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「野党に政権は任せられないが、自民党がこのままでは困る」有権者の棄権を招く政治の貧困さ

プレジデントオンライン / 2021年10月23日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

■選挙戦は有権者に分かりやすい構図となったが…

衆議院の総選挙は10月19日に公示され、31日の投開票に向け、各候補者が選挙戦に突入した。主な争点は新型コロナ対策と日本経済の再生、それに中国、北朝鮮を念頭にした安全保障政策である。

計1051人が立候補し、衆院定数の465議席(小選挙区選289、比例選176)を争う。過半数は233議席となる。

政権選択といわれる衆院選。今回は自民公明両党の与党と、立憲民主党を中心に共闘を組んだ野党が激しく対決する。与党vs.野党の一騎打ちで、選挙戦は有権者に分かりやすい構図となった。

岸田文雄首相は19日午前、福島市で演説に立ち、「この選挙は未来選択選挙だ。ぜひ、皆さんの選択と信任をいただき、信頼と共感のある政治を進めていきたい」と訴えた。

一方、立憲民主党の枝野幸男代表はこの日、島根県松江市に飛び、「国民一人一人の懐を温かくする所得の再分配こそ景気をよくする第一歩だ。私たちには具体的なビジョンがあり、プランもある」と政権交代を主張した。

■自民党が変わらなければ、日本は良くならない

岸田政権となるまで、安倍晋三元首相、菅義偉前首相の両政権は、合わせて9年近くも続いた。とくに官邸主導を前面に打ち出した安倍政権は「アベ1強」といわれ、安定感はあったものの、長期政権がもたらす弊害を生んだ。

いわゆる「ゆるみ」や「おごり」である。安倍政権は森友・加計の両学園疑惑や桜を見る会の問題で多くの国民の信頼を失った。参院選をめぐって法相経験者が逮捕・起訴され、実刑判決を受ける選挙違反事件などの前代未聞の事件も続いた。しかし、自民党内からは反省の声は聞かれず、自浄作用は働かなかった。

自民党が「成功した」と自負するアベノミクスはどうか。確かに経済成長には寄与したかもしれないが、富裕層と低所得者層の格差が広がり、その是正が大きな課題となっている。

自民党総裁選(9月29日)が近づくと、若手・中堅の国会議員から党内改革を求める声が上った。だが、岸田首相は安倍氏に近い甘利明氏を幹事長とする党役員人事を実施。その結果、改革の声は薄れ、政界のキングメーカーとしての安倍氏の影響力はさらに強まった。

衆院選で自民党は少々痛い目に遭って目を覚ますべきではないか。これまで日本を牽引してきた政党である。自浄作用に欠けるいまの自民党には改革が必要だ。自民党が変わらなければ、日本は良くならない。

■「必ず投票に行く」と答えた人は「56%」

そのためには、より多くの有権者が投票する必要がある。通常、投票率が低ければ低いほど、組織票の多い自民党や公明党が強くなる。反対に投票率が高くなると、野党に票を入れる有権者は増える。多数の国民の判断が働いてこそ、政権選択選挙だ。それが民主国家であり、民主主義である。

今回、問題の投票率はどうなるか。

過去の衆院選の投票率(小選挙区選)を調べてみると、2012年は「59.32%」、2014年が「52.66%」と、2回続けて戦後最低を更新した。2017年は選挙権年齢を18歳以上に引き下げた初の衆院選だったが、若者の投票が予想以上に少なく、「53.68%」と伸びなかった。

NHKが10月15日から3日間実施した世論調査では、「必ず投票に行く」と答えた人は「56%」だった。過去の例から分析すると、実際の投票率はこの数字より低くなる。自民党に反省を求めるためにも、多くの有権者が投票に参加し、民意をしっかり示すべきである。

選挙掲示板
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■いまの野党に日本を委ねるわけにはいかない

立憲民主党をはじめとする野党は、政権を握るにはまだ力不足だ。沖縄・普天間のアメリカ軍基地の県外移設を求めて日米関係を悪化させたり、福島の原発事故に右往左往したりと、旧民主党政権の杜撰さを思い出すと、旧民主党の党員が多い立憲民主党に日本の舵取りは任せられない。

