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AIで「メンタル不調」を可視化…イマドキの若者が情緒安定のために使う"あるアプリ"

プレジデントオンライン / 2021年11月10日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

コロナ禍の影響で一人の時間が増え、Z世代の中には自身のメンタルを顧みる人が増えています。若者の意識変化に詳しい原田曜平さんは「メンタルヘルスの分野でも新しいトレンドが生まれている」といいます――。

■ファッション感覚の強い瞑想

2020年下半期〜2021年上半期のZ世代のトレンドには、コロナ禍だからこそ生まれたニーズによるものが多く見られました。人に会えない生活から生まれた「友情確認ニーズ」(前々回記事参照)や、外出自粛で退屈な時間が増えたことによる「チャレンジ欲求」(前回記事参照)などもその一部です。

これらに加えて、一人の時間が増えたことで、自分と向き合いたいという「内省欲求」も高まりました。その表れのひとつとしてはやったのが瞑想です。これは瞑想している自分をSNSでアピールしたり、おしゃれなサウナ施設で静かに時間を過ごしたりするもので、真の瞑想とは違いファッション感覚が強いのが特徴。いわば「ファッション瞑想」です。

(写真左)ソロサウナtuneのエントランス。(写真右)ソロサウナtuneのシングルルーム。グループルームもある。
写真提供=ソロサウナtune
(写真左)ソロサウナtuneのエントランス。(写真右)ソロサウナtuneのシングルルーム。グループルームもある。 - 写真提供=ソロサウナtune

例えば、昨年11月にオープンした個室サウナ「ソロサウナtune」は、瞑想に適した場所ということでZ世代の人気を集めました。従来は、サウナといえば若者にとってはおじさんが行く場所。しかし、ここはスタイリッシュな内装や個室ならではのプライベート感を打ち出し、瞑想を口実におしゃれな空間を楽しみたい若者の心をつかみました。

同じくサウナでは、チームラボが手がけた「チームラボ&TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木」も話題です。これは、サウナで自分を“ととのった”最高の状態にしてからアートを楽しむという、新しいコンセプトの展覧会。当初は今年8月で終了予定だったのが、好評により11月まで延長開催されることになっています。

■「メンヘラ」をポジティブに捉える動き

最近Twitterでは、動画を見ながら瞑想を実践できるNetflixの番組「ヘッドスペースの瞑想ガイド」が話題に。アプリでは、睡眠や瞑想、仮眠、集中などそれぞれに適した音楽を流してくれる「Tide」が大人気になっています。これらはいずれも、コロナ禍の影響で高まった若者の内省欲求ニーズに応えるものでした。

Netflix「ヘッドスペースの瞑想ガイド」(Netflix公式ページより)
Netflix「ヘッドスペースの瞑想ガイド」(Netflix公式ページより)

そしてファッション瞑想がはやった背景にはもうひとつ、純粋に自分のメンタルを整えたいというニーズもあったのではと思います。ここからは、若者たちが自らの心がコロナ禍で不安定になったと感じている様子が伺えます。

例えば、メンタルヘルスの分野では「メンヘラ共感」という新たなトレンドが生まれました。若者たちは、心の健康に悩んでいる人や情緒不安定な人を「メンヘラ」と呼び、特にSNSで自分のメンタルヘルスに関してネガティブな投稿をする女性を「メンヘラ女子」として敬遠する傾向にありました。

ところが今、メンヘラ女子への共感が普通の若者の間にも広がりつつあります。コロナ禍で内省欲求が高まったことで、「自分にもメンヘラ的な部分があるのではないか」と考え始めた若者や、メンヘラな自分を受け入れオープンにすることを好意的に捉える若者が増えているのです。

■「メンヘラ女子」発のトレンドが一般に広がる傾向

これは社会問題でもあるのですが、歌舞伎町の新宿東宝ビル周辺には、いわゆるメンヘラ女子や家出少女が多く集まる場所があり、そこに集まる子たちは若者から「トー横」という通称で呼ばれています。

従来は、若者たちはこうしたコミュニティーを敬遠する傾向にありましたが、コロナ禍以降、トー横で流行していたファッションなどが一般の若者の間にも広がる現象が起きています。

その一例が、ディスカウントストアのドン・キホーテで売られている「ドンペンTシャツ」。同店のキャラクターである「ドンペン」を大きくあしらったTシャツで、以前はトー横の代表的ファッションとして知られていました。しかし最近は、そのスタイルをまねて同じTシャツを着るZ世代が増えています。

コロナ禍の影響による内省欲求の高まりから、若者の心境は、自分の中にもある「メンヘラ」な部分を認めてオープンにし、ポジティブに捉えていこうという方向へ変わりつつあるようです。

■メンタル不調をAIで可視化

メンタルヘルス分野では、自分の不安定な気持ちを安定させたいという「情緒安定ニーズ」も生まれました。実際、そうした商品の人気も高まっています。いちばんはやっているのは、昨年12月にリリースされた日記アプリ「muute(ミュート)」です。

日記アプリ「muute」。
日記アプリ「muute」。(写真提供=ミッドナイトブレックファスト)

自分が感じていることをありのままに書き出すことで「書く瞑想=ジャーナリング」が行えるもので、書いた内容からAIが分析したフィードバックがもらえることから、自分の心の現状や変化を可視化できると人気です。

またSNSでは、「#IAMWHOLE」というハッシュタグが世界的に話題を集めました。これは、誰もが自身のメンタルヘルスについてオープンに話せる社会づくりを目的とするプロジェクト。自分の手にWHOLE(○マーク)を書いた写真にこのハッシュタグをつけて投稿するもので、日本では若者に人気のインフルエンサーたちも参加していました。

■心の不安定を解決したいニーズが高まっている

Z世代の間では、心の不安定さを解決したいというニーズがこれまで以上に高まっているように思います。そもそも今は、先が見えにくい不安定な時代と言われています。Z世代はそうした時代に生きている子たちであり、他の世代に比べて人数が少ないことから、競争もあまり経験しないまま育ってきました。

親や先生から厳しいしつけや指導を受けた経験も、僕たちの世代に比べれば減っています。子育てや教育などにおいて「優しさ」を最優先とする、それ自体はもちろんいいことなのですが、そうした柔らかい時代に育ったためか、Z世代には心がもろい子も少なくありません。

こうした、メンタルヘルス分野のニーズが表に現れたのは、もともと「もろさ」を持っていたところへコロナ禍が起きたからではないでしょうか。従来Z世代の間にあった、心の不安定さを解決したいという隠れたニーズを、コロナ禍が可視化したのではと思います。

欧米では、心が不安定になったときにカウンセリングを利用する人が少なくないと聞きます。日本にも、カウンセリングを受けることが特別ではない時代が来るのかもしれません。

内省欲求、メンヘラ共感、情緒安定──。Z世代の間でこうしたニーズが高まっていることを、僕たち大人は見逃してはいけないと思います。商品・サービス開発の担当者だけでなく、この世代の子を持つ親世代の方にも、新人を育てる立場にある上司世代の方にも、ぜひ知っておいていただけたらと思います。

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原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。信州大学特任教授。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平マーケティング研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。

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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=辻村洋子)

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