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月700本の指名、年5億円の売上…歌舞伎町のホストクラブが煽る誇示的消費のヤバい実態

プレジデントオンライン / 2021年12月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ParfonovaIuliia

新宿・歌舞伎町のホストクラブで急激な「インフレ」が進んでいる。その結果、指名本数は月700本超、年間売上は5億円超というホストも誕生している。ライターの佐々木チワワさんは「客のプライドを煽る巧妙なシステムができあがっている」という――。

※本稿は、佐々木チワワ『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

■「初回料金」は60分1000~3000円程度で焼酎が飲み放題

令和のホストのSNS戦略は一方的に情報を拡散しているだけでなく、興味を持ってくれた女性とは積極的に連絡を取り、ホスト側から客側の生活に入り込んでいく。色恋営業をされることで、ホストクラブに足を運ぶようになる女性も多い。そして非日常がいつでも日常に転換されるような仕組みが存在している。

ホストにハマるとホストクラブを中心に世界が回り、そこが居場所に思えてくる。ホストが発する言葉を営業として割り切ってたまに行くのではなく、その虚構を維持するために不要な人間関係を断ち切っていく。そうしていつしか推しが偶像ではなく日常と地続きであるように感じられ、推しが商品でなくなったあとでも自分だけは一緒にいられるような気がしてくる。

そうした錯覚を、ホストは言葉巧みに与えてくれる。「未来の関係性」に対する期待感を金銭に換える、“繋がれる推し”の立場を利用した搾取といえるだろう。筆者はこのホストクラブの特殊な営業形態と誇示消費システムが、現代の推し文化にかなり反映されていると考える。そのために、ホストクラブのお金が回るシステムについて解説していきたい。

ホストクラブには、独自の「初回料金」というものが存在する。60分1000~3000円程度で焼酎が飲み放題。5~10分おきに在籍するキャストが入れ代わり立ち代わりにやってきて会話をする。この時点では「推し」である「担当ホスト」は定まっていないことになる。

この安い初回料金は集客目的なので、ホストクラブ側からしたら赤字覚悟のシステムだ。初回に安く飲むことを目当てにしている客は「初回荒らし」と呼ばれる。これはアイドルの現場にだけ行ってチェキを取らずに空気を味わうタイプのオタクや、配信ライブは見るが課金をしない、いわゆる「無課金ユーザー」気質にも通じる。

■客のプライドをあおる「ラストソング」というシステム

ホストたちは初回客から連絡先を聞き、連絡や食事を重ね、店に呼ぼうとする。2回目の来店では指名する「担当ホスト」を決めると、座るだけで最低1万円、軽く飲んだら3万円、使うお金は無限大のホストの世界に誘われるのである。

そして、ホストクラブには誇示消費をしたくなる仕掛けがたくさん存在している。例えば、毎日一番売り上げたホストが、一番金を使った女性の横でカラオケを歌う「ラストソング」がある。店のその日のナンバーワンを決めるシステムで、1位になって歌いたいホスト、1位にして歌ってもらいたい客が札束で競うこともある。2人の客がそれぞれ20万と30万を使いラスソンをホストがとった場合、ホストは30万円を使った客の横でラスソンを歌う。客は「その日店で一番お金を使ったイイ女」として振る舞える。

また、月の売り上げでは売れっ子に勝てないホストでも、ラスソンだけはその日一日の売り上げで決まるため、新人や中堅にもチャンスはある。そうした中間層の承認欲求や誇示欲求を埋めるためにも、ラスソンはうまく機能していると言える。

■シャンパンコールで響き渡る客のコメント

次に、シャンパンコールとシャンパンについてである。現在ホストクラブで酒の値段は年々高騰しており、2000年代半ば、深夜店時代の酒単価はドンペリブラックで20万、ルイ13世で70万円だった。現在はルイの値段は大幅に高騰し300万~350万円となっているため、いくら酒類が高騰したとはいえ、ホスト業界がいかにインフレ化しているかがわかるだろう。

