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「年末に大掃除をしてはいけない」病院清掃のプロが考える"本当に大掃除をするべき時期"

プレジデントオンライン / 2021年12月29日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gilaxia

「大掃除」はいつやればいいのか。『病気がイヤならその掃除をやめなさい。』(河出書房新社)を書いた松本忠男さんは「日本では『大掃除は年末』というのが常識だが、本当に大掃除をすべきなのは汚染の激しい冬と夏が終わった直後」という――。

■カビが大好きなのは風が回りにくい「垂直な場所」

床や机など「水平の場所」には、ホコリや汚れがあるのが見えます。このため、一般のお掃除は、水平の場所が中心になりがちです。

しかし、カビは水平な場所にいるとは限りません。胞子はどこにでも付着しますし、その場所がカビにとって適温で、湿度が高く、汚れがあれば、どんどん増えていきます。

風の回りにくい「垂直な場所」、つまり壁こそが、絶好の環境だったりするのです。

気密性の高い現代の家は、1年中「結露」が起こっています。冬は、窓ガラスや壁の表面が濡れるのでわかりやすいのですが、じつは夏にも、結露が発生しているのです。

日本の夏は、基本的に高温・多湿です。また、近年は温暖化の影響もあり、気温がさらに高くなっています。朝から夜までエアコンをつけっぱなし、という家庭も多いでしょう。このため、部屋の壁は冷やされています。壁に接した外気が冷やされて、結露になってしまうのです。

ところが、この結露は壁の内側に発生するため、外からは見えません。冬のように、窓ガラスや壁が濡れれば、拭いたりできるのですが、壁の内側ですから、拭きようがないのです。しかも、夏は高温・多湿ですし、壁のなかには風は回りません。

このため、大量のカビが繁殖してしまうというわけです。

「壁のなかでもカビは生きられるの?」と思うかもしれませんが、カビはなんでも栄養源にします。壁材も壁紙を張る接着剤も栄養源になってしまうのです。このため、壁紙を剥がしたら、壁一面にカビが生えている、なんてこともよくあります。見えていないだけで、カビで覆われている住まいは少なくないのです。

梅雨の6~7月、雨が多くなる9月以外も油断できません。むしろ無防備になるこの時期こそ、カビが大繁殖する時期といえるでしょう。

というより、いまの日本のような気候と、気密性の高い住環境においては、一年中カビが繁殖する、と考えるほうが自然なのかもしれません。

だからこそ、換気と家のなかの空気を回すことが、より重要になってきます。

■カビの発生を抑えるのに効果的な掃除場所

カビの三大要素は、湿度と温度と汚れです。

この3つの条件が揃うことで、カビは爆発的に増えていきます。それを防ぐには、このなかのどれかを断つことです。条件が1つ減るだけで、繁殖はグンと押さえられます。3つのなかで、何を断つのがよいと思いますか?

カビ増殖の原因となる三大要素
松本忠男『病気がイヤならその掃除をやめなさい。』(河出書房新社)より

温度を断つのは難しいでしょう。カビは20度を超えると繁殖しますが、部屋の温度をそれ以下にしたら、寒くて仕方がありません。

「カビを増やさないために寒いのを我慢する」というのでは、違う病気になってしまいそうです。

湿度は? 風を回すことで、湿気を飛ばすことができるため、ある程度は改善できそうです。でも、部屋の隅々にまで風を回すのはとても難しいといえます。

入居したばかりの何もない部屋なら可能ですが、人が暮らす部屋には家具があり、モノもあります。そこで風の流れがさえぎられ、湿気が溜まってしまうのです。

温度も湿度もダメ。だったら残りは1つ、汚れを断つことです。ホコリ、食ベカス、食品、粉や調味料、髪の毛、剥がれ落ちた皮膚、皮脂、浴室の石鹸カスやシャンプーなど、カビはなんでも栄養源にしてしまいます。

そのすべてを完璧に取り除くことはできません。それでは一日中掃除をしていることになります。それは現実的ではありませんね。完璧に取り除くのではなく、こまめに掃除をして、汚れを減らせばいいのです。

20~30度の温度と高い湿度があり、風が流れない場所を見つけ、そこをこまめにお掃除するだけでも、カビは大幅に減らせます。

「すべての部屋を掃除しなきゃ」とか「汚れを完全に取り除かなきゃ」と考えるのではなく、カビの増えそうな場所の汚れを減らす、というゆるい発想のほうが、逆に効果的だったりするわけです。

■カビが発生しやすい場所を見つける簡単な方法

湿度は目に見えませんが、見えるようにする方法があります。除湿剤を家のいろいろな場所に置いてみるのです。

タンス、下駄箱、押し入れなどに置く人は多いと思いますが、他の場所にも置いてみましょう。

すると、すぐに水が溜まる場所と、溜まらない場所があります。除湿剤に水が溜まる場所は、湿気が多い場所です。

つまり、風の流れが悪く、カビが繁殖しやすい場所なのです。各部屋、人が集まるリビングは数カ所、寝室もベッド脇とそれ以外など、除湿剤を置くことで、湿度を可視化する。

これも見えないカビ対策の有効な方法です。

■私が実践している「黒カビの撃退法」

黒カビのサイズは、およそ5ミクロン(1000分の5ミリ)なので、1000個集まると5ミリほどになります(あくまでも単純に考えた場合の話です)。

つまり5ミリほどのカビがあったら、そこには1000個の胞子があるということです。その胞子は、飛んでいくし、増えていく。だから、それをないがしろにしてはいけないというのが、カビ対策の基本的な考え方です。

