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西野亮廣「居酒屋で隣になったおっちゃんに話しかけてチケットを手売り…コスパの悪いことは本当にコスパが悪いのか」

プレジデントオンライン / 2021年10月22日 10時15分

お笑い芸人・著作家 西野亮廣氏●1980年、兵庫県生まれ。99年梶原雄太とお笑いコンビ「キングコング」結成。2009年『Dr.インクの星空キネマ』で絵本作家デビュー。

お笑い芸人・著作家としてだけでなく、新しいビジネスに挑戦を続ける西野亮廣氏。ビジネスに資料はつきものだが、多くの人が間違った資料づくりをしていると西野氏は言う。よい資料・悪い資料とはどんなものか。そして、資料はどう使うべきなのか。「プレジデント」(2021年11月12日号)の特集「世界最強企業の美しい資料術」より、記事の一部をお届けします――。

■資料以前の努力

資料ってつくる前提のものではないと思うんです。そもそも文字より口頭のほうが伝わりやすいですし、文字だらけの資料を配ってただそれを朗読するあの時間って全然意味ないですよね。できないディレクターあるあるなんですけど、番組の企画説明のときにそれやるんですよ。あれって、僕らのためではなくて本人、プレゼンターが安心するためにつくってる資料になっていて。だから多くの場合は資料はいらないと思います。

とはいえ、グラフやデータを見せたいという場合にはつくりますよ。でもそのときも「量は少なく」します。余白がないとコミュニケーションが減ってしまいますよね。会議のような場でプレゼンターが一方的に喋っていたら、それは決定事項として1人でやりなよって思ってしまいます。会議する必要ないじゃんって。

ですから僕は「喋り」を大事にしています。それで一番大事なことは、例えばプレゼンを控えているとしたら、その当日まで喋りまくることです。飲み屋でも、友達と車の中でも、喋りまくるうちに、食いつきのいいところ、悪いところがはっきりして、どんどんムダがなくなっていくんです。「M-1グランプリ」の決勝で新ネタおろす芸人もいないじゃないですか。いろんな場でネタを披露してムダを省いていく。どんなにすごい芸人でも最初からネタが仕上がっていることはないですよ。

西野亮廣 お笑い芸人・著作家

僕も今度武道館でビジネスについて、それこそ資料を使ったりして講演をするんですけど、5~6人くらいのZoomを組んで喋って反応を見るっていうのを、3日に1度くらいやっています。やっぱり声の情報量ってすごいですから、自信があるのか、どこまで考えているのか、全部バレてしまうんですよね。たくさん話していれば、いろいろな質問をされるし、それ以降はその質問に対しての回答を用意しておける。だから、とにかく場数を踏んだほうがいいですね。そうやってブラッシュアップしていくと、伝えたいことの魅力もよりはっきりするはずです。

■シュートは相手に決めさせる

あとはプロジェクトのチームに味方をつくっておくのも大切です。ですから会議のような場で、答えがAだとわかっていても、自分からは言わず、相手が言ったのに対して、「いいっすねえ」と同調する。そうすると西野に言われたAではなくて、自分で決めたAになるので、一生懸命やってくれるんですよ。シュートは相手に決めさせる、っていうことですね。

実際いま、田舎に土地を買ってアパートを建てたりしているんですけど、近隣住民に反対されると大変なんです。でも住民説明会とかは絶対ダメです。決まったことを説明しても誰も納得しない。だから「こういうことをやりたいんですけど、どうすればいいですかねえ」と住民の人に相談する。そしたら「こうしたらどうだ」と提案してくれるし、今後仲間として動いてくれますよね。

そして、自分のやっていることの魅力をより多くの人に伝えるため、「誰でもできることを誰よりもやる」というのを心がけています。例えば作家なら、サイン本を欲しがる人は必ずいるじゃないですか。そしたら、オンラインでサイン本屋さんをつくってしまって、サイン書いて梱包して発送すればいい。これって才能なんていらないし、やれば必ず届くんですよね。