そして、ホストクラブの名物といえばやはりシャンパンコール。小計10万円以上のシャンパンからコールが行われる店が大半であり、数人から十数人のホストがシャンパンを入れた客の前でパフォーマンスを行う。その数分間、店は客とそのホストの舞台として機能する。客、担当ホスト、指名したヘルプホストそれぞれのコメントが店全体に響き渡る。客もコメントを求められ、かなりドキっとさせられる発言も多いので紹介したい。

「いつも楽しませてくれてありがとう!」とホストの顔を立てるマイクをするもの
「このくらいの金額、4日あれば余裕なんで~」と自分の稼ぎを自慢するもの
「○○くんの精子ください! 子供欲しいです!」と過激なマイクをするもの

なお、過激な発言やほかの客をあおるようなマイクパフォーマンスは「痛マイク」と呼ばれる。指名しているホストが被っている客に向かって、「好きって言うならシャンパンくらい卸したらどうですか?」とあおるなど、コールを使ってバトルが繰り広げられることも多々ある。巧みなホストはわざと対抗心の強い客2人を店に呼んで、マイク合戦とあおりあいで売り上げを増やす戦法を取る。

■シャンパン・飾りボトルともにSNS映えするものが人気

シャンパンコールも30万、50万、100万、300万円……と値段によって音楽やキャストの数など豪華さが変わる。店に通い慣れていれば、音楽を聴いただけでイントロクイズのように、どの卓でいくらの売り上げがあがったかを計算できる。

また、シャンパンではなく「飾りボトル」を卸すという選択肢も存在する。シャンパンと違い最低でも数十万円から数百万円するこのお酒は、一度オーダーすれば自分が来店するたびにテーブルに並べられる。酒が空になってもだ。すると、客からもほかのホストからも、「アイツは大金を使っている」というのが一目瞭然となる。まさに“映え”(※)であり、誇示消費だろう。飾りボトルはそうした推し消費に溺れる女性たちのステータスであり、ホストと客、両者の権威の象徴なのだ。

※映え
「SNS映え」「インスタ映え」など、その場の原体験よりも「写真に残したときにいいかどうか」という基準でものを選んでいるときに多用される表現。一時期、おいしそうなキラキラした見た目だけど実際はそうでもないスイーツなどが、写真を撮ったらすぐに捨てられていて問題になった。現実世界よりも、SNS上で「どう見えるか」というまなざしを受けての行動なのがぴえん世代らしい。

シャンパン・飾りボトルともに、SNS映えするものが人気になってきている。シャンパンだと昔ながらのアルマンドに加えてエンジェルシャンパン、飾りボトルだとサンリオなどのキャラクターとも頻繁にコラボしているフィリコ、カラーバリエーションが豊富で「たまご」という愛称で親しまれているインペリアルコレクションなどがある。シャンパンといえばドンペリ、飾りボトルといえばルイのような文化はもはや残っていないと言っていい。

■原価1000円程度の酒が7万円前後で出される

一方で、歌舞伎町のホストクラブ限定で頻繁に卸されているシャンパンも存在する。歌舞伎町の酒の値段は原価の10~15倍程度であり、夜の街で代表的なシャンパンであるヴーヴ・クリコのホワイトラベルは原価6500円前後だが、ホストクラブでは5万~8万円。対して、ロジャーというスパークリングワインや、オリジナルシャンパンというノンブランドの酒に自店舗のラベルを貼っただけの原価1000円程度のものが、同じく7万円前後で出されている。

こうした原価率の低いシャンパンにはボトルバックがついていることがある。客が支払う同じ7万のシャンパンでも、原価1万円ならばバックはなし。原価1000円ならば売り上げの10%がもらえる、という店舗も存在する。だからホストは何かとオリシャンやロジャーを入れたがるのだ。

お酒の大半がオリジナルシャンパンという方針のホストクラブも存在する。同じ値段ならば原価が高くうまい酒を飲みたい……と思うものだが、ホストを「推し」ているぴえん系女子からしたら、酒の味など二の次。ホストに一番喜んでもらえる応援の仕方を選ぶため、卸しても飲まない場合が多い。「シャンパンが飲みたいんじゃなくて、俺にシャンパンを卸したくてお金を使ってるいんだから、味なんてどうでもいいでしょ?」と口にするホストも存在するのだ。

