三遊亭圓生師匠を招いて落語を楽しんだというのは有名な話ですし、今上天皇も秋篠宮さまも落語好きとお聞きしたこともあります。落語が人間の本質を突く芸術であることを皆様方ご理解されているのでしょう。
「紺屋高尾」に免じて、このお二人の幸せな門出を、一国民として祝福させていただきたく存じます。
おめでとうございます! 末永くお幸せに!
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立川流真打・落語家
1965年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。ワコール勤務を経て、91年立川談志に入門。2000年二つ目昇進。05年真打昇進。著書に『大事なことはすべて立川談志に教わった』など。
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(立川流真打・落語家 立川 談慶)
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