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もしも中国と台湾が戦争に陥ったとき、日本はどちらの味方をするべきなのか

プレジデントオンライン / 2021年10月12日 9時15分

2021年10月10日、台北の総統府前で、辛亥革命を記念する「双十節」の式典に出席し、演説する台湾の蔡英文総統 - 写真=時事通信フォト

■4日間で中国軍の進入機数は計149機にも及んだ

中国の台湾への軍事的威嚇が激化している。

台湾国防部の発表によると、10月4日に中国軍の戦闘機や爆撃機など合わせて56機が台湾南西部の防空識別圏(ADIZ、防空のために領空の外側に設けられた空域)に入った。これは過去最多だった10月2日の39機を大きく上回る。結局、1日から4日までの累計の進入機の数は計149機にも及んだ。

台湾側はスクランブル(緊急発進)によって警告対応しているが、台湾のスクランブル機と中国軍機が偶発的な衝突に至る危険性は高く、そこから火花を散らすように台中戦争へと突入する可能性も指摘されている。

なぜ中国は台湾をここまで威嚇するのか。

今回、中国軍機の進入が始まったのが10月1日。この日は中国の国慶節(建国記念日)に当たる。中国共産党機関紙「人民日報」系の「環球時報」(電子版)は「進入行動は国慶節を祝う軍事パレードである」とアピールしている。欧米では、日本やアメリカ、イギリス、オーストラリアによる共同軍事演習に対する「対抗措置」との見方も出ている。

軍事力の誇示にせよ、軍事演習に対する反発にせよ、中国の台湾に対する威嚇行動は決して許されない。

■「中国は6年以内に台湾を攻撃する」と米軍司令官

アメリカのバイデン政権は中国を「軍事的にも経済的にも最大の競争相手」と認識し、トランプ前政権と同じ対決姿勢を取っている。この米中の対立は、中国の台湾への軍事的威嚇行動の激化でさらに強まることは間違いない。台湾は米中対立の象徴となっている。

アメリカが共同軍事演習や台湾への軍用機の輸出で圧力をかけても、中国はひるまない。習近平(シー・チンピン)政権が本気だからである。中国は「台湾は中国の一部で、核心的な利益だ」との主張を繰り返し、他国の批判に「内政干渉」と強く抗議する。民主派を制圧した香港と同じように、中国共産党の餌食にしたいのだ。

このまま行くと、中国は台湾に侵攻して併合を求める可能性が高い。その証拠に米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)は今年3月、「中国が6年以内に台湾を攻撃する恐れがある」と指摘している。

習近平国家主席も台湾統一に向け、こんな演説をしている。

「統一という歴史的任務は必ず実現しなければならない。実現は必ずできる。台湾には香港とマカオで取り入れた一国二制度を適用する」

習近平国家主席のこの演説は、10月9日、辛亥革命から110年を記念する式典で述べられたものだ。

■中国の軍事戦略・能力でも習近平政権の本気度が分かる

中国は現在、台湾有事に備え、アメリカの軍事介入を阻止する「A2AD(接近阻止・領域拒否)」と呼ばれる軍事戦略・能力を推し進めている。A2ADとは「Anti Access(A2、接近阻止)」「Area Denial(AD、領域拒否)」を指す。

中国は日本の伊豆諸島からグアムに至るいわゆる「第2列島線」の内側でアメリカ軍の軍事行動を阻止し、南西諸島とフィリピンを結ぶ中国に近い「第1列島線」の内側へのアメリカ軍の進入を食い止める作戦を立てている。

台湾はこの第1列島線の内側に置かれる。地政学的かつ軍事戦略的な観点からの重要なポイント、つまり東・南シナ海の守りと太平洋への進出を狙っている。このために中国は台湾を支配下に組み入れたいのである。

台湾海峡付近の地図
写真=iStock.com/Juanmonino
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Juanmonino

中国はA2AD戦略をフル活動し、台湾周辺の空域と海域へのアメリカ軍の進行を妨害し、軍事的主導権を握ろうとたくらんでいる。

たとえば、中国大陸の沿岸から1500キロ~4000キロ圏を射程に入れた「米空母キラー」、「グアム米軍基地キラー」の弾道ミサイルの配備である。さらに今後は高度に技術開発された無人機による敵機・敵艦の探知、誘導、攻撃の3つの要素がA2AD戦略の要となる。