もはや配信ライブでの投げアイテムのように、シャンパンは半ばバーチャルで応援するための「ツール」であり、品質はあまり気にしていない。キャバクラやクラブなどではイベント時のオリジナルシャンパン以外こうした酒類が置かれることはなく、ホストクラブは「推し」文化がより色濃いことがわかる。

シャンパンタワー
写真=iStock.com/Alexeg84
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Alexeg84

■「月700本」という指名本数はどうやって達成するのか

ホストクラブが接客を楽しむ場ではなく、推しの記録を上げ、歌舞伎町の記録を塗り替えるゲームとなっている一面が近年かなり強くなってきている。2021年、おそらく歌舞伎町史上初の5億円プレーヤーが生まれるのではないかと言われているが、売り上げ以上にインフレが顕著なのは「指名本数」という評価制度とそれに伴う記録だ。

ホストクラブの月間の記録は主に「売り上げナンバー」と「指名本数ナンバー」に分かれる。売り上げナンバーは文字通り1カ月にどれだけ売り上げたかであり、指名本数ナンバーは1カ月に何組の客を呼んだのかの記録である。一人の客が25営業日すべて来店した場合が25本。25人の客が月に1回ずつ来店しても25本である。

こうした売り上げと本数の現状の順位は裏局域であるバックヤードに常に張り出され、ホストが競争心を高める。20時~25時の5時間の営業で、1日10人の客を呼んだら単純計算で1人当たりの接客時間30分。ヘルプや初回の時間を除けば15~20分程度しか接客ができないことになる。

しかし、現在の歌舞伎町には指名本数が400本、600本、700本という記録をたたき出しているホストが存在する。700本などは25営業日で割っても一日に28人の客を呼ばないと達成しない数字だが、どのようにして行われているのか。

■指名本数による「ナンバー」という名誉

「フォロワーへ 私の友達が無料でクイック連れて行ってくれるらしいのですが、行きたい方いませんか? ちなみに今日で、場所は歌舞伎町です。いたら私にリプもしくはDMください。その子につなぎます。担当ホストにただ本数つけてあげたいだけの子なのでいい奴です……」

これは2021年10月31日にツイートされたものである。このように客がSNSや友人経由で他人に「奢る」ことで本数を稼ぐ事例が近年では起きている。さらに、歌舞伎町の路上で客が道ゆく女の子に声をかけて、「本数つけたいのでキャッシャー(レジ前)に一瞬でいいので来てくれませんか?」と声をかけて本数をつけるケースも存在している。指名本数によるナンバーという名誉に加え、本数バックや目標バックなども存在する。本数の記録は持てるならできるだけ多くもっておきたいという考えのホストが最近は多い。

指名本数は元来、売り上げだけでなくより多くのお客に愛されているバランスのいい接客能力の高いホストという評価軸のひとつだった。しかし、こうしたチートともいえる記録の伸ばし方を実践するホストが増えたことで、その意味を失いつつある。

ホストクラブで年間毎月1000万円以上を売り続け、指名本数も最大150本近くの記録を保持する、歌舞伎町でも上位数パーセントに入る売れっ子ホストに話を聞いた。

■「一番使うお客様で月200~250万円くらい」

「月間指名本数700本とかやめてほしいよね(笑)。俺は本気でやって150本。それ以上は無理。一回本数にこだわって頑張ってみたけど、かなりキツいと思った。それでもグループの年間のランキングには入るから、ホストの限界はそのくらいじゃないかな。俺は指名で来るお客様が30人くらいいて、毎日来る子から月末だけの子を合わせて毎月100本前後。そこから頑張って150本。売り上げはあおったらどうにかなるけど、本数ばかりはどうにもならないと思ってたらこんな売り方も増えてきて……」

