「日経新聞を読んでいないと時代に取り残される」そう考える人のほうがよっぽどマズい理由
プレジデントオンライン / 2021年10月13日 9時15分
※本稿は、ひろゆき『ひろゆきのシン・未来予測』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。
■なぜ「新聞」が軽減税率の対象になったのか
2019年の消費税改正では「軽減税率」が導入されました。消費税が10%に上がる中で、食料品などの必需品は8%に据え置かれたのです。
外食は10%なのにテイクアウトの場合は8%で計算するなど、あちこちで混乱が起きましたが、そもそも2%の差ってそんなに大きいのでしょうか。
1カ月の食費が5万円の家庭なら、2%はたかだか1000円。このために、システムが複雑になって余計なお金がかかります。そして、そのお金は税金から支払われます。国民としては、もっと冷静な判断をするべきだったんじゃないかと思います。
しかし、やはり税率が上がれば国民の消費マインドは冷え込み、売り上げが減るというので、その軽減税率グループに必死で入ったと思われるのが「新聞」です。
おそらく、業界挙げて相当なロビー活動を行ったのでしょう。購読者へ値上がりを知らせることで、解約のきっかけを与えることを恐れたのです。結局、新聞の消費税は8%に据え置かれました。
そもそも、軽減税率に縋り付かねば生き残れないのであれば、もはや新聞の役割など終わっているといえるのではないかと思うのです。
■減少に歯止めが効かない理由
実際に、新聞は消滅の危機にあるようです。
日本新聞協会が発表している日本の新聞の発行部数は、1997年がピークで5376万5000部。それが、2018年には3990万1576部と、21年間に4分の3に減っており、減少に歯止めがかかっていません。
今はみんな忙しくて、出社前に自宅で新聞を読む時間などなかなか取れません。電車の中で新聞を読む人もほぼ皆無になりました。
かといって、帰宅後の夜の時間に朝刊を読んでも意味がない。多くのビジネスパーソンにとって、せいぜい職場で取っている新聞に目を通すくらいでしょう。
■日経新聞を読む意味を見出せない
元毎日新聞社記者の河内孝さんは、日本の新聞は、ビジネスモデルを変えなければ生き残れないと言っています。
発行部数も広告収入も減っていることはもちろん問題なのだけれど、一番の危機は、インターネットの時代を生き残るビジネスモデルが見つかっていないこと、見つけようともしないことであると河内さんは指摘しています。
インターネットで誰もがつながっている時代になって、SNSなどでいろいろ情報を共有し合っているときに、メディアが「第四権力」などと威張って、上から情報を流す時代は終わったと。
僕自身、大学時代に、日本経済新聞を取って毎日隅々まで読むということをやっていました。広告まで含めて全部目を通すと、どれだけ集中しても1時間程度かかります。かかる時間と得られるものを考えたときに、続ける意味を見出せずに1カ月でやめてしまいました。
ましてや、情報の速度が飛躍的に上がった今の時代、新聞に書いてあることはすでに時代遅れもいいところです。日経新聞を読みこなせば賢くなるとか、ビジネスに役立つ情報をキャッチできているとか考えている時点で、かなりまずいでしょう。
■アメリカでは「ハイパーローカル」に活路
日本には現在128の新聞がありますが、アメリカははるかに多く1400くらいです。
その分、それぞれの発行部数は10万部から20万部と小さく、記者の年収は日本よりずっと安く300万円から400万円くらいだそうです。ちなみに、日本の大手新聞記者の給料は、彼らの3倍から4倍です。
また、ハフィントン・ポストを買収したアメリカの大手IT企業AOLが、ごく限られた地域について詳しく報じる「Patch」というサイトを運営しており、今後は、こうしたハイパーローカルに活路を見出そうとしているようです。
ハフィントン・ポストの経営者アリアナ・ハフィントンさんは、アメリカ議会の公聴人に呼ばれた際に、大変に象徴的なことを述べたそうです。
「多様なニュースが民主主義のために絶対に必要だというのはわかるけれど、それが紙の媒体を通さねばならないと、あなたたちは思うのですか」と。
ニューヨーク市立大学のウォルターマン氏も、こう言っています。
「我々が考えなければならないのは、ニュースを救うことであってニュースペーパーを救うことではない」
このように、アメリカでは、ハイパーローカルやニッチなコンテンツなど、新しいジャーナリズムの動きが出ている一方、日本の新聞はいまだに迷走しているのです。
■大手新聞社は「体質」を変えられるか
日本の大手新聞社は都心の一等地を保有していて、不動産業で利益をあげているところもありますから、潰れずにしっかり残るケースも多いでしょう。
新聞が信頼できるニュースを配信するという使命をまっとうするとしても、それは紙媒体ではなくネット上のこととなるはずです。だから、立派な社屋も印刷機械もいりません。
本社社屋を今のような都心に置いておく必要はなくなりますから、不動産業の実入りは今後増えるかもしれません。
アメリカの例を見ていても、オンラインの定期購読はうまくいきそうな気配がありますから、日本もそうなるでしょう。
いずれにしても、日本の大手新聞社がどこまで「自ら新しくなれるか」が問われているのですが、それができるかは疑問です。
たとえば、日本独特の「記者クラブ」というシステムがあります。この記者クラブは民間団体として幹事社の新聞社が経営しているものの、極めて政治的な動きをします。
このクラブに属していることで得られる情報があるため、すでに会員になっている社は新規参入を拒みます。
そして、この記者クラブを上手に使えば、政府もメディアをコントロールできます。つまり、権力側とメディアが持ちつ持たれつの関係でいる一面があるのです。
そういうおいしい思いをしてきた既存の大手新聞社が、どこまでその体質を変えつつ生き残っていくことができるか。それは簡単なことではないでしょう。
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2ちゃんねる創設者
本名は西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、近著『僕が親ならこう育てるね』(扶桑社)ほか『無敵の思考』『働き方 完全無双』(大和書房)、『論破力』(朝日新書)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)
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