こうした中国の軍事戦略・能力を見ても習近平政権の本気度が分かる。

■台湾有事ともなれば、日本も平時ではなくなる

一方、アメリカ軍は中国のA2AD戦略に対応するため、グアムや沖縄などの基地への部隊配置や軍事戦略を見直している。

具体的にはアメリカ海兵隊が昨年3月に発表した「2030年の戦力設計」によると、戦力の分散化と無人機の徹底活用を掲げ、南西諸島海域への中国の進出に対し、沖縄の基地などに海兵沿岸連隊の部隊を置く。

対無人機作戦としては、無人機の周波数を識別。妨害電波を発信し、通信を遮断して中国軍の無人機を無力化する。空母の耐久性を高めて攻撃にも備えている。

中国の習近平政権が台湾に侵攻して台湾有事ともなれば、日本も平時ではなくなる。

戦場となる台湾から日本最西端の沖縄県の南西諸島・与那国島までは110キロと極めて近い。しかも中国が台湾に侵攻する場合、事前に沖縄の島々を軍事的に占領し、軍事行動の拠点にする危険性が以前から指摘されてきた。

このため、日本は中国軍の侵攻に備え、沖縄の防衛力の強化と整備を進めている。防衛省は2022年度に沖縄県の石垣島に陸上自衛隊の地対艦・地対空ミサイル部隊を配備し、与那国島には2023年を目途に電子戦部隊を配備する計画だ。

■中国軍の太平洋への進出を阻止する必要がある

ここで防衛省が防衛白書などで使う「逆さ地図」(環日本海・東アジア諸国図)を思い出してほしい。日本列島を中国大陸側から見ると、どう見えるかがよく分かるあの地図である。

中国海軍が太平洋へ進出するには、日本列島を越えなければならない。北海道と本州との間の津軽海峡、九州の佐多岬と種子島の間の大隅海峡、沖縄本島と宮古島の間にある宮古海峡などを通過する必要がある。台湾有事に限らず、日本列島は軍事的に重要な位置にある。

国際的な安全保障を保つためには、日本が同盟国のアメリカなどと協力して中国軍の太平洋への進出を阻止することが求められている。

■「中台の軍事的緊張が過去40年余りで最も高まっている」

さていつものように新聞の社説を見てみよう。

まずは10月8日付の産経新聞の社説(主張)。「中国の台湾威嚇 異常な軍用機進入やめよ」との見出しを掲げ、「中国の習近平政権は危うい軍事的威嚇を二度と行ってはならない。地域の平和と安定を乱す振る舞いを控えるべきだ」と訴える。

中国の台湾威嚇は極めて「危うい」。習近平国家主席は国際・地域の平和と安全をどう考えているのか。トップに君臨する人間として非常に情けない。

産経社説は指摘する。

「台湾の邱国正(きゅう・こくせい)・国防部長(国防相に相当)は、中台の軍事的緊張が過去40年余りで最も高まっていると危機感を表明した。中国軍の能力について『2025年にも本格的な(台湾への)侵攻が可能になる』と分析した」

沙鴎一歩が前述したように中国の台湾侵攻の可能性は高い。

さらに産経社説は「中国軍機は戦闘機や爆撃機などが編隊を組み、台湾や、台湾が統治する東沙諸島、米海軍などの艦船を攻撃する能力を誇示した。昼間に加え、夜間も飛来した」と指摘し、「執拗な軍事的威嚇で台湾の人々を屈服させ、併呑(へいどん)したいのかもしれない」と書く。

「併呑」という難しい言葉を使わなくてもいい。要は中国が台湾を従えて配下に置こうということだ。

紫禁城を行進する中国の兵士たち
写真=iStock.com/xingmin07
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xingmin07

台湾は領土の一部というのが中国の主張である。この歪んだ中国の主張によって台湾は国連に完全加盟できないという憂き目にも遭わされている。

■岸田政権は毅然とした態度を示すべきだ

産経社説は書く。

「だが、台湾は反発を強め、抑止力を向上させる構えだ。蘇貞昌行政院長(首相に相当)は『中国に武力行使させないよう団結し、防衛力を増強する必要がある』と語った。米国は協力する方針だ」