立憲民主、日本共産、国民民主、れいわ新選組、社会民主の野党5党の共闘は、政権を勝ち取るための作戦としてはいいだろう。だが、実際に政権交代が実現した場合、根本の政治思想が異なる党同士が政策を立てて実行するというのは無理がある。

それゆえにいまの野党に日本を委ねるわけにはいかない。立憲民主党が政治力を付け、国民の信頼を得られる政党に生まれ変わる必要がある。

時間はかかるだろう。だが、それができれば、日本にイギリスやアメリカのような2大政党が誕生する。自民党と立憲民主党による2大政党制である。2つの党が交互に政権を取ることでお互いを補い、正しい方向に日本という国の軌道を修正できるのではないか。その結果、バランスのある政治が生まれる。これが沙鴎一歩の持論である。

■「力量が未知数」の与党と「課題の多い」野党

10月19日付の朝日新聞の1本社説は冒頭部分でこう書く。

「自民党は『選挙の顔』を不人気の菅前首相から岸田首相に代えて臨むが、政権発足からまだ2週間で、その力量は未知数のままだ。一方の野党は、多くの選挙区で候補者を一本化したが、批判票の受け皿を超えて、政権を託せると認めてもらえるか、課題は多い」

「力量が未知数」の与党と「課題の多い」野党。日本の政治は岐路に立たされている。与党か、野党か。選んだ政権によって日本の進む方向が決まる。選挙の結果次第で、私たち国民の生活が大きく変わる。それゆえ10月31日までには必ず投票を済ませたい。

朝日社説は「試される野党の共闘」との小見出しを掲げ、「それなりに整理はされているが、政策の具体化にあたり、各党間の調整は円滑に進むのか、安定的な政権運営が本当に実現できるのか。有権者の不安を拭えるかは、この選挙戦で、どこまで説得力のある説明ができるかにかかっている」と指摘する。

野党の政権交代が実現した場合、立憲民主党の枝野氏は共産党や国民民主党などには「閣外からの協力」を求めるというが、問題はいまの立憲民主党に各野党をまとめる調整力があるかどうかである。前述したが、まだ立憲民主党にはその力はない。日本という国家が混乱するだけである。野党が政権を取るのは時期尚早である。

■「小選挙区制」と「抵投票率」の問題点

朝日社説は「与党側にも、違いを埋める努力を求めたい政策がある」と書き、こう指摘する。

「例えば、核兵器禁止条約の締約国会議に対し、公明党はオブザーバー参加を主張するが、首相は消極的だ。選択的夫婦別姓の導入やLGBT理解増進法案についても、(10月18日の日本記者クラブでの党首討論会で)公明党の山口那津男代表が賛意を示したのに対し、首相は慎重姿勢を崩さなかった」

政権を握っていたい公明党がそのときどきでうまく立ち回っているから自民・公明の与党の枠組みが成り立っているのだ。これに比べ、野党は複数だ。それぞれ政治思想が異なり、利害も衝突する。だから厄介なのである。

得意の「アベ1強」への批判を繰り返した後、朝日社説は「小選挙区制」と「抵投票率」の問題点を挙げる。

「自公政権が過去3回、衆院選で大勝した背景として、1選挙区で1人しか当選できない小選挙区制の特性が指摘される」
「例えば、4年前の衆院選の小選挙区で、自民は議席数の75%を占めたが、得票率では48%と過半数に及ばなかった。ほぼすべての選挙区で候補者が一本化されていた自公側に対し、野党側が乱立し、政権批判票が割れた影響は小さくない」

「1人しか当選できない小選挙区制」をうまく使うことができれば、選挙に勝てる。だが、それでいいのだろうか。かつての大選挙区制に戻るべきか、それとも小選挙区制を続けるべきなのか。これからの大きな課題である。