近年の歌舞伎町バブルに関してはこう述べている。

「俺はイベント月じゃなければ、一番使うお客様で200万~250万円くらい。そのほか100万以上使うお客様が4人。残りの数十万使うお客様で1000万の数字をあげているんだけど。イベントとかで500万ならまだしも、常時その金額を使い続けられる子が増えてきて怖いという感覚はある。特にぴえん系女子には無理する子が多い。1000万とか一人の子に『使うよ!』って言われたら怖いもん。断っちゃうかも」

別の売れっ子ホストも自分の売り上げに対して一人が使う金額が3割を超えないように気をつけているという。「ある程度の売り上げを自分一人で支えているとなると女の子が優位になってしまう。そこをコントロールすることも含めて自分の仕事」という内容の発言をしていた。

こうしたホストがいる一方で、ほぼ一人の客で売り上げを立てている一本釣りホストや、売り掛けに失敗して“飛ぶ(逃げる)”ホストもいる。この売り掛けという制度が、ホストたちの稼ぎを暴騰させる一面もあるのだ、が。

■10万円しか持っていなくても30万円のシャンパンを入れられる仕組み

売り掛けとは、いわゆる「ツケ払い」のことである。ホストクラブでは売り掛けでの飲食が一般化しており、給料日後である翌月の2~5日に、使った金額を支払うという仕組みだ。

佐々木チワワ『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)
佐々木チワワ『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)

10万円しか財布に入ってない場合でも、指名ホストの誘いでシャンパンを入れて30万円の会計をすることができる。その場合、現金で10万円を支払い、残った料金は翌月の決められた日までに入金すればいい。基本的に売り掛けは指定日までに直接店舗にもっていく必要性があり、「売り掛けを入金したら担当切るもん! ぴえん!」と宣言したホス狂がそのまま店にずるずると引き込まれ、結局、売り掛けを払いに行ったのにまた売り掛けをこさえて帰るといった事態が度々起こる。

風俗で働くホス狂のなかには、月初めに200万円などの売り掛けをし、1カ月かけて働いてその金額を稼ぐタイプも存在する。「売り掛けがないと働けない」と話すぴえん系女子も存在する。「稼いで飲む」のではなく、「飲んでから稼ぐ」というスタイルが確立しているのだ。

■客の売り掛けをホストが自腹で支払うことも…

売り掛けをするとその金を払うまで担当ホストとの関係性が切れないこともあり、あえて売り掛けをしたりするケースもある。

売り掛けをした場合、覚書として売り掛けの金額を青い伝票、通称「青伝」をもらうことになる。これをホス狂の業界では「伝票はラブレター」「運命の青い糸」などと呼ぶ。もしもお客が売り掛けを支払えず逃げてしまった場合、ホストが自腹で店舗に支払うことになる。むちゃな売り掛けをした結果、給料がゼロになるどころか店側に借金をするホストも存在するのだ。しかし、この売り掛けという不安定なシステムがあるからこそ、ホストたちは破格の売り上げを立てられるのも事実である。

売掛金をホストが自腹で支払い、客が分割で返済していくことを「立替」と呼ぶ。立替ばかりで現金がないホストを「立替ホスト」といい、許容を超える立て替えが積み重なると、ダサいホストのレッテルを貼られる。「立替」のイメージがつくと、その後いくら売り上げても「どうせ立替」という烙印を押され、カリスマホストへの道は遠のいていく。「立替」によって形の上では1000万円を売り上げたはずなのに給料が80万円しかもらえなかったホストもいるくらいだ。

ホストもそこでお金を使う女性も、数字や肩書、立場、関係性という不安定な世界での虚構を維持するために日々奔走しているわけだ。現代の「繋がれる推し」文化のある種最上位に位置し、承認欲求から誇示的消費、エゴすべてを吸い取るのがホストクラブという存在なのだろう。もはや一部のホス狂いにとっては楽しむ場というよりも戦場と化している。

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佐々木 チワワ(ささき・ちわわ)
ライター
2000年生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)在学中。10代のころから歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。

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(ライター 佐々木 チワワ)

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