2020年『映画 えんとつ町のプペル』を公開したとき、コロナ禍を踏まえて舞台挨拶を控えたんですよ。けれどそういう交流を楽しみにしている人もいるんですよね。そこで、握手もしません、挨拶もしません、でも一緒に映画を見ます、ということをやりました。一番最後に劇場に入ってきて、一番最初に出ていく。それを100回以上もやったんですけど、かなりハードではあります。だって知っている話を100分見なくちゃいけない。

ただ、そこまでやるとチームが本気になるんです。西野があそこまでやってんなら俺たちも頑張ろうと。リーダーが一番挑戦する、足を使うっていうのは一見コスパが悪いんですが、意外とコスパいいんです。

■酒を信じてしまいますね

2014年に自分でやっている独演会のチケットを全部手売りにしてみたんです。会場は日比谷公会堂だったので2000枚を手売りするんです。たしか、1日20枚くらい売らないと間に合わないペースでした。はじめは友達とかに売ればいいから楽なんですけど、売れば売るほど大変になってくる。1週間海外ロケなんて行ってしまったら、帰ってきたら140枚売らないといけない。だから、居酒屋で隣になったおっちゃんに話しかけて買ってもらったりもしました。そういうことを繰り返していくと、濃いファンがつくようになったんです。地球で一番1対1をやった人が一番強いなと。

映画を一緒に見るのも、作品を通じて皆さんとコミュニケーションをとるということですし、資料もそうですけど、やっぱりコミュニケーションがむっちゃ大事なんですよ。ネットで情報や技術がカジュアルに共有されるようになっていくと、商品やサービスの質が上がっていってどこかで均一化されていくわけですよね。そうしたときに差がつくのがコミュニティがあるかどうかってことなんです。

同じ美味しさのラーメン屋が2つあったとして、片方が友人のお店だったらそっちに行くでしょ。20年前みたいに、まずいラーメン屋があった時代ではなくなってきているので、コミュニケーションとコミュニティが生まれるように設計することがとても大事だと思います。

そうしたときに、お酒の存在は大きいですね。酔っ払うと一切のコスパを忘れられるんですよ。コロナ以前、サロンメンバーと1時間半飲み会をやりましょうと言っていたのに、お酒が入ると2時間、3時間と話し続けてしまうんですよね。僕自身がちゃんとだらしなくなるんで、それで酔いつぶれて寝てしまう。そしてサロンメンバーに運ばれるっていう。そうするともう強い縁ができちゃいますよね。

お酒、やっぱりいいっすよ。もしお酒が邪魔なものであれば、この世界にこんなに種類がないと思うんですよね。何百年と残っているものって、人間の動物的なところに訴えるなにかがある。

ラオスに行ったことがあるんですけど、田舎のほうだともう言葉も全然違くて、言葉でのコミュニケーションがとれないんです。そうしたときにどうやって仲良くなるかって、美味しいものを食べる、変な顔をする、最初に恥をかくっていうことなんです。言いにくいことですけど、僕、脱ぎましたからね。でもやっぱり、最初に恥をかいた奴のことを好きになっちゃう、応援したくなるっていうのはあると思っています。そういうコミュニケーションこそがとても大事なんだと思います。ですから僕は、酒を信じてしまいますね(笑)。

©西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会
「映画 えんとつ町のプペル」
ハロウィンに、プペルが劇場に帰ってくる!
2021年10月22日(金)〜10月31日(日)
ハロウィン限定上映

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西野 亮廣(にしの・あきひろ)
お笑い芸人、著作家
1980年兵庫県生まれ。99年梶原雄太とお笑いコンビ「キングコング」を結成。2000年、コンビ結成5カ月後にNHK上方漫才コンテスト最優勝を受賞。05年当時の代表番組『はねるのトビラ』ゴールデン進出時に、絵本制作に取りかかる。4年の歳月をかけて初の絵本『Dr.インクの星空キネマ』を09年に上梓。そのほか国内外の個展、小説・ビジネス本執筆、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰するほか、美術館建設など幅広く活躍。著書に『革命のファンファーレ』(幻冬舎)『新世界』(KADOKAWA)『えんとつ町のブぺル』(幻冬舎)『ゴミ人間 日本中から笑われた夢がある』(KADOKAWA)など。など。

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(お笑い芸人、著作家 西野 亮廣 構成=プレジデント編集部 撮影=宇佐美雅浩)

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