沙鴎一歩は台湾を応援する。台湾は協力するというアメリカの軍事力や経済力をうまく使って中国の習近平政権と戦うべきである。ただし、実戦は避けたい。あくまでも抑止のための軍事行動までだ。

同時に台湾は日本やアメリカ、イギリスなど民主主義の国々が集まる国際会議の場を借りて中国の非道を強く訴え続けるべきである。強いパンチにならなくともジャブの連発は相手を疲労させる。国際社会への弛まぬ訴えが必ずや功を奏するはずだ。

最後に産経社説は日本の対応に触れ、こう主張する。

「松野博一官房長官が『動きの一つ一つへのコメントは差し控える』『台湾海峡の平和と安定が重要で、情勢を注視している』と述べるにとどまっているのは物足りない。岸田文雄首相には、中国の行動は許されないとはっきりクギを刺してもらいたい」

沙鴎一歩も物足りなく感じる。だれがどう考えても中国の台湾威嚇は「異常というほかない」(産経社説)。岸田政権は毅然(きぜん)とした態度を示すべきである。

■歪んだ行為を幾度も重ねて実行して正当化しようとする

10月7日付の朝日新聞の社説は「台湾海峡 危うい挑発を憂慮する」との見出しを付け、こう書き出す。

「世界の安全保障上、台湾海峡は最も重大で危険な発火地点のひとつとされる。米国、中国、日本の3大経済国のはざまで、細心の注意と警戒を要する緊張の海域だ」

台湾海峡は中国南東部の福建省と台湾島との間にある。南北の長さは380キロほどあるものの、東西の幅は狭いところでわずか130キロしかない。近いだけにまさに「世界の安全保障」にかかわる「緊張の海域」である。

朝日社説は主張する。

「何も言わず台湾の人々に脅威を与える。進入の既成事実を重ねて『常態化』していく。そんな手法で蔡英文(ツァイ・インウェン)政権を圧迫することは地域の安定を揺るがす。ただちにやめるべきだ」

「何も言わず」とは、中国側が軍用機の防空識別圏内への進入理由を説明しないことを指すが、仮に日本が台湾のような被害を繰り返されたとしたら、私たち国民は不安にさいなまれるだろう。そこが中国の狙いのひとつなのだ。しかも歪んだ行為を幾度も重ねて実行して正当化しようとするのが、中国のやり口である。蔡英文政権はその点をよく国民に説明して理解を求め、不安を極力解消すべきである。外交は内政に通じる。

■習近平政権はどこまでも「身勝手」

朝日社説は「共産党政権は米国と台湾の間の交流の格上げなどにいらだっている。最近では、台湾の環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟申請にも反発してきた」と指摘し、こう主張する。

「だが自らの政治的な主張が通らないから、武力で威圧しようとするのは乱暴に過ぎる。中台間の歴史的な問題は、あくまで対話を通じた平和的な解決が追求されねばならない」

国際社会も「対話による平和的な解決」を望んでいる。一度、国連の会議の場に台湾と中国のそれぞれの担当者を呼び出して日本やアメリカなど関係国を交えて話し合ってみたらどうか。「内政干渉」を口実に中国側は出席しないだろうが、それはそれで進入行為を続ける中国の異常さをあらためて公にできる。台湾やアメリカ、そして日本にとって中国の歪んだ姿勢を正す大きなチャンスともなる。

朝日社説は「『共同富裕』の目標を掲げ、国民の歓心を買う施策を次々に打ち出している。台湾問題でも弱腰批判を招かないよう強硬にふるまっている可能性もあるが、そんな内向きな身勝手さが中国の対外信用をどれほど傷つけているか考えるべきだ」とも指摘する。

中国の習近平政権はどこまでも「身勝手」で、自国の利益しか念頭にないのである。その考え方で世界第2位の経済大国にまでのし上がったのだから驚かされる。

身勝手な中国を相手にするには、民主主義国家が手を取り合って中国に圧力をかけ続けていくことが欠かせない。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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