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「眞子さまは海外脱出を選ぶしかなかった」皇室批判を繰り返す人たちが誤解していること

プレジデントオンライン / 2021年10月19日 12時15分

結婚前、最後となる宮中祭祀さいしに参列するため、皇居に入られる秋篠宮家の長女眞子さま=2021年10月17日、皇居・半蔵門[代表撮影] - 写真=時事通信フォト

■まるで時計の針を封建時代に戻したかのよう

秋篠宮家の長女である眞子さまが、長い春を実らせてようやく結婚されようとしている。

逆境を乗り越えて皇室内でも理解が得られ、結婚を迎えることについてまず何よりおめでとうございますと申し上げたい。

ところが日本の世論は異常である。

結婚相手の小室圭さんの母親と元交際相手との間の金銭トラブルが週刊誌で報じられて以来、小室さんや母親そして、眞子さま本人への極めて悪質な誹謗中傷が後を絶たない。

この誹謗(ひぼう)中傷は、小室さんがロースクールを卒業し、晴れてニューヨークでの就職先を決めて帰国して、結婚が秒読み段階となっている今いよいよボルテージを上げている。

10月10日には東京・銀座で結婚に反対するデモ行進が行われた。

なぜ他人の結婚に干渉したがるのだろうか。

それぞれが意見・感想を持つことは自由だろう。

しかし、自分の意思で選んだ人と結婚することは、極めて重要な人権である。結婚・恋愛は、人生の幸せに直結する、最も重要な選択だ。それを否定しようという社会の空気は、まるで時計の針を封建時代に戻したかのようである。

憲法24条は、結婚は当事者の合意のみに基づいて成立すると規定する。それを、国民世論によって妨害しようとする現象は日本の人権意識の低さを表すものだ。

※内親王である眞子さまは、日本国憲法1章(1~8条)の記述に該当しない。

■否定的な報道で巨額の利益を得ているメディア

メディアの責任は重大である。

眞子さまと小室さんには執拗(しつよう)な人格攻撃を含んだ否定的な報道が沈静化するどころかヒートアップしており、それが二人への誹謗中傷を加速させている。

各メディアは、帰国時の小室さんの髪型を批判したり、一挙手一投足を取り上げ、臆測も交えて否定的な報道に興じているようである。

「水に落ちた犬をたたく」という言葉がある。一度世論が一つの方向に加熱した問題において、標的にされたたかれている人々をさらにたたき続ける現象だ。

それが今、この二人に集中してしまっているが、この現象は率直に言って、集団的ないじめにほかならない。

世論に迎合して、否定的な報道をすればするほど視聴率は上がり、閲覧数を稼ぐことができるのだろう。一部メディアは結婚を控えた若い二人の人格をおとしめ、明るい未来を否定する報道をし、またはそれに加担することで、巨額の利益を得ているわけである。良心の呵責(かしゃく)はないのだろうか。

内親王である眞子さまは立場上、いかに不当で事実に反する報道をされても、民間の報道機関を相手に名誉毀損(きそん)訴訟などを起こすことが非常に難しい。反論できない相手と分かっていながら誹謗中傷をあおるような報道を垂れ流して利益を得ようとするメディアの姿勢が厳しく問われなければならないと思う。

■なぜ期待に応えなければ人格を否定されるのか

眞子さまが一般人でなく皇室に属することから、社会の期待に沿う結婚をしなければならないとして、期待に沿う行動を強要する発想は危険である。

なぜなら、そうした発想はとどまるところを知らないからだ。

皇室の誰としてこのような世論に安穏としていられないだろう。国民の期待などという漠としたものに応える結婚を求められ、それに反するならどこまでも誹謗中傷されるとするならば、誰一人として安心して結婚できないだろう。人格を否定される生き方を強いられる皇室にとどまり続けたい若いまともな皇族などいるだろうか。そして誰があえて火中の栗を拾って注目度の高い皇族と結婚したいと思うだろうか。

社会に完璧な人間など存在しない。人はだれも人間であるが故の未熟さや欠点を抱える。若者であればなおさらである。過去も含めた自分や、親族全員が何らトラブルも過ちもない完璧な人間など存在しない。そのような人間を配偶者として求めることは不可能である。

