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「女性天皇になるか主婦になるか」引き裂かれ続けた愛子さまの20年

プレジデントオンライン / 2021年12月5日 11時15分

皇居に入られる天皇、皇后両陛下の長女愛子さま=2021年5月6日、皇居・半蔵門 - 写真=時事通信フォト

天皇陛下の長女、愛子さまが12月1日、20歳の誕生日を迎えられた。神道学者で皇室研究者の高森明勅さんは、女性天皇に関する議論が先延ばしにされているために「敬宮殿下(愛子内親王)はお生まれになった時から、女性天皇になられるか、それとも主婦になられるかという、極端に異なる2つの未来像に引き裂かれたまますごしてこられたことになる」という――。

※本稿は、高森明勅『「女性天皇」の成立』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

■憲法も世論も「女性天皇」を否定しない

「女性天皇」という選択肢について、近年の各種世論調査の結果では、コンスタントに国民の高い支持を集めている。

平成30年(2018年)4月の「朝日新聞」の調査では、賛成76%に対し反対が19%。
同年9月のNHKの調査では、賛成92%に対し反対が12%。
同年10月の共同通信の調査では、賛成が82%に対し反対が14%。
同年11月の時事通信の調査では、賛成が76%に対し反対が19%。
平成31年(2019年)4月の共同通信の調査では、賛成が85%に対し反対が15%。
令和元年(2019年)5月の「読売新聞」の調査では、賛成が67%に対し反対が8%(ただし、同調査の設問には不備が指摘されている)。
令和3年(2021年)4月の共同通信の調査では、賛成が87%に対し反対が12%。

右のような実情だ。いずれも賛成が反対を圧倒している。もちろん、皇位継承という厳粛なテーマを変動幅がある世論調査の結果“だけ”で判断すべきではない。しかし一方、天皇が憲法で「国民統合の象徴」とされている以上、国民の受け止め方をまったく無視してしまうわけにもいかないだろう。その意味では、世論調査の結果にも、一定の関心を払う必要があるのは確かだ。

又、女性天皇は過去に10代・8方おられた事実がある。そのため、有力な否定論を見かけない。せいぜい「女系天皇につながるから反対」といった程度だ。旧時代的な「男尊女卑」の価値観に立たない限り、女性天皇の可能性を一方的には否定できまい。

憲法上も、帝国憲法の場合は「皇男子孫」(第2条)と条文自体によって女性天皇を排除していたのに対し、今の憲法では「世襲」(第2条)と規定するだけなので、特に女性天皇が問題視される余地はない。むしろ、「国民統合の象徴」であるはずの天皇に、男性しかなれない現在の制度は、国民の半数が女性である事実を考えると、いささか奇妙ではあるまいか。

■皇族と憲法第3章

しいて問題点をあげるとすれば、次のような懸念が表明されるかも知れない。すなわち、もし女性天皇を可能にした場合、(継承順位の設け方にもよるが)急な制度変更によって当事者の人生プランが、根底からくつがえされることになるのではないか、と。

この点についてはどう考えるべきか。

まずは、少し冷酷に聞こえるかも知れないが、制度論的な整理をしておく必要がある。旧宮家案が“純然たる国民”を対象としているのに対し、女性天皇を可能にする制度改正の場合は、あくまで皇族が対象だという、基本的な前提条件に違いがある点を見逃してはならない。

対象が国民であれば、繰り返すまでもなく、当然ご本人の同意が絶対的な前提条件になる。しかし、対象が皇族の場合だと、憲法第3章の全面的な適用は受けず、むしろ第1章、なかんずく第2条「皇位は、世襲」の適用が優先される。よって、当事者のご意向は不可欠の要件とはされないというのが、少なくとも制度論上の考え方になる。

■誕生時に触れられた「女性天皇」の可能性

しかも、重要な事実がある。それは天皇陛下のご長女、敬宮(としのみや)(愛子内親王)殿下がお生まれになった時(平成13年(2001年)12月1日)、昭和天皇の弟宮でいらっしゃった高松宮(たかまつのみや)のお妃(きさき)、喜久子(きくこ)妃(ひ)が『婦人公論』(平成14年(2002年)1月22日号)にお祝いの一文を寄せられ、その中で「女性天皇」の可能性について、はっきりとお触れになったことだ。

「女性の天皇が第127代の天皇さまとして御即位遊ばす場合のあり得ること、それを考えておくのは、長い日本の歴史に鑑みて決して不自然なことではないと存じます」と。

この文章は敬宮殿下ご本人のお誕生を祝したものである以上、殿下のご成長のさほど遅くない時点で、必ずやお目にとまる機会があったに違いないと考えるのが自然だろう。敬宮殿下にとって「女性天皇」という選択肢が政治の場で浮上することは、決して唐突な事実ではなかったはずだ。

しかも、小泉純一郎内閣の時に設置された「皇室典範に関する有識者会議」(吉川弘之(よしかわひろゆき)座長)が平成17年(2005年)11月に提出した報告書では、「今後の望ましい皇位継承資格の在り方」として次のように結論づけていた(同会議のヒアリングには私も応じた)。

「今後における皇位継承資格については、女子や女系の皇族に拡大することが適当である」と。

二重橋
写真=iStock.com/redtea
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/redtea

