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「ただの同居とは違う」性的関係なし、食事も別々という結婚生活に39歳女性が大満足しているワケ

プレジデントオンライン / 2021年12月22日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■5年来の男友達から突然のプロポーズ

30歳前後で結婚し、子どもを産み、子どもがふたりになると妻は退職して一時的に専業主婦やパートタイムに。夫は子どもをかわいがってはくれるけど帰宅も遅く、いつしかワンオペになり、不満をためながらアラフォーに突入。もう一度、正社員になりたくてもなかなかその道はなく、夫との会話は子どもの学校行事に関することだけ。

はたと気づくと子どもたちは自分の世界をもっていて、もはや親と一緒に行動はしてくれない。夫との心の距離は離れている。

一番身近な存在だった配偶者が、一番遠い他人に感じる。そんなふうに話す50歳前後は多い。ここから熟年離婚となるか、家庭内別居となるか。

そんな「ごく一般的な」家庭を見てきた20代、30代にとって、昔と違って結婚は「夢」でも「憧れ」でもなくなっている。結婚そのものが「めんどう」と言う人たちも増えている。夫、妻という従来の役割をこなす気もないようだ。ゆえに未婚が多くなる。

「私もずっと独身でいいと思っていたんです。男女問わず友だちもいるし、仕事から帰ってきてひとりで好きなように時間を過ごすとき、つくづく『誰にも邪魔されないって幸せ~』と思っていましたから。時に恋愛もしましたが、それが結婚に結びつくことはなかった。それでよかったんです」

サワコさん(39歳・仮名=以下同)はにこやかにそう言った。だが彼女は4年前に電撃結婚した。相手は同い年、男友だちのひとりだった。ある日、仕事のセミナーで出会ってから仲良くしていた5人グループで食事をした。5年来の仲間だから、話も盛り上がって二次会に流れた。さらに三次会へと行く人たちを見ながら、ケイタさんが「行く?」と尋ねてきた。

「次の日は土曜日だったんですが、私、仕事があって出社しなければならなかったんです。『今日はこれで帰るわ』と言ったら、『明日、ご飯でも食べない?』とケイタに言われた。ふたりで食事に行くのもそれほど珍しくはなかったので、いいね、そうしようと約束して別れました」

そして翌日、食事をしているとケイタさんが突然、「サワコ、結婚してくれない?」と言ったのだ。サワコさんは思わず食べていたパスタを喉につまらせたという。

■「結婚を重く考えずにすむ」と思った

「ケイタはその数カ月前に、長い間つきあっていた彼女に振られたんです。かなり落ち込んでいて、ようやく立ち直りかけたなと思ったときにそんな発言をしたものだから、『寂しさも極まったか』と冗談を言うと、いつもなら乗ってくる彼が笑わなかった。『いや、本気。オレとサワコ、合うんじゃないかと思って』って。それほど押しつけがましいニュアンスでもなかった。ちょうどルームシェアしていた女友だちが実家に帰るからと出て行ったばかりだったので、『ルームシェアみたいな結婚ならしてもいいけどね』と軽く言ったんです。そうしたら彼、『それがいい』と」

サワコさんは従来のような結婚ならお断りだった。だがケイタさんが「それがいい」と言うのを聞いた瞬間、彼となら“結婚”というものに踏み込んでみてもいいと思ったそうだ。結婚を重く考えずにすむのではないか、と。もしだめなら離婚してもいいのだから。みんながしている「結婚」を、こんな機会に自分もしてみるのは悪い経験ではないのかもしれないと感じたようだ。

結婚に積極的でない人でも「一度はしてみてもいいかもね」と言うのをよく聞くが、サワコさんもその程度のノリだったのだろう。

妙な意気投合があって、数日後には婚姻届を提出し、その週末には彼が彼女のマンションに越してきた。あっけない結婚だったが、バタバタした数日間が楽しかったという。

婚姻届けの用紙
写真=iStock.com/shirosuna-m
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shirosuna-m