■「棄権」は自民や公明に票を入れたことと同じ

朝日社説は「与党大勝をもたらした、もう一つの要因は低投票率だろう」と書き、過去の衆院選の低い投票率を示したうえで、「投票に行かなかった人を含む有権者全体に対する『絶対得票率』をみると、前回小選挙区の自民は25%と、4人に1人が投票したに過ぎない」「一般的には、低投票率は組織力があり、地方議員の数も多い自公に有利とされる」と指摘する。

投票しないことは自民や公明に票を入れたことと同じになる。果たしてそれでいいのか。

衆院が解散され、万歳をする前議員ら=2021年10月14日午後、国会内
写真=時事通信フォト
衆院が解散され、万歳をする前議員ら=2021年10月14日午後、国会内 - 写真=時事通信フォト

朝日社説は最後に有権者にこう期待する。

「2年弱のコロナ禍で、政治の役割が自らの命や暮らしに直結するとの認識を新たにした有権者の行動が変化すれば、選挙結果を左右するかもしれない」

先日、NHKのニュース番組も伝えていたが、新型コロナの感染拡大の結果、政治の判断が自分たちの生活に直結すると考える若者が増えているという。これまで投票しようとしなかった若者が投票に行くようになれば、投票率も上がるだろう。

■「もっと論戦を盛り上げてもらいたい」と産経社説

10月19日付の産経新聞の社説(主張)も投票率を気にして「もっと論戦を盛り上げてもらいたい。このままでは、投票所へ足を運ぶ有権者が減ってしまうのではないかと心配だ」と書き出す。

産経社説はどんな論戦を盛り上げろというのか。読み進むと、18日の日本記者クラブ(東京・内幸町)主催の与野党9党首の討論会を取り上げ、こう指摘する。

「『世界の中の日本』」という視点から、目指す日本の姿や具体的政策が語られなかったのは残念である」

世界の中の日本。つまり虫の眼ではなく、鳥の眼で日本を論じろというのだ。

産経社説は指摘する。

「日本は世界第3位の経済大国だが、平成時代から今まで低成長を脱しきれず名目国内総生産(GDP)はあまり伸びていない。最近の20~30年で、多くの主要国はGDPを2倍以上にしてきた。日本の昨年の1人当たりの名目GDPは、先進7カ国の中で6位にすぎない」

ここまで指摘されると、経済成長率の低さにあらためて驚かされ、何とかしなければとの思いが強くなる。

続けて産経社説は各党、各立候補者に向かって「力強い成長を実現する政策を講じなければ実のある分配を続けられない。経済をどこまで伸ばすのか。国民の所得をどこまで増やすのか。具体策を語ってほしい」と訴えるが、もちろん、世界の先進国に負けないように経済を大きく伸ばし、国民の所得を増やすべきである。

■中国を毛嫌いする人には効果的かもしれないが…

次に産経社説は「中国が強硬姿勢をとる台湾情勢や、尖閣諸島、南シナ海の問題は出なかった」と書き、こう指摘する。

「北朝鮮から日本人拉致被害者をどうやって取り戻すのか、中国のウイグル人などへの人権侵害や香港弾圧にどう対処していくのかも語られなかった。『自由で開かれたインド太平洋』を守る方策も論じられなかった」

産経社説が指摘する中国の問題は、台湾威嚇から香港弾圧まですべて習近平(シー・チンピン)政権の覇権主義や強権発動による。産経社説が解決を主張してやまない拉致問題も、核・ミサイル開発の問題と同様に国際社会が協力して北朝鮮に訴え続けなければならない。

さらに産経社説は「日本と世界の関わりをもっと意識して政権の目標や政策を語るべきだ。内向き志向では困る」と指摘するが、これが「『世界の中の日本』」という視点」という意味なのだろう。そしてこの視点で論戦すれば、衆院選が盛り上がるという主張だ。

産経社説の呼びかけは、端から中国を毛嫌いする読者には効果的かもしれないが、それ以外の人にはマイナスだ。産経社説はそこが見えない、いや理解しようとしないのである。残念だが、その結果、主張が偏ってしまうことがある。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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