■「先延ばし」で将来像が宙ぶらりんの状態に

敬宮殿下をはじめ、内親王・女王方は制度変更の当事者でいらっしゃる。当時はメディアによるさまざまな報道もなされていた。それらの女性皇族の皆さまが、今さら「女性天皇」容認をまったく予想外の制度変更と受け取られるとは考えにくい。それよりもむしろ、制度の見直しがいたずらに“先延ばし”され、その結果、ご自身の人生の将来が「皇室に残るか、ご結婚と共に国民の仲間入りをされるか」鋭く2つに分裂したまま、いつまでも宙ぶらりんの状態で放置され続けてきた事実こそ、残酷この上ない仕打ちだったと言えるだろう。

特に敬宮殿下の場合は、女性天皇になられるか、それとも主婦になられるかという、極端に異なる2つの未来像に引き裂かれたまま、これまで20年間の歳月をすごしてこられたことになる。

それはすべて政治の怠慢、無為無策とそれを見すごしてきた国民の無関心が原因だ。

■「女系天皇」も欠かせない

次に「女性宮家」を取り上げよう。

これについては、女性天皇の可能性を認める場合、未婚の女性皇族(内親王・女王)がご結婚と共に皇籍を離れるルールを一方で維持していては、制度として機能しがたい。よって、女性天皇の選択肢を採用するのであれば、女性宮家も当然採用しなければ、制度上の整合性が保てない。女性天皇と女性宮家はセットで認めるべきだ。

しかも、女性天皇と女性宮家を認めながら「女系天皇」を認めないというやり方も、皇位の安定継承を目指すのであれば、ツジツマが合わない。その意味では“女性天皇は女系天皇につながる”“女性宮家は女系天皇につながる”という男系限定維持派の言い分は間違っていない。もっと踏み込んで言えば、「女系天皇」を排除しながら「女性天皇」「女性宮家」を認めても、しょせんは“一代限り”にとどまり、将来に向けた皇位の安定継承には寄与しない。「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていく」(上皇陛下の平成28年(2016年)8月8日のビデオメッセージ)ことにはならないのだ。

普通に考えてみれば分かることだ。女性皇族がご結婚後、「女性宮家」の当主になられ、お子様に恵まれられた場合、そのお子様が男子であれ女子であれ、「女系」ということになる。女系天皇を認めなければ、皇位継承資格のない女系のお子様方はご結婚と共に皇族の身分を離れて、国民の仲間入りをされることになる。結局、その女性宮家は“一代限り”で幕を閉じる他ない。

内廷の女性皇族がご結婚され、お子様に恵まれた後、女性天皇として即位されても、同じように皇位継承の“行き詰まり”をただ一代だけ先送りするにすぎない。皇位の安定継承にはまるでつながらない。ただ“目先”だけ「皇族数の減少」に歯止めがかかったような錯覚を与えるだけだ。

そんなことのために、対象となる女性皇族方のたった一度しかない人生を犠牲にしていただくのは、あまりにも申し訳ないことではあるまいか。

■男女で“格差”を設けることが許されるのか

そもそも、女系天皇とセットにならない女性天皇・女性宮家は、およそ常識外れな、かなりイビツなものになるのを避けられない。同じ「天皇」なのに、男性ならお子様に皇位継承資格が認められ、女性なら認められない。このような差別の客観的・合理的な根拠は何か。性別だけを理由として“一人前の天皇(お子様に継承資格あり)”と“半人前の天皇(お子様に継承資格なし)”とを峻別するというのは、現代において相当「野蛮」な制度と自覚すべきではあるまいか。「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」である天皇どうしの間に、男女で“格差”を設けること自体、不自然だろう。

高森明勅『「女性天皇」の成立』(幻冬舎新書)
高森明勅『「女性天皇」の成立』(幻冬舎新書)

そもそも、女性天皇にせよ女性宮家にせよ、ご結婚相手の男性は、皇族の身分を取得されるのか、それとも国民のままなのか。天皇又は宮家の当主のご結婚相手が国民のままというのは、かなり無理があるのではないだろうか。国民のままなら憲法第3章の適用対象だから、さまざまな権利や自由が保障されていなければならない。政治・経済・宗教上の活動における自由も最大限、尊重されるべきだろう。しかし、そのことと、「国民統合の象徴」である天皇の地位や、その天皇のご近親である宮家の当主の配偶者としてのお立場は、はたして整合的なのか。それ以前に、一つの世帯を営むのに、一方が天皇又は皇族で、もう一方が国民という形は、いささか異常ではないか。

従って、女性天皇および女性宮家の当主の配偶者は当然、男性皇族の場合の配偶者と“同じよう”に、皇籍を取得されるべきだ。又、そのようにご両親が皇族であれば、その間にお生まれになったお子様にも皇族の身分が与えられるのは、当たり前だろう。

しかし、そのお子様は皇族であられながら、しかも、男子にも女子にも皇位継承資格が認められている制度のもとで、親でいらっしゃる天皇、宮家の当主たる方が「女性」であるというだけの理由で、決して継承資格が認められないことになる。

■高くなる結婚のハードル

そのような格差をことさら設けることは、女性天皇や女性宮家の当主のご結婚に際し、大きくマイナスに作用することはあっても、決してプラスには働かないだろう。その上、もし配偶者には皇族の身分すら与えられないとすれば、皇室のメンバーの中で、自分だけが(男性皇族のご結婚相手の女性は皇族とされているのに)“国民のまま”であるにもかかわらず、一方では国民に認められている権利や自由の多くが事実上、制約されかねないことになって、ご結婚のハードルは極めて高くなるだろう。

女性天皇と女性宮家は制度上、セットで認めなければならないし、その場合、女系天皇も決して欠かしてはならない。消去法で残ったのは結局、女性天皇、女性宮家、女系天皇のセットだった。

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高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者
1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録」

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(神道学者、皇室研究者 高森 明勅)

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