■親孝行できてホッとしたが、結婚した実感はない

「婚姻届を出すとき、どちらの姓にしようかと一晩、話し合ったんですが、彼は『どちらにしても一方が大変だよね』と。女性が男の姓になるものでしょなんてことはみじんも考えていなかったから、この人、大正解だと思いました。結局、彼の姓のほうがかっこいいという理由で私が姓を変えたんですが、別の人生を歩むみたいでちょっと楽しかったですね」

引っ越しまでの間に、サワコさんは実家に電話をして結婚したことを話した。兄と弟は結婚しているのに、なかなか結婚しようとしなかった娘がようやくその気になってくれたと両親は大喜び。サワコさんが実家にいたのは高校生のときまで。関西の大学に進学し、東京で就職してからは、年に1~2度しか帰らなかったし、「いつ結婚するの?」「どうして結婚しないの?」という親がうっとうしくて距離をとったこともあった。だが結婚を報告したときの両親の喜びように、これで親孝行ができたとホッとした。ただ、彼女自身にはそれほど「結婚した実感」がわいてはこなかった。

「彼は幼いころに両親が離婚、祖父母に育てられたけれど、もう祖父母も他界していて、ほとんど親族がいない。それでも、『サワコの両親が喜んでくれてよかった』と言ってくれました。ケイタのことは友だちとしてしか知らなかったけど、結婚してみると意外といいやつだった。これならうまくやっていけるかもと思いました。新婚旅行は私が行きたかった中南米の旅でした」

■洗濯物は別々、平日は夕食もそれぞれの都合でとる

ところが旅行中も帰ってきて日常生活が始まってからも、性的な関係はまったくない。サワコさんは一時期、「普通と違う。これでいいのか」と悩んだこともあるという。ただ、実は自身もそれほど性的欲求が強いタイプではないし、子どもがほしいわけでもないと気づいた。

「あるとき彼とそういう話もしたんです。普通は恋愛して性的な関係もあって結婚を決めるものだけど、私たちは違うよねって。そうしたら彼が『オレ、ほとんど性的な欲求がないんだ。サワコがしたいならがんばるけど』と。なんというのか、性的な欲求がないことをいけないとはまったく思ってない感じでした。だから私も、あ、それならいいよと言えた。そういう生々しいことは私もしないほうが気楽だし。彼には男はこうするべきという従来の“男のプライド”がないんだなとは思いました、いい意味で。だったら私も女であることを意識しないで、人と人として暮らしていける。恋愛感情がほとんどないままに、家族愛に近い気持ちだけで生活できるなら、そのほうが私の理想に近いなと思って」

ひとり暮らしの延長のような結婚生活が始まった。洗濯物もそれぞれ自分でやるし、気づいたほうが掃除をする。2LDKのマンションなので、それぞれに個室があり、個室にこもっているときは急用でもない限り、声はかけないのが不文律となった。ふたりとも仕事が多忙なので、平日は夕食も各自の都合でとる。

■自由だが「ただの同居」ではない

「たまに早く帰れるときはLINEで連絡をとりあいます。時間が合えば待ち合わせて食事をして帰ることもある。私が早く帰って自分で作って食べるときは、何か一品、残しておくこともありますね。だからといって、例えば『シチューを作ったから食べて』とは言わないし連絡もしない。彼が帰ってきてキッチンを見て食べたければ食べればいい。食べなければ翌朝、私が食べることもあるし冷凍しておくこともある。ただ、彼は早出のとき自分でお弁当を作るのですが、私にも作っておいてくれます」

週末も各自の予定があれば、別々に過ごす。予定の詳細は尋ねない。共通の友だちとのつきあいには一緒に出掛けるので、周りからは「仲良し夫婦」と思われている。

「つまり、何の規制もない結婚生活なんです。だったらただの同居だと言われるんですが、私たちはそう思っていません。共に生きていると感じてる。私はものすごく地震に弱いけど、家にいるときは隣の部屋から『大丈夫~?』という声が聞こえてくるから、パニックにならずにすむ。離れているときに地震があると、彼は必ず連絡をくれます」