社会は皇室にバーチャルリアリティーを求め、それに応えられないならいくらでもたたきますよということだが、早く目を覚まして、その異常性に気付くべきである。

■「税金で生活している人に生き方の自由はない」という発想は危険

同様のプレッシャーは、国民から何かの拍子で関心を持たれたり、社会的関心事の的となったすべての人に及ぶことになる。例えばオリンピック選手や芸能人、犯罪被害者として報道された人にまでそうしたプレッシャーは及ぶ。

皇室をたたくことが正義なら、世論という名の凶器が多くの人にも波及することになるだろう。

さらに、眞子さまは国民の税金を使っての儀式や一時金支給を辞退されたが、税金を使っての結婚であるから批判して良いという発想も危険である。

状況は全く異なるが、世論状況は生活保護バッシングと酷似している。

生活保護を受けている人の私生活にみだりに立ち入り、その一挙手一投足を批判し、日々の過ごし方を非難して、生き方を責める現象にうり二つだ。

男性がスマホを使用している
写真=iStock.com/bombuscreative
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bombuscreative

確かに皇室の在り方や予算の使い道について議論があってしかるべきだろう。しかし、税金の恩恵を被って生活している人間には生き方の自由など認められない、国民世論の言う通りの生き方をすべきだ、という発想は非常に危険である。

さらに問題となった「金銭トラブル」は小室さん本人ではなく、母親の問題である。親と子は、仮に同居していても独立した人格であり、親の不始末を理由に子を社会が非難したり、結婚の自由を否定するという発想も恐ろしい。

こうした常軌を逸した批判は必ず自分にもいつか跳ね返ってくる。自分たちの首を絞め、自分たちの自由をも奪うことになる。そのことを認識した方がいいのではないか。

■誹謗中傷は終わりにしなければならない

人生の門出、本来祝福されるべき結婚にあたって、大音量の誹謗中傷で人格を否定され続けなければならない眞子さまと小室さんの心境、精神状態はいったいいかなるものであろうか。

眞子さまは複雑性PTSDを発症されたと報道されている。

20代の若者に対し、社会全体が洪水のような誹謗中傷、人格攻撃を続ければ、それは深刻な心身のダメージを引き起こすことを私たち社会は過去の犠牲から経験しているはずだ。

昨年はプロレスラーの木村花さんが、SNS上の誹謗中傷を苦にして尊い命を自ら断った。誹謗中傷が若い人をどれだけ傷つけ、深刻な犠牲を生むのか、この社会は身をもって経験し、反省したのではなかったのだろうか。

このような誹謗中傷は終わりにしなければならない。

メディアは、バッシングを誘発する過熱報道の姿勢を猛省し、お二人の結婚に向け、人権に配慮した報道姿勢に改めるべきだ。そして今回の一連の騒動を総括し、二度と誹謗中傷をあおるような報道姿勢を繰り返さないことが求められる。

また、誹謗中傷を続ける人たちにもわれに返ってもらいたい。

あなたたちは何のためにそんなことをしているのか、目を覚ましてほしい。

眞子さまと小室さんはニューヨークで新生活を始められるという。

それがうまくいくのか案じる声もあるが、二人がニューヨークで成功しようが、失敗しようが、それが人生だ。まずは自分で決めた人生を自分の足で歩むということそのものがかけがえのないことであり、祝福されるべきだ。

眞子さまが去った後の日本社会の方が私には心配である。

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伊藤 和子(いとう・かずこ)
弁護士・国際人権NGOヒューマンライツナウ理事・事務局長
1994年弁護士登録、以後、女性、子どもの権利、えん罪事件、環境訴訟など、国内外の人権問題に関わって活動。2004年に日弁連の推薦で、ニューヨーク大学ロースクールに客員研究員として留学。帰国後の2006年、国境を越えて世界の人権問題に対処する日本発の国際人権NGO・ヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now)の発足に関わり、以後事務局長として国内外の深刻な人権問題の解決を求め、日々活動している。同団体の主な活動範囲は、女性や子どもの権利擁護、ビジネスと人権に関する問題、アジア地域の人々の自由と尊厳の擁護、紛争下の人権問題など。弁護士活動でも人権、特に女性の権利を焦点に置いて活動。日弁連両性の平等に関する委員会委員長、東京弁護士会両性の平等に関する委員会委員長を歴任。

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(弁護士・国際人権NGOヒューマンライツナウ理事・事務局長 伊藤 和子)

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