具体的には、カビを発見したら、いわゆる「カビ取り剤」を使うのが便利です。見えているカビというのは胞子の量が多く、アルコールではいき届かないのです。

カビ取り剤は、塩素系(次亜塩素酸)の漂白剤が主成分のもので、薄めずにそのまま使えるタイプや、液が垂れないよう泡状になっている便利なタイプが市販されています。

それでも垂れてくるため一般的にはペーパータオルでパックするようにして定着させますが、私が実践している「黒カビの撃退法」は次の方法です。

黒カビの撃退法
松本忠男『病気がイヤならその掃除をやめなさい。』(河出書房新社)より

■風の通り道を意図的につくる

前にも話しましたが、窓を開けるだけでは空気は循環しません。風の入り口と出口があって初めて、風が通るようになります。ところが、部屋全体に風を回すことはとても難しいのです。

わかりやすい例として、浴室を考えてみましょう。浴室にはたいてい換気扇が付いています。付いていない家なら窓があるでしょう。そしてみなさんは、換気扇を回したり窓を開けたりして、浴室の換気をおこなっているはずです。

このとき、一般的には浴室の中心付近から乾きはじめます。なぜならそれは、中心付近には空気の動きを遮るものがなく、空気がもっとも動きやすいからです。しかし、隅っこのほうはなかなか乾きません。それは、そのあたりの空気が動いていないからです。

そして、そういう場所にカビが生えやすいのです。このように、狭い浴室でさえ風が回らないのですから、広くて、家具やモノが多い部屋では、空気が均等に循環されることはない、とわかるでしょう。

だからこそ、風の流れを考えて、通り道をつくることは必須です。

風が流れないような場所には、扇風機などを使い、定期的に風を回してあげることも大切です。

■冬の「コールド・ドラフト現象」でカーテンがカビだらけに

外気の冷たい冬は、窓ガラスが冷たくなっています。すると、室内では次のような現象が起こります。

まず、室内の上方にある温かい空気は、窓ガラス付近で急激に冷やされます。すると、冷やされた空気は窓に沿って下降し、床に突き当たると這(は)うようにして室内に広がります。その後、冷えた空気は室内で温められて上昇し、再び窓ガラス付近で急激に冷やされて、下降します(図表3)。

コールド・ドラフト現象
松本忠男『病気がイヤならその掃除をやめなさい。』(河出書房新社)より イラスト:瀬川尚志

これを「コールド・ドラフト現象」といいます。

例えば、朝方、窓の付近にいると背中に冷たい風を感じることがありますが、それはコールド・ドラフト現象が起き、上から風が流れ落ちているからです。しかもこの風は、結露した窓の湿気を帯びています。

このため、窓ガラスのすぐそばにあるカーテンの裏側は湿り、カビが生えやすくなるというわけです。では、どうすればいいか?

カーテンを開く女性
写真=iStock.com/andresr
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/andresr

■朝気持ちよくカーテンを開けるためにやるべきこと

三大条件のどれかを改善することです。カーテンの温度は変えられないので、湿度と汚れを取り除きます。

松本忠男『病気がイヤならその掃除をやめなさい。』(河出書房新社)
松本忠男『病気がイヤならその掃除をやめなさい。』(河出書房新社)

基本は、カーテンの湿り気を取るよう、風を当てる時間を増やすことです。朝になるとカーテンを開けますが、湿った状態で束ねるのは、カビを増やす原因です。

しばらくのあいだ、カーテンを閉めたまま窓を開けて風や日光を当てる、あるいは窓とカーテンのあいだに扇風機を置いて風を送るなど、「乾かす」ための工夫をしてみましょう。

また、栄養源となるホコリは「化繊ハタキ」で取るのがおすすめです。静電気の力で静かにホコリを引き寄せられるからです。外から入る土ボコリや排気ガスも栄養源になるため、季節ごとに洗濯したり、クリーニングに出すことも大切です。

朝、カーテンをシャーッと開けるのはとても気持ちのいいものですが、この瞬間、カビの胞子やウイルスなどの見えない敵が、ワーッと勢いよく飛び散っていることを知りましょう。

■大掃除は年末ではなく、夏と冬の終わりにする

夏にはこれと反対の空気の流れが起こっています。

夏は窓ガラスが熱く、部屋の空気はエアコンで冷たくなっています。このため、窓ガラスに接した空気は温まり、下から上への「上昇気流」が起こります。それが部屋の中央に流れて冷やされて下り、窓際でまた上昇するという循環になります。

このように、冬も夏も、窓側と部屋の中央との温度が違うことによって、窓際から風の対流が起こるのです。本来なら、風が動くのはよいことですが、窓際から風が起こるのは問題です。なぜなら、壁沿いには、カビやダニなどの見えない敵が多く生息するからです。

これらの「見えない汚染物質」が部屋中にまき散らされてしまうのです(図表4)。

夏、冷房時の室内の気流
松本忠男『病気がイヤならその掃除をやめなさい。』(河出書房新社)より イラスト:瀬川尚志

その意味では、冬と夏は、極端に汚染が激しい時期といえます。

日本では「大掃除は年末」というのが常識ですが、本当に大掃除をすべきなのは汚染の激しい冬と夏が終わった直後です。

地域によっても違いますが、桜の咲く3月末~4月初頭、秋風の吹く10月ごろにおこなうのがベストです。現代の住環境を考えれば、これが新しい常識になるでしょう。

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松本 忠男(まつもと・ただお)
プラナ社長、医療環境管理士
東京ディズニーランド開園時の正社員、ダスキンヘルスケアを経て、亀田総合病院のグループ会社に転職し、清掃管理者として約10年間、現場のマネジメントや営業に従事。1997年、医療関連サービスのトータルマネジメントを事業目的として、株式会社プラナを設立。これまで現場で育ててきた清掃スタッフの総数は700人以上。

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(プラナ社長、医療環境管理士 松本 忠男)

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