お互いにひとり暮らしが長かったから、自分のペースで生活することを優先しているが、相手を「共に生きる人」と認識しているからこそ何かあれば連絡をとりあう。それも彼女たちならではの結婚生活のよさなのではないだろうか。

■「夫に威張られたくないから結婚したくない」

「結婚してから彼を実家に連れていったんですが、彼はすっかりうちの両親やきょうだいと仲良くなって……。うち、田舎だから畳の居間なんです。昼食後、彼は親に勧められるままに居間でごろんと横になって昼寝していました。くつろいでいる感じでしたね。『こんなに安心して昼寝したのは初めて』とあとで笑っていた。そういう意味でも結婚してよかったのかなあと思います」

昨年来のコロナ禍で、サワコさんは在宅で仕事をしていた時期もあるが、彼は仕事上、通常と変わりなく出社していた。自宅にいるからといって彼のために食事を作ったこともない。彼もそれを望んではいなかった。

こういう結婚生活をうらやましく思う人たちもいるようだ。私がこの話をしたところ、20代後半から30代の女性たちから「そういう結婚ならしてみたい」という声を多く聞いた。

「私も結婚したくないと思っているんですが、一番大きな理由は夫となった人に威張られたくないから。今どきの同世代の男性は、前の世代より優しいし男女平等の感覚もあると思われがちでしょう。でもやっぱり嫉妬や独占欲が強い。私の前の彼は、つきあっているときは優しかったし、私の意見もきちんと受け入れてくれたけど、いざ同棲を始めたら急に支配的になった。だから即、同棲解消しましたけどね」

チホさん(34歳)はそう言って眉間にしわを寄せた。1年ほどつきあっていた同い年の彼と同棲に踏み切ったのだが、同じようにフルタイムで働いているのに彼は毎日、彼女の手作り料理を望んだ。洗濯も掃除も彼女が「ひとり暮らしのときは自分でやっていたのだから」とついこなしてしまった。彼はそれをいいことに家事を押しつけたあげく、折半するはずの生活費もろくに出さない。性的な関係においても、彼女がしたくないと言うと彼はあからさまに不機嫌になった。

■「ひとりの人間同士の愛と信頼」だけで成り立つ結婚

「私の片思いから始まった恋愛だったこともあって、結局、彼は私をなめてかかっていたんだと同棲してみて初めてわかりました。相手を尊重できない関係を続ける理由はないので、3カ月で私は逃げたんです」

2年前のその一件以来、彼女は結婚したいという思いを失った。ともに生活していくことで自分の負担が重くなり、彼に自尊心を傷つけられるくらいなら結婚などしないほうがましだと思うようになったという。

「周りを見ても、人として信頼し合っている、いい結婚だなと思える例がなくて。もっとお互いを思いやりながら、ともに生きていくことはできないんでしょうか」

共に生きていく「共生婚」が、必ずしもいい結婚かどうかはわからない。ただ、自分のしたいような生活をしながら、信頼できる人とともに生きていくという意味では、うまくいけば理想的ではあるだろう。そのためにはふたりとも精神的にも経済的にも自立していることが必要だし、ひとりで生活できる術も身についていたほうがいい。相手に対して何かしてほしいと要求しない。その上で、共に暮らして共に生きる気持ちだけでゆるくつながっていく。途中で子どもがほしいと思えば軌道修正すればいい。

結婚するときがお互いの気持ちの絶頂期で、あとは愛も優しさも減っていくだけ。そんな結婚を見聞きするにつけ、「結婚」そのものへの考え方をもっとゆるめたらいいのではないかという気がしてならない。「共生婚」は、性役割を超えた、ひとりの人間同士の愛と信頼だけで成立する結婚なのかもしれない。

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亀山 早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター
明治大学文学部卒業後、フリーライターとして活動を始める。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』(ともに新潮文庫)『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』(扶桑社)など著書多数。

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(フリーライター 亀山 早苗)

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